魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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5章 新たな挑戦

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遺跡を後にし、街へと続く道を歩いている二人。夕暮れが迫り、森の中は少しずつ薄暗さを増していた。

「いやー、遺跡ってやっぱりロマンがあるよね!」
アリアが剣を軽く肩に担ぎながら話す。

「ロマンというより、危険が多いのが現実ですが。」
イアンが冷静に答える。

「でも、今日は私たち結構いい感じだったんじゃない?連携もバッチリだったし!」

「……そうですね。ただ、君が石碑に触れようとしたときはヒヤヒヤしましたが。」

「えっ、それも冒険の醍醐味じゃん!」
アリアが笑いながら振り返ったそのとき。

突然、低い唸り声が二人の背後から聞こえた。振り返ると、そこには通常の魔物よりも一回り大きな獅子型の魔物が立ちはだかっていた。筋肉質な体に黒い毛皮、瞳には鋭い光が宿っている。

「うわっ、また出た!しかもデカいじゃん!」
アリアが剣を構える。

「気をつけてください。この魔物は通常よりも攻撃力が高い可能性があります。」
イアンが杖を構えながら静かに告げる。

アリアが真っ先に前へ飛び出し、剣を振り下ろした。しかし、魔物は素早く動き、鋭い爪で反撃してきた。

「くっ!」
アリアは攻撃をかわしきれず、腕に浅い傷を負った。

「アリア、下がってください!」
イアンがすぐに魔法を放ち、魔物の足元を凍らせて動きを鈍らせる。

「大丈夫、まだ戦えるって!」
アリアが再び突進し、剣を一気に振り抜く。剣は魔物の首元に深く入り、ついにそれを仕留めた。

「ふぅ…やった!」
アリアが息を整えながら剣を収めた。

「ですが、あなたの腕が――」
イアンが指差すと、アリアの腕から血が滲んでいた。

「あー、ちょっと引っかかれたかも。でもこのくらい平気平気!」

「……軽視しないでください。」
イアンは手袋を外し、ポケットから小さな魔術具を取り出した。それは握り拳ほどの透明な結晶で、回復魔法が込められている。

「これを使えば――」

イアンがアリアの傷口に向けて魔術具をかざす。しかし、結晶は何の反応も示さない。

「……おかしい。通常なら魔力に反応して発動するはずですが。」

「たぶん、それ、私には効かないよ。」
アリアが苦笑いを浮かべる。

「効かない…?」

「魔力がゼロだからさ。魔術具って、基本的に魔力を媒体にして発動するんじゃないの?」

イアンは一瞬黙り込み、魔術具を見つめた。

「……確かに、君には魔術具を使えない理由があるようです。」

「ほら、だから気にしないで!傷くらい自力で治せるし。」
アリアはそう言うと、背負い袋から乾燥した薬草の束を取り出した。

「えっ、まさかそれを……。」
イアンが眉をひそめる。

「しょうがないじゃん!これが一番手っ取り早いんだから!」
アリアは薬草を一本口に入れ、躊躇なく噛み始めた。

すぐに顔が歪む。

「うわっ、やっぱり苦っ!なんか口の中がすごいことになってる…。」

「……無理をしないでください。」
イアンが心配そうに声をかける。

「だ、大丈夫。こういうの慣れてるから!」
アリアは必死に薬草を噛み潰しながら、なんとか笑顔を作った。

「君は本当に、器用な人ですね。」
イアンが小さく呟く。

「まあね!こうやって自分の力で何とかするのが冒険者ってもんでしょ?」

「……その発想は、私にはありませんでした。」
イアンは少しだけ微笑みながら、改めてアリアを見つめた。

「ですが、君がそれで平気ならば、私も安心できます。」

「よし、これで治るはず!さ、早く街に戻ろうよ。」
アリアは軽く腕を振りながら、再び歩き始めた。

イアンはその背中を見つめながら、心の中で呟いた。

(彼女の強さは、魔力の有無とは無関係なのかもしれない……。)






ステータス画面

アリア・マーウェラ

• レベル: 9
• 職業: 剣士(盾なし)
• 体力: 24
• 魔力: 0
• 力: 20
• 敏捷: 16
• 器用: 12
• 知力: 8
• 精神: 10

スキル一覧

• 剣の扱い Lv.3
• 投擲 Lv.1
• 身体強化 Lv.1
• 戦闘直感(パッシブ)

イアン

• レベル: 12 (変更なし)
• 職業: 魔法使い(呪術特化)
• 体力: 10
• 魔力: 38
• 力: 6
• 敏捷: 10
• 器用: 12
• 知力: 24
• 精神: 22

スキル一覧

• 氷結魔法 Lv.4
• 魔力制御 Lv.3
• 詠唱短縮 Lv.2
• 呪いの触(自動発動 / パッシブ)
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