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リリアナが最後の一匹を倒した喜びに浸る間もなく、再び咆哮が響いた。村の外れにある森の奥から、今度は十匹を超える魔物たちが現れる。牙を剥き、咆哮を上げながら、先ほどよりもさらに凶暴な姿で迫ってくる。

「また来た……!これ、普通じゃないですよ!」
リリアナが声を震わせながら叫ぶ。

「確かに普通ではありませんね」
カトリナは冷静に答え、再び聖なるハンマーを肩に担いだ。
「ですが、理不尽を前にした時こそ、私たちの力が試されるのです」

「いやいや、試されるとか言ってる場合じゃないですから!」

リリアナがツッコミを入れる間もなく、魔物たちが一斉に突進してきた。彼女は慌ててメイスを構えるが、その数の多さに思わず足がすくむ。

「リリアナ、下がりなさい」
カトリナの声が響いた。彼女はリリアナをかばうように前に立つ。

「浄化の光よ、我に力を」
カトリナが低く祈りの言葉を呟くと、ハンマーがまばゆい光を放ち始めた。その光が彼女の周囲に広がり、魔物たちが怯んで動きを止める。

「行きます」

その言葉と共に、カトリナが地面を蹴り、一気に魔物の群れに突っ込んだ。

最初の一撃は、浄化の魔力を込めたハンマーが空を裂くように振り下ろされる。轟音と共に、三匹の魔物が光の中で消滅した。

「浄化だけが手段ではありませんよ」

そう言いながら、カトリナは次に近づいてきた魔物に対し、ハンマーを横に薙ぎ払った。肉体が鈍い音を立てて崩れ落ちる。

「物理的な救済も有効ですからね」

「それ、ただの粉砕じゃないですか!」
リリアナが叫ぶが、カトリナは気にする様子もない。

さらに群がる魔物に対し、彼女は次々と攻撃を繰り出す。浄化の魔法をまとわせたハンマーが光を放ちながら敵を薙ぎ倒し、振り回されたハンマーの衝撃波が地面を揺らすたびに、魔物たちは次々と消えていく。

「一匹ずつ丁寧に倒すのは効率が悪いですね」

そう言うと、カトリナはハンマーを地面に突き立てた。大地を震わせる音と共に、彼女を中心に光の波が放たれる。それはまるで爆風のように広がり、周囲の魔物たちを一掃した。

「これで、一区切りです」

全ての魔物が消え去り、静寂が戻った。荒れ果てた地面の上には、カトリナが構える聖なるハンマーが一層輝きを増している。

リリアナは息を飲みながらその背中を見つめた。魔物たちが跡形もなく浄化された光景を前に、彼女はただ一言つぶやいた。

「すごすぎます……本当に聖職者なんですか?」

カトリナは振り返り、少しだけ笑みを浮かべた。

「聖職者も鍛えられた肉体と武器があれば、救済の幅が広がるのです」

「いや、それ救済って言います?!」

リリアナの声が村中に響き渡る中、カトリナは再びハンマーを肩に担ぎ、村の方へと歩き出した。
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