死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

第2部 死にキャラだけど世界を救う旅に出る

5

聖域の教会で試練を乗り越え、浄化の結界を習得したスフィア。彼女の心には、仲間たちと共に戦うための新たな決意が芽生えていた。

ある朝、スフィアは教会の広場に立っていた。澄んだ空気が彼女の頬を撫で、木々の葉が静かに揺れている。

「皆さん……お元気でしょうか。」

ふと空を見上げながら、スフィアは小さく呟いた。あの日、仲間たちはそれぞれの成長の旅へと旅立っていった。そして今、自分もまた強くなったと感じている。

「そろそろ私も、街に戻る時ですね。」

教会の老僧が近づいてきて、スフィアに微笑みかけた。

「スフィア殿、あなたは本当によく頑張りました。もう迷うことはありませんね。」

「はい。皆さんと共に、これからも歩んでいきます。」

老僧は静かに頷き、スフィアの肩に手を置いた。

「では、行ってらっしゃい。そして、再び困難に直面することがあっても、決して一人で背負わないように。」

「はい……ありがとうございます。」

スフィアは深く礼をし、教会を後にした。霧深い谷を抜け、険しい山道を越えた先に、懐かしい街の景色が広がっていた。

街は以前と変わらず活気に満ちていた。スフィアが街の門をくぐると、賑やかな市場の声が耳に飛び込んでくる。

「ただいま戻りました。」

スフィアはその場に立ち尽くし、街の様子をじっと見つめていた。けれど、胸の奥には少しの不安も残っている。

「皆さんは、もう戻ってきているのでしょうか……？」

その時、遠くから聞き覚えのある声が響いた。

「スフィア！」

振り返ると、そこにはカインの姿があった。彼は少し日焼けしており、以前よりも精悍な顔つきになっている。

「カインさん……！」

スフィアは思わず駆け寄り、彼の前で立ち止まった。カインは微笑み、彼女の頭に優しく手を置いた。

「無事に戻ってきたな。」

「はい……私、少しは強くなれたと思います。」

カインは頷いたが、どこか気まずそうな表情を浮かべている。ふと、彼は後ろを振り返り、仲間たちの姿を探すように視線を動かした。

「それにしても……まさか、ここまで一人で来るとはな。」

「え？」

スフィアが首を傾げると、カインは少しばつが悪そうに頭を掻いた。

「実は……俺たちは、てっきりお前が街で待っていると思っていたんだ。だから、戻ったらすぐ会えると思っていたんだが……。」

「そうだったんですか？」

スフィアは驚いた様子で目を見開いた。

「そうだ。戻ってみたら、お前がいなくて、街中を探し回ったんだぞ。」

その言葉に、エリオット、レオン、ユリウスも次々と合流してきた。エリオットが少し息を切らしながら言葉を紡ぐ。

「まったく……どれだけ焦ったことか。聖域の教会に行ったと聞いた時は、すぐに向かおうかとも思ったが……。」

レオンは苦笑しながら肩をすくめた。

「でもさ、スフィアがこうして無事に戻ってきたんだし、結果オーライってやつじゃない？」

ユリウスも優しい表情で頷いた。

「君が成長して戻ってきたのは、僕たちにとっても喜ばしいことだよ。」

「皆さん……。」

スフィアの胸に溢れるのは、再会の喜びと安心感だった。彼女は涙を浮かべながら、皆の顔を見渡した。

「本当に……よかった。」

「さあ、これからが本番だ。」

カインが力強く言った。

「俺たちは、この旅で力を取り戻した。そして、次に挑むのは――魔王だ。」

その言葉に、皆が力強く頷いた。

「スフィア、これからも一緒に戦おう。」

ユリウスが柔らかく言葉を添えた。

「はい……よろしくお願いします。」

スフィアは全身で決意を感じながら、仲間たちと共に歩き出した。魔王討伐の旅は、いよいよ本格的に始まる。