死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

第1部 死にキャラに転生したはずなんだけど

20

スフィアが目を覚ましたのは、ドラゴン討伐から数日後の穏やかな朝だった。部屋の窓から柔らかな日差しが差し込む中、彼女はまだ完全に覚醒しきらない意識の中で、ぼんやりと天井を見上げていた。

（私……どうして生きているんだろう……。）

スフィアは自分がドラゴンとの戦いで街を守るために結界を張り、意識を失った記憶を辿っていた。本来ならば、自分は「役目」を果たし命を落とすはずだった。しかし、現実は違った。

冒険者たちがスフィアの目覚めを知るや否や、次々と部屋に駆け込んできた。カインが真っ先にスフィアのベッド脇に立ち、レオン、エリオット、ユリウスもそれに続く。

「スフィア、目が覚めたんだな。」カインが安堵の表情を浮かべた。

「よかった、本当によかった……！」レオンが泣きそうな笑顔を見せる。

「無事で何よりだ。」エリオットは冷静な口調だが、声には微かな震えが混じっていた。

「君が生きていることが……僕たちにとって何よりの救いだよ。」ユリウスが静かに微笑む。

スフィアは彼らの優しさに胸がじんと熱くなる一方で、胸の奥に広がる違和感を押し殺せずにいた。

（皆さんの態度……いつもと何か違う。あの時も、まるで私がいなくなることを前提にしていたような……。）

スフィアは小さな声で問いかけた。

「皆さん……何か隠していませんか？」

その言葉に、4人の表情が一瞬だけ固まった。スフィアはその反応を見逃さなかった。

「お願いです。隠し事をしないでください。」

彼女の真剣な声に、カインが視線を伏せ、エリオットが重い口を開いた。

「……スフィア、君には知らないままでいてほしかった。でも、今なら話してもいい時なのかもしれない。」

エリオットの言葉に他の3人が頷く。ユリウスが続けた。

「僕たちは……未来から時間を巻き戻したんだ。」

その衝撃的な言葉に、スフィアの目が見開かれた。

「未来から……？それって……どういうことですか？」

レオンが絞り出すような声で続けた。

「僕たち、君を……喪ったんだ。君があのドラゴンとの戦いで命を落とした未来を経験した。」

「その時、俺たちは誓った。絶対にお前を守ると。」カインが力強く言葉を継ぐ。

スフィアは言葉を失い、ただ4人の顔を交互に見つめた。

「だから、ユリウスとエリオットが協力して、時を戻す魔法を使った。何度も……繰り返してきたんだ。」レオンの声は震えていた。

「スフィア、僕たちは君を守るためだけにこの時間を繰り返している。」ユリウスの瞳には揺るぎない決意が宿っていた。

スフィアの胸に広がる感情は、驚きと混乱でいっぱいだった。

「そんな……私を守るためだけに……？皆さんの未来は……？」

「そんなものはどうでもいい！」カインが強い声で遮る。

「君がいない未来なんて、考えるだけで耐えられない。」エリオットが静かに呟く。

「僕たちは君のいない日々を一度経験した。それがどれだけ耐え難いものか……君には分からないだろう。」ユリウスがスフィアの手をそっと握る。

「だから、僕たちは君が無事でいる未来しか望まない。どんな犠牲を払っても。」レオンが目を伏せながら囁いた。

その言葉に、スフィアは胸が苦しくなるのを感じた。

（私は、皆さんの未来を幸せなものにするためにここにいるはずだったのに……それが、私を守るために犠牲を払う結果になるなんて……。）

「でも……皆さんがそんなふうに生きていくのは……間違っています！」スフィアは涙を流しながら叫んだ。

しかし、カインは彼女の言葉を否定するように首を振った。

「お前がどう思おうと関係ない。俺たちはお前を守る。それだけだ。」

「君が生きていることが、僕たちの幸せなんだ。」ユリウスが穏やかに語った。

スフィアは彼らの言葉を聞きながら、彼らの執着と愛情がどれほど強いものかを痛感した。