上 下
4 / 10

第4話「見た事もないモンスター」

しおりを挟む
「じゃあこのアイコンをタッチしてみてくれ」

 メニュー画面を開いた俺は、ガチャマークが描かれているアイコンを指さす。
 これがスキルや装備を手に入れるために使われるガチャ機能だ。

 装備の中にもガチャは二種類あり、単純に戦うためにステータス補正がついている装備用のガチャと、攻撃効果などはないがキャラの見た目をよくするために使用される装備用のガチャだ。
 後者は戦うための装備の上から身に付けられる用になっており、上位陣は基本これも装備している。

 もちろんポイントでしかガチャが出来ないのであればプレイヤーは離れていくため、新規が一度ガチャを回せたように何処かの段階でガチャを回せたり、イベントで回せたり出来るようにもなっていた。
 他にも課金をしなくてもゲーム内でポイントを手に入れる方法もあるし、ガチャで出る装備と種類は違うがゲーム内のお金で装備も買える。
 それに、スキルに関してはガチャよりも経験やイベントがメインになるから、重課金をしなくても十分このゲームを楽しめようになっているのだ。

「これだね――えいっ!」

 純恋は自分のメニュー画面を開くと勢いよくガチャマークをタッチする。
 何処かはしゃいでいるように見えるのはそれだけ楽しみだという事だろうか? 
 ここ最近一緒に遊ぶ事がなかったためはしゃいでいる純恋は新鮮だ。
 これから行うガチャでいい物が出て、このはしゃぎようが継続してくれればいいのだが。

 コンマ数秒後、純恋の姿が俺の前から消え去った。
 入手した装備やスキルが他のプレイヤーにバレないようガチャ専用ステージに行ったのだ。

 俺は純恋の後を追うようにガチャマークをタッチする。
 まぁプレイヤーが鉢合わせしないよう別空間に飛ばされるから、同じガチャステージでも純恋と鉢合わせをする事はないんだけどな。

 俺にしか聞こえないガチャステージへ移動するというアナウンスが流れ、すぐに視界が一変する。
 街中だった風景はなくなり、代わりに質素な電子が渦巻く空間になっていた。
 目の前には見上げるくらい大きなガチャガチャ機が置いてある。
 確か七メートルくらいあったはずだ。

『取り扱い方法の説明を希望されますか?』

 声を掛けられたほうを向けば、スーツに身を包む二十歳くらいの綺麗なお姉さんが立っていた。
 残念な事にこれはNPCだ。
 ガチャに関する説明と使用するための手続きを行うのが彼女の主な仕事。

「いや、いいよ。はい、メダル」

 ガチャの使用方法は今更聞くまでもない。

 俺はアイテムウィンドウからメダルを取り出すとそのまま彼女に手渡した。
 このメダルは本来ならポイントで買わないといけないものだが、新規キャラクターにはゲーム開始と同時にアイテムウィンドウに格納されている。
 メダルを使ってガチャを回すあたりが如何にもガチャガチャらしい。

『それでは始めてもよろしいでしょうか?』
「あぁ、頼むよ」
『かしこまりました。では――』

 手続き役のNPCの手から一瞬でメダルが消え去る。
 それと同時に、目の前のガチャガチャ機が大きな音を立てて稼働し始めた。

 今まで何度もした事があるのに、どうしてガチャガチャをする時はこうも胸が高鳴るのだろう。
 いったいどんなスキルが手に入るのか。
 強いスキルが手に入る確率なんて高くないのに、どうしても期待をしてしまった。

 ガチャガチャ機のハンドルが三周回った時、《ガチャッ!》という音ともにガチャガチャ機は止まった。
 ゴロゴロと何かが中から転がってくる。

 ――音が大きくなるに連れて見えてきたのは、銀色に光り輝くカプセルだった。

 それを見た瞬間、安堵ともに少し落胆してしまう。
 銀色という事は当たりでも外れでもない極めて普通のスキルだという事だからだ。

 ちなみに外れは銅色で当たりは金色となる。
 銅色じゃなかっただけいいが、欲をいえば金色が欲しかった。
 金色のスキルは強くて優秀なスキルが多いからな。

 でもまぁ、金色のカプセルが出る確率は五パーセントしかないから仕方がないか。
 確か銅色が三十五パーセントで、銀色がほぼ・・六十パーセントだったはずだ。

 確率的に見ても可もなく不可もなくといった結果といえるだろう。
 さて、肝心の中身だが――。

《スキル:【コンボの盾】を取得しました》

「……なんだこれ?」

 メッセージウィンドウに表示された聞き馴染みのないスキル名を見て思わぬ首を傾げる。

 コンボという事は連続させる事によってボーナス効果がつきそうな名前だが――うん、やっぱりそうか。
 スキル説明を見たところ、予想した通り盾の防御を連続で成功させる事によって防御力が上がっていく効果みたいだ。
 一度でも防御を失敗したら防御力は元通りになってしまうようだが、思ったよりも当たりスキルだったかもしれない。
 少なくとも俺とは相性がよさそうだ。

『お戻りになられますか?』

 スキルの確認も済んだため帰還用のアイコンをタッチすると、NPCが話し掛けてきた。

「うん、元いた場所に戻してくれ」
『かしこまりました。またのお越しを心からお待ちしております』

 深く下げられた頭を眺めていると、俺の体を光が包み始め、また一瞬で景色が変わった。
 中世のヨーロッパ風の建物に囲まれている事から元の位置に戻ったのだろう。

 純恋は……まだいないな……?
 多分ガチャの説明とかを受けているのだろう。
 あまり時間はかからないだろうが、慣れていないから色々と戸惑っている姿が目に浮かぶ。

 ――数分後、辺りの空気が変わったと思ったら純恋が姿を現した。
 その腕には赤ん坊サイズの何かを抱えている。
 どうやら無事にモンスターを手に入れたようだ。

 しかし……なんだ?
 純恋が抱えるモンスターは現実でいう猫のようなものに見える。
 唯一違うのは背中に白い羽が生えている事か。

 俺は今までたくさんのテイマーと戦ってきたし、予め対策を打てるようにテイマーが扱えるモンスターはあらかた押さえている。
 もちろん全ては把握出来ていないが、ガチャで手に入るモンスターに限っては全て押さえていたはずだ。

 なのに――俺はこのモンスターを知らない。

 しかもどう見ても戦えるようには見えないのだが……いったいどういう事だろうか?
 俺は自分が見た事もない弱そうなモンスターを純恋が連れている事に疑問を浮かべるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

『星屑の狭間で』(チャレンジ・ミッション編)

トーマス・ライカー
SF
 政・官・財・民・公・軍に拠って構成された複合巨大組織『運営推進委員会』が、超大規模なバーチャル体感サバイバル仮想空間・艦対戦ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』を企画・企図し、準備して開催に及んだ。  そのゲーム大会の1部を『運営推進委員会』にて一席を占める、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』として、順次に公開している。  アドル・エルクを含む20人は艦長として選ばれ、それぞれがスタッフ・クルーを男女の芸能人の中から選抜して、軽巡宙艦に搭乗して操り、ゲーム大会で奮闘する模様を撮影されて、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』の中で出演者のコメント付きで紹介されている。  『運営推進本部』は、1ヶ月に1〜2回の頻度でチャレンジ・ミッションを発表し、それへの参加を強く推奨している。  【『ディファイアント』共闘同盟】は基本方針として、総てのチャレンジ・ミッションには参加すると定めている。  本作はチャレンジ・ミッションに参加し、ミッションクリアを目指して奮闘する彼らを描く…スピンオフ・オムニバス・シリーズです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界エステ〜チートスキル『エステ』で美少女たちをマッサージしていたら、いつの間にか裏社会をも支配する異世界の帝王になっていた件〜

福寿草真@植物使いコミカライズ連載中!
ファンタジー
【Sランク冒険者を、お姫様を、オイルマッサージでトロトロにして成り上がり!?】 何の取り柄もないごく普通のアラサー、安間想介はある日唐突に異世界転移をしてしまう。 魔物や魔法が存在するありふれたファンタジー世界で想介が神様からもらったチートスキルは最強の戦闘系スキル……ではなく、『エステ』スキルという前代未聞の力で!? これはごく普通の男がエステ店を開き、オイルマッサージで沢山の異世界女性をトロトロにしながら、瞬く間に成り上がっていく物語。 スキル『エステ』は成長すると、マッサージを行うだけで体力回復、病気の治療、バフが発生するなど様々な効果が出てくるチートスキルです。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

処理中です...