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「――あっ! こら! 何妾を無視しようとしておる!」
何やら後ろでギャーギャー言ってるが、相手をしないのが正解だろう。
というか、なんで俺はこんな場所で変な少女に絡まれなければいけないのか……。
俺、そんなに日頃の行い悪くないはずなんだけどな。
「――えぇい、この罰当たりめ! これでも喰らえ!」
「――うがっ!」
突如、俺の後頭部を強い衝撃が襲う。
とても硬い物が頭にぶつかった感覚だ。
こいつ――!
「お前な! いくらなんでも石を投げるな! 後頭部なんてもしもの事があったらどうするんだ!」
俺は慌てて後ろを振り返り、大声をあげてしまう。
しかし、少女の姿勢を見て違和感を覚えた。
少女は右手を振り下ろしており、一見物を投げた後の姿勢に見える。
だけどその手には30センチくらいの扇が握られていた。
扇は全開になっており、まるで今しがた俺に向けて扇いだとでも言わんばかりの形だ。
「何を言っておる、妾は石など投げておらぬ。ただ、ちっとばかしそよ風を送ってやっただけぞ」
「はっ? えっ?」
俺の疑問を肯定するように、少女は石を投げておらず風を俺に向けて放ったと主張した。
石を投げてから俺が振り返るまでに扇を手に持って今の姿勢を取ったとは考えにくい。
どう考えても間に合うはずがないからだ。
だがしかし、ただの風が石のような硬さをもって俺を襲ったというのか?
普通に考えてありえない。
後、万が一――百歩譲ったとしても絶対にそよ風ではない。
「ふふ、まるで鳩が豆鉄砲でも食ったような顔をしておるの」
俺が戸惑っているさまを見て、少女が愉悦に浸るように頬を緩ませる。
どうやら俺の表情を見て楽しんでいるようだ。
正直凄くムカついてしまう。
石だか風だか知らないが、人に痛みを与えておいて謝罪をしないなど人としてどうかしている。
いったいどういう教育をされてきたのか、こいつの親を見てみたいものだ。
「まぁまぁ、そう睨むものではない。妾はお主によい話を持ってきたのじゃ。なのにお主は妾を無視しおった。だから天罰が下ったのじゃよ」
よくものうのうと話せるものだ。
この少女、自分がした事について全く悪気を感じていない。
本当は先程の風うんぬんの話をしたいところだが、下手につつくと調子に乗りそうな節がある。
だけど無視して帰ろうものならまた襲ってくるだろう。
……はぁ、相手をするしかないのか……。
無視する事が出来ない以上このへんてこな少女の相手をするしかなかった。
明日も朝早くから仕事なためさっさと終わらせてもらいたいものだ。
「無視して悪かったよ。それで、話ってなんだ?」
「おぉ、やっと話を聞く気になりよったか! うむ、ちゃんと話がわかる奴ではないか!」
俺が聞く姿勢を見せただけで凄く嬉しそうにする少女。
変人だからきっと学校などで友達がいないのだろう。
……うん、ちょっとだけ相手をしてあげよう。
「……お主今何を考えおった? 勝手に妾の事を馬鹿にして同情をしたのではないか?」
「あはは、まさか。そんな事考えてもないよ」
意外と察しがいい少女だ。
確かに同情をしたのだが、そんな事を口走ればまた暴力を振るわれる気がしたため否定しておいた。
「ふむ、そうか……ならばよい。それよりも、のぉ――進藤彰よ。時を戻せると言ったら、お主はいったい何をする?」
なぜか俺の名前を知っている少女は、ニタァッと不気味さを感じるような笑みを浮かべながら、俺に変わった質問をしてきたのだった。
何やら後ろでギャーギャー言ってるが、相手をしないのが正解だろう。
というか、なんで俺はこんな場所で変な少女に絡まれなければいけないのか……。
俺、そんなに日頃の行い悪くないはずなんだけどな。
「――えぇい、この罰当たりめ! これでも喰らえ!」
「――うがっ!」
突如、俺の後頭部を強い衝撃が襲う。
とても硬い物が頭にぶつかった感覚だ。
こいつ――!
「お前な! いくらなんでも石を投げるな! 後頭部なんてもしもの事があったらどうするんだ!」
俺は慌てて後ろを振り返り、大声をあげてしまう。
しかし、少女の姿勢を見て違和感を覚えた。
少女は右手を振り下ろしており、一見物を投げた後の姿勢に見える。
だけどその手には30センチくらいの扇が握られていた。
扇は全開になっており、まるで今しがた俺に向けて扇いだとでも言わんばかりの形だ。
「何を言っておる、妾は石など投げておらぬ。ただ、ちっとばかしそよ風を送ってやっただけぞ」
「はっ? えっ?」
俺の疑問を肯定するように、少女は石を投げておらず風を俺に向けて放ったと主張した。
石を投げてから俺が振り返るまでに扇を手に持って今の姿勢を取ったとは考えにくい。
どう考えても間に合うはずがないからだ。
だがしかし、ただの風が石のような硬さをもって俺を襲ったというのか?
普通に考えてありえない。
後、万が一――百歩譲ったとしても絶対にそよ風ではない。
「ふふ、まるで鳩が豆鉄砲でも食ったような顔をしておるの」
俺が戸惑っているさまを見て、少女が愉悦に浸るように頬を緩ませる。
どうやら俺の表情を見て楽しんでいるようだ。
正直凄くムカついてしまう。
石だか風だか知らないが、人に痛みを与えておいて謝罪をしないなど人としてどうかしている。
いったいどういう教育をされてきたのか、こいつの親を見てみたいものだ。
「まぁまぁ、そう睨むものではない。妾はお主によい話を持ってきたのじゃ。なのにお主は妾を無視しおった。だから天罰が下ったのじゃよ」
よくものうのうと話せるものだ。
この少女、自分がした事について全く悪気を感じていない。
本当は先程の風うんぬんの話をしたいところだが、下手につつくと調子に乗りそうな節がある。
だけど無視して帰ろうものならまた襲ってくるだろう。
……はぁ、相手をするしかないのか……。
無視する事が出来ない以上このへんてこな少女の相手をするしかなかった。
明日も朝早くから仕事なためさっさと終わらせてもらいたいものだ。
「無視して悪かったよ。それで、話ってなんだ?」
「おぉ、やっと話を聞く気になりよったか! うむ、ちゃんと話がわかる奴ではないか!」
俺が聞く姿勢を見せただけで凄く嬉しそうにする少女。
変人だからきっと学校などで友達がいないのだろう。
……うん、ちょっとだけ相手をしてあげよう。
「……お主今何を考えおった? 勝手に妾の事を馬鹿にして同情をしたのではないか?」
「あはは、まさか。そんな事考えてもないよ」
意外と察しがいい少女だ。
確かに同情をしたのだが、そんな事を口走ればまた暴力を振るわれる気がしたため否定しておいた。
「ふむ、そうか……ならばよい。それよりも、のぉ――進藤彰よ。時を戻せると言ったら、お主はいったい何をする?」
なぜか俺の名前を知っている少女は、ニタァッと不気味さを感じるような笑みを浮かべながら、俺に変わった質問をしてきたのだった。
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