公爵夫人の俺はもうすぐ病気で死ぬので『最期に閣下が元カレさんに抱かれている痴態を見たい』と夫に頼むと……か、か、叶えてくれた?! 

天上青(ゼニスブルー)

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3.決行の夜(※?)

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―――そして、ついに今夜、決行される!

閣下アレンってば、ほんと仕事が早いな。きっと俺がいつ死ぬかも分からないから早く実行に移してくれたんだな。

俺は、夫婦の寝室にあるウォークイン・クローゼットの中で息を潜めていた。心臓の鼓動が少し早くなっているのを感じる。

こんな風にドキドキするのは、いつ以来だろうか?

クローゼットと言っても、その広さは前世でいうところの6畳間ほど。中を整理すれば、長椅子や小さなテーブルくらいは楽に置けた。そんな広々とした空間の中、身をひそめ暗闇に沈み込んでいる。

鍵穴から外を覗けば、寝室の一部がわずかに見える。そのかすかな視界が、俺の緊張感をさらに高めていく。まるで、何か秘密の儀式が始まる前の静けさだ。そうだ、夜の儀式――その瞬間が近づいてくるにつれ、妙に心が浮き立っている自分に気づく。

長椅子に座りながら、再び鍵穴を覗く。ほのかな明かりに照らされた部屋の一部が、普段俺と閣下が使っている大きなベッドを浮かび上がらせている。

ああ、もうすぐここに、彼らが来るのだ……。

「イーデン様、お茶をお持ちしました」

「あ、ありがとう」

従者のマルセルが、静かに温かい紅茶を差し出してくれた。
その動きはまるで影のようで、食器が触れ合う音さえ一切聞こえない。こんな時まで、まるでそこに存在しないかのように気配を消し去り、忠実に職務を全うする姿は、ただ見事と言うほかない。

「あの、イーデン様」

「なんだい、マルセル?」

「実は閣下の命で…。今宵の『あの最中』には、私もここに」

「……は?」

「イーデン様のお傍に侍るようにと」

「え、ぇ、え?」

「そのように、仰せつかっております」

「な、なんでぇ?」

「おそらく、イーデン様のお体を気遣っての事かと…」

刺激が強すぎて、ぶっ倒れるとでも思ったんだろうか?うん、それは充分にあり得る話だな。

「そ、そうなんだ…?」

うん、まあ。仕方がないか。

「マルセルはそれでもいいの?」

「はい」

「でも、ライアン・リードは君の…」

君の恋人だろう?……そう言いかけたが、さすがに口を噤んだ。
無粋すぎる、そんなことは言わなくても分かっている。

「実は、私も。今宵を楽しみにしておりまして…」

ふふふ…と、彼は心底楽しそうに笑った。その笑顔に、一瞬驚きを隠せなかった。普段のマルセルは、仕事を淡々とこなすだけで、感情を見せることがほとんどない。こんな楽しそうな表情を浮かべる彼を見るのは、初めてかもしれない。

マルセルは、この国ではごく普通に見かける茶髪に茶色の瞳を持つ。俺や閣下アレンも同じだ。
外見だけで言えば、何の変哲もない地味な男だが、彼の存在感の薄さは驚異的だ。まるで空気のように、そこにいるのに誰にも気づかれない。意図的に周囲へと溶け込むその巧妙さは、並みの技ではない。

ある時、城内で何人かの従者が集まっている中、俺がマルセルを探したことがあった。しかし、彼の姿はそこにあったにもかかわらず、誰も気づいていなかったんだ。

俺だけが、ほんの一瞬、その存在を感じ取ったが、次の瞬間にはもうどこにいるのか分からなくなる。影のような空気のような存在だ。
まるで、彼がそこにいること自体が幻のように思えてしまうほどに。

彼は俺の従者でありながら、護衛も兼ねている。

ライアン・リードの恋人になれるだけの人物だ、よく見ればその美しさは充分に感じられる。だが、よく見ないと分からないし、そもそも彼は周囲にその機会を与えない。美人というよりも、どちらかと言えばカッコいい系の容姿をしている。

その洗練された顔立ちと無駄のない動きには、俺としても自然と好感を抱かざるを得なかった。

好感を持ってはいたがライアン・リードの恋人なのだからと、邪な思いを持たぬよう、自制していたのだ。それに俺は人妻だし、ね。だからなるべく意識しないよう、気を付けていた。

まさか、彼も俺と同じ、人の性交セックスを見てみたい(=美形限定)という性癖を持つのだろうか?


***


ほどなくして、閣下アレンに導かれ、ライアン・リードが姿を現した。

予想以上に背が高く、肩幅も堂々としている。アレンと同じくらいの体格だろうか。彼がそこに立つだけで、空間が一瞬にして明るさを帯び、華やかな雰囲気が漂い始めた。室内は薄暗いはずなのに、まるで彼自身が光を引き寄せているかのようだ。

ああ、やはり壮絶に美しい。言葉を失うほどに圧倒的だ。

深い紫色の髪がわずかな光を受けて艶めき、まるで絹のように滑らかだ。その濃密な色彩は、宝石でも真似できない。瞳もまた、驚くほど澄んだ紫色で、見る者の心を捕らえて離さない。彼の肌は陶器のように滑らかで、頬の線は彫刻のように整っている。美しさと色気が絡み合い、ただ立っているだけで目を奪われる。

まるで、生きた宝石だ。
いや、それ以上の存在感を持つ。ライアンは、ただ美しいだけではなく、その全てが非現実的なまでに完璧だった。

話し声は聞こえない。防音結界を張っているのだろう。

しばらくすると、二人は激しいキスを始めた。漏れるような声が聞こえる。結界は解除したらしい。

「ぅっ、んんっ」

最初は触れるだけの軽いキスだったけれど、何度も角度を変えて繰り返すうちにどんどん激しくなっていく。そのうち舌を出して絡め合い、貪るように求め合っている。

「「んふぅ、じゅる、れろぉ、ふ、はぁっ」」

「あぁ、アレン」

ライアンが堪らないとばかりに、アレンの名前を囁く。閣下アレンの首の後ろに手をまわし、動けないように固定しながらの大胆なキスは、まるで外国映画のワンシーンみたいだ。

ライアンが閣下アレンの舌を強く、ちゅうっちゅぱっっと、大きな音を立てて吸っていく。

あぁ、やっぱりこの二人は絵になるな。すごい腰に来る、堪らない。

ライアンの口から溢れた閣下アレンの舌を追いかけるようにちゅっちゅっと啄むと、ライアンは彼を強く抱きしめて、喉の奥まで届くくらい舌を突き入れた。

「「ん、ん、んふぅ、じゅる、ふっ、うぅっ」」

ようやく離れた時には二人の間に唾液の糸ができていて切れてしまった。

名残惜しくてもう一度軽く触れ合わせるようなキスをしてからお互いに抱きしめ合う。

しばらくそうしていたのだが、やがて体勢が変わった。ライアンはベッドの上で全裸のアレンの脚の間に、頭を突っ込んだのだ。

多分、蜜蕾アナルをお口で攻めようとしている…?
おぉ、すごい。なんていやらしいんだ。

「ん、ん、ふっ、はぁぁぁーっ」

「うふふふ。アレンは、今でもここが良いんだね?」

「あぁっ」

次第に暗闇にも目が慣れてきた。ベッドサイドの灯りで、ほんのりと見えるだけだが、何をしているのかは充分に分かる。

閣下アレンは何度も達した。

「んぁ…あ、あ、あ」

「続けてイくの、お好きでしょう?」

そう言いながら、今度は指で蕾内なかを刺激しているようだ。

クチュクチュといやらしい音がする。そのたびにアレンは腰を動かして悶えた。

「まだまだイけそうですね?」

さらに激しくなる水音に比例して、アレンの声も大きくなる。

「ああああああ~~!!」

そしてひときわ大きな声で叫んだあと、ぐったりとした様子でベッドに沈んだ。

「ふふ。可愛いですよ、愛しい人」

ちゅっとキスをする音がしたあと、また激しい行為が始まったようだ。

寝具でよく見えないが、正常位で挿入されている。
さっき、存分にほぐしていたから、痛みもなくたやすく挿入はいったのだろう。

ぱんっ…ぱちゅ、ぱちゅ…

「あ…。な、かぁ、までぇ…んあぁつ」

「アレン、可愛いよ」

「なか、がぁ…。き、きも、ちぃ…ぅ…」

あぁ、すごい。美形二人の情事セックスはやっぱりすごい!

「今夜はたくさん注いであげるね」

そう言いながらライアンは薄くんだ。
その笑顔は、まるで全てを見通しているかのような落ち着きと、自信に満ちた優雅さを感じさせる。

見る者を安心させながらも、どこか挑発的で、一瞬たりとも目を逸らせない。

「ああ、すごいよ、アレン。締め付けがキツイ…」

「う、うぅ…。そのま…ま、…つづ、け…て…」

二人は繋がったまま体勢を変えた。次は閣下アレンが上になる…騎乗位だ。
 
ライアンが下からゆっくりと突きながら、少し焦らすように、大きなストロークで動く。

「あ、あぁ、ぃい…はぁぁ、んぁ」

「くぅ! 締まる! 搾り取られそうだね。動くよ」

ライアンは閣下アレンの腰を掴み、激しく突き上げた。パンパンと肉同士がぶつかる音が響く。

閣下アレンは髪を振り乱し、快楽に溺れている様子だ。しかし、まだ足りないのか、自ら腰を動かしている。その動きに合わせてライアンも動く。
二人の動きが激しくなるにつれ、結合部から聞こえる音も大きくなってきたようだ。アレンも小刻みに腰を振る。

「んっ、ふぅぅんっ」

ライアンが下からえぐるように突いていく。

「んぁっ、んぅっ。す、すご、いぃ……」

ああ、最高だ。こんな閣下アレンは見たことがない。素晴らしい。目の前の淫らな閣下アレンと、それを見て興奮する俺。

そして、そんな俺をすぐ隣でマルセルが凝視している―――。

そう、この状況全てが、とてつもなく俺を奮い立たせた。

俺の逸物はパンパンに腫れあがっていた。過去最大の大きさだ。多分、今世で一番といってもいいくらいに。

扉の向こうでは、閣下アレンがさらに上の快感をねだるように腰を動かし続けている。やがて二人とも限界が近づいてきたようで、動きがより激しくなる。……そして、ついにその瞬間が訪れたかのようだ。

「ん、ん、ん、ふぅっ。は、ぁ」

閣下アレンが先に果てた。しかし、それでも動き続ける二人。

「っぅっ! まだ、…や、やめぇな、いぃ、でぇ」

激しい。まるで獣の交尾のような激しさ。それに応えるように、さらに淫らになっていく体。そして、ライアンの腰使いは止まらない。……なんつー、スタミナだっ?!

「はぁ、はぁ、はぁ、あぁ」

閣下アレンが息を乱しながらも、規則正しく腰を振る。二人とも、どんな体力してるんだ。

「ぃ、イぅ、ぐぅうっ」

「俺もだよ。一緒にイこう、アレン」

ラストスパートをかけるかのように、高速抽挿ピストンが始まった。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

「出るよ! 全部受け止めてね」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

あまりの快楽に、閣下アレンが白目を剝いている。エロすぎる。

「イくぅ、ぅぅううっ」

ビクビクと痙攣しながら達する閣下アレン

「あぁぁ、ら、ぃ、ぁ……」

閣下アレンが涙を流しながら、締まりのない顔をしている。そんな表情もエロい。最高だ。こんな彼は見たことがない。まるで別人みたいだ。これが本当の姿なのだろうな。

「ら、ら、いぃ、ぁ、ん。……愛し、てる……」

「私もですよ。アレン」

「ずっと、好き、だった……」

アレンがはらはらと泣いている。
うん。うん。知ってたよ。だからさ――。

あなたの心から幸せな痴態を、死ぬ前に見たかったんだ。


ああ、やばいな、俺の腰のあたりは熱く熱を持っている……ずっと疼いたままで、身体の奥深くから、なにかが湧き上がる。

まるで溶岩が噴き出すかのように胸を焦がし、心臓が高鳴る。情動の渦が俺を包み込み、思考を揺さぶる。

これは、なんだ? すごく久々の高揚感……。

「う、くっ……! はぁ、はぁ」

まずい、声が漏れてしまった。でも我慢できない…。身体の内側に燻ぶる塊を解放しなきゃ、あぁぁ。

熱の渦が波のように押し寄せ、全身を満たしていく。この感覚は、まさに生きている証のようで、何か大きな運命が待ち受けているかのような予感が、俺を掴み、さらに高く、さらに遠くへと誘うのだ。

これは、これは……

「うぅっ、くっ、んあぁっ、あーーっ♡」

俺は、射精してしまったのだった。



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