職場が悪役令嬢化した～後輩が職場を乗っ取ってお局化した話～

３ 悪役令嬢化前 急変

人不要説

あなたは、ここまでの話を読んで、ひとつのことに気付くかもしれない。
そう、それは、｢３人必要なのか｣説だ。

古株である私に仕事が集中し、
シラコちゃんは研修待ちで仕事がなく、
サワラさんの退職のあとの後釜はいない。

実は、上司タチウオさんが一人で抱えている仕事がかなりあるのだ。
人がごっそり入れ替わったときにタチウオさんが引き上げた仕事達は、部下の成長に合わせて振り分けられることになっていたが、人材が安定しないためずっとタチウオさんが抱え続けていた。
今は、優先順位の低い仕事を保留していることもあり、仕事量から見れば確かに３人は必要になる。
けれど、シラコちゃんが週３出勤で、ほぼ私一人で３ヶ月ほど回している状態になると、通常の会社では一人では無理でも二人ならいけるのではないかという話になってくる。

派遣会社の担当と、更新の書類をやりとりしながら、「シラコちゃんってどうなのかな。今後も来れるのかな」と聞かれた。
「この状態だと最悪、派遣会社を変えるとか言われるかもしれない」
人を減らしたり、今探している新人を別の会社に頼むということも充分ありえることは私にも理解できた。
「分からないです」
と正直に答えた。
本当に分からなかった。

シラコちゃんのことを相談した際、タチウオさんに、
「派遣会社の担当にも言われたんですけど、これだけ休む人がいたら、数字だけ見て、（タチウオさんより上の人に）人を減らすって判断されることもあるわけじゃないですか」とぶつけてみた。
この部署は人が安定しないまま２年近く経過している。
このペースで休み続ける人がいても問題が発生しないなら、充分考えられることを説明すると、温厚なタチウオさんが珍しく憤った。
「自分がどれだけ仕事抱えてると…」
その言葉で、この会社は、そしてこの上司は、通常ではないらしいと悟った。
もし、人を減らされる可能性について周囲に対策していたら、「そこはちゃんと言っているから」と答えただろう。
「報連相の鬼」が初めて気付いたような顔をしていたので、「休みが多い派遣がいる影響」の可能性を一ミリも考えていなかったのだ。
私は、「上にどんな風に判断されてもシラコちゃんに休んでいいって言えるのか」と聞きたかったのだが、私の真意は届かなかった。
「何があってもそんなことさせない」
というようなことを宣言していた。

「なんでそんなひどいことが言えるんだ」という響きがこもっているような気がしたが、気のせいということにした。

ただ、後日派遣担当が軽く怒られてしまった。