俺は彼女に逆らえない

柊 さくら

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俺が目にしたもの

始まりの音

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それから数日が経った
俺はベッドに入り、眠ろうとした寸前、窓から輝夜が入ってきた。

「助けてください…!輝!!」

身体中汗まみれの中、輝夜は慌てた様子で言ってきた。そんな彼女に向かって俺は冷静に答える。

今になって思えば、これが全ての始まりだったのかもしれない

「そんなに慌ててどうした」

「いいから来てください!」

腕を引っ張られる。俺は内心、緊急事態ということを悟っていたため特に抵抗をせずに引っ張られるがままに輝夜が向かうところに行った。

どうやら、着いたらしい。
まず一言。恐怖、だ。
ここは山の中のはず。なのに、どうしてか一つの妖怪のようなものを中心として木が倒れていたりと、とても山の中とは思えないほど木がなくなっていた

「どいうことだ…。これ…」

「彼の名前は悪鬼あっき。その周りを飛んでいるのが遊火あそびび。」

ていうか、あの宙に浮く炎も妖怪なんだな…

「悪鬼は聞いたことあるけど、遊火は初めて聞くな…」

「この辺りの木のほとんどは遊火の炎で燃やされ、悪鬼の力で倒されているから輝の力でなんとかしてほしいなって…」

なんとかしてほしいって言われても困る。俺だってまだ10歳の子供だ。そんな子供に一体何ができるというのだろうか

ギロッ。悪鬼に睨まれ、そうして俺はあの日のように、逃げ回った。息を切らし、死を覚悟した。今回は本当に殺される…!村まで逃げた。でも、あの日のように撒くことはできなかった

行き止まりに直面した
悪鬼は手に持っていた木の棍棒を大きく振り上げ、そして俺に向かって振り落とした。遊火と呼ばれる宙に浮く火の玉も俺をめがけて突進のごとく迫ってくる

(さすがに、もう死んだかな)

距離は1mといったところか。
誰かが助けに来てくれるんじゃないかと思っていたがこの距離じゃもう、諦めるのが筋というものだろう
俺が何かしてくれると信じてくれた輝夜には悪かった。俺、ここまでみたいだ

「諦めるには少し早いんじゃないか?少年!」

その瞬間、俺の前に青透明の結界のようなものが張られた。それにすぐに対応できずに攻撃した悪鬼の木の棍棒は一瞬にして壊れ、遊火もロウソクのように溶けるように消えてなくなった。この場には今、武器のない悪鬼と俺と輝夜と、謎の声がいる

「僕は君みたいな妖怪が嫌いでね。
さっさと消えてくれないかな?悪鬼。」

その言葉は文字では表せないほどの強い威圧のようなもので悪鬼もその言葉に怯えている。だが、引くに引けないのか悪鬼はその場で声の主を探す

このままじゃ埒が明かないと悟ったのか謎の声の主が姿を現した。その姿を見るなり、悪鬼はすぐにその場から姿を消した

引くに引けない状況じゃなかったのか

「大丈夫かい?怪我とかはないかい?」

「え?あ、あぁ。大丈夫…です」

「そうか、それならいいんだ」

辺りを見回し、状況を確認しようとする妖怪であろう彼は輝夜を見るなり地に左膝をつけ

「輝夜姫!貴方様の前で無礼な振る舞い、大変申し訳ございません!」

…は?

「気にしてないからいいです。
それに、貴方は彼を助けようとしたんでしょう?謝罪なんてする理由ないじゃないですか」

「ありがとうございます」

その後、俺の方へと向かって来て彼は俺の右手に手をかざして

「僕の力を君に託そう。5割くらいの力だけど、まぁ許してくれ」

その後、彼は空を飛び去って行った

「どういうことか説明、頼んでいい?」

俺は状況が飲み込めなかった。だからこそ輝夜に説明を頼んだ

「彼は犬神。上級妖怪。悪鬼と遊火は下級妖怪。私は全妖怪の姫。
下から、下級、中級、上級、最上級」

うわー。すげー適当だー。でも、何となくわかるのがすごい。つまり、こいつに逆らう奴は輝夜のことが憎いヤツらって事でいいのかな?反逆軍とでも言おうかまぁ、そのほかの説明がないから、よく分かんないけど

「俺は、輝夜に付き合うよ」

そうしておいた方がいいだろう。
なにせこいつは全妖怪の姫なんだから
俺はそんな彼女の婚約者だからそういうしかなかったっていうのもある
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