上 下
53 / 57
幼女と邪神とユキ

幼女と邪神とユキと二日酔い

しおりを挟む

 朝の日課である鍛錬をしているとシロとミドリが起きた気配がした。
 切りの良いところまで鍛錬できたので戻るとしよう。
 
「むじゅ、ねーね、くちゃい」
「……くさい」

 戻ってみると酔いつぶれて寝ているクレバスをシロとミドリが突いていた。
 近寄って嗅いでみると確かに酒臭い。
 
 寝たまま吐いてないよな?
 
「それは大丈夫か」
「あ、にーに! おあよー!」
「……ぉはよ」
「おう、おはようさん」

 ユキも起きてはいるようで、酒臭さに顔をしかめていた。
 昨日、どのぐらい飲んだか確認したところ1樽分ぐらいは飲んでいたようだ。
 
「ぬぐぅ……なんじゃぁ、頭が割れる……」

 今にも死にそうな声で頭を抱えながら声を上げるクレバス。
 間違いなく二日酔いってやつだろう。
 
「ねーね! おあよー!」
「のじゃっ……おはようなのじゃ……シロよ、あまり大きな声を出されると頭に響くのじゃ……」
「どしてー?」

 恨めしそうにクレバスは俺を見た。
 自分の酒の飲める量ぐらいは自分で管理してくれ。
 
「全員起きたことだし朝飯にするか」
「めし!」

 シロが勢いよくベッドから飛び降りてリビングへと走っていった。
 本当に朝から元気だなぁ……。
 
 頭痛に悶ているクレバスと二度寝をしようと毛布を整えているミドリとユキ。
 今日は二度寝をして良い日ではないので酷だが起きてもらおう。
 
 我が家は基本的に俺一人で家事を回しているため、やることはないんだが正しい生活リズムを身に着けさせるため二度寝は週に2日としている。
 こっちをチラチラと見ながら毛布を整えているのをみるとミドリも二度寝をしていい日ではないってことはわかっているみたいだ。
 
 ユキはミドリがやっているのを真似しているだけだろう。
 
「はい、回収」
「……むー」
「ん、私も?」

 ユキとミドリを両脇に抱えてベッドから降りる。
 未だにうつ伏せでピクリとも動かないクレバス。
 ……寝台の上に水を置いとくか。
 
「動けそうになったら来いよー」
「のじゃー……」

 魔法を使えば簡単に動けるようになるだろうけど、あえて使わないでクレバスがどうなるか観察してみよう。
 
 リビングへと向かうとシロが着席して待っていた。
 早く飯を寄越せと言わんばかりの表情で俺たちを見ている。
 
「歯磨きと顔は洗ったのか?」
「ぎくっ」

 シロは分かりやすく声に出した。
 無言の圧力をかけていると、いそいそと椅子から降りて洗面所へと向かった。
 ユキとミドリを床に降ろして洗面所へと向かわせる。
 
 よし、今のうちに朝飯をテーブルに並べてしまおう。
 作っておいたサラダとベーコンと目玉焼きが乗ったトースト。切っただけのフルーツを盛り分けて置いていく。
 
「……おねえちゃ、ちゃんとみがく!」
「ごはんー……」
「……みがかないと、ごはん、たべれなくなる……おにいちゃ、いってた」
「みがく!」

 洗面所の方から何やら聞こえてきた。
 そんな事言ってたっけ……?
 ミドリに虫歯の説明をしたときに言ったような言ってないような。
 
 よく覚えているなぁ、と感心しながら洗面所から響く声を聞いてるとクレバスが顔をしかめながらリビングへ来た。
 
「水飲んだら少し楽になったのじゃ……」
「そうか、よかったな」
「妾も朝の身支度するのじゃ」

 よたよた、と歩いて行くクレバスと入れ違いにシロたちが帰ってきた。
 クレバスを除く全員が席についたが折角なのでクレバスも待つか。
 
 しばらくすると戻ってきて席についたので全員で朝飯を食べ始めた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

気がついたら異世界に転生していた。

みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。 気がついたら異世界に転生していた。 普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・ 冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。 戦闘もありますが少しだけです。

処理中です...