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幼女と邪神とユキ

ぼっちと邪神と晩酌

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 なんかの事情で復活されても困るので死体を亜空間に放り投げて家に戻った。
 
「どうじゃった?」
「転生者だった。あとよくわかんないパシリができた」
「ふむ、なるほどのぅ。結界を破壊できん時点で雑魚だと思っておったがのう……」
「放置しても良かったかもな……これ、戦利品」

 絶対切断の剣とやらをクレバスに渡す。
 剣に込められた神力を使って切りつけたものを必ず切断する仕組みらしい。

「この神力は……成り立ての新神じゃのう。質が荒すぎるのじゃ」
「そんなのも分かるのか」
「うむ。なんとも言えんが……神々がお主を狙っているようじゃのう」
「……結界を強化しておくか」

 どこに居るかもわからない存在を攻撃できるほど強くはないから、結局は守りを固めるしかない。
 結界に俺が使えるだけの神力を練り込んでおこう。
 

「皆は寝たのか?」
「ぐっすり寝ておるぞ」
「そうか。久しぶりに酒でも飲むか?」
「――あるのか!?」

 クレバスが驚きながら立ち上がった。
 そういえば出したことなかったっけ……?
 
「果実酒と密造酒ぐらいしかないが……」
「よいぞ、よいぞ! 妾は果実酒をもらおうかのう!」
「じゃあ俺もそれでいいか」

 意図して作ろうとしたわけではなく、気がついたら果実が酒になっていた。
 それを発見して研究してたら作れるようになったわけだ。
 
 ただ、残念なことに飲めるようになった頃には毒が効かない体質担ってしまっていた。
 酔うことはできない。
 
「ツマミはどうするのじゃ?」
「乾き物がある。干し肉ぐらいだが」
「うむっ! それだけでも満足じゃ!」

 寝室の方に酒の匂いと干し肉の香り、話し声が行かないように空間を遮断しておく。
 シロたちには悪いがこれは大人の特権ってやつだ。
 
「っ、かぁー! 久々に飲む酒はうまいのう!」
「口にあって何よりだ」

 酒を飲んでは干し肉を齧るクレバス。
 そんなにハイペースで飲んで大丈夫なのか……?
 
「むふふふ……心地よいのう……」

 クレバスの頬が紅潮して上機嫌になっている。
 言わんこっちゃない。
 
「のう、のう、のう。シュウや。お主は鈍すぎるのじゃ」
「これが絡み酒ってやつか……確かに鬱陶しいな」
「なんじゃとー!? 妾の話をよく聞くんじゃー!」

 なるほど。これ以降はクレバスに酒はあまり飲ませないようにしよう。
 
 向い合せで座っていたはずがいつの間にか隣りに座っているクレバス。
 俺に腕にくっついて絡みを続ける。
 
「妾はのぅ、寂しかったのじゃ。五千年も封印されておったからのう……」
「そうか」
「じゃがのぅ、お主と過ごすにつれて、それも薄れてきてのぅ……」

 果実酒を飲みながら話すクレバス。
 座りながらフラフラとしているから酔いが限界なのだろう。
 
「こぬぉう……ちゃんと妾の話を聞いておるのかー?」
「ああ、聞いてるぞ」
「うむ! ならよい! それでじゃの……?」

 フラフラとしながら話を続けるクレバス。
 これは酒を飲ませたのは失敗だったのかもしれない……。

 ――クレバスの話は酔いつぶれて眠るまで続いた。


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