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幼女と邪神とユキ

幼女と邪神とユキとBBQ

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 バーベキューで焼くものを調達し終えた俺とクレバスはリビングに戻ってきた。
 シロの髪が上手に三つ編みされており、その姿をミドリが誇らしげにしてユキが小さく拍手をしている。

 ちなみにシロは自分が褒められていると勘違いしているのか照れて頬を掻いている。
 なんだこの空間。

「戻ったぞー」
「にーに! にく!」

 待ってましたと言わんばかりにシロが飛びついてくる。
 小脇に抱えててたクレバスを地面に落とし、シロを受け止める。

「そうだな、野菜も食おうな?」
「やだ!」

 平常運転なシロを肩車し、魔法で落ちないように固定する。
 野菜を嫌うところろいい、徐々にクレバスに似てきている気がする。

 三つ編みとシロが騒ぎ出すのを抑える役目を完遂したミドリの頭を撫でる。

「へへへ……」

 砕けた表情で笑い、嬉しそうにするミドリ。
 左手で抱き上げて二人のいつも通りのポジションの完成である。

 シロとミドリに関しては何をしてほしいとかは分かりやすいんだが……ユキは会ってそこまで日が経っていないから何を考えているか読むのが中々難しい。
 2人のことを羨ましそうに見ていたので家族間のふれあいに飢えているのだろうか?

 右手に持っていた袋を空間に収納し、ユキを撫でる。
 ミドリとは反応が違って顔を赤くして俯いてしまった。
 恥ずかしがっているのだろうか。

「ユキ、飯食いに外行こうぜ?」
「ん……」

 小さく頷いて立ち上がった。
 前で手をもじもじとさせている……あぁ、何か記憶にあるなって思ったら最初の頃のシロだ。

「ほらよ。手、繋ぐか?」
「……うん」

 俯いたままではあるが差し伸べた右手を取ってくれた。
 クレバスが小さな声で「妾の場所が……」と呟いていたが気にしないでおこう。

 どうせ、こういう時のクレバスは俺の心を読みに来ているのでメッセージを送っておこう。
 おい、クレバス。ユキの逆の手繋いでやってくれ。

「仕方ないのう……」

 渋々とユキの俺と繋いでいる逆の手を取る。
 肝心なユキは驚いていたがすぐに笑顔になった。

「こう見ると家族みたいじゃのう!」
「何言ってんだ、家族だろ」

 そうじゃの。とクレバスが言った。
 全員仲良く手を繋ぎながら中庭に向かうとしよう。

 頭に乗せているシロの腹減ったコールが大きくなってきたのでな。




「この辺でいいか」

 一定の長さに切り揃えられた芝生が生えている中庭の真ん中らへんだ。
 シロとミドリを下ろして空間から袋と焼き台を取り出す。

 炭を使って焼くのもいいんだが今回は魔力を通すと熱を発するホットプレートみたいなので焼こうと思う。
 シロとミドリに熱遮断の結界を張って万が一、プレートに触れても問題ないようにする。

 ユキには熱気を冷気に変換する結界を張っているので問題はない。

「よし、最初は野菜だな」
「やだ! にく!」
「……おにいちゃ……やさい……」
「何を言っておる、ここは肉じゃろう!?」

 困った。意見が割れてしまった。
 いつもだとここでじゃんけん大会が始まるんだが、今日からはユキが居るため人数が奇数。
 つまり、必ずどちらかに分かれるということだ。

「ん……どっちも焼こう……?」
「その手があったか」

 ユキの案を採用し、肉と野菜を半々で焼くことにしよう。
 プレートは幅広で作っているため、広々と肉と野菜を焼いても問題はない。

 早速肉を焼くグループと野菜を焼くグループに分かれている。
 シロとクレバス。ミドリとユキ。どっちがどっちだとは言わなくても分かるだろう。

「ねーね! それそだてる!」
「うむ、目の付け所がええのう。こやつも良い肉じゃ!」
「ユキねぇ……これは、かぼちゃ……」
「ん。これは?」
「それは……ぴーまん……」

 ユキはだいぶ打ち解けているようだ。
 ミドリに見たことのない野菜を聞いている。

 この辺には生えていない野菜ばかりだからなぁ……生えていないというより存在しないというか……。
 品種改良して作った野菜たちだしな。

「ちゃんとバランスよく食えよー。じゃないとデザート抜きだからな」

 シロが驚愕の表情でこちらを見た。
 眉間に皺を寄せるかのように渋い顔をして目を瞑り、ピーマンを齧っている。
 クレバスが入知恵をしたのか肉を乗せて食べ始めた。

 渋い表情から一転、美味しいものを食べている表情へと変わる。

「やさいもわるくない」
「……おいしいよね」

 シロは同時に食べることを覚えたようだ。
 また一つ成長したな。

 ユキはミドリに教えてもらったのか肉をレタスで巻いて食べているようだ。
 もくもくと食べていることから気に入ったのだろうか。

 さて、俺も食べ始めないと全部食われてしまう勢いだ。
 
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