34 / 57
幼女と邪神
幼女と邪神と買い物②
しおりを挟む俺たちは特に目的もなくメインストリートを歩いていた。
紅蓮さんことルナが俺の頭に熱視線を送ってくる。何だ? 何かついてるのか?
……シロが引っ付いてたな。
今の体勢はシロを肩車してミドリを左手で抱っこしているいつもの状態だ。
「なあ、ルナ」
「なっ、なんだい!?」
「さっきから見てるけど何かあるのか?」
こういうのは本人に聞いてしまうのが1番だ。
クレバスが返答に対してワクワクしている。ちょろちょろ動き回るな。
「いっいやぁ、私にも肩車させてほしいなぁ……なんて……」
尻すぼみに声が小さくなっていく。
なるほど。それでシロを見てたのか。
「シロ。赤い人が肩車したいって言ってるけどどうする?」
「いーよー!」
「本当か!?」
あからさまに喜びを露わにするルナ。
これはもしかして危ない人種だったか…?
ルナにシロを渡して頭に装着する。
今まで見てきたキリッとしたルナではなく、どうしようもなく顔をニヤけさせている。
憲兵が見たら職務質問をされそうなニヤけっぷりだった。
「のう、シュウや。こやつ大丈夫か?」
「俺も心配になってきた」
大きく息を吸ったきり吐いていない。
シロは俺とクレバス以外に肩車をされるのが新鮮なのかキョロキョロしていた。
「私はもう死んでもいいかもしれない…」
「だめ! あるいて!」
立ち止まって何かを言っているルナの頭をペチペチと叩くシロ。
問題なさそうなのでちゃんと見ながら放置しよう。はぐれたら困る。
「クレバス、街に行きたいって言ったのはお前なんだからどこに行きたいとかないのか?」
「街を見渡せる高いところとかがあれば行きたいのじゃ」
……街の入り口にある砦に入れてもらうか?
どうするか……あ、いい案を思いついたぞ。
「ちょっと来てくれ」
「なんじゃ? 何かあるのか?」
ミドリを肩車に移行し、クレバスを両手で持ち上げる。
「何をするんじゃ……嫌な予感しかしないんじゃが……」
「喋ってると舌噛むぞ。そぉい!」
「のじゃあああああぁぁぁぁあぁあぁ…………………」
割と力を込めた高い高いだ。
上に投げる際に風圧軽減や防御魔法やらをかけておいたからクレバスなら大丈夫だ。
「たのしそう……」
ミドリが反応した。
さすがにアレをシロやミドリにやるのは気が引けるので、投げても1mにしよう。
……なかなか落ちてこないな。
力を込めすぎたか?
5分ぐらいすると落ちてくるクレバスを視認できた。やっとか。
キャッチするか……。
空から邪神が振ってきたぞ!
衝撃吸収と風魔法を展開して柔らかくクレバスを受け止める。
お姫様抱っこってやつだな。
「街は見れたか?」
「満天の星空が見れたのじゃ。中々無い体験じゃったの」
そうかそうか。
そんな貴重な体験ができたなら高めに投げて正解だったな。
クレバスを姫抱きしていると後ろからぐぅぅー……と腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。
「にーに! へった!」
「俺は減らないぞ」
「ちがう! しろ、へった!」
街に入るのに結構待たされたからな。そろそろ飯にするか。
この前来た時のところでいいだろう。
「よし、飯にするぞ」
「やたー!」
シロが両手放しで喜ぶ。危ないからルナの頭を抱えててくれ。
ミドリは俺の髪の毛の本数を数えるのに必死なようで反応がない。
集中してるんだな。
「しゅっ、シュウや……シュウさんや……」
姫抱きしたままのクレバスがもじもじと恥ずかしそうに俺を呼んだ。
なんだ? トイレか?
「降ろしてくれんかのぅ……これは少々恥ずかしいというか何というか……」
「……却下だ。飯屋に着くまではこのままだな」
反応が面白いのでこのまま行こう。
確か前回飯を食べたところはここから歩いて5分ぐらいだったな。
10分かけて歩くか。
「ふへへ……子供あったかい……」
「おい、ルナ」
「ひゃい!? ……なんだい?」
「この街のオススメの場所ってあるか?」
前回は必要なものしか買い歩かなかったからな。
今回は目的がないので現地人に聞くのが最適だ。
「オススメか……豊富な種類のある武器屋と魔道具屋かな?」
「飯食い終わったらそこに行くから道案内頼む」
「わかった」
前回飯を食べたところが見えてきた。
クレバスの顔が真っ赤っかになっていたので、そろそろ降ろしてやろう。
「あっ……もう終いかの……」
降ろすと名残惜しそうな表情をした。
恥ずかしいんじゃなかったのか……?
30
お気に入りに追加
2,370
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。



今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる