異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした

せんせい

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幼女と邪神

ぼっちと邪神

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 クッキーを作った次の日、森の空気が少し違っていた。

 魔物が殺気立っているような感じがしている。


「シロ、ミドリ。今日は外に出るな」
「なんでー?」
「様子がおかしい。死んでもいいなら出ていいぞ」
「いえに……いる……」

 できないことはないが死者の蘇生は使いたくない。
 世界の理が乱れてしまうからな。
 まあ、俺の存在自体が理を無視しているようなものだが……。

「何か遊び道具でも作っておくか」

 シロは活発に遊ぶから投げても大丈夫なものにしよう。
 ミドリは黙々と遊ぶのが好きみたいなので組み立てブロックでも作ろう。


「シロ、これで遊んでてくれ」
「なにそれー!?」

 シロに渡したのは可変合金式跳弾だ。
 全力で投げて物にぶつけても、ぶつけたものに衝撃が行かずに全てこのボールが衝撃を吸収する。
 そして投げた力と同じ速度で1度だけ跳弾する。

 被害のないスーパーボールみたいな感じだな。


「ミドリはこれだな」
「……! ありがと……!」

 ミドリに渡したのは組み立てブロックを生成してくれる箱だ。
 空気中の魔力を凝縮してブロックにするので無限生成が可能だ。

 箱の中にブロックを戻せば分解されるのでかさばる事は無い。

「ちょっと外出てくる。遊んで待っててくれ」
「「はーい」」

 空が暗い。
 少し前まで晴れ渡っていたのにな……。

 さて、変な気配のある場所に行くか。

「【空間固定】」

 地面から少し浮いて足元を固定する。
 空間固定しないと大地が割れるからな。

 景色が飛び、一瞬にして変な気配のする場所に辿り着いた。
 洞窟か……?

「ふむ……感じたことのない気配だな……」

 1番近いとしたら俺をこの世界に転生させてくれた神に近いな。
 やはり邪神が封印されているのか……?

 昨日寝る寸前にこの場所から明確に殺気が飛んできたからな。
 こっちからお出迎えしてやろう。


 ――大地が胎動する。
 前方の洞窟から魔力とは違う力が吹き出る。

 なるほど……全くわからん。

 久々に【現状把握】を発動するか。

『これは神に近い存在、又は神のみが纏うことができる神気じんきです』

 ほう。
 ってことは洞窟にいるのは邪神で確定だな。

 神であれば俺に殺意を飛ばしてこないだろうからな。

 パキンッっと硬いものを折ったときのような音が聞こえた瞬間、洞窟が吹き飛んだ。

「お出迎えが貴様とは……歓迎したくないのう……」
「誰だお前」

 土煙の中から出てきたのは腰ぐらいまである金髪に大きめの瞳、透き通るような白い手足をした少女だ。

「妾を知らんとな!?」
「知らん。誰だ」
「ふ……ふふふ……! 仕方あるまい! 教えてやろう!」
「おう、早くしろ」

 偉そうにしやがって。
 邪神だから仕方がないか。

「妾の名は!」
「……おう?」
「……知らんのか?」
「知らん、俺に殺気を飛ばしてきた理由を聞きに来ただけだ」

 ううむ……と、邪神少女が唸り始めた。
 久々に戦えると思ったが何だか毒気を抜かれるな。

「うむ……妾は……お主があやつから使命を帯びてにこの世界に来たと思っていたんじゃが……」
「いや、なんか勇者召喚とやらに巻き込まれて死んだから、この世界でただ暮らすことだけを条件に転生させてもらっただけなんだが……」
「なるほどの? 全てはあ奴の謀略かッ!!!!!」

 ムキーッと怒りを露わにする邪神。
 もしかして、俺を転生させた神と仲が悪いのか……?

「それで、昨日俺に殺気を飛ばした理由は?」
「それはのう? お主があの憎き奴に妾の世界を侵略するように命じられてこの世界に来たと思っておったからのう……封印が解けたらぶっ殺そうと思っておったのじゃ」
「物騒だな。真実が分かって現状も俺を殺そうと思ってるか?」
「それはないのう……妾、こう見えても良識的な神じゃしな」

 ちっ……。
 帰るか……。
 踵を返して邪神に背を向ける。


「待てぃ! この可愛いレディーを置いて帰ろうとするでない!」
「自分でレディーとか言う奴はちょっと……」
「仕方ないじゃろ!? 封印のための依代として贄となったのが少女だったのじゃ……」
「そうなんだな、大変だな。じゃあ、そう言うことなんで……」
「おーいーてーくーでーなぁーい!」


 俺の腰にしがみついてくる。やめて、腰布取れる。
 魔法で固定してるけど神気とかいう変なので魔法が結構不安定になってるから割と焦ってる。


 クレバスとかいう邪神少女の頭を掴んで投げ捨てる。
 その拍子に腰布が持ってかれた。ちくしょうめ。

「おっ……お主……随分と立派なモノをお持ちじゃの……」

 邪神少女が目を丸くして聞いてくる。
 うるせぇ、腰布返せ。

「この豊満でナイスバディーな妾を見て欲情せぬとは……お主、もしやそっち系なのか!?」
「断じて違う。豊満という言葉を辞書で調べて鏡を見てから出直せ」

 約2万年も生きていれば自分の欲求ぐらいコントロール出来るようになる。
 それにナイスバディとは程遠い見た目しやがって…ツルッストーンじゃねぇか。
 逆に無駄な凹凸が無くてナイスバディーなのか?
 残念ながら俺の美的感覚は虚無に近い。

 腰布を返してもらえそうにないので亜空間から新しい腰布を出す。

「それにしても……計画が狂ったのう。完全に破綻してもうた……」

 チラチラとこちらを見ながら言ってくる。
 早く立ち去らないと変なこと言われそうだ。
 帰るために足元の空間を固定する。

 足に力を込めて跳躍する。
 一瞬で家の前だ。

「ここがお主の家か! 立派じゃのう!」
「マジか……」

 付いてきやがった……。
 敵意は感じられないが……どうすっか……

「家に入りたいなら服を着てくれ、仮にも神を名乗るならそれくらい出せるだろ」
「ぬわっ!? 妾は服を着とらんのか!?」

 アホだろコイツ。
 5000年も経てば服ぐらい風化して崩れ落ちるぞ?

「うむ!これで良いじゃろ!」

 服を着ていた……って、待て。
 お前その服の素材、俺の腰布使っただろ!?

 神の力か何か使って複製して増やしてから服にしやがったな…この野郎。
 ペアルックみたいになってるじゃねぇか。
 ポンコツ邪神は気づいていないみたいだが。

「あと一つ、実の子じゃないが娘が2人いる。危害を加えようものなら……」
「なんじゃ……?」
「俺を転生させた神をどうにかしてこの世界に降臨させる」
「なんじゃと……? それだけは堪忍してほしいのじゃ……頼む……」
「じゃあ娘2人に危害を加えないと誓えるか?」
「うむ、このクレバスの名に懸けて誓おう!」

 そう邪神――クレバスがそう言ったら光った。

『邪神クレバスが誓いを立てました』

 頭の中で声が響く。ステータスとかの案内してくれる声だ。
 メッセージウィンドウが開いた。

 クレバスの方をちらりと見ると口をパクパクさせていた。

「お主……? 何故それを……?」
「何故って、普通に皆使えるんじゃないのか?」
「8000年前に概念ごと消し去ったはずなんじゃがのう……」
「その前から居るからな……残ったんじゃないのか?」

 ううむ、と唸るクレバス。
 なんだか面倒になってきたので無視して家の扉を開ける。

「戻ったぞ」

 シロとミドリが物陰に隠れる。
 ソファの陰からミドリが恐る恐る顔を出して聞いてくる。

「おにーちゃ……それ、だれ……?」



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