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ぼっちと幼女
幼女とクッキー
しおりを挟む買い物から帰ってきた2日後。
俺はクッキーを作るために材料をこねていた。
最初はシロとミドリに分量から任せようと思ったが間違いなく大変なことになると判断したため断念した。
いい感じの厚さに引き伸ばして準備完了だ。
型抜きは朝起きてから作った。
なんか色という色を全て混ぜ込んだかのような鉱石を使って作ったので尋常じゃなく硬い。
俺が全力で殴ってもヒビしか入らなかったのでマジでビックリしたのは記憶に古い。7000年前くらいだろうか?
今ならば殴って割ることぐらいはできると思う。
素材は結構軽く、型抜き程度の大きさだと殆ど重さを感じない。
子供の2人は十分な物だと思う。
「よし、準備できたぞ」
「なにつくるのー?」
「クッキーだ」
「なに……それ……?」
「甘いお菓子だ」
「やったー!」
シロが両手を上げて喜ぶ。
無邪気とはこのことだな。
「2人にやってもらいたい事がある」
「なにする……?」
「型抜きだ。こうやって……こうやればいいだけだ」
型を抜くのを見せる。
心なしかミドリの目がキラキラしている。
早くやりたいと目で訴えてきた。急かすな、飽きるまでやらせてやるから。
「ふんっ!」
「おい、シロ。そんな全力で型を叩きつけなくていいんだぞ?」
「しってる!」
おい。
どっちかは型を投げて遊ぶと思っていたがやっぱりシロだったか。
ミドリは黙々と型を抜いては並べてウットリしている。
いい職人になれそうだ。将来有望だな。
「型を抜き終わったやつは焼くから渡してくれ」
「やいちゃうの……?」
「焼かないとお菓子として食べれないぞ」
焼くと言った瞬間ミドリが涙目で聞いてきた。
少しばかり罪悪感に駆られた。
お菓子という言葉を聞いた瞬間、シロがまともに型抜きをし始めた。ゲンキンな奴め。
現金といえば街に行って持って帰ってきた貨幣をテーブルの上に置いていたらシロとミドリの遊び道具になっていた。
シロは白金貨を指で弾いて遊んでいたがミドリは金貨を積み重ねたり、同じ面を同じ向きに並べて遊んでいた。
たまにミドリが積み重ねたのを崩したりして喧嘩になったりしていた。
数分後には仲直りしていたので問題なかったようだ。
「はいっ! やいて!」
「シロが1番のりか。どれどれ?」
……でかい。
一度型抜きしてその型抜きしたやつを再度集めてこねなおしたかのようにデカい。
俺が渡した生地は厚さを均一にしたハズだ。
「やり直しだな」
「えー!?」
魔力を使って物理的圧力をかけて生地を平らに戻す。
風魔法でも良かったが最近、シロとミドリの魔力が増えてきて放出させないといけない魔力も増えた。そのため、家の中に魔力が充満している。
放出させるときは俺の魔力に変換して放出しているので自分の中に収めることもできるが……。
せっかく大気中にあるので使おうという魂胆だ。
「ミドリみたいに型を抜いたままの状態で持ってこないと美味しく焼けないぞ」
「むー! わかった!」
ちなみにミドリはどれを焼きに出すか選別しているようだった。
険しい顔をして「これはだめ……」とか「これはいいや……」など呟いている。
さながらひよこのオスメスを分ける職人のようだ。
……最終的に全部焼くからな?
「できた!」
ミドリを眺めているとシロが型を抜いた生地を持ってくる。
うむ、これなら焼いても問題ないな。
「よし、焼こうか」
「じかんかかる?」
魔伝導式オーブンだからな。
さほど時間はかからないだろう。
「そうだな。あと2回ぐらい型抜きしてれば焼きあがる」
「えー!?」
焼けたらすぐに食べられると思ってたのだろうか、シロが不満そうに声をあげる。
シロは食うことに関しては非常に意志が強い。
だが嫌いな物は弾く。
この前はインゲンみたいな野菜を俺の皿に知らぬ顔をして乗せてきた。
よそ見しているうちに戻したが。
戻すと何であるんだろう? みたいな顔をしてからこっちを見てくるから本当に可愛らしい。
そうやってシロに気を取られていると逆サイドからミドリがニンジンみたいな野菜を俺の皿に移すという攻防があったのは昨日の出来事だ。
「仕方ない。試し焼きしたやつだ。1枚やるから型抜きしてろ」
クッキーを一枚渡す。
少し観察してからひと齧り。
「おいしい!」
「それを焼いてるんだ。待ってればもっと食べれるぞ?」
「わかった! まつ!」
シロがクッキーを食べているのをミドリが眺めている。
焼くのを渡せばあげるからな?
「やいて……?」
「やっと持ってきたか」
ミドリが持ってきたのは20枚ほどの生地。
まだミドリがいた現場には50枚ほどあるので選別が済んだのだろう。
目でクッキーを要求してくるので1枚渡す。
シロと同じく少し観察した後にひと齧りした。
「あまい……すき……」
「もっとたべたいねー?」
「はっ……!? おねーちゃ……こっち……」
「なにー?」
何やらミドリが思いついたようだ。シロを引き連れて俺から少し離れる。
コソコソ話しているようだが全部聞こえてるからな?
話してた内容はこんな感じだった。
「ぼく……おにーちゃ……つれてく……」
「それでー?」
「おねーちゃ……はんぶんもってく……」
「ふんふん!」
「おにーちゃ……きづく……おねーちゃ……ほういく……そのとき……ぼくが……のこり、もってく……」
「なるほどー!」
こんな感じだった。
作戦会議が終わったのだろうか、ミドリがこっちに向かってきた。
試し焼きのクッキーが置いてある皿は俺の右斜め後ろにある。
面白そうだからワザと引っかかったふりをしてやろう。
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