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ぼっちと幼女
幼女と買い物④
しおりを挟む「おーい! 少年!待ってくれー!」
食料を売っているところを探すためにブラブラと歩いていたら後ろから声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だ。
「あかいひと!」
「そうだな」
早くもシロが特徴を掴んで覚えたようだ。偉い偉い。
「やっと追いついた…」
「何か用か?」
「素材の件だよ。私は爪の代金しか払ってない」
「なんだ、そんな事か…」
正直、買い物ができれば良かったので素材の値段は気にしていない。
あの程度なら家に帰れば腐る程ある。もしかすると腐っているかもしれん。
「そんな事じゃないよ!? あの素材全部で小さい国だったら買えるぐらいの価値はあるんだからね!?」
身振り手振りで説明してくる。
その度に自己主張の激しい胸が揺れる。何が詰まっているんだろう。
「ほへー」
「すごい……」
シロとミドリが釘付けになっている。
ペタペタと自分の胸を触って見比べて首を傾げている。
「シロ、大人にならないと無理だ。諦めろ」
「話聞いてる!?」
「きいてない!」
俺の代わりにシロが答えてくれる。
そこは嘘でも聞いていると言うべきだろ、シロよ。
「さすがに貰うなんてできないから返そうと思って持ってきたんだ。はいっ」
「えっ……いらない……」
「この素材も欲しいけど買えるほどのお金持ってないからね。受け取ってくれ」
どうするか…
国が買えると言っても興味ないしな。
せっかく倉庫が整理できたと思ったのに……押し付けるか。
「いらないから有り難く受け取ってくれ」
「タダで……ってことは出来ない相談だ」
「貸し1だ。俺が困った時、その代金分だけ働いてくれ。名のある冒険者なんだろ?」
「君がそれでいいなら受け取るけれど……返しきれるかな……?」
ここには何度か来るだろうし、知ってる人間がいるなら物事頼みやすいからな。
しかもある程度名前が通ってるのであれば好都合だ。
「受け取ったな? 早速働いて貰うぞ」
「見た目に反して人使いが荒いんだね」
「初めて言われたな。調味料が売ってるところってあるか?」
「ん? 調味料か。それならこっちだよ」
道案内ゲットだぜ!
シロとミドリがウトウトし始めたのでなるべく早く終わらせないとな。
頭に掴まる形で肩車をしているシロが後ろに倒れないように魔法を展開しておく。
風魔法の応用だ。
後ろに倒れそうになったら俺の方向に圧を送る。
これで大丈夫だ。
「ここだよ」
「そうか、案内感謝する」
色々な調味料があるな。棚にあるの全部持って行こう。
小麦粉は違う亜空間で栽培してるから必要ない。
卵もある。
こんなもんか。
「結構買うね?」
「あまり街に来ないからな」
レジの娘の顔が引きつっている。
そんなに買ってないと思うんだがな。
「金貨8枚になります……!」
「ほいっ」
「ちょうどお預かりします……」
代金を支払ったので調味料とその他食材を亜空間に投げ入れる。
シロが完全に寝落ちした。
頭にヨダレを垂らして寝ている。冷たい。
「よし、終わりだな」
「え? 食料だけ?」
「ああ」
不服そうな顔で見てくる。
一体何を望んでいたんだ?
「武器とか防具は…必要ないか」
「そうだな。素手でどうにかなる」
あの森の中にいる奴らなら素手で十分だ。
魔力を濃縮して具現化すれば武器にできるしな。
「帰るか……」
シロとミドリが寝てしまっているので何処かに行こうにも起こさないといけなくなる。
寝ているのを起こすのは忍びないので帰ろう。
「帰るのかい? それならまた来た時にギルドに寄ってくれれば参上するよ。少年の名前は……」
「シュウだ」
「了解したよ。君が来たら私に連絡するように受付に言っておくね」
「わかった、感謝する」
これで街に来やすくなったな。
帰るための魔法を構築するか。
ここの場所が分かったので空間を渡って帰ろう。
空間転移という魔法だ。
「じゃあまた来た時頼むわ。【空間転移】」
「転移系魔法は失伝したって聞いたんだけどなぁ……今度教えてもらえるかな?」
空間が歪み、瞬きをすると家の目の前に立っていた。
成功だ。
昔は土の中とか木の中とかに転移してそのまま即死とかザラだったからな。成長したものだ。
家に入って寝室に向かう。
「んにゅ……? おうち?」
「そうだ。寝るならベッドで寝ようか」
シロとミドリを下ろしてベッドに行くように促す。
服を脱ぎながらベッドに向かって行く。ミドリもだ。
……何故だ。
そのうち大きくなったら服の畳む方法を教えるか。
部屋中に脱ぎ散らかして山積みになるような子にはしたくない。
「にーに」
バンバンとベッドを叩いている。
これはここに来いというシロの合図だ。
「はいはい、今行きますよっと」
腰布と肩からかけていた布を外して亜空間から寝間着を直接着用する。
シロとミドリがくっ付いてくる。
あっついな!?
眠い時の子供の体温は高いんだな……俺も迫り来る睡魔に身を委ねた。
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