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ぼっちと幼女
幼女と買い物③
しおりを挟む思ってた以上の金額が手に入ったので少しばかり贅沢しても問題なさそうだ。
「にーに! ここおいしそう!」
「ああ、確かにいい匂いするな」
「ここに……しよ……?」
いい匂いがしてきた店は高級店のような感じではなく、いかにも大衆食堂って感じだった。
2人がここがいいと言っているのでここにしようと思う。
扉を引いて入る。
「いらっしゃい! 好きな席に座りな!」
中から大きな声が聞こえてくる。
4人がけのテーブルが空いていたのでそこに座ることにしよう。
シロとミドリを俺の正面に座らせた。
「見ない顔だね。旅人かい?」
「そんな感じだ、文字が読めないからオススメを頼む」
「あいよ! 予算はあるかい?」
「金はある。気にしなくて構わない」
「任せな!」
元気な女将は厨房に戻っていった。
正面を見ると2人がいない。
どこいった……?
辺りを見回していると足に感触があった。
テーブルの下にいるみたいだ。
「んしょ……!」
「よいしょー!」
2人してテーブルの下を通り抜けて俺の膝の上に座る。
「食べにくいから自分の席に戻ってくれ」
「やだ!」
「ここでたべる……」
はぁ……とため息が出る。
仕方ないと割り切って諦めることにした。
仕返しと思って2人の頬を手で掴んで口の形を『3』のような形にして遊んでいると女将さんが料理を運んできた。
「お待ちっ!って、ずいぶんとコンパクトに座ってるねぇ……」
「申し訳ない」
「まあ、構わないよ!この2つはお子様の。こっちは兄ちゃんのだね!」
「おにく!」
「おいしそう……」
おい、シロ。
その肉は俺のやつだからな?
こっちをチラチラ見ながら自分の陣地に引き込もうとしてもダメだからな?
「ダメだぞ」
「けちー!」
シロの手をペシっと叩く。
それでも頑なに肉を離そうとしない。
2人の料理も普通に美味しそうな感じはする。
形的にはオムライスに近い。
ただ、卵の色が黄色ではなく赤色だ。初めて見た。
「チャンス……!」
「おいっ!」
シロを注意していると、その隙にミドリが自分のフォークで俺の肉を奪い去る。
こいつ……虎視眈々と狙ってやがったな。
「えいっ!」
「あーもう……」
ミドリに気を取られているとシロがフォークで掴んでいた肉を自分の口に放り込んだ。
4切れだったので残り2切れしか無くなってしまった。
「おいしい!」
「おいしかった……!」
「はぁ……満足そうで何よりだ」
少なくなった肉を食べ、野菜を食べる。
うん。美味い。
シロとミドリがこっちをチラチラ見てくるので取られる前に肉を食ってしまう。
残念そうな顔をしたが、お前ら……これ俺の分だからな?
そうこうしているうちに2人が食べ終わったので会計を済ませよう。
「女将さん、いくらだ?」
「銀貨2枚だね」
「これで足りるか?」
白金貨を1枚出す
女将さんが目をカッっと見開き、こっちを見る。
「多すぎだよ!!そんなに釣りがあると思ってんのかい!?」
「マジか……これしか持ってないしなぁ…」
どうやら高すぎてお釣りが支払えないみたいだ。
困ったな……どうするか……。
「おーい! ルシア! 聞いてくれよ! ガイトのジジイが失禁して気絶してるぞ!?」
扉が勢いよく引かれ、外から見覚えのある赤髪の美人が入って来た。
妙に顔がツヤツヤしているように感じる。
水を得た魚のようだ。
「ルナ! ここは食事するところだよ! 汚い話は外でしてな!!」
目の前にいる女将さんが注意をする。
すまんすまん、と赤髪が小さく謝りこっちに気がついた。
「おや!? 素材を売ってくれた少年じゃないか? ここで飯を食ってたのか?」
「そうだ。丁度いい。貰った金が高すぎて払えない。両替してくれ」
「あっはっはっ! それはすまないことをした! ここは私が払っておくよ!」
「感謝する」
「少しいったところに財産組合があるからそこで両替してくるといいぞ!」
支払いを任せて店を出る。
財産組合なるものがあるらしいのでそこに向かうとしよう。
シロが肩車をねだってきたので肩車し、ミドリを抱っこして街道を歩く。
歩いて少しすると何だか厳格そうな建物が目に入った。
魔力を解析すると迎撃系の魔法陣が多量に設置してあるのでここで間違いないだろう。
扉を横にスライドさせて中に入る。
「いらっしゃいませ。冒険者の方ですか?」
「冒険者登録はしていない。旅人って感じだな」
「失礼いたしました。本日のご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「両替をしたい」
そう言って白金貨を3枚ほど出す。
要件を聞いていた人が少し動揺する。
「少々お待ちください……!」
パタパタと駆け足で奥の部屋に入っていく。
何だかデジャブだな。
3分くらいで戻ってきてこちらにくる。
「お待たせしました……! 額が額なのでこちらでお渡しします」
「わかった」
先ほど入っていった扉とは別の扉を指し、そこへ案内された。
中に入ると男性が1人座っていた。
「好きに座って貰って構わないぞ」
「ああ」
「支部長のステインだ。少しばかり時間を頂きたい」
「いいよ!」
シロが答えたのでステインが少し驚いたような表情をする。
「フフッ……ありがたい。では早速だが両替の目的を聞きたい」
「普通に買い物がしたい」
「なるほど、嘘偽りはないようだ。全て金貨に替えるので構わないか?」
「構わない」
机の上に袋が3つ置かれる。
結構ズシッとくるのでメッキではなくて純金で作った貨幣なのだろう。
さすが異世界だな。改めて実感した。
「白金貨3枚だから金貨300枚だ。こちらで確認してあるとは言え、確認してほしい」
「めんどくさいからそちらの仕事を信頼したということで確認しない」
荷物が入っている亜空間を開き、その中に金貨の袋を投げ入れる。
ついでに白金貨も入れてしまえ。
「それはありがたい。今後ともよろしく頼むよ」
「今後があるか分からないが覚えておこう」
目的のものは手に入ったので急ぎ足で外へと向かう。
急いでいる理由としては暇でミドリがウトウトし始めたのとシロが俺の髪を引っ張って遊び始めたからだ。
寝るのは構わないが髪で遊ぶのはやめてほしい。
段々と引っ張る力が強くなってきているので頭を動かしてシロのお腹をグリグリする。
「ふへへへ……」
今度は俺の頭を抱えてニヤニヤし始めた。よく分からん。
ミドリも俺の胸に頭をグリグリしてニヤけている。
一体どうしたんだ…?
放置しておいても問題はなさそうなのでどこに行くか考えることにしよう。
まずは調味料だな。
あればバターもほしい。
食料が売ってそうなところをブラブラと探すことにするか。
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