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ぼっちと幼女
幼女と買い物①
しおりを挟むぐっすりと寝て日が昇り始めた森の朝、俺は買い物に行くための準備や最終確認をしていた。
荷物に関しては問題ない。
1つ問題があるとしたらシロとミドリをどうやって連れて行くかだ。
何の対策もせずに肩車なんてしたら風圧で吹き飛んでしまう。
2000km程度なので5秒もあれば着く。
脇に抱えて魔法で色々と軽減してゆっくり走るか、それが1番かもしれん。
「にーにがいない!」
「おいて……いかれた……?」
「にーにー!?」
焦ってあたふたとした感じでシロとミドリが寝室から出てくる。
「どうした?」
「にーに!」
「おにーちゃ…」
ガシッと足にしがみついてくる。
先に起きたのは間違いだったようだ。
「シロたちよりはやくおきちゃめっ!」
「おきてもねてて…?」
どうやら俺はこれから2人と同時に起きなければいけない事になってしまった。
時間に追われる生活をしていないので問題は無いはず……。
「おう、わかったから服着てこい」
「はーい!」
「うん……」
駆け足で寝室に戻って行く2人。
10分ぐらいすると今日の服を着て出てきた。
「あー! そのクマさんシロのだよ!」
「おねーちゃん……ねこさん……いいって、いってた……」
「そーだっけ?」
「うん……」
などのパンツを巡る駆け引きがあったのは内緒だ。
俺の記憶ではシロがネコの模様だった気がするのでミドリが正しい。
喧嘩にならないように2種類ずつ作るか。
「よし、行くか」
「おー!」
「おー……!」
2人を脇に抱えて外に出る。
そのまま木々の高さを超える程度までジャンプする。
下を空間魔法で固定して宙に浮く。
「とんでるねー」
「すごい……」
そのまま2人ごと風属性の魔力を纏い、空気抵抗を無効にするようにする。
「おし、行くぞ」
足に力を込める。
空間を蹴った瞬間に景色が、音が消えた。
5分もしないうちに目の前に砦みたいなものが見えてきた。
ここが魔力感知で見えた街だな。
このまま突撃すると衝撃波で街が壊滅するので周辺で降りる。
「はわー」
「ほへぇ……」
シロとミドリが放心しているがそのうち治ると思うから門の方に行って手続きしてしまおう。
のんびりと門の方に向かっていると前から声が聞こえてきた。
「そこの人! 危ないから早くこっちに来なさい!」
なるほど、そんなに危ないところにいる人がいるのか。
気になったので後ろを見てみる。誰もいない。
「君だよ!!!」
前方からツッコミが入る。
俺か。
門番の人に迷惑をかけるのもアレなので駆け足で門へと向かう。
「すまないな」
「ホントだよ、こんな厳戒態勢の時に外に出てる人がいるとは思わなかったからね。少し認識が遅れてしまったよ」
「厳戒態勢…? 何かあったのか?」
戦争寸前だったら引き返すまであるぞ、これ。
「知らないのかい? 丁度1週間ぐらい前かな? 『魔の森』から異様なほど濃密な魔力が感知されたんだ。5000年くらい前に封印された邪神の復活の予兆かと言われているんだ」
「そうだったのか…」
そんなに異様な魔力は感じて無いな…
俺には脅威に感じなかったのか?
森にいる魔物ですら尋常じゃない魔力を発しているからな。
「そして一昨日かな? また『魔の森』から魔力が飛んできた。一瞬だったけど濃度が高すぎて街の8割くらいの人が気絶したんだ。一大事だろう?」
「確かにそれは大変だな」
「それを王都に報告したら邪神が復活したと認定されて『魔の森』に対して厳戒態勢が敷かれてるんだ」
邪神か……気になるな。
別に俺の日常を阻害しなければ手を出さないが何かしてくるようであれば倒せるかは別として全力で対処しよう。
「にーに、はいらないのー?」
「ああ、そうだ。身分証が無いんだが入れるか?」
「中に入って冒険者ギルドに登録することが条件になるけど入れるよ。そうするかい?」
「そうするとしよう」
ギルドなるものがあるのか。
それならこの素材が売れる……はずだ。身分証明と売却が一緒にできて一石二鳥だな。
「よし、じゃあこれで入れるよ。前線都市バルへようこそ!冒険者ギルドは入ってすぐ右にあるよ」
前線都市か。いい名前だ。
おそらく人族の住める最前線という意味だろう。
「ひと……いっぱい……」
「たくさんいるねー!」
「まずは物を買うために素材を売るぞー」
「おー!」
親切にギルドの位置を教えてもらったので向かう。
ここか……。
西部劇風な酒場の入り口みたいな感じだな。
いい雰囲気だ。
スイングドアなので開ける必要は無いが抱えている。
シロとミドリを押し当てる訳にもいかない……。
両手が塞がってるので扉を足で蹴り開けると中にいる人が全員こちらを見た。
乱暴に入りすぎたか……?
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」
「登録と素材の買い取りを頼む」
「かしこまりました! 先に素材を拝見させてもらっても?」
「これだ」
空間魔法を使って素材を取り出す。
亜空間に入れた20種類ほどの素材がテーブルの上に散乱する。
「えーっと…あれ? 無いなぁ…」
受付嬢が本を見ながら素材を確認している。
素材図鑑みたいな感じか?
「あの…よければこの素材の魔物の特徴を教えてくれませんか?」
そう言ってこの前仕留めた熊の爪を指差す。
「いいぞ、確か15mから20mぐらいの大きさで全身の体毛は黒、力は非常に強くて熊のくせに魔力を扱う」
「えっ…?」
「肉は美味しかった」
「おいしかった!」
「また……たべたい……」
「帰ったら作るか」
「やたっ……!」
受付嬢の目がすごい泳いでいる、大丈夫か?
「しょ、少々お待ちください!」
慌てて中に戻って行ってしまった。
何か問題でもあったのだろうか…?
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