上 下
7 / 57
ぼっちと幼女

服を作ろう

しおりを挟む


「では今から服を作りたいと思います!」
「ます!」
「おー…!」

 うむ、いい返事だ。
 家族会議の結末はシロのトイレによってあやふやになったが俺が服を作らないといけないことには変わりない。

 死体の状態ではなく、毛皮などの部位だけの素材に分けておいた。
 いきなり15mクラスの生物の死体が並んでいたら精神衛生上よろしくない。

 俺がこのくらいの歳の時に目撃していたらトラウマとして残るだろう。

「にーに! もふもふおちてる!」
「やわらかい……」
「ずるい! おろして!」

 ミドリが羊もどきの毛にダイブしてシロが羨ましがっている。
 外に出るときに肩車してと言われたのでしたのだが、ミドリがダイブして恍惚の表情を浮かべているのでシロもやりたくなったのだろう。

「ほれっ」
「きゃー!」

 肩車していたシロを風魔法で浮かせて羊もどきの毛玉に向かって飛ばした。
 ボフッっと音を立ててシロが毛玉に突っ込んだ。

 直径7mくらいの毛玉なので子供ぐらいの体重ならば乗っかっても地面と体が接触しない。

 どの素材から服を作り始めるか考えているとミドリが腰布を引っ張ってきた。

「ぼくも……やって……?」
「あれってシロを飛ばしたやつか?」
「……うん」

 予想外のリクエストだな。
 ミドリはおとなしい感じなので自分から何かしてほしいとかは言わないタイプだと思ったが、シロが楽しそうに飛んで行ったので好奇心のほうが勝ったのだろう。

 やってやろうじゃないか……!

「いいぞ、ほれっ」
「……!」

 風魔法で浮かせて毛だまりへと飛ばす。
 万が一があったら嫌なので無属性魔法最上級の【断絶結界】をミドリにかける。

 この魔法は込められた魔力量に応じて物理ダメージを軽減してくれる魔法だ。
 魔法が許容する最大値の魔力量を込めたので物理ダメージは一切入らない。

「もーいっかい!」

 シロが毛玉から降りてこっちに帰ってきた。

「ほいっ」
「きゃー!」

 シロを飛ばすとミドリが来た。

「もっかい……」
「ほれっ」
「…!」












 これを30回ぐらい繰り返した。

「満足したか?」
「うん!」
「うん…!」

 満足げに頷いている。
 なら良かった。
 これで満足していないなんて言われてしまったらまた2人を飛ばして遊ばないといけないからな。

 俺も久しぶりに楽しかったから別にそれでもいいんだが本題は服を作ることだというのを忘れてはいけない。

 地面に錬金術の魔法陣を書くとシロに消されかねないので魔力を使って空中に書こう。

「にーに」
「どうした? 喉でも乾いたか?」

 昨日作ったジュースならばすぐに作れるが…

「ねむい」
「ぼくも…」

 2人は目をしょぼしょぼさせながら腰布をつかんでいる。
 あれだけ遊んだからな…仕方ないか。

「家で寝てきていいぞ?」
「やだ…!」
「にーに、座って」

 シロに座るように促されたので素直に座っておこう。
 地面に胡坐あぐらをする。

「よいしょ!」
「しょ…!」

 2人がそれを待ち構えていたかのように胡坐をしている俺の脚の上の右側にシロ、ミドリが左側に座った。

 なるほど、これは2人との距離がさらに縮まったと考えてもいいな。

 気配とかで警戒心とかはわかるが好奇心や好意は読み取れない。
 うれしい限りだ。

「二人ともおやすみ」
「すみ!」
「おやすみ…」

 数秒後には2人は寝息を立てて眠り始めた。
 子供の体温って高いんだな…

 いかん、眠くなってきた。
 とりあえずちゃちゃっと魔法陣を起動して服を作ってしまおう。
 5着あれば問題ないな。

 作った服は魔法で家に運んで…っと、余った素材はもとに戻して、自分の体を空間魔法で固定する。

 よし、これで寝る準備は整ったな。
 2人が起きるまで浅い眠りにつくとするか。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転移したら、死んだはずの妹が敵国の将軍に転生していた件

有沢天水
ファンタジー
立花烈はある日、不思議な鏡と出会う。鏡の中には死んだはずの妹によく似た少女が写っていた。烈が鏡に手を触れると、閃光に包まれ、気を失ってしまう。烈が目を覚ますと、そこは自分の知らない世界であった。困惑する烈が辺りを散策すると、多数の屈強な男に囲まれる一人の少女と出会う。烈は助けようとするが、その少女は瞬く間に屈強な男たちを倒してしまった。唖然とする烈に少女はにやっと笑う。彼の目に真っ赤に燃える赤髪と、金色に光る瞳を灼き付けて。王国の存亡を左右する少年と少女の物語はここから始まった!

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼

ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。 祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。 10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。 『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・ そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。 『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。 教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。 『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

処理中です...