4 / 57
ぼっちと幼女
世界最強のぼっちと幼女×2
しおりを挟む家に着いたので2人を下に降ろす。
降ろしたら足にしがみついて登ってこようとしたので手で頭を押さえて膝より上に登れないようにする。
俺は足に幼女を装備しながら――少しばかり――いや、非常に歩きにくいが扉を開けると中は木造建築で落ち着いた感じの部屋だ。
床には200年前ぐらいに狩った異様に強かった犬野郎の毛皮が敷いてある。
すっごいもふもふで200年経った今でも毛並みが落ちず、汚れもしていない。すごい。
まあまあ強かった記憶がある。
「今日からここが2人の家だぞ」
そう幼女たちに告げると幼女たちは――足にしがみついたまま――首を傾げた。
まるで自分たちが捨てられ、拾われたことを知っているかのように。
すると銀髪の方の幼女が足から離れて犬畜生の毛皮を触りに行った。
しゃがんで手を置いてもふもふを確かめているようだ。
「――――――!」
目からキラキラと効果音が出そうなくらい、そのもふもふ感を実感したのだろう。
翠髪の幼女が向こうに行きたそうにこちらを見ている。
「好きに遊んでいいんだぞ」
すると翠髪の幼女はコクリと頷き、銀髪の幼女の元へと駆けて行った。
あれ? もしかしなくても俺の言葉伝わってる?
俺が向こうの言葉を理解できてないだけ??
なぜ言葉が理解できないのか悩んでいると騒がしかった幼女たちの声が聞こえなくなった。
何事かと思って前を向いたら2人とも大の字になって寝ていた、寝顔マジ天使。
このまま2000年くらい寝顔を拝んでいたいが、そうは問屋が卸さないだろう。
「よーし、美味しいご飯作っちゃうぞー」
2人にはもうちょっと肉付きが良くなってほしい。
幼女といったらプニッとした感じが一番だと思う、異論は認める。
可愛いを通り越してリアル天使な娘たちに栄養満点の料理を作るべく俺は冷蔵庫の中身を見て今日の献立を考え始めた。
ふむ……。
あの熊を狩った時は熊鍋でいいかと思ったけれども初めての食事が鍋ってのもなぁ……。
そうだ、ハンバーグにしよう。
子供は皆ハンバーグが好きなはずだ。俺も好きだった。
「熊肉をふんだんに使ったゴロゴロハンバーグだな」
浄化で手を綺麗にしてハンバーグのタネを作る。
外の空間魔法で拡張して時属性魔法で時間を止めてある倉庫にぶち込んだ熊を魔法で操り、ひき肉と小さなブロック状の肉にする。
ゴロゴロってのは肉の塊がゴロゴロしているって感じをイメージしてみた。
順調にハンバーグのタネができてきたのでフライパンに魔力を流す。
これは俺が錬金術で作った魔導加熱式フライパンだ。
流した魔力に応じてフライパンが温まる最高傑作である。
そこに油を引いて、形を整えたハンバーグのタネを乗せる。
肉の焼ける心地の良い音が聞こえてくる。
肉の焼ける音って犯罪的だよね、わかる。
魔法を駆使して肉汁が外に漏れでないように中で留める。
肉の焼ける美味しい匂いが部屋中に拡散される。
良い感じの焼き加減になってきたのでひっくり返す。
「あー……腹減るな、これ」
「「――!」」
いつの間にか起きていた幼女2人が俺の腰布を掴んで頷いている。
かわいい。
俺の顔を見るのに上を向かないといけないので必然的に上目遣いになっているのがもう最高に堪らん。
「もうすぐできるからテーブルの前で待っててくれ」
「「――――!」」
満面の笑みで手を挙げてテーブルの近くに行った。
幸いにも椅子は4つあるため問題はない。
焼ける音が変わり始めたのでハンバーグをフライパンから離し、ソース作りに取り掛かった。
単純にデミグラスソースでいいだろう。シンプルイズベストだ。
ソースも作り終わったので皿に移して盛り付けをする。
別の皿に炊きたての白米を乗せて、2人のハンバーグには小さな旗を刺す。
取り合いにならないように同じ旗にしておいた。
ちょっとしたお子様ランチみたいな感じになったな。
テーブルの方を見ると既に着席して料理を待っていた。
2人とも口の端から少し涎が垂れている。かわいい。
ハンバーグとライスを置き、ナイフとフォークを置く。
これは調理中に作ったお子様用のナイフとフォークだ。
銀や鉄ではなく木材でできており安全性を考慮した感じになっている。
「さて、食うか」
フォークをハンバーグに刺して押さえてナイフで切り込みを入れると肉汁がこれでもかというくらい溢れてくる。
それを食べやすい形に切ってソースを付けて口に入れる、そしてすかさずライスを口に放り込む。
うむ…うまい!
我ながら会心の出来だ。
ふと前に座っている2人を見てみると食べずにこちらを見ていた。
「ん?食べて良いんだぞ?」
「―――――」
なるほど、わからん。
あれか、残り物しか食べさせてもらえてなかった感じか?
せっかく目の前に準備して置いてあるのに食べるのを禁じられて残り物だけだったと??
もしそれが本当ならばこの2人にそんな仕打ちをしていた奴をボッコボコにしないと気が済まなくなっちゃうぞ。
「それはお前たちの分だ。誰にも取られないし、誰も取らない。食べたくないって言うんだったら話は別だがせっかく作ったんだ。食べてくれると嬉しいな」
それを聞くと2人は涙をポロポロと流し、静かに頷いた。
ナイフとフォークを手に取り、俺がやっていたことを見様見真似でハンバーグを1口サイズにして口に放り込んだ。
ひと噛み、ふた噛みして顔を上げた。
そして満面の笑みで。
「「――――!」」
何かを言った。
それは言葉が理解できていない俺でもどんな事を言ったのか安易に想像できた。
『美味しい』
だろう。
「そうか、美味いか。しっかり食えよ?お代わりはあるからな」
そう言うと2人は笑顔のまま頷き顔を見合わせてせかせかと食べ始めた。
60
お気に入りに追加
2,371
あなたにおすすめの小説
転生リンゴは破滅のフラグを退ける
古森真朝
ファンタジー
ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。
今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。
何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする!
※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける)
※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^
※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ズボラな私の異世界譚〜あれ?何も始まらない?〜
野鳥
ファンタジー
小町瀬良、享年35歳の枯れ女。日々の生活は会社と自宅の往復で、帰宅途中の不運な事故で死んでしまった。
気が付くと目の前には女神様がいて、私に世界を救えだなんて言い出した。
自慢じゃないけど、私、めちゃくちゃズボラなんで無理です。
そんな主人公が異世界に転生させられ、自由奔放に生きていくお話です。
※話のストックもない気ままに投稿していきますのでご了承ください。見切り発車もいいとこなので設定は穴だらけです。ご了承ください。
※シスコンとブラコンタグ増やしました。
短編は何処までが短編か分からないので、長くなりそうなら長編に変更いたします。
※シスコンタグ変更しました(笑)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる