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第1層

試練開始

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 ――酒が、うまい。
 俺こと 北村海斗きたむら かいとは10年間勤めていた会社からリストラの宣告をされた。
 会社自体の業績が悪化しており、創業期に雇っていた人以外は全員リストラという形で解雇されてしまった。
 
 新卒から10年。今年で33歳を迎えるめでたい日に言い渡されたリストラ宣告は非常にしんどかった。
 
「せっかくの誕生日に会社からもらったプレゼントがリストラか」

 酒でも飲まなければやってられない。
 近所のスーパーで1升瓶の日本酒を買ってそのまま飲みながら家に歩いて帰っている。
 
 あまり酒には強い部類ではなく、急激にアルコールを摂ったことから酔いが回っているのが分かった。
 
 ふわふわと浮いているかのような感覚に身を任せて歩いていると目の前に青い画面のようなものが現れた。
 そこには【神々の試練を受けますか? Yes/No】と書かれていた。

「幻覚が見えるほど酔ってはない気がするんだが……イエスで」

 Yesの方に指で触れると画面が遷移した。

【難易度を選択してください】
【簡単】
【普通】
【難しい】
【とても難しい】
【地獄】
【上記から選択してください】

 だいぶ、手の込んだ幻覚だな……。
 特にやることもないから【上記から選択してください】を連打してみるとしよう。
 
 酒を飲みながら歩いて連打を続ける。
 連打回数が700に近くなってきたころ、画面が変わった。
 
【難易度が選択されました】
「やっべ、他のところ触ったか?」
【難易度:無限地獄】
【神々が作成したけどテストプレイで神々が誰もクリアできずに封印された難易度です】
「――は?」

 適当に連打してたら封印ってのを解いた……?
 あぁ、なるほど。隠し難易度ってやつだな!
 
 太鼓を叩くゲームとかでもよくあるやつだ。
 
【無限に続く地獄のような世界で貴方が無事にクリアできることを祈っております】
「ちょっ、待て。一体どういう――」

 スーパーからの帰路を歩いていたはずだった。
 瞬きをすると四方がレンガで出来たような通路みたいな場所に居た。
 
「えっ、ちょっと。ドッキリか、こr――」

 パァンと水風船を割ったような音が響いたと思ったら俺の目の前に青い画面が現れた。
 辺りの壁には血のような赤い液体がこびりついていた。
 
【あなたは死にました】
【試練の最速死亡記録を更新しました。褒賞が送られます】
【スキル:魔力耐性Lv.1を取得しました】
【褒賞が開封されます】
【ユニークスキル:死亡カウントを取得しました。称号:神々からの哀れみを獲得しました】
【試練では初回クリアまで何度でも復活可能です。復活しますか? Yes/No】

 ――何が起きているか分からない。
 死んだ? 復活? 何を言っているんだ。
 
 手が透けている……本当に死んだのか?
 よくあるゲームでの魂の状態ってやつなのか?
 スキルとかがあるということはつまり……『ステータス』の画面とかもあるってことか?
 
【死亡状態ではステータスの確認はできません。復活しますか? Yes/No】

 あるようだ。
 分からないけれどYesを押して復活をする。
 透けていた全身がもとに戻っていく。
 宙に浮いていた状態から床に足が着いた。
 
 復活……できたのか?
 
「よし、ステ――」

 激痛と共に破裂音が聞こえると目の間に蒼い画面が現れる。

【あなたは死にました】
【スキル:魔力耐性Lv.2を取得しました。死亡カウントが1増加しました】

 ――理解した。ようやく理解した。
 これは夢じゃない。現実で、俺は破裂して死んでいる。
 今まで感じたことのない激痛がこれが現実だということを思い知らせた。

【復活しますか? Yes/No】

 正直、復活したくない。
 ここでNoを押したらどうなるんだ?
 俺は恐る恐るNoを押した。

【No縺梧款縺輔l縺セ縺励◆縲ょセゥ豢サ繧剃クュ譁ュ縺怜慍逅?∈蟶ー驍?@縺セ縺】
【――難易度:無限地獄では復活拒否が認められていません。復活します】
【今後は死亡後10カウント経過したら自動で復活します】

 
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