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連邦編
第17話 sideクレア4
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グニルタ公国
「大公様、ハーンブルク家の使者が参りました。」
突然開いた扉に、驚きもせずに男は答える。
「応接室に通した上で、最高級の対応をしろ。」
「はっ。」
命令を受け取った執事が部屋から出て行く。
ギャルドラン王国と共に、打倒サーマルディア王国として名乗りを挙げようとしていた国々の中で、唯一王国にも連邦国にも国境を接していない国、グニルタ公国は、決断の時を迫られていた。
トリアス教国とサラージア王国という、2つの国を同時に相手した上で、両方とも滅ぼしてしまったほど強大な力を持つサーマルディア王国に対して、敵対か友好か、このどちらかを選ばなければならなかったのだ。
兵力の数は、やや連合軍側が多いかと予想されていたが、連合軍側には、致命的な欠点があった。
それは距離だ。
集められる兵力は合計すれば20万人に上るかもしれないが、それぞれの国からサーマルディア王国側に攻撃を行った場合、ジア連邦共和国の首都である『リアドリア』に侵攻する場合、到着まで徒歩だと半年近くかかる。
かと言って、船による攻撃を考えたとしても、それでは船に乗れる兵士の数が少ないため、追い返されてしまう。
つまり、兵士はいても彼らの食糧や武器は全く足りていなかったのだ。
そのため、できるなら戦争は避けたいと考えていた。
「ハーンブルク家から使者として参りました、クレアです。よろしくお願いします。」
「ようこそグニルタ公国へ、グニルタ大公です。ハーンブルク領と比べたらとんでもなく田舎ですが、よろしくお願いします。」
2人は握手した後、席に座った。
そして2人の後ろにはそれぞれの文官が座る。14歳の子供が先頭に立ち、20歳を超えた大人が後ろに立つのは、なかなか異様な光景ではあるが、ハーンブルク領では大人より子供の方が教養がある場合が多いので、これが普通だったりする。
「それでは、単刀直入に我々の要求をお伝えします。我々の要求は一つ、相互不可侵と貿易です。」
「相互不可侵はわかりますが、貿易というのはどのようなものなのでしょうか。」
「簡単に言うと、ハーンブルク領で作った物とグニルタ公国で作った物を交換しよう、という事です。具体的には、ハーンブルク領で作った鉄製の武器や農具と、グニルタ公国で採れる木材や鉱物資源とで交換して欲しいと考えております。」
「うちで採れた木材や鉄鉱石を、という事ですか?」
「その認識であっております。ただし、ハーンブルク領で作られた鉄の剣などの武器を他国に売るのは禁止とさせていただきます。」
武器の転売などをされると、けっこう困る。ハーンブルク家としての真の狙いは、グニルタ公国内にあるあらゆる利権を奪おうという方針だ。言わば、戦わずして勝つという事だ。
だが、そんな事にはもちろん気が付かない。
「なるほど、確かにそこだけ見れば損のない話ですな。しかし、我が国だけ戦争に参加しないとなると、他国からバッシングを受ける気がするのですが・・・・・・」
「おっしゃる通りです。ですが、ハーンブルク家と戦争になり、敗北した場合でも同様の事が起こりますよ。」
「うぅ・・・・・・」
問題はそこなのだ。いくら宗教がどうのこうのとか、守ってくれると約束をもらっているとか、言っても攻め込まれたら終わりだ。
ハーンブルク家の代表であるクレアは、そこを突く。
「ですので、グニルタ公国には、しっかりと立場を明確にしていただく必要があります。ギャルドラン王国の言いなりのまま戦争を始めるか、我がハーンブルク家と秘密同盟を結び、自由を手にするかの2択です。」
「おっしゃる通りですな・・・・・・」
「ハーンブルク家としては、できるだけ穏便に済ませたいと思っております。しかし、決めるのはただ1人、あなたです。」
「部下と話し合いをしたいので、後日返答という事でもよろしいでしょうか・・・・・」
「わかりました。では、1週間以内に返答を頂きたいです。我が国としても、快い返事をお待ちしております。」
「はい、よろしくお願いします。」
「では、失礼します。」
それだけ言うと、クレアは席を立った。
✳︎
レオルドからの指示では、気楽にやっていいよ、と言われていたが、終始心臓が破裂しそうな勢いだった。
「はぁ・・・・・・緊張した・・・・・・」
「お疲れ様でした、クレア様。見事な交渉でした。」
「アレで乗ってくると思う?」
「現時点ではわかりませんが、レオルド様は正直どっちでもいいと、おっしゃっていたので、それほどプレッシャーを感じる必要はないと思いますよ。」
「その言葉が、余計に私に負担をかけているんだよ。はぁ~」
大まかな方針はあっても、交渉に台本はない。
クレアは性格上、緊張しないでと、言われれば言われるほど勝手に緊張するタイプであった。
「もー何でレオルド様は私にこんな役割を与えたなかな~」
その呟きに対して、それはそれだけ期待されているからだよ、とはもちろん言えず、文官の女は話をずらした。
「それでは、用意された部屋に向かいますか。既に、春雨より必要な書類は中に入れてあります。」
「了解です、早速行きましょうか。」
2人は、用意された部屋へと向かった。
わずか14歳の小さな少女は、レオルドの役に立とうと、一生懸命に頑張っていた。
「大公様、ハーンブルク家の使者が参りました。」
突然開いた扉に、驚きもせずに男は答える。
「応接室に通した上で、最高級の対応をしろ。」
「はっ。」
命令を受け取った執事が部屋から出て行く。
ギャルドラン王国と共に、打倒サーマルディア王国として名乗りを挙げようとしていた国々の中で、唯一王国にも連邦国にも国境を接していない国、グニルタ公国は、決断の時を迫られていた。
トリアス教国とサラージア王国という、2つの国を同時に相手した上で、両方とも滅ぼしてしまったほど強大な力を持つサーマルディア王国に対して、敵対か友好か、このどちらかを選ばなければならなかったのだ。
兵力の数は、やや連合軍側が多いかと予想されていたが、連合軍側には、致命的な欠点があった。
それは距離だ。
集められる兵力は合計すれば20万人に上るかもしれないが、それぞれの国からサーマルディア王国側に攻撃を行った場合、ジア連邦共和国の首都である『リアドリア』に侵攻する場合、到着まで徒歩だと半年近くかかる。
かと言って、船による攻撃を考えたとしても、それでは船に乗れる兵士の数が少ないため、追い返されてしまう。
つまり、兵士はいても彼らの食糧や武器は全く足りていなかったのだ。
そのため、できるなら戦争は避けたいと考えていた。
「ハーンブルク家から使者として参りました、クレアです。よろしくお願いします。」
「ようこそグニルタ公国へ、グニルタ大公です。ハーンブルク領と比べたらとんでもなく田舎ですが、よろしくお願いします。」
2人は握手した後、席に座った。
そして2人の後ろにはそれぞれの文官が座る。14歳の子供が先頭に立ち、20歳を超えた大人が後ろに立つのは、なかなか異様な光景ではあるが、ハーンブルク領では大人より子供の方が教養がある場合が多いので、これが普通だったりする。
「それでは、単刀直入に我々の要求をお伝えします。我々の要求は一つ、相互不可侵と貿易です。」
「相互不可侵はわかりますが、貿易というのはどのようなものなのでしょうか。」
「簡単に言うと、ハーンブルク領で作った物とグニルタ公国で作った物を交換しよう、という事です。具体的には、ハーンブルク領で作った鉄製の武器や農具と、グニルタ公国で採れる木材や鉱物資源とで交換して欲しいと考えております。」
「うちで採れた木材や鉄鉱石を、という事ですか?」
「その認識であっております。ただし、ハーンブルク領で作られた鉄の剣などの武器を他国に売るのは禁止とさせていただきます。」
武器の転売などをされると、けっこう困る。ハーンブルク家としての真の狙いは、グニルタ公国内にあるあらゆる利権を奪おうという方針だ。言わば、戦わずして勝つという事だ。
だが、そんな事にはもちろん気が付かない。
「なるほど、確かにそこだけ見れば損のない話ですな。しかし、我が国だけ戦争に参加しないとなると、他国からバッシングを受ける気がするのですが・・・・・・」
「おっしゃる通りです。ですが、ハーンブルク家と戦争になり、敗北した場合でも同様の事が起こりますよ。」
「うぅ・・・・・・」
問題はそこなのだ。いくら宗教がどうのこうのとか、守ってくれると約束をもらっているとか、言っても攻め込まれたら終わりだ。
ハーンブルク家の代表であるクレアは、そこを突く。
「ですので、グニルタ公国には、しっかりと立場を明確にしていただく必要があります。ギャルドラン王国の言いなりのまま戦争を始めるか、我がハーンブルク家と秘密同盟を結び、自由を手にするかの2択です。」
「おっしゃる通りですな・・・・・・」
「ハーンブルク家としては、できるだけ穏便に済ませたいと思っております。しかし、決めるのはただ1人、あなたです。」
「部下と話し合いをしたいので、後日返答という事でもよろしいでしょうか・・・・・」
「わかりました。では、1週間以内に返答を頂きたいです。我が国としても、快い返事をお待ちしております。」
「はい、よろしくお願いします。」
「では、失礼します。」
それだけ言うと、クレアは席を立った。
✳︎
レオルドからの指示では、気楽にやっていいよ、と言われていたが、終始心臓が破裂しそうな勢いだった。
「はぁ・・・・・・緊張した・・・・・・」
「お疲れ様でした、クレア様。見事な交渉でした。」
「アレで乗ってくると思う?」
「現時点ではわかりませんが、レオルド様は正直どっちでもいいと、おっしゃっていたので、それほどプレッシャーを感じる必要はないと思いますよ。」
「その言葉が、余計に私に負担をかけているんだよ。はぁ~」
大まかな方針はあっても、交渉に台本はない。
クレアは性格上、緊張しないでと、言われれば言われるほど勝手に緊張するタイプであった。
「もー何でレオルド様は私にこんな役割を与えたなかな~」
その呟きに対して、それはそれだけ期待されているからだよ、とはもちろん言えず、文官の女は話をずらした。
「それでは、用意された部屋に向かいますか。既に、春雨より必要な書類は中に入れてあります。」
「了解です、早速行きましょうか。」
2人は、用意された部屋へと向かった。
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