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連邦編
第13話 取引
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「はい?」
これまで沈黙を貫いてきた俺であったが、いきなりで驚いて間抜けな声を出してしまった。
「ヘレナ様と同時に婚姻する事を心配しているようでしたらご安心ください。むしろヘレナ様の方から同時に式をあげないか、と誘われたほどです。」
「うちのヘレナは、昔からイレーナちゃんとは特別仲が良かったからな、そういう事もあるだろう。王家としては、正妻をヘレナにするならば文句はない。」
いや、別にそんな事心配してないよ。婚約を通り越して結婚?しかも相手はイレーナ?
というか王家もよく了承したなって思ったが、おそらく結託しているのだろう。
【おそらく、外堀は既に埋められております。】
どうしてそう思う?
【理由としては、国王と王太子が婚姻の話を聞いても驚いていない点です。】
確かに、そうなるな。
【それぞれの娘をマスターの妻にする事によって、これ以上妻が増えない事を狙っていると思われます。王宮としては、貴族同士が結託し合う事は避けたいでしょうし・・・・・・】
って事はこれ、絶対逃げられないやつじゃん。
不可避の弾丸ってやつ?
【・・・・・・だいたいあっています。ですがあれほど大胆な要求がイレーナさんとマスターが結婚するだけで通るなら安いものです。実際、マスターも満更でもないようですし・・・・・・】
うぅ・・・・・・
確かに想定はしてたけど・・・・・・
まぁ、ありか、無しかで言えば断然ありだけど・・・
よし、このまま決まるのは少し癪だ、なら一矢報いてやろう。
「では、イレーナ様の気持ちを確認してもよろしいでしょうか。我々の都合で、彼女に結婚を強いるのは少し嫌なので・・・・・・」
「そこは安心してほしい。私の娘は間違いなく君に夢中だ。」
ギュスターさんは、表情を一切変えずに断言した。どうやら相当な自信があるようだ。
「本人の口からちゃんと聞きたいです。ギュスターさん、よろしくお願いします。」
「わかりました。イレーナ、そこで盗み聞きしていないで入って来なさい。」
ギュスターさんが呼ぶと、会議室のドアがすぐに開き、赤毛の少女が入って来た。
「は、はい、お父様。」
やっぱりな、なんかドアの向こう側に気配を感じたんだよな~
どうやら盗み聞きしていたようだ。ちょっと可愛い。
午前中に行われたパーティーの衣装とは一転、紅に染められた子供が少し背伸びしたような大人らしさの溢れるドレスに身を包み、俺の前へとやって来た。
部屋中全員が1人の少女に注目が集まる中、当の本人は恥ずかしそうに赤面していた。
「あんまり見ないでよ、バカ」
イレーナは、誰も聞こえないほど小さな声で呟いた。
もちろん、アイによるアシストで耳が良い俺には届いている。
だが、あえて聞こえなかったフリをした。
「え?なんて?」
「な、何でもないわよ。」
少し視線を逸らしながら、イレーナは答えた。どうやら相当恥ずかしいらしい。
「そう。」
「・・・」
「・・・」
しばらく沈黙が続く。
何も言えずに黙っていたイレーナに、お母様が助け舟を出した。
「レオルド、大勢の前では緊張してしまうかもしれないから、彼女を連れて別の場所に行って来なさい。よろしいですよね、陛下。」
「うむ、許可しよう。好きな所へ行くが良い。ただし、手を繋いでな。」
「は、はい、わかりました。」
「て、手をっ!」
国王陛下のファインプレーに、イレーナの顔が更に赤くなった。
おそらく、軽いパニック状態になっているだろう。
俺は、陛下の命令通り、立ち上がると右手を差し出した。
「じゃあ行こっか、イレーナ。」
「う、うん・・・・・・」
俺は、イレーナの手をしっかりと握って部屋を飛び出した。
先ほどまでイレーナの事を散々可愛がっていたが、俺ももちろん無傷ではない。
お互いに顔を赤らめながら、俺たちは城の中庭へとやって来た。
既に辺りは真っ暗になっており、人気が無かった。
俺たちは、手を繋ぎならベンチに腰を下ろした。
「月が綺麗だな。」
「そ、そうね。」
前世では、告白とほぼ同じ意味を持つセリフを言ってみた。当然、真意は伝わらない。
「れ、レオルドっ!」
少し声が裏返りながら、イレーナは呟いた。
俺は少し惚けながら答える。
「ど、どうした?」
「一度しか言わないからよく聞きなさいよ。」
「お、おう。」
イレーナが俺の瞳を見つめて来たので、見つめ返す。
「いい?聞き漏らすとかしないでよ?」
「大丈夫だって、こう見えて耳良いんだよ。」
「そ、そう。」
「うん。」
そして、再び静寂が訪れた。だが、先程とは違い、彼女には覚悟ができていた。
「スキダカラ・・・・・・」
「え?何?」
「私は貴方の事が好き、大好きっ!だから私と結婚しなさいっ!拒否権は無いわっ!」
赤らめた顔をさらに赤くしながら叫んだ。
俺は、最初から決めていた通りの返事を彼女にした。
「うん、いいよ。これからもよろしく、イレーナ。」
俺がイレーナの顔をしっかりと見つめながら答えると、『好き』でいっぱいになったイレーナが、立ち上がって俺に覆いかぶさって来た。
「ありがとっ!レオルドっ!」
「ちょ、ちょっと待ってうわぁー」
俺は、バランスを崩してベンチに寝っ転がる。その上に、イレーナが乗った。
「えへへ、これからもずーとずっとよろしくね、旦那様」
2人は抱きしめ合いながら、熱いキスを交わした。
これまで沈黙を貫いてきた俺であったが、いきなりで驚いて間抜けな声を出してしまった。
「ヘレナ様と同時に婚姻する事を心配しているようでしたらご安心ください。むしろヘレナ様の方から同時に式をあげないか、と誘われたほどです。」
「うちのヘレナは、昔からイレーナちゃんとは特別仲が良かったからな、そういう事もあるだろう。王家としては、正妻をヘレナにするならば文句はない。」
いや、別にそんな事心配してないよ。婚約を通り越して結婚?しかも相手はイレーナ?
というか王家もよく了承したなって思ったが、おそらく結託しているのだろう。
【おそらく、外堀は既に埋められております。】
どうしてそう思う?
【理由としては、国王と王太子が婚姻の話を聞いても驚いていない点です。】
確かに、そうなるな。
【それぞれの娘をマスターの妻にする事によって、これ以上妻が増えない事を狙っていると思われます。王宮としては、貴族同士が結託し合う事は避けたいでしょうし・・・・・・】
って事はこれ、絶対逃げられないやつじゃん。
不可避の弾丸ってやつ?
【・・・・・・だいたいあっています。ですがあれほど大胆な要求がイレーナさんとマスターが結婚するだけで通るなら安いものです。実際、マスターも満更でもないようですし・・・・・・】
うぅ・・・・・・
確かに想定はしてたけど・・・・・・
まぁ、ありか、無しかで言えば断然ありだけど・・・
よし、このまま決まるのは少し癪だ、なら一矢報いてやろう。
「では、イレーナ様の気持ちを確認してもよろしいでしょうか。我々の都合で、彼女に結婚を強いるのは少し嫌なので・・・・・・」
「そこは安心してほしい。私の娘は間違いなく君に夢中だ。」
ギュスターさんは、表情を一切変えずに断言した。どうやら相当な自信があるようだ。
「本人の口からちゃんと聞きたいです。ギュスターさん、よろしくお願いします。」
「わかりました。イレーナ、そこで盗み聞きしていないで入って来なさい。」
ギュスターさんが呼ぶと、会議室のドアがすぐに開き、赤毛の少女が入って来た。
「は、はい、お父様。」
やっぱりな、なんかドアの向こう側に気配を感じたんだよな~
どうやら盗み聞きしていたようだ。ちょっと可愛い。
午前中に行われたパーティーの衣装とは一転、紅に染められた子供が少し背伸びしたような大人らしさの溢れるドレスに身を包み、俺の前へとやって来た。
部屋中全員が1人の少女に注目が集まる中、当の本人は恥ずかしそうに赤面していた。
「あんまり見ないでよ、バカ」
イレーナは、誰も聞こえないほど小さな声で呟いた。
もちろん、アイによるアシストで耳が良い俺には届いている。
だが、あえて聞こえなかったフリをした。
「え?なんて?」
「な、何でもないわよ。」
少し視線を逸らしながら、イレーナは答えた。どうやら相当恥ずかしいらしい。
「そう。」
「・・・」
「・・・」
しばらく沈黙が続く。
何も言えずに黙っていたイレーナに、お母様が助け舟を出した。
「レオルド、大勢の前では緊張してしまうかもしれないから、彼女を連れて別の場所に行って来なさい。よろしいですよね、陛下。」
「うむ、許可しよう。好きな所へ行くが良い。ただし、手を繋いでな。」
「は、はい、わかりました。」
「て、手をっ!」
国王陛下のファインプレーに、イレーナの顔が更に赤くなった。
おそらく、軽いパニック状態になっているだろう。
俺は、陛下の命令通り、立ち上がると右手を差し出した。
「じゃあ行こっか、イレーナ。」
「う、うん・・・・・・」
俺は、イレーナの手をしっかりと握って部屋を飛び出した。
先ほどまでイレーナの事を散々可愛がっていたが、俺ももちろん無傷ではない。
お互いに顔を赤らめながら、俺たちは城の中庭へとやって来た。
既に辺りは真っ暗になっており、人気が無かった。
俺たちは、手を繋ぎならベンチに腰を下ろした。
「月が綺麗だな。」
「そ、そうね。」
前世では、告白とほぼ同じ意味を持つセリフを言ってみた。当然、真意は伝わらない。
「れ、レオルドっ!」
少し声が裏返りながら、イレーナは呟いた。
俺は少し惚けながら答える。
「ど、どうした?」
「一度しか言わないからよく聞きなさいよ。」
「お、おう。」
イレーナが俺の瞳を見つめて来たので、見つめ返す。
「いい?聞き漏らすとかしないでよ?」
「大丈夫だって、こう見えて耳良いんだよ。」
「そ、そう。」
「うん。」
そして、再び静寂が訪れた。だが、先程とは違い、彼女には覚悟ができていた。
「スキダカラ・・・・・・」
「え?何?」
「私は貴方の事が好き、大好きっ!だから私と結婚しなさいっ!拒否権は無いわっ!」
赤らめた顔をさらに赤くしながら叫んだ。
俺は、最初から決めていた通りの返事を彼女にした。
「うん、いいよ。これからもよろしく、イレーナ。」
俺がイレーナの顔をしっかりと見つめながら答えると、『好き』でいっぱいになったイレーナが、立ち上がって俺に覆いかぶさって来た。
「ありがとっ!レオルドっ!」
「ちょ、ちょっと待ってうわぁー」
俺は、バランスを崩してベンチに寝っ転がる。その上に、イレーナが乗った。
「えへへ、これからもずーとずっとよろしくね、旦那様」
2人は抱きしめ合いながら、熱いキスを交わした。
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