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連邦編
第7話 戦略
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「ふぅ・・・・・・」
ゆっくりと息を吐きながら、ゆっくりと鍵盤から手を離す。
「「「・・・・・・」」」
演奏が終わった俺たちに対して、誰もが言葉を失った。
同時に彼らは理解したのだろう、自分達と俺たちの間にある圧倒的な差を。
それは、埋められない溝であった。
貴族達は皆、ピアノを持っているが、持っているだけで、これほど素晴らしい演奏はできないし、聴いた事がないはずだ。
おそらく彼らも、競ってピアノの練習をしていると思うが、数ヶ月練習した程度でこのレベルは不可能だ。
演奏が終わっても、誰もが思わず言葉を失いシーンとなったパーティー会場であったが、お母様が優しく拍手をし始めるとそれに釣られてパーティーに参加したほぼ全員が拍手を始めた。
拍手が止み、ミレヴァが席を立ち席をあけると続いて俺は、1人で『千本桜』を弾き始めた。前世で好きだった曲の一つで、弾いているとよく聞いていた事を思い出す。
先程までのクラッシックから一転、独特なテンポと、社交ダンスを完全に無視する速さで一気に駆け抜ける。
・・・・・・歌がないのがもったいないな。
【ハーンブルク領に戻ったら、歌手を募集しましょう。ウィートンで歌わせたら人気が出ると思います。】
いいかもな。
その後もミレヴァのソロ、もう一度連弾をし、2人で合計4曲を披露した。
ちなみに『千本桜』に関しては家でなら何度か弾いた事があったが、ミレヴァには初めてみせたので後で楽譜を送ってと、強く言われた。
もちろん了承しておいた。
盛大な歓声に満足し、そろそろ元の位置に戻ろうかと考えていると、目的の人物の方から声をかけて来た。
「凄かったわ、レオ君。少し見ない間に、さらに凄くなったね。」
何人かの友人を引き連れてやった来た彼女に、俺は頭を下げながら返事をする。
「はい、たくさん練習しました。」
「レオルド様~誰?この人。」
「そっか、ミラヴァは会った事ないから知らないのか。こちら僕の姉のファリア姉さんだ。」
「どうも初めまして、ハーンブルク伯爵家が次女ファリア=フォン=ハーンブルクです。」
「こちらこそよろしく~ピアニストのミレヴァで~す。」
ファリア姉さんは、数年前から王都にある王立学校に通っており、そこで貴族としての立ち振る舞いやマナーなどを学んでいる。
ちなみに学力などはハーンブルク領にある学校と比べるとお話にならないレベルで低く、筆記テストなどもやらないらしい。
流石に学校に通っていない一般人よりは多少できると思うが、まぁその辺は気にしちゃダメな感じだ。
「お元気そうで何よりです、姉さん。」
「レオ君も元気みたいだね。手紙にも書いてあったけどやっぱり本物の演奏は違うんだね。」
どうやら姉さんも俺らの演奏を楽しんでくれたようだ。
姉さんは月に2通ほどのペースでハーンブルク領に近況報告を書いた手紙を送っており、俺たちも姉さん宛に手紙を送っていた。
ちなみに、何度か姉さんを通してピアノを買いたいという依頼も受けている。
もう1人の姉がいた気がするが、気のせいだろう。
「はい、同じピアノで同じ曲を演奏してと、弾く人の技量によって天と地ほどの開きがあります。今回僕とパートナーを組んだミラヴァは、正真正銘世界一のピアニストですから。演奏も素晴らしいものが出来ました。」
「私も話は聞いているわ、先日のコンテストで優勝したそうね。この演奏なら納得だわ。」
「ありがとね~」
姉さんは、うんうんと頷きながら感想を言うと、ミレヴァはいつもの口調で答えた。
姉さんも、最近はピアノにハマっているらしく、俺とミレヴァの上手さが理解できたようだ。
何というか、姉さんは以前よりもよく喋る人になっている。4年間の学校生活で成長したのだろうか。
姉さんと再会できたので、俺は頼んでいた事お願いした。
「じゃあ姉さん、早速紹介してくれる?」
「わかったわ、2人とも前に出てきてくれる?」
姉さんはそういうと、後ろで待っていた彼女の友人達を呼び寄せた。
2人の男女が前に立つ。
「初めまして、デュークス男爵家の長男、オリバーです。」
「初めまして、レオルド様。お噂はよく聞いております、私はレーテーン伯爵家次女のミーシアです。」
「初めまして、いつも姉がお世話になっております、弟で、長男のレオルド=フォン=ハーンブルクです。」
そう、俺は姉さんにある特定の貴族と仲良くしてほしいと伝えておいたのだ。
戦略的重要地という言葉がある。
前世でも、ジブラルタルやスエズ、パナマ、マレーシアなどの戦略的に重要な拠点がある。
ハーンブルク領の今後の発展のために、俺はある2つの地点を堅めたいと考えた。
1つ目は、王都とリバスタの間。
ここが安全かつ安定的になれば、鉄道を引く事ができ、鉄道が引ければハーンブルク領は更なる発展を遂げるだろうと予想した。
2つ目は、王国の南にある島だ。
サーマルディア王国とガラシオル帝国のほぼ真ん中あたりにある島で、ここは戦略的に今後最も重要な地点の1つだ。
幸い王国は、この2つの地点について、その重要性に気付いていないか、戦争による消耗で手が出せていない。
早いうちに、この2つの拠点を味方陣営に引き入れる事が目標だ。
そのためにもまずは、この2つの地域を治める貴族とコンタクトを取ることにした。
ゆっくりと息を吐きながら、ゆっくりと鍵盤から手を離す。
「「「・・・・・・」」」
演奏が終わった俺たちに対して、誰もが言葉を失った。
同時に彼らは理解したのだろう、自分達と俺たちの間にある圧倒的な差を。
それは、埋められない溝であった。
貴族達は皆、ピアノを持っているが、持っているだけで、これほど素晴らしい演奏はできないし、聴いた事がないはずだ。
おそらく彼らも、競ってピアノの練習をしていると思うが、数ヶ月練習した程度でこのレベルは不可能だ。
演奏が終わっても、誰もが思わず言葉を失いシーンとなったパーティー会場であったが、お母様が優しく拍手をし始めるとそれに釣られてパーティーに参加したほぼ全員が拍手を始めた。
拍手が止み、ミレヴァが席を立ち席をあけると続いて俺は、1人で『千本桜』を弾き始めた。前世で好きだった曲の一つで、弾いているとよく聞いていた事を思い出す。
先程までのクラッシックから一転、独特なテンポと、社交ダンスを完全に無視する速さで一気に駆け抜ける。
・・・・・・歌がないのがもったいないな。
【ハーンブルク領に戻ったら、歌手を募集しましょう。ウィートンで歌わせたら人気が出ると思います。】
いいかもな。
その後もミレヴァのソロ、もう一度連弾をし、2人で合計4曲を披露した。
ちなみに『千本桜』に関しては家でなら何度か弾いた事があったが、ミレヴァには初めてみせたので後で楽譜を送ってと、強く言われた。
もちろん了承しておいた。
盛大な歓声に満足し、そろそろ元の位置に戻ろうかと考えていると、目的の人物の方から声をかけて来た。
「凄かったわ、レオ君。少し見ない間に、さらに凄くなったね。」
何人かの友人を引き連れてやった来た彼女に、俺は頭を下げながら返事をする。
「はい、たくさん練習しました。」
「レオルド様~誰?この人。」
「そっか、ミラヴァは会った事ないから知らないのか。こちら僕の姉のファリア姉さんだ。」
「どうも初めまして、ハーンブルク伯爵家が次女ファリア=フォン=ハーンブルクです。」
「こちらこそよろしく~ピアニストのミレヴァで~す。」
ファリア姉さんは、数年前から王都にある王立学校に通っており、そこで貴族としての立ち振る舞いやマナーなどを学んでいる。
ちなみに学力などはハーンブルク領にある学校と比べるとお話にならないレベルで低く、筆記テストなどもやらないらしい。
流石に学校に通っていない一般人よりは多少できると思うが、まぁその辺は気にしちゃダメな感じだ。
「お元気そうで何よりです、姉さん。」
「レオ君も元気みたいだね。手紙にも書いてあったけどやっぱり本物の演奏は違うんだね。」
どうやら姉さんも俺らの演奏を楽しんでくれたようだ。
姉さんは月に2通ほどのペースでハーンブルク領に近況報告を書いた手紙を送っており、俺たちも姉さん宛に手紙を送っていた。
ちなみに、何度か姉さんを通してピアノを買いたいという依頼も受けている。
もう1人の姉がいた気がするが、気のせいだろう。
「はい、同じピアノで同じ曲を演奏してと、弾く人の技量によって天と地ほどの開きがあります。今回僕とパートナーを組んだミラヴァは、正真正銘世界一のピアニストですから。演奏も素晴らしいものが出来ました。」
「私も話は聞いているわ、先日のコンテストで優勝したそうね。この演奏なら納得だわ。」
「ありがとね~」
姉さんは、うんうんと頷きながら感想を言うと、ミレヴァはいつもの口調で答えた。
姉さんも、最近はピアノにハマっているらしく、俺とミレヴァの上手さが理解できたようだ。
何というか、姉さんは以前よりもよく喋る人になっている。4年間の学校生活で成長したのだろうか。
姉さんと再会できたので、俺は頼んでいた事お願いした。
「じゃあ姉さん、早速紹介してくれる?」
「わかったわ、2人とも前に出てきてくれる?」
姉さんはそういうと、後ろで待っていた彼女の友人達を呼び寄せた。
2人の男女が前に立つ。
「初めまして、デュークス男爵家の長男、オリバーです。」
「初めまして、レオルド様。お噂はよく聞いております、私はレーテーン伯爵家次女のミーシアです。」
「初めまして、いつも姉がお世話になっております、弟で、長男のレオルド=フォン=ハーンブルクです。」
そう、俺は姉さんにある特定の貴族と仲良くしてほしいと伝えておいたのだ。
戦略的重要地という言葉がある。
前世でも、ジブラルタルやスエズ、パナマ、マレーシアなどの戦略的に重要な拠点がある。
ハーンブルク領の今後の発展のために、俺はある2つの地点を堅めたいと考えた。
1つ目は、王都とリバスタの間。
ここが安全かつ安定的になれば、鉄道を引く事ができ、鉄道が引ければハーンブルク領は更なる発展を遂げるだろうと予想した。
2つ目は、王国の南にある島だ。
サーマルディア王国とガラシオル帝国のほぼ真ん中あたりにある島で、ここは戦略的に今後最も重要な地点の1つだ。
幸い王国は、この2つの地点について、その重要性に気付いていないか、戦争による消耗で手が出せていない。
早いうちに、この2つの拠点を味方陣営に引き入れる事が目標だ。
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