77 / 90
連邦編
第5話 訪問
しおりを挟む
「久しぶりの王都ですね、レオルド」
「はい、そうですね。」
ゆっくりと街道を進む馬車の中から、外の様子を眺めながら答えた。
現在俺たちは、国王から招集を受け、王城へと向かっていた。
天気は曇りであったが、王城はとても賑わっていた。
話は1ヶ月ほど前に遡る。
ある日突然、ハーンブルク家に王都から使者がやって来た。
何やら王宮から手紙が来たらしい。
「お母様、王宮は何と?」
「戦勝記念のパーティーを行うから是非参加してほしいとの事です。おそらく、教国の問題にひと段落ついたのでしょう。」
「やはり、行かないといけないのでしょうか?」
俺が尋ねると、お母様は何か考えながら答えた。
おそらく王宮が貴族を招集した本当の理由を探っているのだろう。
「・・・・・・流石に今回は行かないといけませんね。戦勝記念という事で、全ての貴族を招待するようです。」
「わかりました、王都に向かう準備をします。」
「お願いします。それと、念の為SHSを使って、周囲の貴族の動向を監視して下さい。嫌な予感がします。」
「わかりました。」
数日後、先日完成した新たな『レインシリーズ』である『時雨』と『五月雨』を含む総勢8隻の大艦隊を引き連れて俺たちはリバスタに到着、そしてそこから馬車で王都へと向かった。
道中は大したトラブルもなく王都に到着した。強いていうならば盗賊に襲われたぐらいだが、襲う相手を間違えていると言わざるを得ない。
何事もなかったように退けた。
王都にたどり着いた俺たちは、自宅(別荘)で色々と準備を整えた後、王城へと向かっていた。
ちなみに後ろの馬車にはヘレナ様も乗っており、彼女も久しぶりに実家に帰れると、楽しみにしていた。
王都での暮らしよりもハーンブルク領での暮らしの方がご飯も美味しく、楽しい生活を送っていたが、両親が側にいない生活というのはやはり寂しい。
ハーンブルク領で暮らし始めてからもうすぐ4年の月日が経過するが、その気持ちはずっと変わらなかった。
また、同じ馬車にイレーナも乗っており、彼女もまた、久しぶりの王都を楽しみにしていた。
「やはり、街が少し廃れていますね。」
「はい、先の戦争における負担が大きかったのでしょう。もしかしたらこの光景を見せるために僕達をここに呼んだのかもしれません。」
「そんな事が・・・・・・」
久しぶりに訪れた王都は、少し変わっていた。かつての国内最大の都市は姿を消していた。
現在はかろうじて戦勝記念という事で活気があるが、所々に廃れた家や店が見える。
また、王都に住む国民の顔を見れば、ある程度どんな感じなのかわかる。
「家や仕事を失う者が増えているという報告が入っています。また、多くの商人がリバスタに流れた結果、人口も激減したそうです。」
「同情する気はありませんが、発展というのは恐ろしいですね。」
「はい、むしろ王都は良い方です。地方のあまり裕福でない貴族やその土地の領民達が重税に苦しんでいるそうです。」
お母様は他人に優しい。しかし、感情で動く人間ではない。
家族ならまだしも、赤の他人に手を差し伸べるような人間ではないのだ。
「なるほど、やはりそうなりましたか。となれば、今回の招集の目的は・・・・・・」
「はい、我々の予想通りでしょう・・・」
いつも通り顔パスで入城した俺たちは、執事の案内に従ってパーティー会場へと案内された。
既に多くの貴族がそれぞれパーティーを楽しんでいた。
俺たちが顔を出した直後、まるで俺たちを待っていたかのように多くの貴族達が俺たちの周りへと押しかけた。
「お久しぶりでございます、エリナ様。この度は戦勝おめでとうございます。」
「お久しぶりでございます、エリナ様・・・・・・」
「エリナ様、戦勝おめでとうございます・・・・・・」
と、このように多くの貴族が俺たち一行の周りに集まった。そして、彼らは決まってこう言うのだった。
「「「是非私の娘を、ご子息様の妻に・・・・・・」」」
・・・・・・どこかで見た事がある光景だな。
【地方の貴族からすれば、今回のパーティーは有力な貴族と繋がりを作る数少ないチャンスです、我慢して下さい。】
予想通り、か。
ハーンブルク領の入領審査はザルだ。何せ領土が広い上、島ならともかく陸路全てをカバーするのは不可能だからだ。
しかし、これが貴族となれば話は別である。貴族の掟の1つに、他人の領地を通る時は連絡をした上で許可をもらわなければならない。場合によっては通行料を取られる事もあり、色々と面倒くさい。
そして、お母様は基本的に貴族に対して通行を一切認めなかった。
そこで、普通なら貴族達は商会から欲しい物を買ったり頼んだりといった事を行う。
だが、ハーンブルク領と取引がしたいなら本拠地をハーンブルク領にしなければいけなく、ハーンブルク領に本拠地がある商会は、王都などの大都市ならばともかくわざわざ地方の貴族の領地を訪れるのは稀だ。
さらに、仮に商会が地方の都市を訪れたとしても、そこでの取引は相場の数倍の値段で行われている。
もちろん、これはハーンブルク家からの指示で行われているわけではないが、輸送費を考えるとそれぐらいが妥当だ。
トラックや航空機が無いこの世界では、人や物の移動は時間がかかる上、常に危険と隣り合わせな命懸けの仕事だ。
このような理由から、地方の貴族は大金を支払って商会を自分の領地に呼び寄せる。そしてそのお金はハーンブルク家の懐に入ってくる。
当然、全て計算通りであった。
ちなみに俺の隣には、常にヘレナ様とイレーナがまるで番犬のように結婚を申し込もうとする貴族達を睨んでいた。
「つまり、ユリウスが標的になったという事だ。」
「解説していないで、助けて下さいよ、兄さん」
俺の天使であるユリウスは、弱々しい声で俺に助けを求めた。
「頑張り給え、大人になるための試練ってやつだ。」
「そんなぁ・・・・・・」
ユリウスに試練を与えつつ、俺は目的の人物の下へ歩いていった。
「はい、そうですね。」
ゆっくりと街道を進む馬車の中から、外の様子を眺めながら答えた。
現在俺たちは、国王から招集を受け、王城へと向かっていた。
天気は曇りであったが、王城はとても賑わっていた。
話は1ヶ月ほど前に遡る。
ある日突然、ハーンブルク家に王都から使者がやって来た。
何やら王宮から手紙が来たらしい。
「お母様、王宮は何と?」
「戦勝記念のパーティーを行うから是非参加してほしいとの事です。おそらく、教国の問題にひと段落ついたのでしょう。」
「やはり、行かないといけないのでしょうか?」
俺が尋ねると、お母様は何か考えながら答えた。
おそらく王宮が貴族を招集した本当の理由を探っているのだろう。
「・・・・・・流石に今回は行かないといけませんね。戦勝記念という事で、全ての貴族を招待するようです。」
「わかりました、王都に向かう準備をします。」
「お願いします。それと、念の為SHSを使って、周囲の貴族の動向を監視して下さい。嫌な予感がします。」
「わかりました。」
数日後、先日完成した新たな『レインシリーズ』である『時雨』と『五月雨』を含む総勢8隻の大艦隊を引き連れて俺たちはリバスタに到着、そしてそこから馬車で王都へと向かった。
道中は大したトラブルもなく王都に到着した。強いていうならば盗賊に襲われたぐらいだが、襲う相手を間違えていると言わざるを得ない。
何事もなかったように退けた。
王都にたどり着いた俺たちは、自宅(別荘)で色々と準備を整えた後、王城へと向かっていた。
ちなみに後ろの馬車にはヘレナ様も乗っており、彼女も久しぶりに実家に帰れると、楽しみにしていた。
王都での暮らしよりもハーンブルク領での暮らしの方がご飯も美味しく、楽しい生活を送っていたが、両親が側にいない生活というのはやはり寂しい。
ハーンブルク領で暮らし始めてからもうすぐ4年の月日が経過するが、その気持ちはずっと変わらなかった。
また、同じ馬車にイレーナも乗っており、彼女もまた、久しぶりの王都を楽しみにしていた。
「やはり、街が少し廃れていますね。」
「はい、先の戦争における負担が大きかったのでしょう。もしかしたらこの光景を見せるために僕達をここに呼んだのかもしれません。」
「そんな事が・・・・・・」
久しぶりに訪れた王都は、少し変わっていた。かつての国内最大の都市は姿を消していた。
現在はかろうじて戦勝記念という事で活気があるが、所々に廃れた家や店が見える。
また、王都に住む国民の顔を見れば、ある程度どんな感じなのかわかる。
「家や仕事を失う者が増えているという報告が入っています。また、多くの商人がリバスタに流れた結果、人口も激減したそうです。」
「同情する気はありませんが、発展というのは恐ろしいですね。」
「はい、むしろ王都は良い方です。地方のあまり裕福でない貴族やその土地の領民達が重税に苦しんでいるそうです。」
お母様は他人に優しい。しかし、感情で動く人間ではない。
家族ならまだしも、赤の他人に手を差し伸べるような人間ではないのだ。
「なるほど、やはりそうなりましたか。となれば、今回の招集の目的は・・・・・・」
「はい、我々の予想通りでしょう・・・」
いつも通り顔パスで入城した俺たちは、執事の案内に従ってパーティー会場へと案内された。
既に多くの貴族がそれぞれパーティーを楽しんでいた。
俺たちが顔を出した直後、まるで俺たちを待っていたかのように多くの貴族達が俺たちの周りへと押しかけた。
「お久しぶりでございます、エリナ様。この度は戦勝おめでとうございます。」
「お久しぶりでございます、エリナ様・・・・・・」
「エリナ様、戦勝おめでとうございます・・・・・・」
と、このように多くの貴族が俺たち一行の周りに集まった。そして、彼らは決まってこう言うのだった。
「「「是非私の娘を、ご子息様の妻に・・・・・・」」」
・・・・・・どこかで見た事がある光景だな。
【地方の貴族からすれば、今回のパーティーは有力な貴族と繋がりを作る数少ないチャンスです、我慢して下さい。】
予想通り、か。
ハーンブルク領の入領審査はザルだ。何せ領土が広い上、島ならともかく陸路全てをカバーするのは不可能だからだ。
しかし、これが貴族となれば話は別である。貴族の掟の1つに、他人の領地を通る時は連絡をした上で許可をもらわなければならない。場合によっては通行料を取られる事もあり、色々と面倒くさい。
そして、お母様は基本的に貴族に対して通行を一切認めなかった。
そこで、普通なら貴族達は商会から欲しい物を買ったり頼んだりといった事を行う。
だが、ハーンブルク領と取引がしたいなら本拠地をハーンブルク領にしなければいけなく、ハーンブルク領に本拠地がある商会は、王都などの大都市ならばともかくわざわざ地方の貴族の領地を訪れるのは稀だ。
さらに、仮に商会が地方の都市を訪れたとしても、そこでの取引は相場の数倍の値段で行われている。
もちろん、これはハーンブルク家からの指示で行われているわけではないが、輸送費を考えるとそれぐらいが妥当だ。
トラックや航空機が無いこの世界では、人や物の移動は時間がかかる上、常に危険と隣り合わせな命懸けの仕事だ。
このような理由から、地方の貴族は大金を支払って商会を自分の領地に呼び寄せる。そしてそのお金はハーンブルク家の懐に入ってくる。
当然、全て計算通りであった。
ちなみに俺の隣には、常にヘレナ様とイレーナがまるで番犬のように結婚を申し込もうとする貴族達を睨んでいた。
「つまり、ユリウスが標的になったという事だ。」
「解説していないで、助けて下さいよ、兄さん」
俺の天使であるユリウスは、弱々しい声で俺に助けを求めた。
「頑張り給え、大人になるための試練ってやつだ。」
「そんなぁ・・・・・・」
ユリウスに試練を与えつつ、俺は目的の人物の下へ歩いていった。
19
お気に入りに追加
942
あなたにおすすめの小説
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる