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家族編

第3話 来訪

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16:55

俺は、今か今かとキックオフを待っていた。

今日は俺の誕生日、という事でエキシビジョンマッチがシュヴェリーンのスタジアムで行われる事となった。

出場チームは、ドリームチームとミラクルチームだ。

ドリームチームというのは、ハーンブルク家が運営する3チームの中からファン投票で選ばれた15名のチーム。

ミラクルチームというのは、MSWと新たにハーンブルクリーグに加わった2つの民間チームからファン投票で選ばれた15名チームだ。

ちなみに新たに加わった2つの民間チームというのは、



『C・テラトスタ』通称・・・CTT

本拠地・・・ハーンブルク領湾岸都市テラトスタ

チームカラー・・・青色



『J・ミドール』通称・・・JFM

本拠地・・・ハーンブルク領工業都市ミドール

チームカラー・・・白と黒



の2チームだ。

CTTの方は、ハーンブルク家が作った糸を買い服や布にして輸出する商会がメインとなって運営し、JFMの方は、ハーンブルク家が作った鉄などの金属を買って加工して輸出する商会がメインとなって運営している。

両チームとも今年からリーグに加わった新チームであるが、その実力は申し分ない。これで、4大都市の内の3都市にそれぞれ2チームずつプロチームが誕生した事になった。

ちなみに、この2つのチームのスタジアムももう少しで完成する予定で、完成すればスタジアムは全部で6つになる。



今日は特別という事で、一般応募の抽選を勝ち抜いた1万人の領民と、ハーンブルク家で働いている使用人や研究員、兵士などを全員招待して大々的に行う事となった。



今回は俺も、ベンチではなく観覧席からピッチを眺めていた。ちなみに今は魔法式を使っていないので、『アイ』は俺の中だ。



そして俺の隣には何故か・・・・・・



「いや~それにしてもすごいね~私はこれが楽しみで仕方がなかったんだよ、レオルド君。」



「は、はぁ・・・・・・」



サーマルディア王国宰相のギュスターさんがいた。いやほんと何してんの。

今戦争中だろ?宰相がこんな所来て大丈夫かよ。



と、思わず突っ込みそうになったが、戦線は膠着状態になっており、現場の指揮は国防軍の将校や軍務卿に任せてあるので暇らしい。

一応今日は、俺の成人式のお祝いに来てくれたそうだ。



「それと聞きましたよ、サラージア王国を退けたそうですね。」



「はい、お母様のおかげで何とか領地を守れました。」



「素晴らしい活躍ですね。イレーナをあなたの下で学ばせたのは正解でした。」



前会った時に比べて、表情の変化が大きくなった気がする。何かいい事でもあったのだろうか。



「ギュスターさんとしては、今回の戦争をどのように終結させようと考えているのですか?」



「そうですね、1番良い結果はトリアス教の根絶ですが、それは厳しそうです。現状サーマルディア王国内にも数多くの信者がいるので、反乱を起こされたら困ります。」



「では現状維持ですか?」



「はい、それが現段階での最善策です。教国よりも我が国の方が持久力があります。教国が戦争を続けれなくなるまで粘るのが現実的です。」



「という事は、ハーンブルク領からまた大量の武器や食料を買うのですか?」



「そうなりますね。こればかりは仕方がないと考えいます。サラージア王国との戦争中に我が国の国防軍の将校は犯した失態については既に知っております。代わりにハーンブルク領の物資を相場よりも少し高めで購入しようと考えております。」



「ありがとうございます。母も喜ぶと思います。」



「では政治の話はこれぐらいにして、サッカーの観戦をしましょう。私はもちろん、娘が監督を務めるドリームチーム側を応援します。」



今日の試合、ドリームチーム側はイレーナ、ミラクルチーム側は俺の弟のユリウスが監督を務めている。

ユリウスは最近サッカーにハマっており、俺が忙しい時もサッカー場で護衛や家臣の子供と一緒にサッカーをやっている事が多い。

それで、監督をやってみたいと言われたので、名前だけであるが、ミラクルチームの監督にした。

本人は今頃、これから激戦を繰り広げるであろう選手達に大興奮だろう。



「そろそろ始めましょうか。」



既に時計の針は17時を指しており、観客の興奮度合も高まってきた。

俺は審判に、手で開始の合図をした。両チームの選手がそれぞれの配置につくと、キックオフを告げる笛が鳴り響いた。




✳︎




白いユニホームを着たドリームチームと、赤いユニホームを着たミラクルチームの選手達は、それぞれ縦横無尽に駆け回る。



ボールは右へ左へと運ばれ、ゴールに近ければ近いほど、歓声は大きくなった。



前々から野球で言うところのオールスターゲームのような物があればなーって思っていたが、まさか自分の誕生日にやる事になるとは思わなかった。

この企画を提案したのはお母様らしい。

正直ちょっとハマりすぎな気がする。



「いけー!」

「そこだーっ!」

「決めろっ!」



「「「あぁーー」」」



ゴールが決まれば観客全員でそれを喜び、ポストに当たったりキーパーがはじくとため息が漏れる。



前世の記憶の中にあるサッカーの観戦とほぼ同じ状況だ。



少し違うのは、男女比だろうか。

前世のサッカーでは、規定は無いが女性Jリーガーはいなかったはずだ。

しかし、この世界のサッカーでは全体のおよそ3割が女性の選手だ。

昨年優勝のRSWのキャプテンは女性だったりする。

今回の試合も22人中7人が女性だ。




そして、試合もいよいよ大詰め、現在はドリームチームが1点リードで残り5分。

アディショナルタイムとPKは導入していないので、このままドリームチームが逃げ切るか、ミラクルチームが引き分けに持っていくかの状況だ。



ボールを持つのはミラクルチームのキャプテン。

ポジションはDFである彼だが、超攻撃的でボールを持ったらどんどんサイドを使って攻撃してくる。

彼の出した綺麗な縦パスをライン際ギリギリで何とかミラクルチームのFWが受け取る。

そして少しキープした後、山なりにクロスを上げた。



それに合わせるのは、MSWのキャプテンであるミラクルチームのセンターFW。ちなみに女性だ。

彼女の放ったダイレクトボレーシュートは、面白いようにドリームチームのDFの間をすり抜け、ゴールに突き刺さった。



「「「ゴォーーールっ!!!」」」



一気にサポーターが沸いた。

俺も、敵チームながらすごいと思った。

スタジアム内が感動と興奮に包まれる。

戦術も含めて、少しずつサッカーのレベルも上がってきていた。



そんな中、この大歓声を静かに聞いていたギュスターさんが俺にこう言った。



「レオルド君、サッカーを王都で広めても良いかい?」



「ハーンブルク領の商品を沢山買ってくれるならいいですよ。」



「いいだろう、商談成立だ。」



ギュスターさんは、ある計画を立て始めた。



その後は、両チーム得点が入らず、2-2のままエキシビジョンマッチは静かに幕を閉じた。そして、我が家で俺の誕生日パーティーが行われた。



________________________



どうでもいい話



RSW・・・Rマドリード

FCT・・・バルセロナ

BML・・・バイエルンミュンヘン

MSW・・・マンチェスター

CTT・・・チェルシー

JFM・・・ユヴェントス
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