異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

佐々木サイ

文字の大きさ
上 下
40 / 90
軍事編

第12話 初撃

しおりを挟む
サーマルディア国防軍6000とサラージア王国軍8万は、森林地帯を抜けた先の少し開けたところで接敵した。

領土的にはギリギリサラージア王国内であり、1kmほど間隔を空けて両軍とも陣を張った。そしてそこから10kmほど離れた小さな丘に俺が率いるSHSが仮拠点を設置した。

ここならば、両軍の様子がよく見えるからだ。もちろん向こうから気づかれないように木々でカモフラージュをしており、接近した斥候は例え味方であっても殺すように命じてあるので見つかる事はないだろう。



また、ハーンブルク軍とハーンブルク領に残った国防軍兵士は、徐々に森の中に展開を開始した。しばらくは暇になると思うので、そこで待機を命じてある。



接敵から一夜挟んだ翌朝、ついにサラージア王国側が動いた。



「報告しますっ!敵は2万、2万、4万の3つに部隊を分け、挟撃を行う構えであります!」



「敵の指揮官の方はどうなっている。」



「左翼をソラーノ将軍、右翼をライカ将軍、そして中央を国王自らが指揮する構えであります。」



って言われてもなー俺敵国の将軍なんか1人も知らないぞ?



【ソラーノ将軍は推定年齢65歳の年老いた将軍です。性格としては力でゴリ押すタイプです。反対に、ライカ将軍は推定年齢40歳の若き将軍で、性格としては慎重なタイプです。よって狙うならソラーノ将軍の方だと思います。】



まぁ長期戦するなら慎重な将軍の方が行軍は遅くなるだろうしな~

なら敵の左翼に嫌がらせするか。



【そうするべきだと思います。】



「第202中隊は、俺と共に左翼のソラーノ将軍に嫌がらせを行う。ついて来い。」



「はっ。」



第202中隊の中隊長が応える。この中隊を選んだ理由は、クレアがここに所属しているからだ。



「他の部隊はシェリングを中心にここで待機、敵の威力偵察を続行してくれ。クレア、例の物を持って来てくれ。」



「了解しました。」



「よし、それじゃあ全員これだけは頭に入れておけ、生き残ればまだ戦う機会がある、だが死ねばそれで終わりだ。1人足りとも死ぬな。」



「「「了解っ!」」」



そして、俺たちは敵に見つからないように細心の注意を払いながらこっそりと近づいた。




✳︎




移動開始から1時間後、絶好の地点に到着した俺たちは身を隠しながら、双眼鏡で敵の動きを見ていた。

両軍の間の距離はすでに50mほどまで近づき、そろそろ合戦が始まろうとしていた。

また、ここからサラージア王国軍左翼までの距離はおよそ1.5kmほど離れている上、両軍とも相手に夢中で俺たちに気づいた様子は全くない。



【やるなら早くした方がいいですよ。】



わかってるよ。



「クレア、例の物を俺に渡してくれ。」



「了解致しました。」



そう応えると、クレア右手に持っていた黒いケースを俺に渡した。俺はそれを、手慣れた手つきであけ、中の物を取り出す。そして、寝っ転がりながら地面にセットした。

その様子を隣で見ていた中隊長は疑問の声をあげた。



「レオルド様、これは・・・・・・?」



「銃だ。だが普通の銃じゃない『MK-V2ドレータ』、俺用に特注した優れものだ。」



「我々に支給された『MK-1セレータ』と何処が違うのですか?」



「飛距離だな。『MK-1』はせいぜい800mしか飛ばないが、こっちMK-V2は2kmほど飛ぶ。」



「そんなにですかっ!」



「飛ぶだけで狙いをつけるのはさらに難しいからお前たちじゃ扱えないぞ。それと悪いが全員静かにしてくれ。集中したい。」



「はっ。」



俺は、精神を統一させると、スコープを覗き込んだ。まだ技術的にスコープに照準を付ける事は出来ないが、敵の将軍がよく見える。

『MK-V2』の正体は言わずもがな、スナイパーライフルである。

最初は、狙撃兵の集団も作ろうかと考えたが、口径が違ったり銃弾が違ったりで分けるのが面倒なため、今回は見送った。

いつかは必要となるだろう。



もちろん俺に1500m離れた敵を狙撃できるほどの腕はない。それどころか、自分の手で直接人を殺した事すらない。

今も恐怖で全身が微かに震えていた。

でも俺には、最強の切り札がある。



アイ、交代だ。



【了解しました。】



俺は、身体の主導権の一部をアイに譲渡した。

『アイ』ならば、完璧な狙撃が可能だからだ。



【風速2m/s、228度の風、目標までの距離1652.53m、高低差23.44m、気圧1018hPa、温度26.4度、湿度30.8%、以下のデータを基に、照準を合わせます。】



息を殺し、精神を研ぎ澄ませる。

照準を合わせるのは『アイ』だが、引き金を引くのは俺だ。




「行け。」




爆音とともに、銃身がブルっと震えた。サプレッサーや反動制御の類は一切付いていないので反動は凄まじい。

だが、アイの制御の下、魔力を使って限界まで身体を強化していたので銃口は真っ直ぐ標的に向いていた。



放たれた銃弾は、吸い込まれるように馬に乗ったソラーノ将軍の側頭部に着弾した。

そして、将軍は馬から崩れ落ち、呆気ない最期を迎えた。



「め、命中を確認っ!おそらく即死ですっ!」

「嘘だろっ!あんな遠くなのにっ!」

「これがレオルド様・・・・・・」



「静かにしろ、次を狙う。全員身をかがめて周囲の警戒を密にしろ。」



「「「了解。」」」



「これぐらいはできるようになってもらいたいな・・・・・・」



と、自分1人ではできもしないのに、そんな事を呟いた。流石にこれほどの長距離の狙撃を成功させろとは言わないが、400mぐらいなら終戦までに何人か成功させるかもしれない。

俺は、そんな事を考えながら無言で敵軍の幹部達を葬った。

狙撃は、敵がこの攻撃の原因が目の前の王国軍の仕業だと思い込んで、正面からの殴り合いに発展するまで続いた。ごちゃごちゃの混戦になると、狙撃をしても外してしまうので俺たちは仮拠点まで後退した。



結果として、俺は7人を殺した。




________________________________________________



どうでもいい話



楽しんでいただけると嬉しいです
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...