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軍事編
第12話 初撃
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サーマルディア国防軍6000とサラージア王国軍8万は、森林地帯を抜けた先の少し開けたところで接敵した。
領土的にはギリギリサラージア王国内であり、1kmほど間隔を空けて両軍とも陣を張った。そしてそこから10kmほど離れた小さな丘に俺が率いるSHSが仮拠点を設置した。
ここならば、両軍の様子がよく見えるからだ。もちろん向こうから気づかれないように木々でカモフラージュをしており、接近した斥候は例え味方であっても殺すように命じてあるので見つかる事はないだろう。
また、ハーンブルク軍とハーンブルク領に残った国防軍兵士は、徐々に森の中に展開を開始した。しばらくは暇になると思うので、そこで待機を命じてある。
接敵から一夜挟んだ翌朝、ついにサラージア王国側が動いた。
「報告しますっ!敵は2万、2万、4万の3つに部隊を分け、挟撃を行う構えであります!」
「敵の指揮官の方はどうなっている。」
「左翼をソラーノ将軍、右翼をライカ将軍、そして中央を国王自らが指揮する構えであります。」
って言われてもなー俺敵国の将軍なんか1人も知らないぞ?
【ソラーノ将軍は推定年齢65歳の年老いた将軍です。性格としては力でゴリ押すタイプです。反対に、ライカ将軍は推定年齢40歳の若き将軍で、性格としては慎重なタイプです。よって狙うならソラーノ将軍の方だと思います。】
まぁ長期戦するなら慎重な将軍の方が行軍は遅くなるだろうしな~
なら敵の左翼に嫌がらせするか。
【そうするべきだと思います。】
「第202中隊は、俺と共に左翼のソラーノ将軍に嫌がらせを行う。ついて来い。」
「はっ。」
第202中隊の中隊長が応える。この中隊を選んだ理由は、クレアがここに所属しているからだ。
「他の部隊はシェリングを中心にここで待機、敵の威力偵察を続行してくれ。クレア、例の物を持って来てくれ。」
「了解しました。」
「よし、それじゃあ全員これだけは頭に入れておけ、生き残ればまだ戦う機会がある、だが死ねばそれで終わりだ。1人足りとも死ぬな。」
「「「了解っ!」」」
そして、俺たちは敵に見つからないように細心の注意を払いながらこっそりと近づいた。
✳︎
移動開始から1時間後、絶好の地点に到着した俺たちは身を隠しながら、双眼鏡で敵の動きを見ていた。
両軍の間の距離はすでに50mほどまで近づき、そろそろ合戦が始まろうとしていた。
また、ここからサラージア王国軍左翼までの距離はおよそ1.5kmほど離れている上、両軍とも相手に夢中で俺たちに気づいた様子は全くない。
【やるなら早くした方がいいですよ。】
わかってるよ。
「クレア、例の物を俺に渡してくれ。」
「了解致しました。」
そう応えると、クレア右手に持っていた黒いケースを俺に渡した。俺はそれを、手慣れた手つきであけ、中の物を取り出す。そして、寝っ転がりながら地面にセットした。
その様子を隣で見ていた中隊長は疑問の声をあげた。
「レオルド様、これは・・・・・・?」
「銃だ。だが普通の銃じゃない『MK-V2ドレータ』、俺用に特注した優れものだ。」
「我々に支給された『MK-1セレータ』と何処が違うのですか?」
「飛距離だな。『MK-1』はせいぜい800mしか飛ばないが、こっちMK-V2は2kmほど飛ぶ。」
「そんなにですかっ!」
「飛ぶだけで狙いをつけるのはさらに難しいからお前たちじゃ扱えないぞ。それと悪いが全員静かにしてくれ。集中したい。」
「はっ。」
俺は、精神を統一させると、スコープを覗き込んだ。まだ技術的にスコープに照準を付ける事は出来ないが、敵の将軍がよく見える。
『MK-V2』の正体は言わずもがな、スナイパーライフルである。
最初は、狙撃兵の集団も作ろうかと考えたが、口径が違ったり銃弾が違ったりで分けるのが面倒なため、今回は見送った。
いつかは必要となるだろう。
もちろん俺に1500m離れた敵を狙撃できるほどの腕はない。それどころか、自分の手で直接人を殺した事すらない。
今も恐怖で全身が微かに震えていた。
でも俺には、最強の切り札がある。
アイ、交代だ。
【了解しました。】
俺は、身体の主導権の一部をアイに譲渡した。
『アイ』ならば、完璧な狙撃が可能だからだ。
【風速2m/s、228度の風、目標までの距離1652.53m、高低差23.44m、気圧1018hPa、温度26.4度、湿度30.8%、以下のデータを基に、照準を合わせます。】
息を殺し、精神を研ぎ澄ませる。
照準を合わせるのは『アイ』だが、引き金を引くのは俺だ。
「行け。」
爆音とともに、銃身がブルっと震えた。サプレッサーや反動制御の類は一切付いていないので反動は凄まじい。
だが、アイの制御の下、魔力を使って限界まで身体を強化していたので銃口は真っ直ぐ標的に向いていた。
放たれた銃弾は、吸い込まれるように馬に乗ったソラーノ将軍の側頭部に着弾した。
そして、将軍は馬から崩れ落ち、呆気ない最期を迎えた。
「め、命中を確認っ!おそらく即死ですっ!」
「嘘だろっ!あんな遠くなのにっ!」
「これがレオルド様・・・・・・」
「静かにしろ、次を狙う。全員身をかがめて周囲の警戒を密にしろ。」
「「「了解。」」」
「これぐらいはできるようになってもらいたいな・・・・・・」
と、自分1人ではできもしないのに、そんな事を呟いた。流石にこれほどの長距離の狙撃を成功させろとは言わないが、400mぐらいなら終戦までに何人か成功させるかもしれない。
俺は、そんな事を考えながら無言で敵軍の幹部達を葬った。
狙撃は、敵がこの攻撃の原因が目の前の王国軍の仕業だと思い込んで、正面からの殴り合いに発展するまで続いた。ごちゃごちゃの混戦になると、狙撃をしても外してしまうので俺たちは仮拠点まで後退した。
結果として、俺は7人を殺した。
________________________________________________
どうでもいい話
楽しんでいただけると嬉しいです
領土的にはギリギリサラージア王国内であり、1kmほど間隔を空けて両軍とも陣を張った。そしてそこから10kmほど離れた小さな丘に俺が率いるSHSが仮拠点を設置した。
ここならば、両軍の様子がよく見えるからだ。もちろん向こうから気づかれないように木々でカモフラージュをしており、接近した斥候は例え味方であっても殺すように命じてあるので見つかる事はないだろう。
また、ハーンブルク軍とハーンブルク領に残った国防軍兵士は、徐々に森の中に展開を開始した。しばらくは暇になると思うので、そこで待機を命じてある。
接敵から一夜挟んだ翌朝、ついにサラージア王国側が動いた。
「報告しますっ!敵は2万、2万、4万の3つに部隊を分け、挟撃を行う構えであります!」
「敵の指揮官の方はどうなっている。」
「左翼をソラーノ将軍、右翼をライカ将軍、そして中央を国王自らが指揮する構えであります。」
って言われてもなー俺敵国の将軍なんか1人も知らないぞ?
【ソラーノ将軍は推定年齢65歳の年老いた将軍です。性格としては力でゴリ押すタイプです。反対に、ライカ将軍は推定年齢40歳の若き将軍で、性格としては慎重なタイプです。よって狙うならソラーノ将軍の方だと思います。】
まぁ長期戦するなら慎重な将軍の方が行軍は遅くなるだろうしな~
なら敵の左翼に嫌がらせするか。
【そうするべきだと思います。】
「第202中隊は、俺と共に左翼のソラーノ将軍に嫌がらせを行う。ついて来い。」
「はっ。」
第202中隊の中隊長が応える。この中隊を選んだ理由は、クレアがここに所属しているからだ。
「他の部隊はシェリングを中心にここで待機、敵の威力偵察を続行してくれ。クレア、例の物を持って来てくれ。」
「了解しました。」
「よし、それじゃあ全員これだけは頭に入れておけ、生き残ればまだ戦う機会がある、だが死ねばそれで終わりだ。1人足りとも死ぬな。」
「「「了解っ!」」」
そして、俺たちは敵に見つからないように細心の注意を払いながらこっそりと近づいた。
✳︎
移動開始から1時間後、絶好の地点に到着した俺たちは身を隠しながら、双眼鏡で敵の動きを見ていた。
両軍の間の距離はすでに50mほどまで近づき、そろそろ合戦が始まろうとしていた。
また、ここからサラージア王国軍左翼までの距離はおよそ1.5kmほど離れている上、両軍とも相手に夢中で俺たちに気づいた様子は全くない。
【やるなら早くした方がいいですよ。】
わかってるよ。
「クレア、例の物を俺に渡してくれ。」
「了解致しました。」
そう応えると、クレア右手に持っていた黒いケースを俺に渡した。俺はそれを、手慣れた手つきであけ、中の物を取り出す。そして、寝っ転がりながら地面にセットした。
その様子を隣で見ていた中隊長は疑問の声をあげた。
「レオルド様、これは・・・・・・?」
「銃だ。だが普通の銃じゃない『MK-V2ドレータ』、俺用に特注した優れものだ。」
「我々に支給された『MK-1セレータ』と何処が違うのですか?」
「飛距離だな。『MK-1』はせいぜい800mしか飛ばないが、こっちMK-V2は2kmほど飛ぶ。」
「そんなにですかっ!」
「飛ぶだけで狙いをつけるのはさらに難しいからお前たちじゃ扱えないぞ。それと悪いが全員静かにしてくれ。集中したい。」
「はっ。」
俺は、精神を統一させると、スコープを覗き込んだ。まだ技術的にスコープに照準を付ける事は出来ないが、敵の将軍がよく見える。
『MK-V2』の正体は言わずもがな、スナイパーライフルである。
最初は、狙撃兵の集団も作ろうかと考えたが、口径が違ったり銃弾が違ったりで分けるのが面倒なため、今回は見送った。
いつかは必要となるだろう。
もちろん俺に1500m離れた敵を狙撃できるほどの腕はない。それどころか、自分の手で直接人を殺した事すらない。
今も恐怖で全身が微かに震えていた。
でも俺には、最強の切り札がある。
アイ、交代だ。
【了解しました。】
俺は、身体の主導権の一部をアイに譲渡した。
『アイ』ならば、完璧な狙撃が可能だからだ。
【風速2m/s、228度の風、目標までの距離1652.53m、高低差23.44m、気圧1018hPa、温度26.4度、湿度30.8%、以下のデータを基に、照準を合わせます。】
息を殺し、精神を研ぎ澄ませる。
照準を合わせるのは『アイ』だが、引き金を引くのは俺だ。
「行け。」
爆音とともに、銃身がブルっと震えた。サプレッサーや反動制御の類は一切付いていないので反動は凄まじい。
だが、アイの制御の下、魔力を使って限界まで身体を強化していたので銃口は真っ直ぐ標的に向いていた。
放たれた銃弾は、吸い込まれるように馬に乗ったソラーノ将軍の側頭部に着弾した。
そして、将軍は馬から崩れ落ち、呆気ない最期を迎えた。
「め、命中を確認っ!おそらく即死ですっ!」
「嘘だろっ!あんな遠くなのにっ!」
「これがレオルド様・・・・・・」
「静かにしろ、次を狙う。全員身をかがめて周囲の警戒を密にしろ。」
「「「了解。」」」
「これぐらいはできるようになってもらいたいな・・・・・・」
と、自分1人ではできもしないのに、そんな事を呟いた。流石にこれほどの長距離の狙撃を成功させろとは言わないが、400mぐらいなら終戦までに何人か成功させるかもしれない。
俺は、そんな事を考えながら無言で敵軍の幹部達を葬った。
狙撃は、敵がこの攻撃の原因が目の前の王国軍の仕業だと思い込んで、正面からの殴り合いに発展するまで続いた。ごちゃごちゃの混戦になると、狙撃をしても外してしまうので俺たちは仮拠点まで後退した。
結果として、俺は7人を殺した。
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