上 下
31 / 90
軍事編

第3話 亜人

しおりを挟む
亜人

人間でありながら、人間とは違う部位を持つ者達の総称。

この世界には、ドワーフやオーガのような亜人がいる。とは言ってもドラゴンのような単体で強力な戦力となるような存在はいないし、亜人の身体能力も人間とそれほど変わらない。

魔力持ちや魔法式持ちが生まれる可能性もそれほど変わらないので、ほぼ一緒だ。

だが、人間と亜人の間には大きな心の溝がある。現に今も、大陸の中央部では争いが絶えないそうだ。




✳︎




「レオルド様、危険ですのでお下がり下さい。」



懐から特殊なナイフを2本取り出したクレアは、俺を守るように前に立った。

報告にあった集落に部下十数名を連れて向かっていると、近くにあった木の下で1人の少女が寝ているのを発見した。

警戒するのも無理はない、彼女の耳には亜人の象徴でもある少しとんがった耳が付いている。



【俗に言うところのエルフだと思われます。】



おーまじか。エルフがいる事は知っていたけど、まさか本物に出会えるとはな。



【おそらく、近くに集落があるのでしょう。案内してもらう事を推奨します。】



まぁたしかに、ここを占領するなら仲良くしなきゃだと思うしな。



「大丈夫だよ、寝ているみたいだし。」



「そうよクレア。それに向かうは1人こっちは20人、負けるはずがないわ。」



「わかりました。」



取り出した2本のナイフをスカートの中に仕舞う。

さて、どうするか。変に刺激したら面倒な事になるぞ・・・。



【とりあえずその子を連れて集落の方へ向かいましょう。何もしていない事を証明するためです。】



わかった、そうしよう。



「しょうがないからこの子を起こす事にするよ。」



「そんな、危険ですっ!」



「放置する方が危険だ。攫われたと勘違いされたら面倒だし。」



俺は、彼女に近づくと少ししゃがみ、彼女を起こそうと試みる。

2、3度身体を揺らすとすぐに目を覚ました。



「ん・・・・・・ん?ん?ん?」(亜人語)



「よ、元気か?ってこれじゃわかんないか。」



やはり亜人なので亜人語でないと通じないようだ。幸い俺は、実家で散々亜人語を叩き込まれたのでまあまあ話せる。



「何か寝ていたみたいだけど大丈夫か?」(亜人語)



「に、人間ーー?!嘘・・・・・・それに、私たちと同じ言葉?」(亜人語)



「そこは気にするな。それより集落に案内してくれないか?」(亜人語)



「集落・・・・・・まぁいいよ。案内してあげる。」(亜人語)



「どうやら案内してくれるみたいだ、A大隊は俺と一緒に集落に顔を出す。B大隊は付近の捜索を続行してくれ。」



「「「了解」」」



どうやらこの島の住人は警戒心が無いらしい。普通余所者を村には案内しないだろ。

まぁ、案内してくれるならこれほど楽な事はない。



「そういえば君、名前は?」(亜人語)



「私はスピカ、よろしくね~」(亜人語)



「俺はレオルドだ。こちらこそよろしく頼む。」(亜人語)



歩き続ける事10分ほど、報告にあった集落が見えて来た。




✳︎




「お客さん達、ここが私たちの街だよ~」(亜人語)



先ほどの少女は嬉しそうに、俺たちを街に案内してくれた。

しかし、どうやらお気楽なのは、俺が出会ったこの子だけらしく、集落にいた住民達は俺たちを明らかに敵視していた。

俺を先頭に、ゾロゾロと集落の真ん中を歩く。集落と説明したが、その大きさはかなり大きく、大人から子供まで合わせればざっと3万人以上は暮らしていると思われる。

どのようにしてこのような集落ができたのかは知らないが、ここまで発展していると言う事は、長い間ここで暮らしていたのだろう。

エルフなら、森に住んでいるというイメージがあったが、彼らが住んでいるのは普通に山間の平野であった。



やがて、数十名の武器を持った兵隊を連れた1人の老人が俺の前に現れた。



「何しに来た、人間。」



驚いた事に、この集落のリーダーと思われる老人は、人類の共通語で話かけて来た。俺は一応、亜人語で答える。



「この島と国交を結ぼうと思ってここに来た。あなたがここの代表か?」(亜人語)



「ほう、我らの言葉がわかるのか。いかにもわしがこの集落の代表だ。皆には村長と呼ばれている。」(亜人語)



「そうか、なら話し合いの場を設けてくれないか?ここだと話しづらい。」(亜人語)



俺は、あくまで対話を試みる。武力による占領の方が楽そうだが、これほどの労働力を捨てるのはもったいないと思ったからだ。



「いいだろう、付いて来い。ただし、部下は2人までだ。」(亜人語)



【了解しても大丈夫です。むしろ好都合なまであります。】



アイからの連絡があったので、俺はすぐさま応じる事にした。



「わかった。」(亜人語)



そして、俺の護衛として来てくれたSHSのメンバー達に、別の命令を下す。



「イレーナとクレアだけ付いて来てくれ。他のみんなは、拠点の建設を手伝いに行け。」



「よろしいのですか?」



中隊の隊長が、心配そうに俺に尋ねる。だが、正直全く問題ない。



「あぁ大丈夫だ。これでも俺は結構戦える、最悪イレーナを囮にして逃げてくるさ。」



「ちょっと!私を囮にするってどう言う事よっ!」



部下は、俺の冗談に苦笑いしながら、敬礼した。



「わかりました、くれぐれも危険な事はしないで下さい。」



「わかっている。それと、例の物も見つけておいてくれ。今後のハーンブルク領発展に欠かせない物だ。」



「承知しております。では、失礼します。」



そう頭を下げると、来た道を引き返していった。

最悪、『アイ』に身体の支配権を預けて逃げれば問題ないだろう。

例え毒を混ぜられても、『アイ』であれば解毒も可能だ。俺は、細心の注意を払いながら、会談へと臨んだ。



__________________________________________



どうでもいい話



『アイ』優秀すぎる問題発生
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ここ掘れわんわんから始まる異世界生活―陸上戦艦なにそれ?―

北京犬(英)
ファンタジー
第一章改稿版に差し替中。 暫く繋がりがおかしくなりますが、ご容赦ください。(2020.10.31) 第四章完結。第五章に入りました。 追加タグ:愛犬がチート、モフモフ、農業、奴隷、少しコメディ寄り、時々シリアス、ほのぼの  愛犬のチワワと共に異世界転生した佐々木蔵人(ささき くらんど)が、愛犬プチのユニークスキル”ここ掘れわんわん”に助けられて異世界でスローライフを満喫しようとします。 しかし転生して降り立った場所は魔物が蔓延る秘境の森。 蔵人の基本レベルは1で、持っているスキルも初期スキルのLv.1のみ。 ある日、プチの”ここ掘れわんわん”によりチート能力を得てしまいます。 しかし蔵人は自身のイメージ力の問題でチート能力を使いこなせません。 思い付きで農場をチート改造して生活に困らなくなり、奴隷を買い、なぜか全員が嫁になってハーレム生活を開始。 そして塒(ねぐら)として確保した遺跡が……。大きな陰謀に巻き込まれてしまいます。 前途多難な異世界生活を愛犬や嫁達と共に生き延びて、望みのスローライフを送れるのだろうかという物語です。 基本、生産チートでほのぼの生活が主体――のはずだったのですが、陸上戦艦の艦隊戦や戦争描写が増えています。 小説家になろう、カクヨムでも公開しています。改稿版はカクヨム最新。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...