26 / 90
国内編
第26話 蹴球
しおりを挟む
世界初となるサッカーの試合を行うに至って、1番考えたのはチーム名である。
俺が住んでいた都道府県にあるサッカーチームの名前を使おうかなぁと考えていたが、その2つのチームは弱く、なんか残念な感じになってしまう。
そこで、日本でも有名な海外のチーム名を借りる事にした。
『R・シュヴェリーン』通称・・・RSW
初代キャプテン・・・アン
本拠地・・・ハーンブルク領首都シュヴェリーン
チームカラー・・・白
『FC・テラトスタ』通称・・・FCT
初代キャプテン・・・スルマ
本拠地・・・ハーンブルク領湾岸都市テラトスタ
チームカラー・・・赤と青
ちなみに現在、テラトスタに新たなサッカー場を建設している最中だ。完成したら、4戦ずつ交互に開催を予定している。完成は、今年の冬頃を予定しているので、気長に待つ事にしている。
夏のある日曜日、ハーンブルク領首都シュヴェリーンに新たに建設されたスタジアムに、ハーンブルク領の領民およそ2万人が集まった。
シュヴェリーンに住む者だけでなく、テラトスタやミドールからも多くの領民が集まった。観戦に来たのはサッカー好きだけでなく、噂を聞きつけた商人は周囲に屋台を展開し、様々な飲食の販売を行った。
中でも飛ぶように売れているのはチームのユニフォームのレプリカである。
一応、予想観客動員数である2万着を用意したが、試合が始まる前に売り切れそうな勢いだ。まじかよ。
もちろん売れたのはユニフォームだけではない、選手達の名前と出身を載せた選手名鑑も馬鹿みたいに売れた。写真を写す技術はないし、前年度の活躍とかもないので、だいぶネタ切れ感は否めなかったが、後半にサッカーの簡単なルールやサッカー用具の紹介を載せたら売れた。こちらは、1万部しか用意していなかったので瞬殺した。
サッカーの力おそるべし。
お母様の方針で、今回周囲の貴族には招待状の類を一切出していない。噂が広まれば、観戦したいとお願いされるだろう。そうなった時は足元を見つつ、大量の利権を確保しようという魂胆だ。
この時代の馬鹿貴族どもは、利権の大切さを知らないだろう。
代わりに、子供達がいる家族を優先して招待した。
やはり、子供の力は偉大だ。子供がハマれば、親もハマる。サッカーボロ儲け大作戦は既に大成功した。
そしていよいよ、2万人のサポーターが見つめる中、世界初のサッカーの公式戦がキックオフオフした。
アンのRSWも、スルマのFCTも4-3-3を採用していた。
イレーナの指示だろうか、どちらかというと防御よりの布陣だった。俺は、アンの実力が最大限に発揮できるように中盤を抑え、攻撃的な布陣にした。
俺たちはそれぞれ、ベンチから選手達を応援する。ちなみに俺の家族とヘレナ様は、ベンチ裏に作られた特別観覧席に座って観戦している。
試合はもちろん45分ハーフの90分で、延長やPK、アディショナルタイムはなしで、交代は3回までだ。2チームしかないので、とりあえず毎週土曜日と日曜日のどちらかの夕方5時をキックオフにしている。
ちなみに時計などはないので、巨大な砂時計が中央に置かれており、それで時間を測る。
試合が動いたのは、前半が始まってすぐの事だった。ハーフライン付近でボールを奪ったアンを中心に、チーム全体で攻撃を仕掛ける。FCTの必死の防衛を前に、一瞬生じた敵の隙をRSWのキャプテンであるアンは見逃さなかった。
ペナルティーエリアの少し内側から放った彼女の左足のシュートは、真っ直ぐにゴールに突き刺さった。
突如、スタジアム全体が興奮に包まれた。
「うぉぉおおー!」
「すげ~」
「かっけぇぇぇ!」
俺も思わずベンチを飛び出して、喜んだ。アンのチームメイト達も一斉に彼女の下へと集まる。
当の本人は、ゴールを見つめたまま、動けないでいた。世界最強MFの金髪美少女は、現実を正しく認識できていなかった。
そして、チームメイトに抱きつかれて初めて自分がゴールを決めた事を自覚した。
この上ない喜びを噛み締め、両手を高く上げる。すると、それに応えるようにさらに歓声が大きくなった。
そしてこのゴールによって、サポーター達にもある変化が生まれた。だんだんと、応援が揃うようになっていき、一体感が生まれていった。
RSWを応援する領民とFCTを応援する領民に分かれて応援合戦が始まった。
✳︎
世界初のサッカーの試合は静かに幕を下ろした。前半に先制点を得たRSWがこのまま勢いにのると思ったら、前半の終わりごろに見事なカウンターをくらい、1-1のイーブンに戻された。
その後はそのまま前半が終了し、後半もお互い点数が入らずに終盤に差し掛かった。
勝負を決めたのは、やはり彼女であった。
後半43分、このまま引き分けで微妙な感じで終わるかなぁ・・・・・・って思っていると、アンが得意のドリブルで3人抜きを達成し、再び弾丸のような左足のシュートでゴールを奪った。
会場は大興奮である。
いつの間にかRSWのサポーターになっていた領民達は、周囲の仲間達と抱き合いながら喜び、いつの間にかFCTのサポーターになっていた領民達は頭を抱えて悔しがっていた。
それぞれのチームの練習などは公表していなかったので、彼らは今日それぞれのチームのファンになった者たちだ。
中でも、美しくて可憐な容姿+世界最強MFであるアンは、大量のファンを獲得していた。
正直俺も、彼女のファンになっていた。贔屓をするつもりはないが、彼女の腕は確かな者であった。
試合終了後、それぞれの選手達によるファンサービスタイムが取られた。
各チームに配られた14個の公式専用のサッカーボールにそれぞれ昨日即席で作らせたサインを書かせ、ファンにプレゼントした。
選手のサイン入りボールをゲットできたラッキーな子供達は大喜びであった。
流石に女の子も多いのでユニフォームのプレゼントはなかったが、結局公式戦で使った2個のボールもこの日2ゴールを挙げたアンがサインを書き、プレゼントされる事となった。
そして、お母様が試合終了を宣言し、世界初のサッカーの試合は静かに幕を下ろした。7時ごろに終了した結果、観戦を行った領民達はそのままシュヴェリーンの飲食店で夕食をとっていたため、今日の飲食店や宿の売上はとてつもない物になっていた。
______________________________________________
どうでもいい話
作者は別に"サッカー部であった"というわけではないのでサッカーの内容は薄いです。サッカー経験は、小学生の時にお遊びで習っていた程度です。
オフサイド?何それ美味しいの?
俺が住んでいた都道府県にあるサッカーチームの名前を使おうかなぁと考えていたが、その2つのチームは弱く、なんか残念な感じになってしまう。
そこで、日本でも有名な海外のチーム名を借りる事にした。
『R・シュヴェリーン』通称・・・RSW
初代キャプテン・・・アン
本拠地・・・ハーンブルク領首都シュヴェリーン
チームカラー・・・白
『FC・テラトスタ』通称・・・FCT
初代キャプテン・・・スルマ
本拠地・・・ハーンブルク領湾岸都市テラトスタ
チームカラー・・・赤と青
ちなみに現在、テラトスタに新たなサッカー場を建設している最中だ。完成したら、4戦ずつ交互に開催を予定している。完成は、今年の冬頃を予定しているので、気長に待つ事にしている。
夏のある日曜日、ハーンブルク領首都シュヴェリーンに新たに建設されたスタジアムに、ハーンブルク領の領民およそ2万人が集まった。
シュヴェリーンに住む者だけでなく、テラトスタやミドールからも多くの領民が集まった。観戦に来たのはサッカー好きだけでなく、噂を聞きつけた商人は周囲に屋台を展開し、様々な飲食の販売を行った。
中でも飛ぶように売れているのはチームのユニフォームのレプリカである。
一応、予想観客動員数である2万着を用意したが、試合が始まる前に売り切れそうな勢いだ。まじかよ。
もちろん売れたのはユニフォームだけではない、選手達の名前と出身を載せた選手名鑑も馬鹿みたいに売れた。写真を写す技術はないし、前年度の活躍とかもないので、だいぶネタ切れ感は否めなかったが、後半にサッカーの簡単なルールやサッカー用具の紹介を載せたら売れた。こちらは、1万部しか用意していなかったので瞬殺した。
サッカーの力おそるべし。
お母様の方針で、今回周囲の貴族には招待状の類を一切出していない。噂が広まれば、観戦したいとお願いされるだろう。そうなった時は足元を見つつ、大量の利権を確保しようという魂胆だ。
この時代の馬鹿貴族どもは、利権の大切さを知らないだろう。
代わりに、子供達がいる家族を優先して招待した。
やはり、子供の力は偉大だ。子供がハマれば、親もハマる。サッカーボロ儲け大作戦は既に大成功した。
そしていよいよ、2万人のサポーターが見つめる中、世界初のサッカーの公式戦がキックオフオフした。
アンのRSWも、スルマのFCTも4-3-3を採用していた。
イレーナの指示だろうか、どちらかというと防御よりの布陣だった。俺は、アンの実力が最大限に発揮できるように中盤を抑え、攻撃的な布陣にした。
俺たちはそれぞれ、ベンチから選手達を応援する。ちなみに俺の家族とヘレナ様は、ベンチ裏に作られた特別観覧席に座って観戦している。
試合はもちろん45分ハーフの90分で、延長やPK、アディショナルタイムはなしで、交代は3回までだ。2チームしかないので、とりあえず毎週土曜日と日曜日のどちらかの夕方5時をキックオフにしている。
ちなみに時計などはないので、巨大な砂時計が中央に置かれており、それで時間を測る。
試合が動いたのは、前半が始まってすぐの事だった。ハーフライン付近でボールを奪ったアンを中心に、チーム全体で攻撃を仕掛ける。FCTの必死の防衛を前に、一瞬生じた敵の隙をRSWのキャプテンであるアンは見逃さなかった。
ペナルティーエリアの少し内側から放った彼女の左足のシュートは、真っ直ぐにゴールに突き刺さった。
突如、スタジアム全体が興奮に包まれた。
「うぉぉおおー!」
「すげ~」
「かっけぇぇぇ!」
俺も思わずベンチを飛び出して、喜んだ。アンのチームメイト達も一斉に彼女の下へと集まる。
当の本人は、ゴールを見つめたまま、動けないでいた。世界最強MFの金髪美少女は、現実を正しく認識できていなかった。
そして、チームメイトに抱きつかれて初めて自分がゴールを決めた事を自覚した。
この上ない喜びを噛み締め、両手を高く上げる。すると、それに応えるようにさらに歓声が大きくなった。
そしてこのゴールによって、サポーター達にもある変化が生まれた。だんだんと、応援が揃うようになっていき、一体感が生まれていった。
RSWを応援する領民とFCTを応援する領民に分かれて応援合戦が始まった。
✳︎
世界初のサッカーの試合は静かに幕を下ろした。前半に先制点を得たRSWがこのまま勢いにのると思ったら、前半の終わりごろに見事なカウンターをくらい、1-1のイーブンに戻された。
その後はそのまま前半が終了し、後半もお互い点数が入らずに終盤に差し掛かった。
勝負を決めたのは、やはり彼女であった。
後半43分、このまま引き分けで微妙な感じで終わるかなぁ・・・・・・って思っていると、アンが得意のドリブルで3人抜きを達成し、再び弾丸のような左足のシュートでゴールを奪った。
会場は大興奮である。
いつの間にかRSWのサポーターになっていた領民達は、周囲の仲間達と抱き合いながら喜び、いつの間にかFCTのサポーターになっていた領民達は頭を抱えて悔しがっていた。
それぞれのチームの練習などは公表していなかったので、彼らは今日それぞれのチームのファンになった者たちだ。
中でも、美しくて可憐な容姿+世界最強MFであるアンは、大量のファンを獲得していた。
正直俺も、彼女のファンになっていた。贔屓をするつもりはないが、彼女の腕は確かな者であった。
試合終了後、それぞれの選手達によるファンサービスタイムが取られた。
各チームに配られた14個の公式専用のサッカーボールにそれぞれ昨日即席で作らせたサインを書かせ、ファンにプレゼントした。
選手のサイン入りボールをゲットできたラッキーな子供達は大喜びであった。
流石に女の子も多いのでユニフォームのプレゼントはなかったが、結局公式戦で使った2個のボールもこの日2ゴールを挙げたアンがサインを書き、プレゼントされる事となった。
そして、お母様が試合終了を宣言し、世界初のサッカーの試合は静かに幕を下ろした。7時ごろに終了した結果、観戦を行った領民達はそのままシュヴェリーンの飲食店で夕食をとっていたため、今日の飲食店や宿の売上はとてつもない物になっていた。
______________________________________________
どうでもいい話
作者は別に"サッカー部であった"というわけではないのでサッカーの内容は薄いです。サッカー経験は、小学生の時にお遊びで習っていた程度です。
オフサイド?何それ美味しいの?
13
お気に入りに追加
944
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。


【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています


最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる