異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

佐々木サイ

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国内編

第26話 蹴球

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世界初となるサッカーの試合を行うに至って、1番考えたのはチーム名である。

俺が住んでいた都道府県にあるサッカーチームの名前を使おうかなぁと考えていたが、その2つのチームは弱く、なんか残念な感じになってしまう。

そこで、日本でも有名な海外のチーム名を借りる事にした。



『R・シュヴェリーン』通称・・・RSW

初代キャプテン・・・アン

本拠地・・・ハーンブルク領首都シュヴェリーン

チームカラー・・・白



『FC・テラトスタ』通称・・・FCT

初代キャプテン・・・スルマ

本拠地・・・ハーンブルク領湾岸都市テラトスタ

チームカラー・・・赤と青



ちなみに現在、テラトスタに新たなサッカー場を建設している最中だ。完成したら、4戦ずつ交互に開催を予定している。完成は、今年の冬頃を予定しているので、気長に待つ事にしている。



夏のある日曜日、ハーンブルク領首都シュヴェリーンに新たに建設されたスタジアムに、ハーンブルク領の領民およそ2万人が集まった。

シュヴェリーンに住む者だけでなく、テラトスタやミドールからも多くの領民が集まった。観戦に来たのはサッカー好きだけでなく、噂を聞きつけた商人は周囲に屋台を展開し、様々な飲食の販売を行った。

中でも飛ぶように売れているのはチームのユニフォームのレプリカである。

一応、予想観客動員数である2万着を用意したが、試合が始まる前に売り切れそうな勢いだ。まじかよ。

もちろん売れたのはユニフォームだけではない、選手達の名前と出身を載せた選手名鑑も馬鹿みたいに売れた。写真を写す技術はないし、前年度の活躍とかもないので、だいぶネタ切れ感は否めなかったが、後半にサッカーの簡単なルールやサッカー用具の紹介を載せたら売れた。こちらは、1万部しか用意していなかったので瞬殺した。

サッカーの力おそるべし。



お母様の方針で、今回周囲の貴族には招待状の類を一切出していない。噂が広まれば、観戦したいとお願いされるだろう。そうなった時は足元を見つつ、大量の利権を確保しようという魂胆だ。

この時代の馬鹿貴族どもは、利権の大切さを知らないだろう。



代わりに、子供達がいる家族を優先して招待した。

やはり、子供の力は偉大だ。子供がハマれば、親もハマる。サッカーボロ儲け大作戦は既に大成功した。



そしていよいよ、2万人のサポーターが見つめる中、世界初のサッカーの公式戦がキックオフオフした。



アンのRSWも、スルマのFCTも4-3-3を採用していた。

イレーナの指示だろうか、どちらかというと防御よりの布陣だった。俺は、アンの実力が最大限に発揮できるように中盤を抑え、攻撃的な布陣にした。



俺たちはそれぞれ、ベンチから選手達を応援する。ちなみに俺の家族とヘレナ様は、ベンチ裏に作られた特別観覧席に座って観戦している。

試合はもちろん45分ハーフの90分で、延長やPK、アディショナルタイムはなしで、交代は3回までだ。2チームしかないので、とりあえず毎週土曜日と日曜日のどちらかの夕方5時をキックオフにしている。

ちなみに時計などはないので、巨大な砂時計が中央に置かれており、それで時間を測る。



試合が動いたのは、前半が始まってすぐの事だった。ハーフライン付近でボールを奪ったアンを中心に、チーム全体で攻撃を仕掛ける。FCTの必死の防衛を前に、一瞬生じた敵の隙をRSWのキャプテンであるアンは見逃さなかった。

ペナルティーエリアの少し内側から放った彼女の左足のシュートは、真っ直ぐにゴールに突き刺さった。

突如、スタジアム全体が興奮に包まれた。



「うぉぉおおー!」

「すげ~」

「かっけぇぇぇ!」



俺も思わずベンチを飛び出して、喜んだ。アンのチームメイト達も一斉に彼女の下へと集まる。

当の本人は、ゴールを見つめたまま、動けないでいた。世界最強MFの金髪美少女は、現実を正しく認識できていなかった。

そして、チームメイトに抱きつかれて初めて自分がゴールを決めた事を自覚した。

この上ない喜びを噛み締め、両手を高く上げる。すると、それに応えるようにさらに歓声が大きくなった。



そしてこのゴールによって、サポーター達にもある変化が生まれた。だんだんと、応援が揃うようになっていき、一体感が生まれていった。

RSWを応援する領民とFCTを応援する領民に分かれて応援合戦が始まった。




✳︎




世界初のサッカーの試合は静かに幕を下ろした。前半に先制点を得たRSWがこのまま勢いにのると思ったら、前半の終わりごろに見事なカウンターをくらい、1-1のイーブンに戻された。

その後はそのまま前半が終了し、後半もお互い点数が入らずに終盤に差し掛かった。

勝負を決めたのは、やはり彼女であった。

後半43分、このまま引き分けで微妙な感じで終わるかなぁ・・・・・・って思っていると、アンが得意のドリブルで3人抜きを達成し、再び弾丸のような左足のシュートでゴールを奪った。



会場は大興奮である。

いつの間にかRSWのサポーターになっていた領民達は、周囲の仲間達と抱き合いながら喜び、いつの間にかFCTのサポーターになっていた領民達は頭を抱えて悔しがっていた。



それぞれのチームの練習などは公表していなかったので、彼らは今日それぞれのチームのファンになった者たちだ。

中でも、美しくて可憐な容姿+世界最強MFであるアンは、大量のファンを獲得していた。

正直俺も、彼女のファンになっていた。贔屓をするつもりはないが、彼女の腕は確かな者であった。



試合終了後、それぞれの選手達によるファンサービスタイムが取られた。

各チームに配られた14個の公式専用のサッカーボールにそれぞれ昨日即席で作らせたサインを書かせ、ファンにプレゼントした。

選手のサイン入りボールをゲットできたラッキーな子供達は大喜びであった。

流石に女の子も多いのでユニフォームのプレゼントはなかったが、結局公式戦で使った2個のボールもこの日2ゴールを挙げたアンがサインを書き、プレゼントされる事となった。



そして、お母様が試合終了を宣言し、世界初のサッカーの試合は静かに幕を下ろした。7時ごろに終了した結果、観戦を行った領民達はそのままシュヴェリーンの飲食店で夕食をとっていたため、今日の飲食店や宿の売上はとてつもない物になっていた。




______________________________________________

どうでもいい話



作者は別に"サッカー部であった"というわけではないのでサッカーの内容は薄いです。サッカー経験は、小学生の時にお遊びで習っていた程度です。

オフサイド?何それ美味しいの?
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