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国内編
第25話 集客
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どうしてこうなった・・・・・・
突然決まった、第三王女ヘレナのハーンブルク領への招待、流石のお母様とてこの展開は予想していなかったらしく、珍しく困った顔をしていた。こんなに困った顔を見たのは、俺が製鉄技術と蒸気機関を発明した時ぐらいだ。なんだか懐かしい。
と、そんな話は置いといて、俺はお母様と今後の方針を話し合う事にした。
「おそらくですが、王太子殿下が許可を出している以上、彼女がハーンブルク領に来る事は避けられません。問題は、護衛をどうするかです。」
「ごめんなさい、お母様。『テンペスト』を自慢したいという気持ちはありましたが、まさかこう来るとは思っていませんでした。」
一応婚約者ではあるが、俺は彼女の事を何も知らないし、護衛をどうするか、と言った問題が発生する。
護衛というのは、ヘレナに同乗してくる連中の事だ。ヘレナ本人のみであれば、そんなに手間はかからないが、護衛がたくさん来るとなると話は変わってくる。
今はまだ知られたくない物がたくさんあるのだ。
『テンペスト』に乗ってくるんじゃなかったと後悔する一方で、ヘレナ様と仲良くなれるならそれもありかもしれない、とそんな事を考える。
「どういう対策を行いますか?」
「ヘレナ様にお願いして、護衛の人数を出来るだけ少なくしてもらいます。この際、多少の情報の漏洩は仕方がないとして、製鉄と蒸気機関の死守に専念します。」
「わかりました。足を引っ張ってごめんなさい、お母様。」
おそらくそれが、今考えられる中で最善の選択だ。
俺が、思わず頭を下げながら謝ると、お母様は尊敬すべき母親の対応をみせた。
「レオルド、そんなに自分を責めないで下さい、子供の失敗は、親である私が責任を持ちます。」
お母様は、俺の頭を優しく撫でながらそう言った。やっぱりお母様は、尊敬すべき母親だ。
その後、お母様の狙い通りに話が進んだ。
ヘレナ様には、船の都合で護衛は1人までしか連れていけないと伝えると、先ほどの船内見学でもヘレナ様の後ろを付いてきていた女騎士さんを指名した。
第3王女とはいえ、王族が護衛をたった1人しか連れずに遠くに赴いたという話は、多くの人々を驚かせた。
後に、この話が天下の鬼才と謳われたレオルド・フォン・ハーンブルクと彼を支えた王女ヘレナ・フォン・ハーンブルクとがお互いを信頼し合っていた事がわかる最初のエピソードとして有名になったのは、別の話。
これでもかと言わんばかりに火薬を積んだ黒船級輸送艦『テンペスト』は、次の日の朝早くに『リバスタ』を去った。
俺たちが『シュヴェリーン』に着く頃にはアレが完成しているだろう。
俺は、面倒な事は一旦忘れて、全力で楽しみたいなと、思いを膨らませるのであった。
✳︎
ハーンブルク領、首都シュヴェリーン
シュヴェリーンへと帰って来た俺は、もうすぐ完成しそうなアレに備えて、チームの練習を見学する事にした。
俺にもう少し身長と年齢があったらな~と思いつつ、アン達の練習を見守る。
シュヴェリーン最強のMFであるアンの上手さは俺がリバスタに行く前よりも磨きがかかっており、成長していた。
簡単な戦術や技を伝授すると、彼女らは貪欲に練習に励んだ。
そしてその隣では、ヘレナが一生懸命ボールを蹴っていた。
ヘレナにも、サッカーを知ってもらおうと思って、ついて来てもらっている。
「・・・・・・結構難しいですね、レオルド様」
「まぁ最初のうちは誰でも苦戦すると思うよ。」
そう本人は言っていたが、イレーナよりも覚えが早い。もしかしたらヘレナにサッカーの才能があるのかもしれない。
「レオルド様はできるのですか?」
「それなりにね。もう少し大きくなったらチームに加わるかもな。」
練習を終えたヘレナは、サッカーボールを抱きしめながらアン達の練習を見守る。
ちなみにこのボールは、試合用に作成した特別なボールだ。布ではなく、動物の皮を使って作った特注品で、まだ30個ほどしか作れていない。とりあえず各チーム14個ずつ配り、練習をしてもらった。残りの2つは試合用だ。
そして、そろそろお昼休憩をしようかと思った直後、1人の男が俺の下へとやって来た。
「報告しますっ!現在建設中でしたサッカー場の全工程が終了いたしました!既に新型のゴールも配置済みです!」
「それは本当かっ!」
「はい!間違いございません!」
「ついに完成したか・・・・・・なら早速試合の準備をしろっ!来週の日曜日にキックオフだっ!」
「了解っ!」
部下に必要な物をメモさせて集めに行かせる。ユニフォームや売店の準備を進めるためだ。
「クレア、イレーナに最初の試合の日程が決まったと伝えて来てくれ。」
「わかりました、レオルド様」
「申し訳ございません、ヘレナ様。用事が入ってしまったので行きますね。」
「お仕事頑張って下さい、レオルド様」
俺は、俺の護衛として来ていたSHSのメンバー数名を連れて、この前新しく作ったサッカー管理部へと向かった。
✳︎
「都市内の飲食店に、出店を打診しろっ!それと予約してくれている領民達にそれぞれチケットを渡しに行けっ!」
「「「了解」」」
サッカー管理部へとたどり着いた俺はすぐさま色々なところに指示を送った。
領民にチケットを渡しに行くように命じた。より本格的なチケットをもらえば、関心が高まるからだ。
それぞれのチームの応援歌を使ったり、即席でトランペットのような物を作ったりして、盛り上げるための政策を行う。
今年一年の年間予定表を作り、それを大々的に公表する。
もしかしたら、チームの数が増えるかもしれないが、領民がチケットを買いやすくするためだ。
チケットの値段は1家族(4人)で最低賃金の1日分ぐらいになるように調整した。
チケット販売はサッカー管理部が一括で管理し、全席自由席にした。こっちの方が楽だからだ。
迷惑な客を撃退するための警備員ももちろん手配する。
そんなこんなで準備をしていたら、あっという間にキックオフがやって来た。
______________________________________________
どうでもいい話
楽しんでいただけると嬉しいです
突然決まった、第三王女ヘレナのハーンブルク領への招待、流石のお母様とてこの展開は予想していなかったらしく、珍しく困った顔をしていた。こんなに困った顔を見たのは、俺が製鉄技術と蒸気機関を発明した時ぐらいだ。なんだか懐かしい。
と、そんな話は置いといて、俺はお母様と今後の方針を話し合う事にした。
「おそらくですが、王太子殿下が許可を出している以上、彼女がハーンブルク領に来る事は避けられません。問題は、護衛をどうするかです。」
「ごめんなさい、お母様。『テンペスト』を自慢したいという気持ちはありましたが、まさかこう来るとは思っていませんでした。」
一応婚約者ではあるが、俺は彼女の事を何も知らないし、護衛をどうするか、と言った問題が発生する。
護衛というのは、ヘレナに同乗してくる連中の事だ。ヘレナ本人のみであれば、そんなに手間はかからないが、護衛がたくさん来るとなると話は変わってくる。
今はまだ知られたくない物がたくさんあるのだ。
『テンペスト』に乗ってくるんじゃなかったと後悔する一方で、ヘレナ様と仲良くなれるならそれもありかもしれない、とそんな事を考える。
「どういう対策を行いますか?」
「ヘレナ様にお願いして、護衛の人数を出来るだけ少なくしてもらいます。この際、多少の情報の漏洩は仕方がないとして、製鉄と蒸気機関の死守に専念します。」
「わかりました。足を引っ張ってごめんなさい、お母様。」
おそらくそれが、今考えられる中で最善の選択だ。
俺が、思わず頭を下げながら謝ると、お母様は尊敬すべき母親の対応をみせた。
「レオルド、そんなに自分を責めないで下さい、子供の失敗は、親である私が責任を持ちます。」
お母様は、俺の頭を優しく撫でながらそう言った。やっぱりお母様は、尊敬すべき母親だ。
その後、お母様の狙い通りに話が進んだ。
ヘレナ様には、船の都合で護衛は1人までしか連れていけないと伝えると、先ほどの船内見学でもヘレナ様の後ろを付いてきていた女騎士さんを指名した。
第3王女とはいえ、王族が護衛をたった1人しか連れずに遠くに赴いたという話は、多くの人々を驚かせた。
後に、この話が天下の鬼才と謳われたレオルド・フォン・ハーンブルクと彼を支えた王女ヘレナ・フォン・ハーンブルクとがお互いを信頼し合っていた事がわかる最初のエピソードとして有名になったのは、別の話。
これでもかと言わんばかりに火薬を積んだ黒船級輸送艦『テンペスト』は、次の日の朝早くに『リバスタ』を去った。
俺たちが『シュヴェリーン』に着く頃にはアレが完成しているだろう。
俺は、面倒な事は一旦忘れて、全力で楽しみたいなと、思いを膨らませるのであった。
✳︎
ハーンブルク領、首都シュヴェリーン
シュヴェリーンへと帰って来た俺は、もうすぐ完成しそうなアレに備えて、チームの練習を見学する事にした。
俺にもう少し身長と年齢があったらな~と思いつつ、アン達の練習を見守る。
シュヴェリーン最強のMFであるアンの上手さは俺がリバスタに行く前よりも磨きがかかっており、成長していた。
簡単な戦術や技を伝授すると、彼女らは貪欲に練習に励んだ。
そしてその隣では、ヘレナが一生懸命ボールを蹴っていた。
ヘレナにも、サッカーを知ってもらおうと思って、ついて来てもらっている。
「・・・・・・結構難しいですね、レオルド様」
「まぁ最初のうちは誰でも苦戦すると思うよ。」
そう本人は言っていたが、イレーナよりも覚えが早い。もしかしたらヘレナにサッカーの才能があるのかもしれない。
「レオルド様はできるのですか?」
「それなりにね。もう少し大きくなったらチームに加わるかもな。」
練習を終えたヘレナは、サッカーボールを抱きしめながらアン達の練習を見守る。
ちなみにこのボールは、試合用に作成した特別なボールだ。布ではなく、動物の皮を使って作った特注品で、まだ30個ほどしか作れていない。とりあえず各チーム14個ずつ配り、練習をしてもらった。残りの2つは試合用だ。
そして、そろそろお昼休憩をしようかと思った直後、1人の男が俺の下へとやって来た。
「報告しますっ!現在建設中でしたサッカー場の全工程が終了いたしました!既に新型のゴールも配置済みです!」
「それは本当かっ!」
「はい!間違いございません!」
「ついに完成したか・・・・・・なら早速試合の準備をしろっ!来週の日曜日にキックオフだっ!」
「了解っ!」
部下に必要な物をメモさせて集めに行かせる。ユニフォームや売店の準備を進めるためだ。
「クレア、イレーナに最初の試合の日程が決まったと伝えて来てくれ。」
「わかりました、レオルド様」
「申し訳ございません、ヘレナ様。用事が入ってしまったので行きますね。」
「お仕事頑張って下さい、レオルド様」
俺は、俺の護衛として来ていたSHSのメンバー数名を連れて、この前新しく作ったサッカー管理部へと向かった。
✳︎
「都市内の飲食店に、出店を打診しろっ!それと予約してくれている領民達にそれぞれチケットを渡しに行けっ!」
「「「了解」」」
サッカー管理部へとたどり着いた俺はすぐさま色々なところに指示を送った。
領民にチケットを渡しに行くように命じた。より本格的なチケットをもらえば、関心が高まるからだ。
それぞれのチームの応援歌を使ったり、即席でトランペットのような物を作ったりして、盛り上げるための政策を行う。
今年一年の年間予定表を作り、それを大々的に公表する。
もしかしたら、チームの数が増えるかもしれないが、領民がチケットを買いやすくするためだ。
チケットの値段は1家族(4人)で最低賃金の1日分ぐらいになるように調整した。
チケット販売はサッカー管理部が一括で管理し、全席自由席にした。こっちの方が楽だからだ。
迷惑な客を撃退するための警備員ももちろん手配する。
そんなこんなで準備をしていたら、あっという間にキックオフがやって来た。
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