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国内編

第19話 指針

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『湾岸都市テラトスタ』

元々は、小さな漁港でしかなかったこの町は、今ではサーマルディア王国で1番大きな港町となった。

他の貴族からの鉄鉱石の輸入と鉄剣の輸出を一挙に担っており、それに一枚噛みたいと考えた多くの商人が集まった結果、商業都市として発展していた。



昨日の昼頃に『工業都市ミドール』を出発した俺たちは、夕方頃にテラトスタに到着した。

船から降りた俺たちは真っ直ぐ管理棟へと向かう。



「おう、レオルド様。待ちくたびれたぜ。」



「待たせたな、ヨルク。」

「お久しぶりでございます、ヨルク様。」



管理棟の中には、ハーンブルク領研究部漁業部門の支部があり、最近はここがテラトスタの統治をしている。

つまり、ヨルクがこの都市の市長代理を担っているという事だ。もちろん、SHSが厳重な監視を行なっているので不正はできないようになっているから安心だ。



「さぁ入ってくれっ!宴の準備はできているぞっ!」



「おいちょっと待てよ!こっちはまだ着いたばかりだそ?」



「知ってる知ってる、だから旅の疲れを落とすために宴会をやるんだよ。」



眩しい笑顔でそう答えられた。

だが俺には、ある予想があった。何というか、違和感があったのた。



「お前、俺を巻き込んだ宴会なら経費で落ちるとか考えていないよな?」



「ギクッ!」



わかりやすく、ヨルクは飛び跳ねた。

どうやら最近こういう事を覚えたらしい。



「はぁ・・・・・・まぁいいや。今日だけだぞ。」



まあ仕方ない、研究部を設立してからだいたい今日で半年ほどなので、今日は設立半周年の宴会としよう。



「聞いたかお前らっ!」



「「「うぉぉぉーー」」」



既に宴会の準備を済ませていた研究員達が一斉に大声を上げる。



「海の幸も大量に用意してありますぞ!」

「盛り上がって行くぞ~!」

「レオルド様、酒の用意はできております!」



早速、樽ごとお酒を飲み始めた者もちらほら見える。

この世界は色々とおかしい。鉄の効率的な生産方法は知らないくせに、酒の大量生産はどうやらできているらしい。

いつの時代も、どこの世界でも、飲みニケーションは変わらないようだ。



「レオルド様~一杯どうですか?」



「まだ6歳の俺に酒を飲ますな、酔っぱらいどもが。」



そして、この宴会は明け方まで続いたそうだ。もちろん俺とクレアは途中で帰宅したが・・・・・・




✳︎




次の日のお昼頃、俺達はハーンブルク領で活動している全ての商人に対して、参集するように命じた。

もちろん、商人というのは領主の直接的な支配下ではないので断る事もできるが、参加しなかった場合港の利用を禁止すると脅したら9割以上の商人達が集まった。

1つの都市のみで商売をする小さな商人や、国を跨いで取引をする大商人など、色々な人が参加した。

全員で200人ほどはいるだろうか。



「おうお前ら、全員揃っているな。」



「「「・・・・・・」」」



開口一番に、ヨルクがそんな事を言う。良くも悪くも、この男は場の空気をぶち壊す天才かもしれない。



「今回お前らに集まってもらった理由はただ一つ!レオルド様が呼べと言っていたからだ!」



「「「・・・・・・」」」



違った、ただの天災であった。

なんだよそれ、俺こいつの後喋り辛いんだけど。



「あー、今紹介があったレオルド・フォン・ハーンブルクだ。今日君たちを呼んだ理由は、ハーンブルク内のあらゆる資源、製品に関するいくつかの『ガイドライン』を発表するためだ。じゃあ後は頼む。」



「はい、レオルド様。では皆様、レオルド様に代わりここからは私が説明させていただきます。」



とりあえず、舐められないように、強い口調で宣言しておく。

そしてすぐさまクレアにバトンパスした。



「『ガイドライン』というのは何が良くて、何がダメか、というようなルールの事です。基本的にこの『ガイドライン』に沿っていれば、何をやっても我がハーンブルク家は許可いたします。逆に言えば、どんなに大きな商会だとしても、この『ガイドライン』を破った場合、最悪ハーンブルク領での取引を一切禁止させていただきます。また、基本的にガイドラインが変更する事はありませんが、複数の商会からの要請、及びハーンブルク領の情勢によってガイドラインを変更する可能性もありますのでご注意下さい。」



そして、クレアは7つのガイドラインを提示した。1つずつ丁寧に説明をし、各商会の反応を伺った。

俺と『アイ』の話し合いの結果、7つのルールを設定した。



☆商会があらゆる物資を領内に輸入する場合、関税として商品価値の15%を納める。ただし、船を利用した場合は10%とする。



☆商会があらゆる物資を領外へ輸出する場合、関税として商品価値の5%を納める。ただし、船を利用した場合は無税とする。



☆指定された物資(特定の武器など)の輸出、麻薬などの薬物の輸入を禁止する。ただし、ハーンブルク家が許可を出した場合のみ特例として輸入ができる。



☆1つの商会による物資の独占及び、結託による商品価値の吊り上げを禁止する。



☆港を使用する場合、事前に申告し、使用料を支払うこと。



☆ハーンブルク領内での商人及びあらゆる物資を保護する。



☆各商会は本拠地を『シュヴェリーン』、『テラトスタ』、『レバスタ』のいずれかに置き、申請すること。また、商会と商会の間で問題が発生した場合、必要に応じてハーンブルク領が仲裁を行う。ただし、手数料がかかる。




とりあえずはこの7つのルールを設けた。

ちなみにレバスタというのは先日の交渉で王家から巻き上げた王国の西にある港の事だ。

ここも、これからのハーンブルク家の発展に欠かせない重要な拠点の1つである。



結構甘めで、ゆるゆるな感じに設定しておいたが、実は結構大きなトラップがある。

それは、本拠地をハーンブルク領に置くというものだ。

本拠地がハーンブルク領内にあるという事は、多くの労働者が働き口を求めてハーンブルク領内に足を運びお金を落とすという事だ。

そしてさらに、そのおかげで人口も増えれば万々歳だ。



「説明は以上になります。私が今説明した事は、お手元の資料にも同じ事が書いてあるので、是非ご確認下さい。また、質問がございましたら、手を挙げてお知らせ下さい。」



そう言って、クレアは小さくお辞儀した。

まだ9歳だが、少し風格が出てきた気がする。ちなみに今日もメイド姿だ。



この世界には関税というものがないので、どう来るか、と身構えている。

すると、1人の若い男が手を挙げるよりも先に怒鳴った。



「なんだこの関税というものは!我々商人を馬鹿にしているのか?!」



いきなり怒鳴ったこの男は、自分の名前すら言わずに大声で叫んだ。

周りからの注目が集まる。



「まずは商会の名前を名乗ったらどうだ?」



「俺はサントリア商会の者だ!」



「そうか、なら結構だ。交渉の余地は一切ない、さっさと出て行くがいい。」



「言われなくてもそうさせてもらう!」



そういいながら、大股で会議室を出ていった。

これで、俺に逆らったらどうなるか他の商会も理解できただろう。



実はこの男、俺が用意した仕込みであったりする。変装はしているが、本当はSHSの隊員の1人だ。

俺は、同じような馬鹿が増えないように先に手を打っておいたのだ。

そして、本当の交渉が始まった。



________________________



どうでもいい話

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