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第三章 使い方
ドラゴン戦
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竜は目測(丸まった状態)では体長約10mだが、こちらに気付いた竜が立ち上がることによりその大きさは2倍以上になった。首から尾までが約25m、首までの高さ、約3m、体高約2.5m、それに巨大な翼を広げられたことにより威圧感が半端ない。
竜は尻尾側にいるこちらを睨み付け、いくつもの弦楽器を乱暴に弾き鳴らしたような鳴き声を上げた。そして、首筋がぐぐっと太くなり、喉元から細かくカカカカという音が鳴り始めた。
竜が火焔魔法を使うときの予備動作だ。
「来るよ、散れ!!」
カリアの合図で皆竜の斜め前方向へと駆け出す。
四方に散らばるオレ達に視線を滑らせ、初めに狙われたのは竜の顔側に走り出したカリアだった。
一際大きくカンッと音が鳴ると同時に竜が大きく口を開く。その口から炎の塊がカリアに向かって放たれた。
カリアはそれをスルリと回避して、竜に向かって挑発的な笑みを浮かべた。カリアは竜の攻撃を全てこちらに引き付けようとしている。
竜はとても機嫌が悪く、すぐに魔法を使ってきたからもしかしたら話し合いは出来ないかもしれない。その為作戦を変え、一旦竜の動きを止める事にする。
また竜がカリアに向かって3発巨大な火の玉を放つが、カリアはそれも簡単に避けて見せた。
オレ達はその間に竜の背後に回り込み、どこか一ヶ所にオレが触れて電気で痺れさせる、もしくはキリコが竜に辿り着いて話し掛けて説得できれば成功だ。
しかし竜も馬鹿ではない。
突然竜が回転し、長い尾がしなりながら迫ってくる。それも地面スレスレで。これでは跳んでも伏せても轢かれる。
思わず血の気が下がったとき、アウソが今まで練習棒のみで使う機会がなかった槍(本当の愛武器)を取り出し、叫んだ。
「伏せろ!!」
言われた通りに伏せると、アウソは深く身を低くし、槍を尾に対して斜めに構えた。
「ハアッ!!」
そして気合いを入れると迫り来る尾に向かってアウソは槍を下から円を描くように大きく振った。
ーーガンッ!!
槍と尾がぶつかり、金属同士がぶつかったのような鈍い音を立てると、アウソは再び気合いの声を発し、下から体全体で跳ね上げるようにして尾の軌道を上向きに矯正的に変更させた。
伏せたオレとキリコの頭上を竜の尾が低い風切り音を纏いながら通過する。
「ゼハァーッ!!ゼハァーッ!!」
アウソが槍を地面に立て、座り込んだまま酷い息切れを起こしている。
「大丈夫か!?」
アウソが顔を上げずに無理無理と無言で手を振った。
先程の受け流しで全体力を使ったらしい。まぁ、勢いを付けた竜の尾をよく受け流せたと思うよ。そんなわけで体力が回復するまでアウソは一時離脱。
「今のうちだ!!突っ込むわよ!!」
「はい!!」
アウソ、君の犠牲は忘れない!!
ライハ達とは反対側にいるカリアはアウソの勇姿に口笛を吹いた。
「弟子がこんなに頑張ってるなら、師匠も頑張らんとね!」
少し高い位置になった尾が迫ってくる。
カリアは思い切り、地面に足を突き刺す勢いで踏み込むと、その尾をガッシリと腕全体で掴まえた。体全体に衝撃が走るが、巨人の血が流れているカリアは普通の人間よりも力が強い。おまけにアウソが行った矯正軌道変更によって勢いが衰えていたこともあってカリアは吹っ飛ばされることなく、踏み留まる事ができた。
尾が止められた事に竜は驚き、意識がカリアへと向かう。
そのすぐ近くまで来ていたライハとキリコの気配を見逃すほどには竜は衝撃を受けていた。
「ライハ!本当に良いのね!!」
「大丈夫です!!任せてください!!」
オレは身体能力を上昇させ、キリコを追い抜く。そして意識がカリアに向き動きが悪くなっている竜の首の真下まで来ると、クルリと向きを変え、キリコと対峙する。
そして手を組んで下に垂らし、オレは衝撃に備えられるように膝を曲げて体制を低くした。
「行くよ!!」
「はい!! いち!に!さんっっ!!」
いち、でキリコがこちらに跳び、に、でオレの組んだ手に足を乗せ、さん、でキリコを持てる力で竜の首へと投げ飛ばした。
キリコの跳び上がる力が強くて肩が抜けそうになった。良かった、山式シャトルランで肩も鍛えてて。
キリコは見事竜の首の高さまで跳び上がった。そしてそのまま跳び移ろうとしたとき、竜がキリコに気付いた。
大きく口を開けようとした竜の上顎を踏みつけ、宙返りをしつつ方向を変えたキリコは竜の角をガッシリと掴むと大きく息を吸った。
「聞け!!誇り高き火の竜よ!!」
ビリビリとキリコの声で空気が振動する。
「私たちはお前を助けに来たんだ」
竜は尻尾側にいるこちらを睨み付け、いくつもの弦楽器を乱暴に弾き鳴らしたような鳴き声を上げた。そして、首筋がぐぐっと太くなり、喉元から細かくカカカカという音が鳴り始めた。
竜が火焔魔法を使うときの予備動作だ。
「来るよ、散れ!!」
カリアの合図で皆竜の斜め前方向へと駆け出す。
四方に散らばるオレ達に視線を滑らせ、初めに狙われたのは竜の顔側に走り出したカリアだった。
一際大きくカンッと音が鳴ると同時に竜が大きく口を開く。その口から炎の塊がカリアに向かって放たれた。
カリアはそれをスルリと回避して、竜に向かって挑発的な笑みを浮かべた。カリアは竜の攻撃を全てこちらに引き付けようとしている。
竜はとても機嫌が悪く、すぐに魔法を使ってきたからもしかしたら話し合いは出来ないかもしれない。その為作戦を変え、一旦竜の動きを止める事にする。
また竜がカリアに向かって3発巨大な火の玉を放つが、カリアはそれも簡単に避けて見せた。
オレ達はその間に竜の背後に回り込み、どこか一ヶ所にオレが触れて電気で痺れさせる、もしくはキリコが竜に辿り着いて話し掛けて説得できれば成功だ。
しかし竜も馬鹿ではない。
突然竜が回転し、長い尾がしなりながら迫ってくる。それも地面スレスレで。これでは跳んでも伏せても轢かれる。
思わず血の気が下がったとき、アウソが今まで練習棒のみで使う機会がなかった槍(本当の愛武器)を取り出し、叫んだ。
「伏せろ!!」
言われた通りに伏せると、アウソは深く身を低くし、槍を尾に対して斜めに構えた。
「ハアッ!!」
そして気合いを入れると迫り来る尾に向かってアウソは槍を下から円を描くように大きく振った。
ーーガンッ!!
槍と尾がぶつかり、金属同士がぶつかったのような鈍い音を立てると、アウソは再び気合いの声を発し、下から体全体で跳ね上げるようにして尾の軌道を上向きに矯正的に変更させた。
伏せたオレとキリコの頭上を竜の尾が低い風切り音を纏いながら通過する。
「ゼハァーッ!!ゼハァーッ!!」
アウソが槍を地面に立て、座り込んだまま酷い息切れを起こしている。
「大丈夫か!?」
アウソが顔を上げずに無理無理と無言で手を振った。
先程の受け流しで全体力を使ったらしい。まぁ、勢いを付けた竜の尾をよく受け流せたと思うよ。そんなわけで体力が回復するまでアウソは一時離脱。
「今のうちだ!!突っ込むわよ!!」
「はい!!」
アウソ、君の犠牲は忘れない!!
ライハ達とは反対側にいるカリアはアウソの勇姿に口笛を吹いた。
「弟子がこんなに頑張ってるなら、師匠も頑張らんとね!」
少し高い位置になった尾が迫ってくる。
カリアは思い切り、地面に足を突き刺す勢いで踏み込むと、その尾をガッシリと腕全体で掴まえた。体全体に衝撃が走るが、巨人の血が流れているカリアは普通の人間よりも力が強い。おまけにアウソが行った矯正軌道変更によって勢いが衰えていたこともあってカリアは吹っ飛ばされることなく、踏み留まる事ができた。
尾が止められた事に竜は驚き、意識がカリアへと向かう。
そのすぐ近くまで来ていたライハとキリコの気配を見逃すほどには竜は衝撃を受けていた。
「ライハ!本当に良いのね!!」
「大丈夫です!!任せてください!!」
オレは身体能力を上昇させ、キリコを追い抜く。そして意識がカリアに向き動きが悪くなっている竜の首の真下まで来ると、クルリと向きを変え、キリコと対峙する。
そして手を組んで下に垂らし、オレは衝撃に備えられるように膝を曲げて体制を低くした。
「行くよ!!」
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「聞け!!誇り高き火の竜よ!!」
ビリビリとキリコの声で空気が振動する。
「私たちはお前を助けに来たんだ」
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