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第二章 動き出す

円を描く

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手が動かない。(比喩ではない)

「ウガアアアアア!!!うごけええええ!!!」

イメージ的には川などの水中で手足を動かして巨大な波や渦を作る感覚に同じと言われ実践してみているが。ザラキさん。水は水だけど、これ、濁流の方です。

氣で純粋な魔力を巻き込むことには成功したが、問題はそのあとだった。

もう素晴らしいほどに動かない。きっちり閉まったジャムの蓋や、大きな岩を押そうと踏ん張るがピクリとも動かない時ほどに動かない。しかも恐ろしい事に気を抜くと逆に腕を持っていかれそうになる。どこにって?空にだよ!!

(腕すぽーんは嫌だ!!)

「うぉりゃあああああ!!!」

足を踏み込み歯を食い縛っても駄目だ。
どうしよう!!しかも氣と魔力がくっついちゃったみたいでどうしようもない!!

「力でやるな!!純粋の魔力の力は強い!もげるぞ!!」

「力でやるなっつったって……っ!!」

力以外でどうしろと言うんだって、いたたたたた!!?腕ビキッていった!!
しかしザラキ、腕を組み一言。

「考えろ!!」

「考えます!!」

自分で何とかしろと言うことらしい。
助言をくれてもいいのに!!それともこれは助言をしても自分で何とかしなきゃ意味がないということなのか!?

考える。

どうしたら腕をもがれずに逆に巻き込んでいけるのか。
考えろ!考えろ!

正面でぶつかり合ったら完全にこちらが負ける。力業ではない、じゃあなにか?なにで巻き込むの?イメージ力?こんなに余裕ないのに無理!!






「!」






何かが脳裏をよぎる。



見たことの無い景色の向こうで誰かが話している。

ーー 円を描け  力で 敵わなくとも  行き先を 少し  変えてやるだ けで  受け流せ る    そして それ は   力になる







円?


行き先を変えてやるだけ。
なんの?粒子の?

オレは意識を粒子に向け、飛んでいきそうになる行き先を少し曲げた。無理矢理直角にではない。緩やかに弧を描く様に。

「!」

すると、ぐぐっと軽く粒子が曲り、腕の抵抗が消えた。それどころか次第に腕周りが熱くなってくる。

腕の周りで粒子が凄まじい速度で回転していた。ふぃんふぃん、と不思議な音を発しながら回転する粒子はもう重くなく、腕をどう動かしてもくっついてきて、むしろ纏っているところが軽く、力が湧いてくる。

「できた、のか?」

「まじか!もうできたのか!」

腕が吹っ飛んでも対処出来るようにしていたらしいザラキが驚いた顔をして粒子を纏った腕をみている。

見せるとめっちゃ頭撫でられた。乱暴にぐしゃぐしゃと。
それでいてザラキはとても嬉しそうな顔をしていた。

「よし、じゃあこれはできるか!?真似してみろ!」

ザラキがあっという間に粒子を集め、その腕を横八の字に動かして光る粒子のつむじを生み出す。

真似してやってみたら、安定していた粒子がほどけて流に乗って空に飛んでいってしまった。

「あー、行っちゃった」

「まだ難しかったか。しかし、俺が苦戦した事を簡単にやってのけたんだ、才能はある。もう一度やってみよう」

「っし!やるぞ!」

『ねぇー、みてみてー!』

「!」

その時、形状変化の修行をしていたネコが楽しげな声をさせてやって来た。なんだと思って見てみて、オレとザラキは吹き出した。

『これおもしろーい!!』

ネコの形がまるで絡まった黒い毛玉のようになっていた。よく見ると形がほどけかけたのを流れをつくって自分の中に戻すという作業を身体中で行っているらしく、うねうねと円を描いた物が動いている。

ネコはとても楽しそうだ。黒い絡まった毛玉が笑っている。

それをみて、オレは体の力が抜けた。








そっからオレの主な修行内容は山式シャトルラン、鳥狩り、魔力の出力調整、ザラキの技獲得に費やした。

空いている時間は勉強をして、ザラキの許可をもらってシャトルランの場所を変えたりした。

















そして、二週間後。

「ただいまー!!」

カリア達が帰ってきた。
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