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第二章 動き出す
風を呼ぶ
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鳥を二羽仕留めた。その二羽を屋根に並べ、オレはその横に座り考えた。
「何か違う」
確かに仕留めた。
風の粒子は昨日よりもはっきりと見え、矢の軌道もイメージ通りに飛んだ。だけど急所を貫く事はなく、羽や首に当たり、落下してからも暴れているのを押さえて止めを刺した。
『なにが?ちゃんとしとめたじゃん。しかも二羽だぞ。こりゃ明日は三羽だな!』
「違うんだよ~~…」
昨日の紛れ当たりした時とは全然違う。
あの時は風の隙間を縫って行った感覚なのに、今日のは風に乗って行く感覚。落とされるよりはマシだけど、大きく蛇のように湾曲しながら
飛んでいくから、風の抵抗を受けて速度も威力も落ちる。しかも斜めに飛ぶから狙いがずれて急所に当たらない。
まぁ、約20発射って二羽をゲット出来たから良い方なのか?最初の方なんて始めの層にぶつかって即落ちていた。
『ふーん。くえれば良いじゃん』
「ネコは気楽だよな。羨ましいわ」
『楽だぞ。辛いことがあってもそこそこ流せる』
「そっか…」
屋根に横になる。
ネコと一緒に空を眺めながら、何となく最近鳴るようになった指笛を鳴らした。
途端、強い風が吹いて屋根に並べていた鳥がネコが吹き飛ばされそうになって慌てて押さえる。
ーー よんだ? だれ?
ーー わからない だれだろう
その時、いつか聞こえた声がした。
知らない言葉に重なり女の子の声がする。
そして、目の前に半透明の大きな翼を持つ蛇に似たものが風を纏い二体、庭でクルクルと踊るように飛んでいた。角が生えている。尾は途中から二股になり、間にはヒラヒラとしたヒレのような物がある。
ーー かえろうか
ーー かえろう
半透明の蛇が翼を広げ、大きく羽ばたく。すると庭に暴風が吹き荒び、蛇は上空にいる鳥達の間をスルスルとすり抜けて天高く昇って見えなくなった。
「な、なんじゃあれ!!!?」
「なんだ!?誰だ呼んだの!?」
バタンッ!!と下から勢いよく扉を開けてフライパンを片手にザラキが飛び出してきた。
そして目があった。
「お前か、龍を呼んだの」
あれ、龍だったの?
夕飯時、ザラキがルキオの迷信みたいなものを教えてくれた。
「ルキオには指笛を鳴らすと風が来ると言われている。あと、風音の真似もだな。風口や言葉と呼ばれるものだが、なんでか知らんが風龍が呼ばれたと勘違いして風を纏ってやって来るらしい」
「ほぉー、指笛を…」
あれ、勘違いしてたんだ。確かに呼ばれた?とか言ってたし。
「っていっても、そうホイホイ来る訳じゃない。それこそ風龍の気分や相性とかもあるしな。でも念の為ルキオで指笛は控えるように」
「はい」
ネコが鳥の丸焼きを食べながらこっちを見ている。
『飛ばされるかとおもったんだけど』
「ちゃんと押さえたじゃねーか」
『あれさ、ガケジャンプの時にやったらどうなるのかな?しんきろく出るんじゃない?』
「!」
思わず想像する。
台風並みの風を利用できれば少し飛べるかもしれない。
「呼ぶなよ。崖降りの時とか特にな」
バレてた。
「それより、さっきの事もそうだが、俺お前の事勘違いしてたかもしれん」
「? どういう事ですか?」
「山の上で話す。今は食べろ」
何だろう。
不思議に思いながら美味しいご飯を掻き込んだ。
「何か違う」
確かに仕留めた。
風の粒子は昨日よりもはっきりと見え、矢の軌道もイメージ通りに飛んだ。だけど急所を貫く事はなく、羽や首に当たり、落下してからも暴れているのを押さえて止めを刺した。
『なにが?ちゃんとしとめたじゃん。しかも二羽だぞ。こりゃ明日は三羽だな!』
「違うんだよ~~…」
昨日の紛れ当たりした時とは全然違う。
あの時は風の隙間を縫って行った感覚なのに、今日のは風に乗って行く感覚。落とされるよりはマシだけど、大きく蛇のように湾曲しながら
飛んでいくから、風の抵抗を受けて速度も威力も落ちる。しかも斜めに飛ぶから狙いがずれて急所に当たらない。
まぁ、約20発射って二羽をゲット出来たから良い方なのか?最初の方なんて始めの層にぶつかって即落ちていた。
『ふーん。くえれば良いじゃん』
「ネコは気楽だよな。羨ましいわ」
『楽だぞ。辛いことがあってもそこそこ流せる』
「そっか…」
屋根に横になる。
ネコと一緒に空を眺めながら、何となく最近鳴るようになった指笛を鳴らした。
途端、強い風が吹いて屋根に並べていた鳥がネコが吹き飛ばされそうになって慌てて押さえる。
ーー よんだ? だれ?
ーー わからない だれだろう
その時、いつか聞こえた声がした。
知らない言葉に重なり女の子の声がする。
そして、目の前に半透明の大きな翼を持つ蛇に似たものが風を纏い二体、庭でクルクルと踊るように飛んでいた。角が生えている。尾は途中から二股になり、間にはヒラヒラとしたヒレのような物がある。
ーー かえろうか
ーー かえろう
半透明の蛇が翼を広げ、大きく羽ばたく。すると庭に暴風が吹き荒び、蛇は上空にいる鳥達の間をスルスルとすり抜けて天高く昇って見えなくなった。
「な、なんじゃあれ!!!?」
「なんだ!?誰だ呼んだの!?」
バタンッ!!と下から勢いよく扉を開けてフライパンを片手にザラキが飛び出してきた。
そして目があった。
「お前か、龍を呼んだの」
あれ、龍だったの?
夕飯時、ザラキがルキオの迷信みたいなものを教えてくれた。
「ルキオには指笛を鳴らすと風が来ると言われている。あと、風音の真似もだな。風口や言葉と呼ばれるものだが、なんでか知らんが風龍が呼ばれたと勘違いして風を纏ってやって来るらしい」
「ほぉー、指笛を…」
あれ、勘違いしてたんだ。確かに呼ばれた?とか言ってたし。
「っていっても、そうホイホイ来る訳じゃない。それこそ風龍の気分や相性とかもあるしな。でも念の為ルキオで指笛は控えるように」
「はい」
ネコが鳥の丸焼きを食べながらこっちを見ている。
『飛ばされるかとおもったんだけど』
「ちゃんと押さえたじゃねーか」
『あれさ、ガケジャンプの時にやったらどうなるのかな?しんきろく出るんじゃない?』
「!」
思わず想像する。
台風並みの風を利用できれば少し飛べるかもしれない。
「呼ぶなよ。崖降りの時とか特にな」
バレてた。
「それより、さっきの事もそうだが、俺お前の事勘違いしてたかもしれん」
「? どういう事ですか?」
「山の上で話す。今は食べろ」
何だろう。
不思議に思いながら美味しいご飯を掻き込んだ。
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