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第二章 動き出す
惑いの洞窟
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腹に凄まじい衝撃が与えられ内臓が飛び出しかける。体はくの字に曲がり、口から「うごほぉ!?」と人間が出すべきではない声が飛び出した。
『おはよう、朝だぜ』
「………」
猫がオレの腹の上でドニャ顔をしていた。
ちくしょう、昨日のは夢じゃなかったのか。
「どうしたの?不機嫌な顔して」
モソモソとパンをかじっていたらキリコに声を掛けられる。
「ちょっと寝不足気味で…」
「そんな眠れんかったさ?俺爆睡だったけど」
「アウソはいつも爆睡だろ」
「気候の変化でとかでかしら?人によっては季節の変わり目に不調になるってのを聞いたことあるから」
「あー、大嵐の前に頭いたくなる人もいるよ。なんでか知らんけど」
「海龍の魔力を関知しているって説もあるよな」
実は猫の所為なのだけどね。
てか、これは話しても信じてくれるのか。
「カリアさん、例えばの話ですけど自分が乗っている駿馬が突然喋りだしたとしたらどうします?」
「駿馬が」
しばし考えるカリア。
「うるさそう」
「駿馬にキレるかもしれない」
とカリアとキリコ。
二人は眉をひそめている。
そして想像したこともなかったと真剣に考え始めたアウソ。
馬のイメージそんななんだ。
「ちなみに理由を聞いても?」
「ケンタウルスっているじゃない。あの半分馬のやつ」
ケンタウロスいるんだ。
「モントゴーラで遭遇したんだけどね、もうプライド高いわ短気だわナンパ好きだわもうめんどくさかったよ。最後は酒のんで爆走して消えたよ、意味わからないね」
「…………」
「なるほど」
オレの中にケンタウロスめんどくさい奴等との情報が追加された。
「で、何でそんなこと聞くのよ」
「実は」
食事が終わってのんびりしていた猫を抱き上げる。体がでかいから異様に伸びた。
「こいつ、夜中突然喋りだしたんですけどどう思います?」
顔を見合わせる三人。
「寝惚けてたば?」
「寝惚けてんし」
「なんか、突然大きくなったりとか怪我肩代わりとかしてたくらいだからもう驚かんよ」
「そうよね。むしろ今まで喋らなかったのが不思議よね」
「二人のネコに対する認識がおかしくなっている件」
猫がこっちを向いて目を細めた。
『おい下ろせ、咬むぞコラ』
「すんません」
猫を下ろした。
「何で今謝ったの?」
「猫が下ろさんと咬むってさ」
「聞こえた?」
「いんや、聞こえんかった」
あれ?オレ以外には聞こえない系なのか?
「使い魔が使う契約特権とかじゃないの?ニック以外のギリスの人が使い魔に話し掛けてるの見たことあるよ」
「それなんですかねぇ?」
猫を見る。『知るか』と言われた。
「さて、そろそろ行くよ。今日中には山入りしないとね」
通常、ルキオに入る正しいルートは海から行くらしい。マテラの港町から船に乗ってルキオの港町に入る。なんでそうするかと言うと、そっちの方が安全に確実に入れるからだ。
「でもこっち側に用があるのよねー」
とカリア。
山付近に用があるから船で行くと遠回りになるそうだ。
「でもどうやって登るんですか?馬もいるし、思いっきり繁ってますよ」
見渡す限りの繁みと大木。マテラの道でさえ馬では道を通った。
「なぁに、秘密の道があるんよ」
カリアに黙って着いていくキリコとアウソ。
秘密の道か、なんだか素敵な響きだ。
暫く山沿いに行くと、岩場に蔦が群生している所に着いた。岩から流れ落ちるような蔦が、まるで岩場を流れ落ちる滝のようにも見える。
「皆あれ、出すよ」
カリアが光苔のランタンを取り出し、オレ達もランタンを取り出した。中は暗いのか。
「いい?この惑いの洞窟の中は凄いことになっているけど、絶対にはぐれないこと、じゃないと二度と出てこられなくなるからね」
なにそれ怖いな。
「なぁに、中に見とれてないでしっかり前見て進めば大丈夫さ」
「準備は良い?行くよ」
カリア、キリコ、アウソ、そしてオレの順に蔦の滝の中に入っていく。
真っ暗な空間に光苔のランタンが反応して灯りだす。すると、真っ暗だった空間のあちらこちらから小さな光が点き始め、洞窟内があっという間に様々な色に光るものに満たされた。
優しく淡い光。緑色に混ざって赤や黄色に輝く苔や花、そして鉱石。それらが合わさって洞窟内がまるで宇宙空間のような幻想的な光景になっていた。
「はー、すげー」
「ライハ横見るな、置いてかれるぞ」
前方のアウソに注意され、視線を前に直す。
確かにこれは見とれて迷子になるわ。
『おっはー!スゲー!スゲーなこれ!!』
猫を入れる鞄から顔を出して猫がにゃ~にゃ~騒いでいる。しかしそれに被さって声も聞こえるから変な感じだった。
『おはよう、朝だぜ』
「………」
猫がオレの腹の上でドニャ顔をしていた。
ちくしょう、昨日のは夢じゃなかったのか。
「どうしたの?不機嫌な顔して」
モソモソとパンをかじっていたらキリコに声を掛けられる。
「ちょっと寝不足気味で…」
「そんな眠れんかったさ?俺爆睡だったけど」
「アウソはいつも爆睡だろ」
「気候の変化でとかでかしら?人によっては季節の変わり目に不調になるってのを聞いたことあるから」
「あー、大嵐の前に頭いたくなる人もいるよ。なんでか知らんけど」
「海龍の魔力を関知しているって説もあるよな」
実は猫の所為なのだけどね。
てか、これは話しても信じてくれるのか。
「カリアさん、例えばの話ですけど自分が乗っている駿馬が突然喋りだしたとしたらどうします?」
「駿馬が」
しばし考えるカリア。
「うるさそう」
「駿馬にキレるかもしれない」
とカリアとキリコ。
二人は眉をひそめている。
そして想像したこともなかったと真剣に考え始めたアウソ。
馬のイメージそんななんだ。
「ちなみに理由を聞いても?」
「ケンタウルスっているじゃない。あの半分馬のやつ」
ケンタウロスいるんだ。
「モントゴーラで遭遇したんだけどね、もうプライド高いわ短気だわナンパ好きだわもうめんどくさかったよ。最後は酒のんで爆走して消えたよ、意味わからないね」
「…………」
「なるほど」
オレの中にケンタウロスめんどくさい奴等との情報が追加された。
「で、何でそんなこと聞くのよ」
「実は」
食事が終わってのんびりしていた猫を抱き上げる。体がでかいから異様に伸びた。
「こいつ、夜中突然喋りだしたんですけどどう思います?」
顔を見合わせる三人。
「寝惚けてたば?」
「寝惚けてんし」
「なんか、突然大きくなったりとか怪我肩代わりとかしてたくらいだからもう驚かんよ」
「そうよね。むしろ今まで喋らなかったのが不思議よね」
「二人のネコに対する認識がおかしくなっている件」
猫がこっちを向いて目を細めた。
『おい下ろせ、咬むぞコラ』
「すんません」
猫を下ろした。
「何で今謝ったの?」
「猫が下ろさんと咬むってさ」
「聞こえた?」
「いんや、聞こえんかった」
あれ?オレ以外には聞こえない系なのか?
「使い魔が使う契約特権とかじゃないの?ニック以外のギリスの人が使い魔に話し掛けてるの見たことあるよ」
「それなんですかねぇ?」
猫を見る。『知るか』と言われた。
「さて、そろそろ行くよ。今日中には山入りしないとね」
通常、ルキオに入る正しいルートは海から行くらしい。マテラの港町から船に乗ってルキオの港町に入る。なんでそうするかと言うと、そっちの方が安全に確実に入れるからだ。
「でもこっち側に用があるのよねー」
とカリア。
山付近に用があるから船で行くと遠回りになるそうだ。
「でもどうやって登るんですか?馬もいるし、思いっきり繁ってますよ」
見渡す限りの繁みと大木。マテラの道でさえ馬では道を通った。
「なぁに、秘密の道があるんよ」
カリアに黙って着いていくキリコとアウソ。
秘密の道か、なんだか素敵な響きだ。
暫く山沿いに行くと、岩場に蔦が群生している所に着いた。岩から流れ落ちるような蔦が、まるで岩場を流れ落ちる滝のようにも見える。
「皆あれ、出すよ」
カリアが光苔のランタンを取り出し、オレ達もランタンを取り出した。中は暗いのか。
「いい?この惑いの洞窟の中は凄いことになっているけど、絶対にはぐれないこと、じゃないと二度と出てこられなくなるからね」
なにそれ怖いな。
「なぁに、中に見とれてないでしっかり前見て進めば大丈夫さ」
「準備は良い?行くよ」
カリア、キリコ、アウソ、そしてオレの順に蔦の滝の中に入っていく。
真っ暗な空間に光苔のランタンが反応して灯りだす。すると、真っ暗だった空間のあちらこちらから小さな光が点き始め、洞窟内があっという間に様々な色に光るものに満たされた。
優しく淡い光。緑色に混ざって赤や黄色に輝く苔や花、そして鉱石。それらが合わさって洞窟内がまるで宇宙空間のような幻想的な光景になっていた。
「はー、すげー」
「ライハ横見るな、置いてかれるぞ」
前方のアウソに注意され、視線を前に直す。
確かにこれは見とれて迷子になるわ。
『おっはー!スゲー!スゲーなこれ!!』
猫を入れる鞄から顔を出して猫がにゃ~にゃ~騒いでいる。しかしそれに被さって声も聞こえるから変な感じだった。
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