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第二章 動き出す

やっちまったぜ☆

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「俺!復活!!」

シャキーンと復活ポーズを決めるアウソにオレは「おめでとう」と祝いの拍手を送った。

「おめでとう、と、言いたいところだけどちょっとおいでアウソくん」

しかしカリアとキリコは師匠として、姉弟子として言いたいことが山ほどあったらしい。入院中は心身ともに養生させなければと堪えてきたものが退院を気に発散させる気だ。

にこやかに手招きしている二人の後を顔面ブルーのアウソが、まるで悪戯がバレた犬のような感じでノソノソと歩いていった。

そして、今。

オレの目の前には正座をさせられ、お二方に何か色々言われているアウソくん。

時おり入りたてのライハは一万歩譲って仕方ないとしてお前なんなの?とか、私たちそこまで使えないような修行させてきたかアアン?みたいな言葉が聞こえてくる。あな恐ろしや。

深く項垂れているアウソを後で慰めてやらんとなと思いながら膝の上でだれている猫を撫で回していた。ちなみにオレもアレやられました。あそこまで酷くは無かったけど、何かあったら即逃げろっつったろ、周りよく見て動け。くらいは言われました。もちろん反省しています。

三十分程怒られ、時折褒められ、解放されたときアウソは少し疲れていたので、オレがあらかじめ買ってきた果実水をあげると少し元気が復活した。

「じゃあな!!気を付けて行けよ!!」

「もし同族ガラージャ関係で何かあったら俺等の名前を出してくれ、知っている奴がいたら助けてくれるはずだ!!」

「ありがとうございます!!ウレロもベルダーも元気で!!」

「また会おうなー!!」

男四人が全力で手を振っている。
その中の一人はオレです。

その間カリアとキリコは別の協力していた仲間と挨拶をしていて、その中のとても綺麗な人がキリコに抱き着いて「またお洒落して一緒に出掛けようね!今度はちゃんとした時にね!」と言っていた。そしてその女の人は後ろにいた大男にべりっと引き離されていた。

ムキムキだな。ガードマンみたいだ。
でもなんか見たことある顔してるなとよーく見てみる。
なんかノルベルトに似ている気がする。同じ国出身なのだろうか。

まだ昏睡状態の男性や流された女性や子供の事なども気になるが、それはもう役目を終えた狩人達から自警団の仕事に受け継がれている。出来ることはもうない。

「さ、行くよ。早く国境を超えないと嵐の季節になるからね!」

カリアとキリコも馬を新しくして、オレ達は次の目的地、ルキオ国へと出発した。









龍郷(ルキオ)国。
オレの事前情報ではアウソの出身地、この辺の国々からすると最も南に位置し、一年の大半が温暖。海遊人ンミアシバーの一族と共存し漁業が盛ん。しかしルキオ国は丸々海龍の縄張りの一部となっており、国周辺と、更に南の海を航れるのはルキオの人達のみ。とても危険な地域なのだ。

ウリズンの季節後半から夏終わりのアチンヒガン頃までは海龍が気紛れに起こす大嵐カチャーティフーが国を襲い、その時に人魚が見付かる可能性が高い噂がある。

と、これくらいだ。ほとんどアウソが教えてくれた事だけど。

カリアに聞いた話だと美味い酒があって皆酒飲みだ、と酒関係しかわからず、キリコに聞けば銀色の鎧みたいな鱗を持つ蛇がいるよ的な魔物の話しか出てこない。



途中マテラとルキオの間にある山脈を抜けるらしいのだが、どうも嫌な予感がする。主にカリア&キリコ関係で。
あの拉致られ事件以降、主にサグラマ帰還後であるがカリアが逃走能力をあげるという理由でアウソ入院中ひたすら周辺の森に連行され、それはもう泣きたくなるほどの恐ろしい鬼ごっこを不眠不休で行った。

鬼はもちろんカリア。見付かったらボッコボコにされて気絶する。もちろん魔物いるから、魔物との小競り合い中にカリア襲来なんて普通だった。

正直キメラと戦ったときよりも怖いなんて異常すぎる。知ってるか?カリアさん本気だと森の中なのに足音も気配もしないんだぜ、何度死ぬかと思ったか。
ちなみに猫は不参加でどっか行ってて、しかも怪我肩代わりを停止していた為アザや傷だらけ。もう必死でした。

でもね、それでさえまだ甘かったんです。
ゲロ甘でした。

切っ掛けはオレの「そういえば消えていた記憶が戻ってきたのでホールデンに戻る理由がなくなりました」発言。

言わなきゃよかったと後悔してます。

その発言の後、カリアの「じゃあこれからどうするよ?」に「せっかく弟子にしてもらったので強くなりたいです」って返答してしまったんですよ。

その時のね、悪魔の笑みを浮かべたカリアとキリコ、そしてやっちまったよこのバカと幻聴が聞こえるようなアウソ顔。今でも鮮明に思い出せます。



はい、地獄の始まりでした。






「本当の地獄はここにあったのか」

「俺、お前がこんなにも馬鹿フラーだと思わんかったさ」

「オレも自分の事ながらやっちまったぜ☆って今本気で思っているし噛み締めている」




駿馬での高速移動、そして修行と魔物狩り、そしてまた高速移動。以下エンドレス。

お陰さまで馬酔いは綺麗に無くなり、逃げ足、回避力、気配察知がとんでもない早さで上昇中です。わらえる。


もうね、魔物とか、大小関係なくGO!!だからね。いややりますけども!!やりますけどもね!!


「過去のオレを殴りたい!!!助走つけて殴りたい!!!」

「落ち着けライハ!!攻撃きてるから!!ちゃんと見ろさ!!!」









そんなこんなで半月が過ぎ、ウリズンが終わりかけた頃にオレ達はようやくルキオの国境近くまで辿り着いたのだった。
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