INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~

古嶺こいし

文字の大きさ
上 下
85 / 152
第二章 動き出す

リ・ターン

しおりを挟む
そこから約一週間は近くの街の病院で快適に過ごした。ストレスは無く、食べ物は美味しく、危険はない。まさに天国。

「ライハ!」

「アウソ!久し振り!!」

そしてようやく目を覚ましたアウソとご対面。なんか腕を三角巾で吊ってるのと少し痩せた以外は比較的元気そうだった。

あまりにも嬉しくて思わずハグをしてしまったほどだ。もっとも腕を吊ってるのが気になるので軽く背中に腕を回す程度であったが。

体を離してずっと気になっている腕のことを訊ねてみた。

「何で腕吊ってるの?折ったの?」

「なんか知らんけど腕折られそうになって死ぬほど抵抗したらヒビ入るだけで済んだんさ」

ケラケラとアウソは笑っているが腕を折られるなんて嫌だな。

「良かったな、折られなくて。いや、ヒビ入っている時点で良くはないけど」

「んー、まあ折らたら治るの少し遅くなるから良い方、かな?」

確か骨折したときはだいたい二三週間で治るみたいなことは聞いたけど、ヒビはどうだったか。オレが前ヒビ入ったときはヒビ入っているの知らなくていつのまにか治っていたという記憶しかない。

そんなことを考えているとアウソが、それよりも、と切り出した。

「そっちは平気だったんさ?何処に連れてかれて何されてるとか全然知らんけど」

頭のなかに多種多様の化け物が自動再生された。全体的にゴチャッとしていて生き物として気持ちが悪い。

「…なんか、ずっとバトルロワイヤルっつーか。ひたすら色んな化け物と戦ってた…」

人もだが、それは何故か言いたくなくて黙っていた。

「今だから言うけどスゲー気持ち悪かったし怖かったわ」

「化け物か、それは嫌だな」

「だろ」

でもそれのお陰で戦闘能力が鰻登りしたのは腑に落ちない。あと謎の再生能力もだ。

「そうだ。あの首輪の魔法陣の解除しててくれてありがとな、あれめっちゃ助かったわ。特に反乱起こすとき凄い役に立った」

反乱起こしたのか。

「そうなの?良かった、オレのせいで酷い目にあってたらどうしようかと思ってたよ」

「そう簡単にやられるわけねーだろ」




そんな感じでアウソの腕が治るまでの間オレはカリアに今回の報復作戦でお世話になったパーティーの人達にお礼参りをしたり、救出した子供達の今後についてを相談したり、最初に重症を負って未だに意識が戻らない男性の身柄を自警隊と一緒になって探したり、と1週間を忙しなく過ごした。

追記だが、捕まったときに取られたと思っていたスマホ諸々(もろもろ)が戻って来た。そういえばリベルターに会いに行ったときすぐに戻るからと必要なもの以外全部置いていったんだった。いやー良かった良かった。







とある夕飯時。

「忘れてた!!!」

あることを思い出して大声を上げてしまいアウソとキリコ、カリアが吃驚した顔を一斉にこちらを向いた。
猫は一瞬びくついたが、すぐに食事に戻った。

「何?どうしたの?」

「オレ、リベルターさんに注文していたものがあったんでした!」

言い切ったところで猫を見る。
キラリと光るお高そうな首輪が目に入った。

「あとこの猫の首輪を返してお礼を言わないと」

「………」
「………」

キリコとカリアがモグモグと無言で顔を向き合わせ同時に拳を出す。そして何故かジャンケンを始めた。

負けたのはカリア。

食べていたものを飲み込んだカリアがこちらを向いた。

「往復でだいたい1週間くらいだから、アウソが復活するまでの間暇だしコッチが道案内するよ」

「本当ですか!ありがとうございます!」

「その代わり!」

ピッと人差し指をさされた。

「ただ往復するのもアレだから、ちょっとした修行も交えていくよ。良い?」

「え、あ、はい」

何の修行か検討つかないがあの化け物と戦いまくっていた時よりはマシだろうと頷いた。














安易に頷いた昨日のオレを思いっきりぶん殴ってやりたい。





久し振りに再開した灰馬が何故か筋肉ムキムキになっていて軽く引いた。
主に足回り。なんで?

心なしか灰馬がどや顔をかましてきているような気もする。

疑問に思いながら大きくなってしまった猫用の馬に取り付ける鞄のような物を設置して久し振りに馬を走らせて、あまりのスピードに気が遠くなった。なにこれ、最初からオレの体験したことのない速度で走っているんですけど、なにこれ。土砂降りも合間って馬酔いが大変なことになっているんですけど。

「振り落とされる!オレもう腕死んでます!!力入ってないです!!休憩しましょうよ!!お願いします!!」

「これくらいの速度じゃないと1週間で戻れないよ!!大丈夫、その駿馬そこらの駿馬と違ってタフだしもうちょっと速度あげても全然平気よ!!それに、修行はこの速度で走り続けるだけだからとても楽で良かったね!!」

「おにぃぃぃ!!!おにぃぃぃ!!!」





結局、三日間、馬を休ませる以外ほぼ休息無しでマックス速度で走らせて、四日目の早朝、懐かしきサグラマへと到着したのだった。


体が痛い。筋肉痛で痛いのか普通に関節が痛いのか良く分からなくなっている。そんなオレとは裏腹に猫はやっとついたかと大きな欠伸をしていた。

マイペースだな、本当に。

「…しまった思ったよりも早く着いちゃった」

そしてカリアは固く閉ざされた門を眺めながらそんなことを呟いていた。

ちなみに現在太陽昇っていないです。
何時くらいだろうか、五時とかかな。



夜降っていた雨は上がり、周りに水精が大量にフワフワと舞っていた。

眠い。早く着いてしまったのならば少し眠らせてはくれないだろうかと重い瞼を擦りながらカリアを見ると、カリアは馬を木に繋ぎ剣を取り出していた。

「せっかく時間があるから狩にいくよ」

「え?」

「せっかく時間があるから狩にいくよ、ちょうど入れ替え刻だし」

「うわぁ聞き間違えじゃなかった…」

右手に剣、左手に熊呑鼠の袋を装備したカリアは既に狩の準備を終えていた。これ、オレ少しだけ寝たいんだけど交渉出来ないかなとカリアを見ると、勝手に灰馬を木に繋いでいた。強制参加ですね。

「ナウ~」

猫はやる気に満ちていて尻尾がご機嫌に上を向いていた。

うん、命のやり取りよりはマシだ。

手に馴染みまくった短剣と少しの荷物を装備すると、カリアの後に着いて森へと向かったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...