54 / 152
第二章 動き出す
突撃組と潜入組
しおりを挟む
村にある頑丈で閉じ込めておくのに最適な所は物資を保管するための共同倉庫が一番である。
しかも現在は物資が届かずに補給も出来なかったので、二つあるうちの一つが空だというのもタイミングが良かった。
「…尋問って、なにするの」
「…まぁ、色々とな」
そして倉庫にはカリアと数人のハンター。そして村の男が村長含め四人が入っていき、オレらは追い出された。
曰く、まだ早い、とのこと。
「キリコさんは内容知ってるんですか?」
理由は違えど同じく追い出されたキリコに訊けば首を傾ける。
「尋問にも色々あるから…、今回はどれかしらねぇ?」
その後説明された尋問の種類が本当に豊富すぎて、オレはしばらく戦慄が止まらないでいた。
カリアが戻ってくるまでの時間、暇だからと一人スクワットをしていたらアウソとキリコがやって来て修行を手伝ってほしいと言われた。
「何すりゃ良いんですか?」
「ちょっと適当にアタシに攻撃してみ」
「了解です」
アウソがちょっと離れた所に座り、いつの間にか移動していた猫と一緒にじっとこちらを見ている。
「アウソは参加しないんですか?」
「ん?ああ、あれは見稽古(みげいこ)よ。これからやるアタシ達の立ち回りをああやって集中して見ることで知識を増やすの。後であんたもやってみると良いわ」
なるほどと納得したところでお互い構える。
オレは昔学校で習った空手の半身の姿勢。キリコは両腕を下げ、僅(わずか)に足の位置をずらす。
といっても避けられるのが落ちなんだよなぁ。かといってやる気がないのがバレたら攻防交代でやられるので本気でやらないといけない。
「しっ!」
右の突きをフェイントにノーモーションで右足で前蹴りを繰り出す。それをキリコは半身ずらすことによって回避した。初撃を避けられるのは知っていた、しかしいつもここらで予想外の反撃が来るはずだがそれがない。ということは攻撃し続けろということだろう。
突き出した右足を戻すことなく地面を強く踏み締め、そこへ体重を移動させながらマテラで言う『猫手(ガトマノ)』と呼ばれる軽い拳を作り手首側の掌、手底をキリコの胸元目掛けて突き出した。
しかし触れる前にキリコの左手の甲によって軌道が右へと流され肩も一緒に押し込まれて体制が崩される。やばいと踏ん張ろうとしたが、いつの間にか体重を乗せた足がキリコの足に引っ掛けられ、流された腕を大きく引かれたと思ったときには、何故か目の前には空が広がっていた。
「ゲフッ、ウ!!」
ドスンと背中が地面へ叩き付けられて激しく噎せる。
「げっほ!げっほ!げほげほっ!!」
「ちゃんと受け身とらないと」
あの流れるような投げで咄嗟に受け身なんか取れるわけない。
いまだに肺を直接強く叩かれているような痛みを手で擦りながら咳が治まるのを待ちながらキリコがアウソに今の受け流しの注意点やコツなどを教えているのを聞いていた。
「ライハの課題は攻撃の時に防御を考えていないところね。常に反撃されたときの事を考えながら動きなさい」
「はい…」
痛い言葉である。
「そういえば、ライハ。あんた何で剣の軌道を素手で逸らそうとしたのよ。避ければ良かったでしょ?」
思い出したようにキリコが言うので、その時の状況を説明した。
肩を踏まれて動けなかったこと、そして剣が首を狙っていて時間がなかったことを、だ。
「その押さえ込み方なら簡単に脱出出来るわよ」
「へ?」
「見せてあげるわ。アウソ、ちょっと」
キリコの手招きによってアウソが嫌々ながらも近付いてくる。猫を手渡され、そのままフードに突っ込めば肩の方に首を乗っけて来た。どうやら一緒に見るらしい。
「あんたライハが押さえ込まれているの見てた?」
「見てましたよ」
「これからライハにやり方見せるからアタシを同じように押さえ込んでみて」
「ええー、マジですか。がちなやつで?」
「がちなやつで」
「手加減してくださいよー」
髪を綺麗に纏めあげて布で覆ってからキリコは仰向けに寝転がる。そこへアウソがあの時と同じように拘束した。勿論肩に布を置いてその上から踏みつける感じだが。
「…もうちょっと強めじゃない?まだ少し動けるわよ?」
「…じゃあ、このくらいすか?」
「このくらいね。ライハ、アウソに腰の黒刀を渡して」
言われた通りに黒刀をアウソに渡し、準備完了。
「キリコさん本当に手加減してくださいね」
「はいはい。あんたは本気でやりなさいよ。じゃあ、ライハちゃんと見てて」
いくわよ。
そういった次の瞬間にはアウソが倒れていた。
「んん?」
何した?
「見た?」
「見たけど良くわかりませんでした」
「あんたそれじゃあ見稽古にならないじゃない。アウソもう一回よ」
「ええー!!嫌すよ!ビックリしたし足痛いし!」
嫌がるアウソであったが、キリコのハア?の前には為す術もなく、嫌々もう一度キリコを踏みつける。
今度は見逃すまいと集中して見る。
そうすると、一連の流れがわかった。
降り下ろそうとしたモーションを取った瞬間、キリコが動く右手をアウソの肩を踏みつけている足の膝の内側を押し、同時にキリコの右足がアウソの左腰を蹴ったのだった。
すると重心が右足に掛かっていたアウソの体制が大きく崩れ、剣の軌道はキリコとは明後日の方向を薙いでいく。
そして体制を立て直すことも出来ずにアウソは地面へと転がった。
「…なるほど」
こんなに簡単に脱出できたのかと感動した。
この方法を見てしまうと、あの時何故手を使ったのかと疑問が沸き上がり、無知はいらない怪我を作るということを学習した。
「と、こんな感じね。そんで内膝を押すときに拳で殴って関節攻撃をすれば相手はしばらく動けなくさせることが出来るわよ」
「ほう!」
イメージしてみると案外簡単そうだ。実際にやるのとは恐らく違ってくるのだろうが、知識があるのと無いのでは明らかな差が出来る。
そう考えると、すごく面白く感じた。
「も、もういい?」
倒れた体制のままアウソが恐る恐る言う。
「ありがとうアウソ。勉強になったよ。キリコさんもありがとうございます」
それから三人で順番に組手をしながら時間を潰し、カリアが出てくる頃には夕方になっていた。
「場所が割れたよ」
カリアが言う。
尋問をしていた人達と外で待機をさせられていた人達が集まり、会議を開いた。
かなりの人数なので外で地べたに座り地図を開く。
村長が地図を指差し、アジトの場所を詳しく説明し、更に尋問で吐かせた情報も交えながら襲撃ルートを画策していく。
アジトの規模はそこまででかくはなく、とある洞窟を改造して使っているらしい。
それにちょうど良いところに今アジトでは強奪した物資を運ぶという事で人手を割いている。
「拐われた人達はどうしたんや」
「あいつらはただの下っぱ共だから詳しいことは分からへんが、鷹ノ爪が関わっている…ということは確かや。しかも、一定期間経つと運び屋が来るらしい。くそ、うちの村を縄張りに使用しとったってことか…」
「……一定期間ってのは、どのくらいなん…」
「それが、分からん、と」
吐き捨てるように何かを言う男性。
捕まえた賊を殴り殺そうとしていた人だった。
「まずはアジトに乗り込んで探るしか無いね。潜入組と突撃組に分かれるよ」
まず突撃組がアジトの中で大暴れして気を引き付け、潜入組がどさくさに紛れて奥の方に侵入し、拐われた人達を解放するというもの。
「あんたたちはアジトの出入口を張って、逃げ出す奴等を取っ捕まえといて。全員纏めて軍に突き出すから」
「おん、分かった」
そして戦闘力のない村の男達が尻尾巻いて逃げる奴等を集団で襲い掛かってお縄にする。
武器は鍬(くわ)やシャベルにフライパン。そして武具屋のリーオから幾つか武器を貸出ししてくれた。
売り物なのに良いのか?と質問したら、奴等には散々されたからその鬱憤(うっぷん)を晴らすためだと思えば安いもんだと言われた。ちなみにぎっくり腰のガロ爺の御墨付きである。
男前や。
「襲撃は今夜、準備しておいて」
各々武器を手に森を進む。
空のだいぶ高い位置に三日月が出ているが、
辺りは薄暗く、襲撃するとなれば不用意に灯りも着けてはならないのでとても危険である。
「そこ、根っこがあるぞ。気を付けろ」
だが、普段から灯りなく森のなかを行く時もあるハンター面々は夜目が利くようになるらしい。
先導するハンター達が後方の村の男達に足元の危険を小声で知らせていた。
(…そしていつの間にかハンターに染まりつつあるオレ、ってか)
弟子入りしてまだ一月も経ってないというのに、暗い森の道が普通に見えていた。それこそ足元の根っこどころか小石まで見えるレベル。
(やっぱりほとんど人工の光を絶って生活すると夜目が利くようになるんだな)
「にゃーう」
心の声に反応するように「自分も見える」と猫が肩で鳴いた。
「お前は元々見えるだろ」
しばらく行くとハンター達が止まった。
此処が目的地のようだ。
「よし、ここから分かれるよ、突撃組が先に突入するから、戦闘が過激化してきた頃合いで潜入組が入って。タイミングは…、キリコとサズだっけ?任せるよ」
「はい」
「任せて師匠」
キリコと緑の髪をした中年の男性、サズが返事をする。
「ライハとアウソも、キリコが付いているとはいえ危険なのには変わり無いからね。自分の身は自分で守るよ」
「了解っす」
「わかりました」
返事を返し、カリア達突撃組がアジトの方向へ消えていくのを見送っている最中、後方が騒がしいことに気付いた。
敵に見付かったのかと思ったが、どうやら違うようだ。村人組の中から見覚えのある男性が剣をもって這い出てきた。
「お願いします!俺を潜入組に入れてください!!」
あまりにも必死な形相過ぎて軽く引いてるとそれに気付いたキリコが男性に声をかけた。
「名前は?」
「レーニォ・スパニーアです!」
「その剣は使えるの?」
「使えます!昔、旅芸団(ヒターノィ)と行動を共にしていました!きっと役に立ちます!」
「アタシはうちの弟弟子(おとうとでし)で手一杯だから、ちゃんと自分の身は自分で守ってよ」
「はい!迷惑は掛けません!」
「だって、サズはどうする?アタシは受け入れ構わないけど」
レーニォがお願いしますとサズを方を見る。
サズは得物の斧を地面へと置き、髭をポリポリ掻きながらレーニォを頭から爪先まで眺めてキリコの方を向いた。
「俺も構わん。旅芸団(ヒターノィ)ん所にいたのならそこそこ腕は立つしな」
その言葉を聞いてレーニォは嬉しそうにグルァシアスと二人に向かって言っていた。
しかも現在は物資が届かずに補給も出来なかったので、二つあるうちの一つが空だというのもタイミングが良かった。
「…尋問って、なにするの」
「…まぁ、色々とな」
そして倉庫にはカリアと数人のハンター。そして村の男が村長含め四人が入っていき、オレらは追い出された。
曰く、まだ早い、とのこと。
「キリコさんは内容知ってるんですか?」
理由は違えど同じく追い出されたキリコに訊けば首を傾ける。
「尋問にも色々あるから…、今回はどれかしらねぇ?」
その後説明された尋問の種類が本当に豊富すぎて、オレはしばらく戦慄が止まらないでいた。
カリアが戻ってくるまでの時間、暇だからと一人スクワットをしていたらアウソとキリコがやって来て修行を手伝ってほしいと言われた。
「何すりゃ良いんですか?」
「ちょっと適当にアタシに攻撃してみ」
「了解です」
アウソがちょっと離れた所に座り、いつの間にか移動していた猫と一緒にじっとこちらを見ている。
「アウソは参加しないんですか?」
「ん?ああ、あれは見稽古(みげいこ)よ。これからやるアタシ達の立ち回りをああやって集中して見ることで知識を増やすの。後であんたもやってみると良いわ」
なるほどと納得したところでお互い構える。
オレは昔学校で習った空手の半身の姿勢。キリコは両腕を下げ、僅(わずか)に足の位置をずらす。
といっても避けられるのが落ちなんだよなぁ。かといってやる気がないのがバレたら攻防交代でやられるので本気でやらないといけない。
「しっ!」
右の突きをフェイントにノーモーションで右足で前蹴りを繰り出す。それをキリコは半身ずらすことによって回避した。初撃を避けられるのは知っていた、しかしいつもここらで予想外の反撃が来るはずだがそれがない。ということは攻撃し続けろということだろう。
突き出した右足を戻すことなく地面を強く踏み締め、そこへ体重を移動させながらマテラで言う『猫手(ガトマノ)』と呼ばれる軽い拳を作り手首側の掌、手底をキリコの胸元目掛けて突き出した。
しかし触れる前にキリコの左手の甲によって軌道が右へと流され肩も一緒に押し込まれて体制が崩される。やばいと踏ん張ろうとしたが、いつの間にか体重を乗せた足がキリコの足に引っ掛けられ、流された腕を大きく引かれたと思ったときには、何故か目の前には空が広がっていた。
「ゲフッ、ウ!!」
ドスンと背中が地面へ叩き付けられて激しく噎せる。
「げっほ!げっほ!げほげほっ!!」
「ちゃんと受け身とらないと」
あの流れるような投げで咄嗟に受け身なんか取れるわけない。
いまだに肺を直接強く叩かれているような痛みを手で擦りながら咳が治まるのを待ちながらキリコがアウソに今の受け流しの注意点やコツなどを教えているのを聞いていた。
「ライハの課題は攻撃の時に防御を考えていないところね。常に反撃されたときの事を考えながら動きなさい」
「はい…」
痛い言葉である。
「そういえば、ライハ。あんた何で剣の軌道を素手で逸らそうとしたのよ。避ければ良かったでしょ?」
思い出したようにキリコが言うので、その時の状況を説明した。
肩を踏まれて動けなかったこと、そして剣が首を狙っていて時間がなかったことを、だ。
「その押さえ込み方なら簡単に脱出出来るわよ」
「へ?」
「見せてあげるわ。アウソ、ちょっと」
キリコの手招きによってアウソが嫌々ながらも近付いてくる。猫を手渡され、そのままフードに突っ込めば肩の方に首を乗っけて来た。どうやら一緒に見るらしい。
「あんたライハが押さえ込まれているの見てた?」
「見てましたよ」
「これからライハにやり方見せるからアタシを同じように押さえ込んでみて」
「ええー、マジですか。がちなやつで?」
「がちなやつで」
「手加減してくださいよー」
髪を綺麗に纏めあげて布で覆ってからキリコは仰向けに寝転がる。そこへアウソがあの時と同じように拘束した。勿論肩に布を置いてその上から踏みつける感じだが。
「…もうちょっと強めじゃない?まだ少し動けるわよ?」
「…じゃあ、このくらいすか?」
「このくらいね。ライハ、アウソに腰の黒刀を渡して」
言われた通りに黒刀をアウソに渡し、準備完了。
「キリコさん本当に手加減してくださいね」
「はいはい。あんたは本気でやりなさいよ。じゃあ、ライハちゃんと見てて」
いくわよ。
そういった次の瞬間にはアウソが倒れていた。
「んん?」
何した?
「見た?」
「見たけど良くわかりませんでした」
「あんたそれじゃあ見稽古にならないじゃない。アウソもう一回よ」
「ええー!!嫌すよ!ビックリしたし足痛いし!」
嫌がるアウソであったが、キリコのハア?の前には為す術もなく、嫌々もう一度キリコを踏みつける。
今度は見逃すまいと集中して見る。
そうすると、一連の流れがわかった。
降り下ろそうとしたモーションを取った瞬間、キリコが動く右手をアウソの肩を踏みつけている足の膝の内側を押し、同時にキリコの右足がアウソの左腰を蹴ったのだった。
すると重心が右足に掛かっていたアウソの体制が大きく崩れ、剣の軌道はキリコとは明後日の方向を薙いでいく。
そして体制を立て直すことも出来ずにアウソは地面へと転がった。
「…なるほど」
こんなに簡単に脱出できたのかと感動した。
この方法を見てしまうと、あの時何故手を使ったのかと疑問が沸き上がり、無知はいらない怪我を作るということを学習した。
「と、こんな感じね。そんで内膝を押すときに拳で殴って関節攻撃をすれば相手はしばらく動けなくさせることが出来るわよ」
「ほう!」
イメージしてみると案外簡単そうだ。実際にやるのとは恐らく違ってくるのだろうが、知識があるのと無いのでは明らかな差が出来る。
そう考えると、すごく面白く感じた。
「も、もういい?」
倒れた体制のままアウソが恐る恐る言う。
「ありがとうアウソ。勉強になったよ。キリコさんもありがとうございます」
それから三人で順番に組手をしながら時間を潰し、カリアが出てくる頃には夕方になっていた。
「場所が割れたよ」
カリアが言う。
尋問をしていた人達と外で待機をさせられていた人達が集まり、会議を開いた。
かなりの人数なので外で地べたに座り地図を開く。
村長が地図を指差し、アジトの場所を詳しく説明し、更に尋問で吐かせた情報も交えながら襲撃ルートを画策していく。
アジトの規模はそこまででかくはなく、とある洞窟を改造して使っているらしい。
それにちょうど良いところに今アジトでは強奪した物資を運ぶという事で人手を割いている。
「拐われた人達はどうしたんや」
「あいつらはただの下っぱ共だから詳しいことは分からへんが、鷹ノ爪が関わっている…ということは確かや。しかも、一定期間経つと運び屋が来るらしい。くそ、うちの村を縄張りに使用しとったってことか…」
「……一定期間ってのは、どのくらいなん…」
「それが、分からん、と」
吐き捨てるように何かを言う男性。
捕まえた賊を殴り殺そうとしていた人だった。
「まずはアジトに乗り込んで探るしか無いね。潜入組と突撃組に分かれるよ」
まず突撃組がアジトの中で大暴れして気を引き付け、潜入組がどさくさに紛れて奥の方に侵入し、拐われた人達を解放するというもの。
「あんたたちはアジトの出入口を張って、逃げ出す奴等を取っ捕まえといて。全員纏めて軍に突き出すから」
「おん、分かった」
そして戦闘力のない村の男達が尻尾巻いて逃げる奴等を集団で襲い掛かってお縄にする。
武器は鍬(くわ)やシャベルにフライパン。そして武具屋のリーオから幾つか武器を貸出ししてくれた。
売り物なのに良いのか?と質問したら、奴等には散々されたからその鬱憤(うっぷん)を晴らすためだと思えば安いもんだと言われた。ちなみにぎっくり腰のガロ爺の御墨付きである。
男前や。
「襲撃は今夜、準備しておいて」
各々武器を手に森を進む。
空のだいぶ高い位置に三日月が出ているが、
辺りは薄暗く、襲撃するとなれば不用意に灯りも着けてはならないのでとても危険である。
「そこ、根っこがあるぞ。気を付けろ」
だが、普段から灯りなく森のなかを行く時もあるハンター面々は夜目が利くようになるらしい。
先導するハンター達が後方の村の男達に足元の危険を小声で知らせていた。
(…そしていつの間にかハンターに染まりつつあるオレ、ってか)
弟子入りしてまだ一月も経ってないというのに、暗い森の道が普通に見えていた。それこそ足元の根っこどころか小石まで見えるレベル。
(やっぱりほとんど人工の光を絶って生活すると夜目が利くようになるんだな)
「にゃーう」
心の声に反応するように「自分も見える」と猫が肩で鳴いた。
「お前は元々見えるだろ」
しばらく行くとハンター達が止まった。
此処が目的地のようだ。
「よし、ここから分かれるよ、突撃組が先に突入するから、戦闘が過激化してきた頃合いで潜入組が入って。タイミングは…、キリコとサズだっけ?任せるよ」
「はい」
「任せて師匠」
キリコと緑の髪をした中年の男性、サズが返事をする。
「ライハとアウソも、キリコが付いているとはいえ危険なのには変わり無いからね。自分の身は自分で守るよ」
「了解っす」
「わかりました」
返事を返し、カリア達突撃組がアジトの方向へ消えていくのを見送っている最中、後方が騒がしいことに気付いた。
敵に見付かったのかと思ったが、どうやら違うようだ。村人組の中から見覚えのある男性が剣をもって這い出てきた。
「お願いします!俺を潜入組に入れてください!!」
あまりにも必死な形相過ぎて軽く引いてるとそれに気付いたキリコが男性に声をかけた。
「名前は?」
「レーニォ・スパニーアです!」
「その剣は使えるの?」
「使えます!昔、旅芸団(ヒターノィ)と行動を共にしていました!きっと役に立ちます!」
「アタシはうちの弟弟子(おとうとでし)で手一杯だから、ちゃんと自分の身は自分で守ってよ」
「はい!迷惑は掛けません!」
「だって、サズはどうする?アタシは受け入れ構わないけど」
レーニォがお願いしますとサズを方を見る。
サズは得物の斧を地面へと置き、髭をポリポリ掻きながらレーニォを頭から爪先まで眺めてキリコの方を向いた。
「俺も構わん。旅芸団(ヒターノィ)ん所にいたのならそこそこ腕は立つしな」
その言葉を聞いてレーニォは嬉しそうにグルァシアスと二人に向かって言っていた。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。
karashima_s
ファンタジー
地球にダンジョンが出来て10年。
その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。
ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。
ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。
当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。
運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。
新田 蓮(あらた れん)もその一人である。
高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。
そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。
ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。
必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。
落ちた。
落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。
落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。
「XXXサバイバルセットが使用されました…。」
そして落ちた所が…。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる