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第一章 ホールデンにて

作戦会議

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「ライハ様!明日の作戦会議を開きますのでこちらに来てください!」

焚き火の向こう側にいるスイの従者の人が呼んでいる。他の勇者も集まりつつあるのか近くに数名の影が見えたのでその場所へと急いだ。

行くとその場所に簡単に作られたテントみたいなのがあった。それなりの大きさはあるけど、本当にもう布で目隠ししただけみたいなの。

遅れてきたコノンも集まり中にはいるとスイが机の上に地図を広げていたところだった。

「ああ、集まりましたね。明日にはクローズの森に到着しますのでラオラ討伐の作戦会議を開きます。どうぞ近くによってください」

机の周りに集まり地図を見る。この国の地図で、あちらのように精密とまではいかなくてもそれぞれの都市や町の名前に土地の状態や山、川などの情報が書き込まれていた。

そのなかで王冠マークが衝いている所がある。今まで居た首都だ。そして首都から北の山脈付近に広がる巨大な森の入り口付近に赤い平たい石が置かれているところがある。ここがクローズの森だろうか。

(都市から意外と近いんだな)

とすると、その中間地点のこの青い平たい石が現在地か。

「で、そのクローズの森の全面図ですが…」

国の地図の上に別の地図が広げられた。山脈に沿うように広がる森、その周辺の村と大まかの森の地形が大まかに書かれている。そして奥になればなるほどぼやかされ、山脈近くになると何も書かれていない。この辺りの情報は無いらしい。

「ラオラは比較的森の表層、このウズルマの村付近で見つかったみたいです。ラオラは警戒心が強く気配を感じてすぐさま森の中へ逃げていったみたいですが夜になると現れて村の作物を荒らしています」

うわぁ、あちらのイノシシ被害みたいだな。

「そこで四人は──」

「ねぇ、思うんだけどさ」

その時、シンゴがスイの言葉を遮った。

「たかがラオラに僕達四人も必要ないと思うんだよ。だってこいつら雑魚じゃん。雑魚モンスターじゃん。下手したら僕一人で殲滅できるくらいだし」

それにノノハラはまたかという顔をした。どうやらこのシンゴはいつもこんな風に話を遮るらしい。

「ええ、確かにシンゴ様のお力でしたら単独で殲滅するのは容易いです。しかし今回の目的はライハ様に経験を積ませることですから…」

「だいたい普段から僕達と一緒に訓練もしないくせにこんなときだけ特別扱いとかなんなわけ?何様?」

そう言ってシンゴはオレを睨む。

「確かにオレは訓練に参加できなかった。でもそれにはちゃんと理由があってだな、ただサボっていた訳じゃない」

「へー!言い訳きたよ!言うだけだったら誰だって出来るもんな!なんの呪いだか知らんけどな、それだってどーせ真面目に解呪に参加してないんだろ?だからいまだに神様に加護すらされないんだ!!」

「ッ!!」

お前に何がわかるんだ、解呪の儀式がどんだけ痛くて辛いか分からないくせに。

心の中で叫んだ。

思わず拳を振るいたい衝動に駆られたが、抑えた。ここで殴り合いになったらオレの敗けだ。
押さえ込まれるってのもそうだがその行動がシンゴと同じになってしまうのが嫌だった。

怒りを沈めるために大きく息を吐く。

「そうだな、お前は神様に愛されているらしいからな。加護も貰えて力もある。羨ましいよ、是非ともオレのこの呪いも引き取ってもらいたいね」

「お前は神様に嫌われているっぽいな、かわいそうに。だけどそれはサボる理由にはならないよ!」

「いい加減にしなさい!!!」

バンッ!と大きな音が響いた。驚いて見るとスイが両手で机を叩いた音だった。心なしかミシミシ音がしているように聴こえるのは気のせいだろうか。

「二人とも、今は作戦会議中です。喧嘩は後でにしなさい。それとも今私が二人の相手をしてやってもいいのですよ?ん?」

スイの顔が笑っていた。笑っていたのに背中に般若を背負っていた。ソロ隊長とは違う般若であったが怖いのは変わらない、ごめんなさい。

「…ごめんなさい、スイ指導長…」

「申し訳ございませんでした…」

スイの般若に耐えられなくて謝った。
大人気ありませんでしたごめんなさい。

 大人しくなったところで再び作戦会議開始。
しかし数分後会議はまたしても中断される。

「僕嫌だ」

「こっちの台詞だ」

なんで班分けでこの野郎と組まされるのか。嫌だ、オレは嫌だ。ユイさんとトレードしてください。

「反対意見は認めません。能力を均等にするためです」

却下された。ガッデム。

「待ってください。寄りにもよって犬猿の仲を組ませるのは正直どうかと思います。能力で分けたとしてもこう仲が悪いとお互い足を引っ張りあって大事故になる可能性があります」

そこにユイが意見してくれた。
それを鼻で笑い飛ばすスイ。てか、なんか初めの時と性格ちがくないですか、もしかして猫被ってましたか。

「ユイ様、貴方女性陣を放置するのですか?いくら私がいるといってもコノン様は攻撃型ではないのですよ?負担を全てアヤ様に押し付ける気ですか?」

「……」

押し黙るユイ。スイの言葉は一理あるからな。
てかアヤって誰?ノノハラの名前だっけ?

「スイ指導長、私は別に一人でもやっていけます。ユイが別の班へ行きたいと言うのなら私は一向に構いません」

「えっ…、でも…」

「コノンは防御に特化しているし私は攻撃特化型だ。バランスは悪くない。私一人はダメなのか?コノン」

「…そんなことはないけど…」

確かにノノハラは一人でやっていけそうだけど。そう思いつつスイを見ると呆れた顔をしている。ついでにため息。

「アヤ様、確かに貴女の能力は素晴らしい。一瞬で対象を消滅させることができるでしょう。しかし、よく考えてください。貴女の魔法は火焔ですよね、戦うのは森の中、どうなると思いますか?」

脳内に広がる燃え盛る炎と焼け野原。
余裕で想像できてしまった。

「その中で消火活動できるのは流水魔法を使えるユイ様だけなのですよ」

「そ…それなら魔法を使わないで攻撃すれば…!」

「貴女戦闘が始まると独走するじゃないですか。その間コノン様置いてきぼりにでもされたらたまったものではありません」

心当たりでもあるのか視線をそらすノノハラ。そしてそんなノノハラをコノンが慰めていた。

てか思ったんだけどさ、勇者ってろくな奴居ないね。オレも含めて。

「そんな訳ですのでシンゴ様もライハ様も嫌でしょうが頑張って協力し合って下さい。あ、ちなみに補佐に私が入りますのでよろしくお願いいたしますね」

「…はい」

「…よろしくお願いします」

そんな感じで班分けが完了した。

攻撃方法はいたってシンプルで探索能力に秀でているコノンとスイがラオラの位置を特定し、群れを牽制しながら一ヶ所に追い詰めて袋叩きにすると言うもの。袋叩きのメインは火力第一位と第二位のシンゴとノノハラ。オレとスイは補佐と言う感じになった。
てか魔法使えないけど補佐できんのか?

「ライハ様は兵士達と訓練をされていたと聞きました。包囲戦の訓練はされましたか?」

そんなことを思ってたらスイが質問してきた。

「え、ああ、はい。チョロっとだけですが習いました」

「音消し歩行術は?」

「一応出来ます」

「では問題ありません。訓練で習った通りの事をすればいいですよ」

大丈夫と肩を軽く叩かれた。
本当か?本当に大丈夫?

それから更に詳しく地形等を説明し、気を付けるところを確認したのちに解散した。
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