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その10 オレツの探し物.3
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さて突然ではありますが、この世界の宝石事情を説明しよう。この世界の宝石は魔力に敏感に反応し、そこにいる種族によって微妙に色を変える。
という事は、そこの地域では取れない宝石を手に入れるために、危険な地域に行って採ってこないといけないことも多々ある。
「まさか魔界では青い宝石が無いとはねぇ」
そう、魔界では青い宝石がない。それどころか紫、青、緑、透明な宝石が存在しないのだ。
代わりに赤、橙、黄、黒はある。まるで魔族達の瞳のようだ。
そういえば、人族の瞳は紫、青、緑、灰色だ。
これも関係があるのか?
かつては良く出回っていた人族側の宝石は、採れる場所が減ったから値上がりしたと聞いた。
もし魔界が半分で止まらなかったらきっと幻の宝石扱いになっていたのだろう。
「それはそれで悲しいな」
オレツは青い宝石が好きなのだ。
それも透き通るような青い色の宝石。
光の加減で緑がかって見えるから、きっとツマンティーヌの髪の色に映えるだろう。
「……おっと…」
ただしそれは無事に採ってこれたらの話である。
「あるぇー、おかしいなぁー」
目の前には兵隊さん達がウロウロしていた。こんな人も寄り付かない山の中どうしたというんだろうか。
聞き耳を立てようと思ったが遠すぎて駄目だ。
迷子の村人の振りをして近付く手も考えたが、顔が知られ過ぎて駄目だろう。オレツは有名人なのだ。
「仕方がない。回り道をするか」
こそこそと兵隊達にバレぬよう身を低くして移動していると、とある話が耳に入った。
「ーーまさか教会がこんな手を使うなんてな。神に仕える者として良いのか?」
「?」
思わず足を止めた。
「確かドーリア地方の、反逆罪で村人処刑とか。まぁオレツ勇者の血縁者は人間に仇なすってレッテル貼られているから…、自業自得って感じじゃないか?」
「でもよ、誰がオレツ勇者の血縁者か分からないじゃないか」
「だから皆殺しなんだろ。今頃村はお祭りだぜ」
「あーあ、俺達もこんなところで脱走者探しなんかせずに向こうに行きたかったぜ」
足音が遠ざかっていった。
村人が皆殺し?
「………ドーリア地方の村人が……」
ドーリア地方はオレツがかつて住んでいた村がある、売った両親に最早情などはないが、兄弟や、友にはまだ情が残っていた。
「…………………処刑」
気が付いたらオレツは駆け出していた。そして先ほどいた二人組の兵士を追い。
「うわあああ!!!」
手の下で兵士の一人がもがいている。もう一人は隣で伸びていた。
「誰だ!!こんなことしてただで済むとーー」
「こんにちは。オレツです」
「!!!? お、オレツ!?オレツだと!!!?」
ジタバタと暴れる兵士の腕を捻り固定しているから動けるわけがないのになお暴れるので、何処かの筋を痛めたらしく悲鳴を上げた。
「ねぇ、さっきの話聞かせてくれないかな? 処刑って、なに?」
「ひ……ひぃぃぃ……」
半泣きしながら教えてくれた情報によると、どうやら魔族に寝返った俺を誘き出すのと鬱憤晴らしで、正義を振りかざして人々を惨殺しているらしい。
『全ては魔族に寝返ったオレツが悪い。そして裏切り者オレツが生まれたこの地こそ、醜悪の根源だ』と呪文のように唱えて。
俺からしたら、人間も悪魔も大差ない。むしろ人間の方が汚ならしく見える。
兵士の腰の剣を抜き、切っ先を兵士の顔に当てる。
既に兵士の顔は青を通り越して白くなっている。
「さて取引をしよう。今すぐ装備全部寄越して助かるか、命もろとも寄越すか。どっちがいい?」
という事は、そこの地域では取れない宝石を手に入れるために、危険な地域に行って採ってこないといけないことも多々ある。
「まさか魔界では青い宝石が無いとはねぇ」
そう、魔界では青い宝石がない。それどころか紫、青、緑、透明な宝石が存在しないのだ。
代わりに赤、橙、黄、黒はある。まるで魔族達の瞳のようだ。
そういえば、人族の瞳は紫、青、緑、灰色だ。
これも関係があるのか?
かつては良く出回っていた人族側の宝石は、採れる場所が減ったから値上がりしたと聞いた。
もし魔界が半分で止まらなかったらきっと幻の宝石扱いになっていたのだろう。
「それはそれで悲しいな」
オレツは青い宝石が好きなのだ。
それも透き通るような青い色の宝石。
光の加減で緑がかって見えるから、きっとツマンティーヌの髪の色に映えるだろう。
「……おっと…」
ただしそれは無事に採ってこれたらの話である。
「あるぇー、おかしいなぁー」
目の前には兵隊さん達がウロウロしていた。こんな人も寄り付かない山の中どうしたというんだろうか。
聞き耳を立てようと思ったが遠すぎて駄目だ。
迷子の村人の振りをして近付く手も考えたが、顔が知られ過ぎて駄目だろう。オレツは有名人なのだ。
「仕方がない。回り道をするか」
こそこそと兵隊達にバレぬよう身を低くして移動していると、とある話が耳に入った。
「ーーまさか教会がこんな手を使うなんてな。神に仕える者として良いのか?」
「?」
思わず足を止めた。
「確かドーリア地方の、反逆罪で村人処刑とか。まぁオレツ勇者の血縁者は人間に仇なすってレッテル貼られているから…、自業自得って感じじゃないか?」
「でもよ、誰がオレツ勇者の血縁者か分からないじゃないか」
「だから皆殺しなんだろ。今頃村はお祭りだぜ」
「あーあ、俺達もこんなところで脱走者探しなんかせずに向こうに行きたかったぜ」
足音が遠ざかっていった。
村人が皆殺し?
「………ドーリア地方の村人が……」
ドーリア地方はオレツがかつて住んでいた村がある、売った両親に最早情などはないが、兄弟や、友にはまだ情が残っていた。
「…………………処刑」
気が付いたらオレツは駆け出していた。そして先ほどいた二人組の兵士を追い。
「うわあああ!!!」
手の下で兵士の一人がもがいている。もう一人は隣で伸びていた。
「誰だ!!こんなことしてただで済むとーー」
「こんにちは。オレツです」
「!!!? お、オレツ!?オレツだと!!!?」
ジタバタと暴れる兵士の腕を捻り固定しているから動けるわけがないのになお暴れるので、何処かの筋を痛めたらしく悲鳴を上げた。
「ねぇ、さっきの話聞かせてくれないかな? 処刑って、なに?」
「ひ……ひぃぃぃ……」
半泣きしながら教えてくれた情報によると、どうやら魔族に寝返った俺を誘き出すのと鬱憤晴らしで、正義を振りかざして人々を惨殺しているらしい。
『全ては魔族に寝返ったオレツが悪い。そして裏切り者オレツが生まれたこの地こそ、醜悪の根源だ』と呪文のように唱えて。
俺からしたら、人間も悪魔も大差ない。むしろ人間の方が汚ならしく見える。
兵士の腰の剣を抜き、切っ先を兵士の顔に当てる。
既に兵士の顔は青を通り越して白くなっている。
「さて取引をしよう。今すぐ装備全部寄越して助かるか、命もろとも寄越すか。どっちがいい?」
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