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第4章 煙の彼方に忍ぶ影
第10話 アレーナの剣士アデル
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「皆さん、魔物です。8体の小さな群れで襲ってくるようです。戦闘準備をお願いします!!」
ララの声が飛ぶ。手にはアラートボールが握られている。この魔道具には魔物の感知機能の他に結界機能もあるので、普段は余程の魔物でない限り僕らに接近することはできない。しかし、今は感知のみを行い結界を作動させていなかった。
「8体ね。みんな、分かってるわね!貴重な資金源、1体たりとも逃すな!!」
レナの目がキラッと光る。キラーザへの関所を出て坂を登り始めた僕らは、その道中に出る魔物で金策を図っていた。
「メルーさん?どうしてあなたが隠れているの?あなたが一番食べたんだから、一番働きなさい!!」
「む、無茶言わないでくださいよー!私は魔物との戦闘なんて1度もしたことないんですから!!」
サンゲーン茶屋で全種類頼む暴挙に出た彼を、彼女は絶対に許さないという気概を見せていた。ミミたちやポット、リットが組んだ非戦闘員保護のための円陣に逃げ込んでいたメルーを、彼女の手が引きずり出していく。
「ニャはは!メルー泣きべそかいてるニャ!びびり過ぎニャ!!」
マギーが笑い飛ばすが、その様子をバウアーたちは驚いて見ていた。
「おいおい、あんたら嘘だろ?ここいらでそんな群れを作るのはイエローハウンドくらいだ。平野に出るぶちハウンドとはわけが違うんだぞ?遊んでる場合かよ!!」
イエローハウンドもぶちハウンドも聞いたことはないが、キールやケインも顔が強張っているところを見ると、これから来る魔物は相当強いらしい。
「え?大丈夫ですよ。魔力量などを見るに子供のハウンドくらいの強さです。気楽に行きましょう。来ますよ!」
ララがあっけらかんと言う。その直後、アルト村の周りで見るハウンドより一回り小さな、全身黄金色の体毛に覆われた犬型の魔物が飛び出してきた。
「あれ?こいつら全然気を張ってない。戦う気ないのかな?」
「私もそれ不思議に思ったんだけど、襲いかかる気はあるみたいね」
右側から来るイエローハウンドを僕とララ、左からのをバウアーたち3人、後ろから来るのをバートンとマギー、そしてメルーが担当することになった。レナは後ろの援護だ。
いつまで経ってもイエローハウンドは気を張ろうとしない。そこで僕は剣を下げて近付いてみたが、敵は気にもしないでそのまま噛みついてくる。左側にいるのは3体。この程度なら何の問題もない。
「テオン!!何無防備に突っ込んで……え?」
キールが振り向いて声を掛けてきていた。その声が気の抜けた終わり方をする前に、僕の剣は3体の首を掻き斬っていた。
担当分の仕事は終わったのでバウアーたちの戦いを見る。
彼は大きな斧を構え、一体と真正面から対峙している。そのまま頭目掛けて振り下ろす。その後、イエローハウンドが牙で噛みつこうと反撃をする。それを彼はかわさずに斧で受ける。一度飛び退り、再び頭目掛けて大振りに斧を振り下ろす。
「……何?あの戦い方」
ララが僕の感想を代弁する。いくら斧とはいえ、ハウンドの頭は特別硬く急所とはなり得ない。相手の急所を狙うこともせず、相手の技を返す素振りもない。僕らから見たら非効率この上ない戦い方だった。
ケインとキールも似たような感じだ。二人とも同様に武器を犬の頭に振り下ろすばかりで、急所を狙う素振りはない。そういえばマギーにも最初、何故急所にナイフを投げないのかと聞いたら目を丸くしていた。
後方組を見ると、そのマギーが3体の注意を同時に引き付けていた。敢えて1体に飛びかからせ、その首をすれ違い様に掻き切る。残り2体に背を向け、彼らが近付いてきたところを上に跳んでかわし背中にナイフを投げる。仰け反りながら向き直る瞬間に1体は首、もう一体は腹にナイフを投げ、それぞれ討ち取った。
僕らとの旅で、彼女の戦いの腕は確実に上がっているようだ。
「危ない!!」
ララが弓を射る。バランスを崩したケインに飛びかかった魔物の、硬い頭蓋の僅かな隙間に矢が刺さっている。寸分の狂いもない射撃に「おお」と声が漏れる。
「お……お前ら何なんだよ!!攻撃を受けたら必ずアボイドかカウンター?攻撃すれば全て急所にクリティカル?テオンに至ってはカウンタークリティカルで3体を瞬殺……!?てめえらおかしいだろ!!」
キールが怒鳴ってくる。アボイド?カウンター?何のことかは分からないが、戦闘技術を褒められたのだろうか。
「まあね。言ったでしょ?あのくらいの魔物は楽勝だって」
「いやいや、そういう問題じゃねえよ!サポートシステムバグってんのか!?」
また聞き慣れない単語だ。
「サポートシステム?」
そこへレナがやって来る。
「ああ、テオン君たちはサポートシステムには登録してないわよ?ゲージ表示も数値表示もない、原始的なスタイルなの」
「はあ?サポートなしで魔物と戦う?そんなやついるわけ……」
そこで彼は僕とララを見る。そしてぴくりとも動かない魔物の骸。
「いや……確かに目の前で見た。あんな……あんな戦い方の出来る奴がいるんだな。世の中って広ぇ……」
キールは独り納得した様子で頷く。魔物の剥ぎ取り作業を行っていたバウアーとケインも、手を止めあんぐりと口を開けてこちらを見ていた。
「ねえ、テオン?私たち、どこかおかしいのかな?」
ララが不安そうに尋ねる。僕も全然話に付いていけていない。
「ふふ。ララちゃんたちはそのままでいいのよ。あたしも見たときは驚いたけど、考えてみればそっちの方が自然だもの。おかしかったのは……あたしたちかも知れないわ」
レナは遠くを見るような目で僕らを見る。と思うとさっと表情を変えてメルーを捉える。彼は土魔法で作った斧を構えるバートンの後ろに隠れていた。
「メルーさんには他の償い方をしてもらわなきゃいけないわね」
「ひいい!もう勘弁してください!!」
その後もいくらか魔物を倒しながら曲がりくねった道を進み、目的地に着いた頃にはもう日も沈みそうな夕暮れだった。赤く染められた建物が目の前に横たわる。それは木造建築でありながら小綺麗で落ち着いた雰囲気を醸し出す、立派な温泉宿であった。
「あらまあ、これは大勢でようお越しくださいました。私がこの宿の女将、カレンと申します。どうぞよしなに」
宿の前に立つ眼鏡のアイルーロスが頭を下げる。布を体に巻き付けたような服を着ているが、不思議とその立ち姿は上品に感じられた。温泉宿の雰囲気とマッチしている。どこかの国の文化をそのまま持ってきたような調和だった。
「男7人、女9人なんだけど、部屋空いているかしら?」
「大部屋が二つ空いておりますので、そちらで如何でしょうか?」
「ええ、それでお願いするわ」
こうして僕らは火山の麓の温泉宿「かれん」に辿り着いたのだった。
中へ入るとまず大きな部屋があり、その傍らに受付があった。女将についてレナが受付に向かう。その間僕らは広間で寛いでいればいいらしい。
「へえ!囲炉裏まであるじゃない!凄いわねー」
ユカリが広間の真ん中の窪みに向かっていく。窪みは木の床を四角く切り取ったような形で、灰が敷き詰められており真ん中で薪を燃やしている。
「暖かいニャ~!天国だニャ~!!」
早速マギーが囲炉裏の周りで寝転んでいる。ルーミも火に当たって暖かそうだ。まだ冬の本番はこれからだが、谷を越えてからぐっと冷えてきたような気がする。
そんな中、ゼルダは広間の奥の方を見て固まっていた。
視線の先にはコートを着た渋めの男と、猫の耳の男の子が床に座って話し込んでいた。もしかしてあのどちらかが噂のアデルだろうか。
ゼルダは見た目子供のようだが、その中身は22歳。彼女の幼馴染みと言うことはアデルも20代前半の大人だ。それにしてはあの男は渋すぎるような気がするが、老け顔……もとい成熟の早い人などは10代で大人の男の雰囲気が出ると言うものだ。
「あ!あいつはあのときのムカつく泥棒猫じゃねえか!!」
突如声を上げたのはキールだった。広間を突っ切り、話し込んでいた二人のうちの猫耳の少年の方に声を掛ける。
「おいてめえ、ここで何してやがる!!」
キールの声に少年が顔を上げる。そういえば茶屋でキールたちはアイルーロスの冒険者と獲物を取り合ったようなことを言っていたな。
「あれ?お兄さん、この間あの熊に襲われてた人だね?こんな山奥で何してるんだい?」
「それは今俺がてめえに聞いたんだろうが!!」
「そうか、ごめんごめん。僕は人を追ってるんだ。この人とね」
少年が渋い男を指す。
「やあどうも。私は……」
「アデル!!」
今まで遠くから黙って見ているだけだったゼルダが、大きな声を上げた。そのまま男たちの元へ駆け寄り……少年の前に座り込んだ。
「アデル……久しぶりね!!」
何?アデルってそっち!?この少年のような姿のアイルーロスが……。ゼルダといいアデルといい……何で見た目詐欺がこんなに多いんだ!!
「ゼルダ!?どうして君までこんなところに?いや、ともかく無事だったんだね。ペトラの様子を見たときはそれは心配したんだよ」
「そう、ごめんね。でも私はこうして無事よ。ペトラも必ず復活させてみせる。アレーナもその……アルタイルに襲われたと聞いたわ」
「ああ、俺が少しみんなの元を離れたばっかりに……。悔しい限りだ。だがアレーナの生き残りは僕だけじゃなかった。それだけが今の僕の希望だよ」
「おいこら、キツネ娘!!今は俺がそいつと話して……ぐえっ」
二人の会話に入ろうとしたキールは、バウアーに後ろ襟を掴まれて引き剥がされていた。僕らもみんなアデルに挨拶すべく二人のもとに集まる。
「あなたがアデルさんね。お噂はかねがね」
「ちょ!ララさんその話は……」
赤くなったゼルダがララに詰め寄る。
「噂?ああ、君たちがゼルダの今の仲間なんだね。僕はアレーナの剣士アデル。よろしく!!」
ララの声が飛ぶ。手にはアラートボールが握られている。この魔道具には魔物の感知機能の他に結界機能もあるので、普段は余程の魔物でない限り僕らに接近することはできない。しかし、今は感知のみを行い結界を作動させていなかった。
「8体ね。みんな、分かってるわね!貴重な資金源、1体たりとも逃すな!!」
レナの目がキラッと光る。キラーザへの関所を出て坂を登り始めた僕らは、その道中に出る魔物で金策を図っていた。
「メルーさん?どうしてあなたが隠れているの?あなたが一番食べたんだから、一番働きなさい!!」
「む、無茶言わないでくださいよー!私は魔物との戦闘なんて1度もしたことないんですから!!」
サンゲーン茶屋で全種類頼む暴挙に出た彼を、彼女は絶対に許さないという気概を見せていた。ミミたちやポット、リットが組んだ非戦闘員保護のための円陣に逃げ込んでいたメルーを、彼女の手が引きずり出していく。
「ニャはは!メルー泣きべそかいてるニャ!びびり過ぎニャ!!」
マギーが笑い飛ばすが、その様子をバウアーたちは驚いて見ていた。
「おいおい、あんたら嘘だろ?ここいらでそんな群れを作るのはイエローハウンドくらいだ。平野に出るぶちハウンドとはわけが違うんだぞ?遊んでる場合かよ!!」
イエローハウンドもぶちハウンドも聞いたことはないが、キールやケインも顔が強張っているところを見ると、これから来る魔物は相当強いらしい。
「え?大丈夫ですよ。魔力量などを見るに子供のハウンドくらいの強さです。気楽に行きましょう。来ますよ!」
ララがあっけらかんと言う。その直後、アルト村の周りで見るハウンドより一回り小さな、全身黄金色の体毛に覆われた犬型の魔物が飛び出してきた。
「あれ?こいつら全然気を張ってない。戦う気ないのかな?」
「私もそれ不思議に思ったんだけど、襲いかかる気はあるみたいね」
右側から来るイエローハウンドを僕とララ、左からのをバウアーたち3人、後ろから来るのをバートンとマギー、そしてメルーが担当することになった。レナは後ろの援護だ。
いつまで経ってもイエローハウンドは気を張ろうとしない。そこで僕は剣を下げて近付いてみたが、敵は気にもしないでそのまま噛みついてくる。左側にいるのは3体。この程度なら何の問題もない。
「テオン!!何無防備に突っ込んで……え?」
キールが振り向いて声を掛けてきていた。その声が気の抜けた終わり方をする前に、僕の剣は3体の首を掻き斬っていた。
担当分の仕事は終わったのでバウアーたちの戦いを見る。
彼は大きな斧を構え、一体と真正面から対峙している。そのまま頭目掛けて振り下ろす。その後、イエローハウンドが牙で噛みつこうと反撃をする。それを彼はかわさずに斧で受ける。一度飛び退り、再び頭目掛けて大振りに斧を振り下ろす。
「……何?あの戦い方」
ララが僕の感想を代弁する。いくら斧とはいえ、ハウンドの頭は特別硬く急所とはなり得ない。相手の急所を狙うこともせず、相手の技を返す素振りもない。僕らから見たら非効率この上ない戦い方だった。
ケインとキールも似たような感じだ。二人とも同様に武器を犬の頭に振り下ろすばかりで、急所を狙う素振りはない。そういえばマギーにも最初、何故急所にナイフを投げないのかと聞いたら目を丸くしていた。
後方組を見ると、そのマギーが3体の注意を同時に引き付けていた。敢えて1体に飛びかからせ、その首をすれ違い様に掻き切る。残り2体に背を向け、彼らが近付いてきたところを上に跳んでかわし背中にナイフを投げる。仰け反りながら向き直る瞬間に1体は首、もう一体は腹にナイフを投げ、それぞれ討ち取った。
僕らとの旅で、彼女の戦いの腕は確実に上がっているようだ。
「危ない!!」
ララが弓を射る。バランスを崩したケインに飛びかかった魔物の、硬い頭蓋の僅かな隙間に矢が刺さっている。寸分の狂いもない射撃に「おお」と声が漏れる。
「お……お前ら何なんだよ!!攻撃を受けたら必ずアボイドかカウンター?攻撃すれば全て急所にクリティカル?テオンに至ってはカウンタークリティカルで3体を瞬殺……!?てめえらおかしいだろ!!」
キールが怒鳴ってくる。アボイド?カウンター?何のことかは分からないが、戦闘技術を褒められたのだろうか。
「まあね。言ったでしょ?あのくらいの魔物は楽勝だって」
「いやいや、そういう問題じゃねえよ!サポートシステムバグってんのか!?」
また聞き慣れない単語だ。
「サポートシステム?」
そこへレナがやって来る。
「ああ、テオン君たちはサポートシステムには登録してないわよ?ゲージ表示も数値表示もない、原始的なスタイルなの」
「はあ?サポートなしで魔物と戦う?そんなやついるわけ……」
そこで彼は僕とララを見る。そしてぴくりとも動かない魔物の骸。
「いや……確かに目の前で見た。あんな……あんな戦い方の出来る奴がいるんだな。世の中って広ぇ……」
キールは独り納得した様子で頷く。魔物の剥ぎ取り作業を行っていたバウアーとケインも、手を止めあんぐりと口を開けてこちらを見ていた。
「ねえ、テオン?私たち、どこかおかしいのかな?」
ララが不安そうに尋ねる。僕も全然話に付いていけていない。
「ふふ。ララちゃんたちはそのままでいいのよ。あたしも見たときは驚いたけど、考えてみればそっちの方が自然だもの。おかしかったのは……あたしたちかも知れないわ」
レナは遠くを見るような目で僕らを見る。と思うとさっと表情を変えてメルーを捉える。彼は土魔法で作った斧を構えるバートンの後ろに隠れていた。
「メルーさんには他の償い方をしてもらわなきゃいけないわね」
「ひいい!もう勘弁してください!!」
その後もいくらか魔物を倒しながら曲がりくねった道を進み、目的地に着いた頃にはもう日も沈みそうな夕暮れだった。赤く染められた建物が目の前に横たわる。それは木造建築でありながら小綺麗で落ち着いた雰囲気を醸し出す、立派な温泉宿であった。
「あらまあ、これは大勢でようお越しくださいました。私がこの宿の女将、カレンと申します。どうぞよしなに」
宿の前に立つ眼鏡のアイルーロスが頭を下げる。布を体に巻き付けたような服を着ているが、不思議とその立ち姿は上品に感じられた。温泉宿の雰囲気とマッチしている。どこかの国の文化をそのまま持ってきたような調和だった。
「男7人、女9人なんだけど、部屋空いているかしら?」
「大部屋が二つ空いておりますので、そちらで如何でしょうか?」
「ええ、それでお願いするわ」
こうして僕らは火山の麓の温泉宿「かれん」に辿り着いたのだった。
中へ入るとまず大きな部屋があり、その傍らに受付があった。女将についてレナが受付に向かう。その間僕らは広間で寛いでいればいいらしい。
「へえ!囲炉裏まであるじゃない!凄いわねー」
ユカリが広間の真ん中の窪みに向かっていく。窪みは木の床を四角く切り取ったような形で、灰が敷き詰められており真ん中で薪を燃やしている。
「暖かいニャ~!天国だニャ~!!」
早速マギーが囲炉裏の周りで寝転んでいる。ルーミも火に当たって暖かそうだ。まだ冬の本番はこれからだが、谷を越えてからぐっと冷えてきたような気がする。
そんな中、ゼルダは広間の奥の方を見て固まっていた。
視線の先にはコートを着た渋めの男と、猫の耳の男の子が床に座って話し込んでいた。もしかしてあのどちらかが噂のアデルだろうか。
ゼルダは見た目子供のようだが、その中身は22歳。彼女の幼馴染みと言うことはアデルも20代前半の大人だ。それにしてはあの男は渋すぎるような気がするが、老け顔……もとい成熟の早い人などは10代で大人の男の雰囲気が出ると言うものだ。
「あ!あいつはあのときのムカつく泥棒猫じゃねえか!!」
突如声を上げたのはキールだった。広間を突っ切り、話し込んでいた二人のうちの猫耳の少年の方に声を掛ける。
「おいてめえ、ここで何してやがる!!」
キールの声に少年が顔を上げる。そういえば茶屋でキールたちはアイルーロスの冒険者と獲物を取り合ったようなことを言っていたな。
「あれ?お兄さん、この間あの熊に襲われてた人だね?こんな山奥で何してるんだい?」
「それは今俺がてめえに聞いたんだろうが!!」
「そうか、ごめんごめん。僕は人を追ってるんだ。この人とね」
少年が渋い男を指す。
「やあどうも。私は……」
「アデル!!」
今まで遠くから黙って見ているだけだったゼルダが、大きな声を上げた。そのまま男たちの元へ駆け寄り……少年の前に座り込んだ。
「アデル……久しぶりね!!」
何?アデルってそっち!?この少年のような姿のアイルーロスが……。ゼルダといいアデルといい……何で見た目詐欺がこんなに多いんだ!!
「ゼルダ!?どうして君までこんなところに?いや、ともかく無事だったんだね。ペトラの様子を見たときはそれは心配したんだよ」
「そう、ごめんね。でも私はこうして無事よ。ペトラも必ず復活させてみせる。アレーナもその……アルタイルに襲われたと聞いたわ」
「ああ、俺が少しみんなの元を離れたばっかりに……。悔しい限りだ。だがアレーナの生き残りは僕だけじゃなかった。それだけが今の僕の希望だよ」
「おいこら、キツネ娘!!今は俺がそいつと話して……ぐえっ」
二人の会話に入ろうとしたキールは、バウアーに後ろ襟を掴まれて引き剥がされていた。僕らもみんなアデルに挨拶すべく二人のもとに集まる。
「あなたがアデルさんね。お噂はかねがね」
「ちょ!ララさんその話は……」
赤くなったゼルダがララに詰め寄る。
「噂?ああ、君たちがゼルダの今の仲間なんだね。僕はアレーナの剣士アデル。よろしく!!」
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