26 / 151
第2章 ポエトロの町と花園伝説
第9話 サモネア王国軍魔王討伐隊
しおりを挟む
―――ポエトロの町、西の広場
「ほえー!なんて大きな切り株なんでやすか!建物じゃなかったんでやす?」
テオンたちが事件に巻き込まれていることも知らないユズキとタラは、デミに連れられて町の中を観光していた。
「元々は大きな木だったらしいけどね。何かのときに上からポッキリいっちゃって。全部撤去するのは寂しいからって切り株だけ残したらしいわ。といっても町のどの建物より高いんだけどね」
「この上からなら町のすべてを見渡せるでやすね!」
「あ、それはダメよ?あの切り株に登るのは禁止されてるの。それから切り株より高い建物も禁止ね。景観のためなんだって。遠くから見たら町全体がお花畑に見えるようにって。見渡せなくて残念だったね」
「そうでやすか。流石芸術の町って感じでやす」
「デミ、そろそろ日が暮れるのに何でこんなに人が外に出てるんだ?」
「何言ってんの?まだ暮れるまで1、2時間はあるじゃない。それにこの町は夜の娯楽も盛んなのよ?あたしたち踊り子も吟遊詩人たちも、本番はこれからなんだから」
「ん?デミはまだ現役の踊り子なのか?」
「別に生活には困ってないから踊る必要はないけどね。今夜はあなたたちが来てるし、折角だから踊ってあげようかなって」
「うお!それは楽しみでやす!!」
興奮するユズキとタラにふふと笑うデミ。そこへギルドの職員がやってきた。慌てているのかかなり息が上がっている。
「はあはあ。やっと見つけましたよ、デミさん。私は冒険者ギルド職員のカイルと申します。ギルドマスターがお呼びです。緊急事態です。至急冒険者ギルドまで来てください」
「緊急事態?何かあったの?」
「ええ。来ていただければ分かると。そちらはアルト村からお越しの方々ですね?お二人もご一緒にどうぞ。お連れの方がギルドでお待ちになっています。お怪我をされたようで」
「何っ!!テオンが怪我したのか?」
「すみません、私はそこまで把握できておりませんので。ただアルト村からお越しになった方が何か事件に巻き込まれて、重大な危機が発覚した、という状況のようでした。どうかお急ぎを」
こうして彼らもようやく事態を把握し、冒険者ギルドに向かうこととなった。
―――一方、尋問中のテオンたちは……
"オマ……お前たちは、アリシア盗賊団なのか?"
僕は真っ先にそう尋ねる。デュオやエミルは僕の口から未知の言語が出てきたことに驚いていたが、今はそれを気にしている場合ではなかった。
アリシア盗賊団の名前をいきなり出したことで捕らえた男も大層驚いていた。
"俺たちを知ってるのか!?この世界の者たちにそう名乗ってはいないはずだが?"
"聞いてるのはこっちだ。アリシア盗賊団でいいんだな。何の目的でここに来た?"
デュオに目で合図する。彼は驚きながらも意図に気づいてナイフを押し当てる。
"ああ、分かった。知っていることは話す。俺たちは花畑を探すように命じられた。それ以上のことは知らない"
"よし。質問を変える。ここに来たのは何人だ?"
"20人くらいだ"
こうしていくつかのことを尋問していく。男は素直に応えていった。仲間の戦力的なことは知らないの一点張りだったが、現在は複雑な構造の洞窟の探索でかなり戦力が分散しているということが分かった。
"最後に聞く。僕と同じ格好をした女の子を知っているか?"
"女の子?ああ、俺たちのことを探っていた女がいた。上玉だったから丁度いいと思って拐おうとしたんだが……"
"よし、もういい"
「一応ちゃんと町の衛兵に突きだそう」
そうデュオに伝えてから男の腹部に拳を打つ。男は一発で気を失った。それからこいつらがアリシア盗賊団であることを含め、聞き出したことをデュオたちに伝える。
「で、どうする?」
「今がチャンスなんだ、突入はしたい。こいつらは油断のならない盗賊団だ。目的を果たさせたら絶対に良からぬことが起こる」
「アリシア盗賊団だっけ?初めて聞いたがそんなにやばい奴らなのか?」
やばい奴ら……。
そんなもんじゃない。その企みで大国が滅びたのだ。その脅威は僕にとって魔王に等しい。事実魔王を倒すための軍隊は彼らによって……。
嫌な記憶は忘れようとすればするほど明瞭に心に刻まれていく。前世の記憶を曖昧にしか思い出せない僕が、この世界で覚醒してから今まで何度も繰り返し思い返してしまったように。そして今もまた、僕はその記憶に囚われていくのだった。
―――前世、ロイの記憶
「まさか私もお前も勇者候補だとはな。運命とは不思議なものだ」
僕ロイ・ルミネールと姫様スフィア・ブランはミール市長の部屋に呼ばれていた。サモネア王国軍から緊急召集令状とともに書簡が送られてきたのだ。
「いやあ、わしも驚いた。スフィアは小さい頃から勇者に憧れていたもんな。白の勇者の本を毎日のように読んでは『私も勇者様のようになります』って。あんなに小さかったお前がこんなに立派になって、遂に自らが勇者候補になるなんて……」
市長は姫様の親代わりだ。おいおい泣いて喜んでいる。
「縁起の悪いことは言わないで頂きたい。私はロイの次の勇者候補。勇者になりたかったことは本当だが、それ以上にロイに死んで欲しくはない」
「そうか。勇者候補になるだけでなくもう心に決めた男まで……」
「そういう話をしているんじゃない!!」
姫様は顔を赤くして叫んでいる。ああ可愛い。
「すまんすまん。さて、そして王国軍からの召集だが、二人には魔王討伐隊を編成して早速魔界へ旅立って欲しいとのことだ。近々魔王は大きな災いをもたらすと言われているからな。王も気が気でないそうだ」
「編成は私たちが決めて良いのか?」
「ああ。自分達が信頼できるミールの兵を連れていくといいと書いてある。街の守りにヘンリーの第三部隊さえ残していってくれれば、あとは誰を連れていってくれてもいい」
こうしてサモネア王国軍魔王討伐隊はミール自衛兵団から選ばれることとなった。姫様はまだ19歳になったばかりで経験不足を気にしていたため、隊長は54歳のベテランである第一部隊隊長ルシウスが務めることになった。
それから第一部隊からは副隊長含めて16名、第二部隊からは僕と他11名が選ばれ、ほどなくして魔族領へ出発した。初めに向かうのはウェーバー台地、かつてブラン王国の王都があった場所である。今は廃墟と化して野盗などが住み着いているらしい。
ウェーバー台地の周りには城壁、北側には要塞が築かれており、昔魔族が人族領に攻めてきたときの防衛線の役割を果たしていた。その向こうの山岳地帯モンスネブラと霊峰タミナスを越えて魔族領へ入るのだ。
僕らは順調に行軍した。ミール市街からレト川沿いに進むとマルシェ門が見えてくる。ウェーバー台地に東から入る門である。ブラン王国が滅びたことで、その扉は長らく締め切られていた。
「姫様、大丈夫ですか?」
「ああ。強くなったつもりでいたが、ここまで来ると流石に堪えるな」
錆び付いた門を開く。かつて繁栄した都の姿はすっかり落ちぶれていた。焼け落ちたまま放置された家屋の跡が、辛うじてそこに人が住んでいた事実を思い出させる。姫様は今にも崩れ落ちそうだ。
「スフィア……。休みたくなったら言えよ。アリス、見ていてやれ」
ルシウス隊長も姫様を気遣う。アリスと呼ばれた女性が姫様の横についた。アリス――アリス・ブキャナンは第一部隊の副隊長だった回復魔術師だ。見た目は少女だが25歳、僕より年上だ。普段はおっとりして少し抜けているが、広範囲に回復魔法を展開する様子はさながら天使のようだと、彼女に魅了される男兵士は多い。
アリスは元孤児だ。ルシウスが後見人となって育て、その名前も彼が名付けたものだった。故にアリスのルシウスへの服従は絶対であり、ルシウスも彼女を深く信頼していた。
「スフィアさん、大丈夫ですよ。すぐ良くなります」
アリスは姫様の背中をさすりながら歩く。足元に瓦礫が近づいている。あっと声をあげようとしたが間に合わなかった。
「いったーーーい」
見事にアリス一人だけが躓いて思いっきり転んだ。見ていた兵士たちが皆ほんわか笑顔になっている。もはや様式美といって差し支えない。回復魔法もすごいが、その存在自体が癒しをもたらすのだ。
「ははっ。どんな奴が来たかと思えば。ここは嬢ちゃんたちの遊び場じゃないぜ」
「何奴!?」
突然廃墟の影から人が現れた。ルシウスが警戒して剣の柄に手をかける。
「ここは既に人の寄り付かない廃墟。華やかな王都は12年前に滅んじまってるよ。おっと、そんな怖い顔すんなよ!俺は情報屋、イデオ・オニキスだ。役に立つぜ旦那」
「ふ。情報屋だと?胡散臭そうなやつだ。こんなところで何してる?」
隊長は警戒しながらも近づいていく。それだけでも威圧感たっぷりで、大抵の雑魚盗賊はこれで逃げてしまう。
「あんたら、勇者様ご一行だろ?」
!?
僕らのことはできる限り外部には知られないようにしていたはずだ。特にこの中に勇者候補がいることが魔王に知られれば、勇者の力に覚醒する前に襲われるかもしれない。隠しておきたいことだった。
情報屋はこちらを見定めるように眺め回し、姫様に目を止めると近寄ってきた。
「勇者候補ってのはあんたかい?この中じゃ一番それっぽい。ただならぬ力を持ってるな。うん、あんたなら勇者になれるだろう」
「ふん。いきなり失礼なやつだな。私はただの兵士であり我々はただの調査隊だ。それよりお前はここで何をしているのかと聞いている」
「おお、気の強いことだ。言ったろう、俺は情報屋だ。情報を売りに来たに決まってる」
彼はさらにぐっと姫様に詰め寄る。僕とアリスが制止しようと前に出るが、それを意にも介さず姫様を睨むようにしていった。口許には不敵な笑みが浮かんでいる。
「アリシア盗賊団のこと知りたくないか、王女様?」
「ほえー!なんて大きな切り株なんでやすか!建物じゃなかったんでやす?」
テオンたちが事件に巻き込まれていることも知らないユズキとタラは、デミに連れられて町の中を観光していた。
「元々は大きな木だったらしいけどね。何かのときに上からポッキリいっちゃって。全部撤去するのは寂しいからって切り株だけ残したらしいわ。といっても町のどの建物より高いんだけどね」
「この上からなら町のすべてを見渡せるでやすね!」
「あ、それはダメよ?あの切り株に登るのは禁止されてるの。それから切り株より高い建物も禁止ね。景観のためなんだって。遠くから見たら町全体がお花畑に見えるようにって。見渡せなくて残念だったね」
「そうでやすか。流石芸術の町って感じでやす」
「デミ、そろそろ日が暮れるのに何でこんなに人が外に出てるんだ?」
「何言ってんの?まだ暮れるまで1、2時間はあるじゃない。それにこの町は夜の娯楽も盛んなのよ?あたしたち踊り子も吟遊詩人たちも、本番はこれからなんだから」
「ん?デミはまだ現役の踊り子なのか?」
「別に生活には困ってないから踊る必要はないけどね。今夜はあなたたちが来てるし、折角だから踊ってあげようかなって」
「うお!それは楽しみでやす!!」
興奮するユズキとタラにふふと笑うデミ。そこへギルドの職員がやってきた。慌てているのかかなり息が上がっている。
「はあはあ。やっと見つけましたよ、デミさん。私は冒険者ギルド職員のカイルと申します。ギルドマスターがお呼びです。緊急事態です。至急冒険者ギルドまで来てください」
「緊急事態?何かあったの?」
「ええ。来ていただければ分かると。そちらはアルト村からお越しの方々ですね?お二人もご一緒にどうぞ。お連れの方がギルドでお待ちになっています。お怪我をされたようで」
「何っ!!テオンが怪我したのか?」
「すみません、私はそこまで把握できておりませんので。ただアルト村からお越しになった方が何か事件に巻き込まれて、重大な危機が発覚した、という状況のようでした。どうかお急ぎを」
こうして彼らもようやく事態を把握し、冒険者ギルドに向かうこととなった。
―――一方、尋問中のテオンたちは……
"オマ……お前たちは、アリシア盗賊団なのか?"
僕は真っ先にそう尋ねる。デュオやエミルは僕の口から未知の言語が出てきたことに驚いていたが、今はそれを気にしている場合ではなかった。
アリシア盗賊団の名前をいきなり出したことで捕らえた男も大層驚いていた。
"俺たちを知ってるのか!?この世界の者たちにそう名乗ってはいないはずだが?"
"聞いてるのはこっちだ。アリシア盗賊団でいいんだな。何の目的でここに来た?"
デュオに目で合図する。彼は驚きながらも意図に気づいてナイフを押し当てる。
"ああ、分かった。知っていることは話す。俺たちは花畑を探すように命じられた。それ以上のことは知らない"
"よし。質問を変える。ここに来たのは何人だ?"
"20人くらいだ"
こうしていくつかのことを尋問していく。男は素直に応えていった。仲間の戦力的なことは知らないの一点張りだったが、現在は複雑な構造の洞窟の探索でかなり戦力が分散しているということが分かった。
"最後に聞く。僕と同じ格好をした女の子を知っているか?"
"女の子?ああ、俺たちのことを探っていた女がいた。上玉だったから丁度いいと思って拐おうとしたんだが……"
"よし、もういい"
「一応ちゃんと町の衛兵に突きだそう」
そうデュオに伝えてから男の腹部に拳を打つ。男は一発で気を失った。それからこいつらがアリシア盗賊団であることを含め、聞き出したことをデュオたちに伝える。
「で、どうする?」
「今がチャンスなんだ、突入はしたい。こいつらは油断のならない盗賊団だ。目的を果たさせたら絶対に良からぬことが起こる」
「アリシア盗賊団だっけ?初めて聞いたがそんなにやばい奴らなのか?」
やばい奴ら……。
そんなもんじゃない。その企みで大国が滅びたのだ。その脅威は僕にとって魔王に等しい。事実魔王を倒すための軍隊は彼らによって……。
嫌な記憶は忘れようとすればするほど明瞭に心に刻まれていく。前世の記憶を曖昧にしか思い出せない僕が、この世界で覚醒してから今まで何度も繰り返し思い返してしまったように。そして今もまた、僕はその記憶に囚われていくのだった。
―――前世、ロイの記憶
「まさか私もお前も勇者候補だとはな。運命とは不思議なものだ」
僕ロイ・ルミネールと姫様スフィア・ブランはミール市長の部屋に呼ばれていた。サモネア王国軍から緊急召集令状とともに書簡が送られてきたのだ。
「いやあ、わしも驚いた。スフィアは小さい頃から勇者に憧れていたもんな。白の勇者の本を毎日のように読んでは『私も勇者様のようになります』って。あんなに小さかったお前がこんなに立派になって、遂に自らが勇者候補になるなんて……」
市長は姫様の親代わりだ。おいおい泣いて喜んでいる。
「縁起の悪いことは言わないで頂きたい。私はロイの次の勇者候補。勇者になりたかったことは本当だが、それ以上にロイに死んで欲しくはない」
「そうか。勇者候補になるだけでなくもう心に決めた男まで……」
「そういう話をしているんじゃない!!」
姫様は顔を赤くして叫んでいる。ああ可愛い。
「すまんすまん。さて、そして王国軍からの召集だが、二人には魔王討伐隊を編成して早速魔界へ旅立って欲しいとのことだ。近々魔王は大きな災いをもたらすと言われているからな。王も気が気でないそうだ」
「編成は私たちが決めて良いのか?」
「ああ。自分達が信頼できるミールの兵を連れていくといいと書いてある。街の守りにヘンリーの第三部隊さえ残していってくれれば、あとは誰を連れていってくれてもいい」
こうしてサモネア王国軍魔王討伐隊はミール自衛兵団から選ばれることとなった。姫様はまだ19歳になったばかりで経験不足を気にしていたため、隊長は54歳のベテランである第一部隊隊長ルシウスが務めることになった。
それから第一部隊からは副隊長含めて16名、第二部隊からは僕と他11名が選ばれ、ほどなくして魔族領へ出発した。初めに向かうのはウェーバー台地、かつてブラン王国の王都があった場所である。今は廃墟と化して野盗などが住み着いているらしい。
ウェーバー台地の周りには城壁、北側には要塞が築かれており、昔魔族が人族領に攻めてきたときの防衛線の役割を果たしていた。その向こうの山岳地帯モンスネブラと霊峰タミナスを越えて魔族領へ入るのだ。
僕らは順調に行軍した。ミール市街からレト川沿いに進むとマルシェ門が見えてくる。ウェーバー台地に東から入る門である。ブラン王国が滅びたことで、その扉は長らく締め切られていた。
「姫様、大丈夫ですか?」
「ああ。強くなったつもりでいたが、ここまで来ると流石に堪えるな」
錆び付いた門を開く。かつて繁栄した都の姿はすっかり落ちぶれていた。焼け落ちたまま放置された家屋の跡が、辛うじてそこに人が住んでいた事実を思い出させる。姫様は今にも崩れ落ちそうだ。
「スフィア……。休みたくなったら言えよ。アリス、見ていてやれ」
ルシウス隊長も姫様を気遣う。アリスと呼ばれた女性が姫様の横についた。アリス――アリス・ブキャナンは第一部隊の副隊長だった回復魔術師だ。見た目は少女だが25歳、僕より年上だ。普段はおっとりして少し抜けているが、広範囲に回復魔法を展開する様子はさながら天使のようだと、彼女に魅了される男兵士は多い。
アリスは元孤児だ。ルシウスが後見人となって育て、その名前も彼が名付けたものだった。故にアリスのルシウスへの服従は絶対であり、ルシウスも彼女を深く信頼していた。
「スフィアさん、大丈夫ですよ。すぐ良くなります」
アリスは姫様の背中をさすりながら歩く。足元に瓦礫が近づいている。あっと声をあげようとしたが間に合わなかった。
「いったーーーい」
見事にアリス一人だけが躓いて思いっきり転んだ。見ていた兵士たちが皆ほんわか笑顔になっている。もはや様式美といって差し支えない。回復魔法もすごいが、その存在自体が癒しをもたらすのだ。
「ははっ。どんな奴が来たかと思えば。ここは嬢ちゃんたちの遊び場じゃないぜ」
「何奴!?」
突然廃墟の影から人が現れた。ルシウスが警戒して剣の柄に手をかける。
「ここは既に人の寄り付かない廃墟。華やかな王都は12年前に滅んじまってるよ。おっと、そんな怖い顔すんなよ!俺は情報屋、イデオ・オニキスだ。役に立つぜ旦那」
「ふ。情報屋だと?胡散臭そうなやつだ。こんなところで何してる?」
隊長は警戒しながらも近づいていく。それだけでも威圧感たっぷりで、大抵の雑魚盗賊はこれで逃げてしまう。
「あんたら、勇者様ご一行だろ?」
!?
僕らのことはできる限り外部には知られないようにしていたはずだ。特にこの中に勇者候補がいることが魔王に知られれば、勇者の力に覚醒する前に襲われるかもしれない。隠しておきたいことだった。
情報屋はこちらを見定めるように眺め回し、姫様に目を止めると近寄ってきた。
「勇者候補ってのはあんたかい?この中じゃ一番それっぽい。ただならぬ力を持ってるな。うん、あんたなら勇者になれるだろう」
「ふん。いきなり失礼なやつだな。私はただの兵士であり我々はただの調査隊だ。それよりお前はここで何をしているのかと聞いている」
「おお、気の強いことだ。言ったろう、俺は情報屋だ。情報を売りに来たに決まってる」
彼はさらにぐっと姫様に詰め寄る。僕とアリスが制止しようと前に出るが、それを意にも介さず姫様を睨むようにしていった。口許には不敵な笑みが浮かんでいる。
「アリシア盗賊団のこと知りたくないか、王女様?」
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる