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襲撃の余波

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目に付くのもなんだなという事で、出前を頼むことにした。
魔物達に俺達が居ることがバレると、あいつらは直ぐに集まってくるからね。
まあ時間の問題だろうけどさ。
島野一家とダイコクさん、そしてポタリーさんで食卓を囲むことにした。

メニューはシェア出来る物でとゴンに任せた。
ゴンが通信用の魔道具で注文を行っている。
この時点でバレるよね?多分・・・
三十分後には食事がデリバリーされてきた。
残念ながら配達員はゴブオクンでは無かった。
奴ならばもしや?と思っていたが、流石に今回は無かった。

食事はピザだった。
だろうなとは思ったけどね。
マルゲリーピザとペパロニピザ、照り焼きチキンピザと明太子餅チーズピザが各LLサイズを二枚だ。
ギルも食べるんだからこれぐらいはいるよな。
もしかしたら足りないかも?
個人的に好きなのはマルゲリータと明太子餅チーズピザだ。

嬉しい事に『シマーノ』ではスケトウダラが捕れるのだ。
南半球では捕れない魚である。
今では明太子は『シマーノ』の特産品になっている。
サウナ島に卸しているぐらいだ。
スケトウダラが捕れると聞いた時には胸が躍った。
大好きな明太子が食べれると、スケトウダラの卵巣を塩蔵し、唐辛子を使った調味液で味付けした。
これで明太子パスタなども作ることが出来る。
新メニューの開発に頭打ちになっていた所だったので実に助かった。
明太子は色々と使えるからね。
明太マヨ一つとっても出来るレシピはいくらでもある。
おにぎりにも良いし、パンに塗っても良いしね。

そんなことはいいとしてだ。
ポタリーさんはピザが相当口に合ったのか、ピザをがっつく様に食べていた。
いや、お腹が減っていたのかな?
まあなんであれよかった、よかった。

「旨い!これも旨い!なんだこれは!」
ポタリーさんは舌鼓を打っていた。
俺は思わずニンマリとしてしまった。
だって嬉しいじゃないの。

食事をしつつも情報交換は外せない。
此処からは情報共有の時間だ。

「ポタリーさん、そういえば『ドミニオン』と『ルイベント』は同盟国になりましたよ」
ポタリーさんは呆けた顔で俺を見ていた。
手に持ったピザを落としそうだ。

「はあ?旦那、何を言ってんだい?あたいは『ドミニオン』の政治には詳しくはないが、あの国は馬鹿貴族達が牛耳っていて、とても褒められた国ではないんだがね。同盟?考えられないよ」
ピザを片手に返事をしていた。

「せやな、でも島野はんのお陰で馬鹿貴族共は一掃されたんや。今では同盟国としても充分な国となったんやでポタリー」
ダイコクさんは、まるで自分の成果であるかの如く胸を張っていた。

「ほんとかよ!旦那!あんた出鱈目が過ぎやしないかい?まさか創造神様にでも成ろうってかい?」
・・・はいとは言えないな。
流石に無理だ。

「いやー・・・流石に・・・ねえ?」
答えられないよ。

「まあ、島野はんならそれもあり得るか・・・」
おいおい止めてくれよ!
ダイコクさんまでなんだよ!

「そんなことはいいとして、今は俺達は魔物同盟国『シマーノ』にいます。『シマーノ』のことは御存じですか?」

「知らないねえ、というか旦那。あんたそもそも何者なんだい?」
『シマーノ』の事は無視かよ・・・気になるのはこっちじゃないんだ。
魔物の国ですよ?
人の話をちゃんと聞いてましたか?

「俺は・・・異世界から転移してきた者で、神様修業中の身です」
不意にポタリーさんが視線を落とす。
暗い表情に一同が緊張感を覚える。

「そうかい・・・ラファエルと一緒か・・・」

「え!それはどういうことですか?」
だろうなとは思っていたが、ここは確信が欲しい。
敢えて聞いてみよう。
こいつらも知りたいだろうしね。

「ラファエルはねえ、異世界人なんだよ。どうやら転生してきたみたいだねえ、そしてあいつは神に成ることを目指しているんだ」

「そうですか・・・」
やっぱり異世界人なんだな。
それに転生者か・・・
エリカと一緒か?
案の定じゃないか。
神に成ろうってか・・・まあ無理だろうけど。
どうやらまだ道半ばって所かな?

「初めて会った時には神に成ろうとする、純粋な青年だったんだけどねえ・・・あいつはいつの間にか変わっちまったみたいだ・・・神に成ると憑りつかれていたよ。人相すらも変わっていたのさ。全くの別人だったね」

「憑りつかれる、ですか?・・・」

「ああ、鬼気迫るものがあったよ、百年ぶりに会ってみたら・・・というより拉致されちまったんだけどねえ」
ポタリーさんは気まずいのか、頭を掻いていた。

「なんで拉致なんか・・・」

「何でも実験とかほざいてたよ、あの餓鬼んちょ!・・・ああ‼ムカつくよ‼ぶん殴ってやりたいよ‼」
でしょうね!
思いっきり殴っていいと思います、それもグーで鼻頭にガツン‼と。

「なんでラファエルは神に成りたいんですかね?」

「・・・それが分からないのさ・・・昔に一度、聞いてはみたんだがね・・・答えたくないと言われちまってね・・・それ以上は聞けない雰囲気だったのさ・・・今となっては強引にでも聞くべきだったね・・・」

「そうですか・・・」
それが一番知りたかったのだけど、しょうがないよね。
でもどうしても神に成りたいって・・・何かしらの事情があるのか?
またはただの自我か・・・
分かりかねるな。
ラファエルに関してはまだまだ情報が足りない。

その後も今の北半球の現状について話を重ねた。
ポタリーさんは終始驚きっぱなしであった。
だろうなとは思っていたがね。

「ああ、もうお腹一杯だよ!」

「たくさん食べましたからね」

「いや、そっちじゃなくてさ・・・」

「ああ・・・」
情報過多の方ですね、これは失敬。

「纏めるとだ・・・旦那は北半球にやってきてから魔物達に名を与え、魔物の国を建国した。そして南半球と『転移扉』で繋いだだけじゃなく、『ルイベント』や『ドミニオン』とも同盟を結び、橋頭保を確保した、更には『ドラゴム』とも親交を厚くした。そして神気減少問題に目下取り込み中ということなのかい?」

「まあ概ねそうですね、俺一人でやった訳ではないですがね」

「せやで!わても協力したんやで!」
ダイコクさんが割り込んできた。

「というより、裏で絵を描いたのはある意味ダイコクさんじゃないですか?始めは自分の意思でしたが、途中からは上手く使ってくれましたよね?」
俺はジト目でダイコクさんを眺める。

「そう言ってくれるんかいな?島野はんは人間ができとんなあ?」
自分の手柄に出来たとダイコクさんは喜んでいる。
よく言うよ、全く。
このおっさん・・・調子のいいことで・・・まあ嫌いじゃないけどさ。

「ダイコク・・・あんたはどうでもいいんだよ!いい所ばっかり持ってこうとするんじゃないよ!お前はせこいんだよ!いい加減変わらないねえ?」

「なんでやねん!いいやないかい!」

「はい、はい、そうしとこうかねえ・・・でもねえ、それは島野の旦那ありきのことじゃないか。あんたも分かっているんだろ?」
ポタリーさんが確信を突いていた。
それは言わないであげてよ・・・

「なんでそれを言うんや!・・・少しはわてにも花を持たせてくれてもいいやろがい!」
ダイコクさんの声が響き渡っていた。

「ハハハ!」

「ダイコクさん、笑える!」
ノンとギルが笑っていた。

「自分達も笑うんかいな?」

「そりゃそうさ!」
ポタリーさんも笑っていた。
場が笑いに包まれていた。

話は続く、
「それでこの先ですが、どうしていこうかな?と思案しているところです」
一先ずの緊急対応は済んだからね。
自分のペースに戻したいのが本音です。
いい加減エリスに会いに行きたい。
ていうか、もう待てない!
俺の罪悪感も限界だ!

「旦那、まずはあたいは『ドミニオン』に帰っていいかい?どうにも工房が気になってねえ」
ポタリーさんは後で転移で送っていこう。

「ええ、後で送りますよ」

「そうかい、助かるよ」

「島野はん、今後についてやが、わてはまずは同盟を強固なものにしたいと考えてんねん」

「なるほど」
あんたはそう言うと思ったよ。

「そこで例の『転移扉』やが、国家間を繋げるのはどうやろうか?」
やっぱりそうなるよね。
ダイコクさんには一対の転移扉を渡したけれども、それは『ドミニオン』と『ルイベント』の国王間のホットラインとして利用しているだけと聞いているからな。
南半球の様に全ての国を繋げていきたいということなんだろう。
でも誰に管理させるのかが問題となる。
通行料も発生させなければならないしね。
北半球だけ特別に無料とはいかないからな。
南半球との本格的な繋がりはまだ先の話として、北半球の信頼できる国だけなら繋げてもいい頃かもしれない。

実際繋げられるのは『シマーノ』『ドラゴム』『ルイベント』『ドミニオン』だな。
既に『シマーノ』と『ドラゴム』を繋げてはいるが、此処の運営はゼノンに一任している状況だ。
南半球のサウナ島の様な役割を『シマーノ』が担う事にすればいいのだが、こちらから扉を開けるのが難しい。
サウナ島ではエクスがいるから双方向の物に今はなっているし、エクスが来る前は俺とギルが居たからね。
でも北半球では一方通行になりそうだ。
詰まるところ神の数が足りていないのだ。
ゼノンとダイコクさん、そしてポタリーさんしか居ない。
この三人で四国間を繋げるのはちょっと心元無い。

運用自体はできるが南半球程の頻繁なやり取りは難しいだろう。
でも有ると無いとでは大違いだ。
それにそろそろダイコクさんをサウナ島に連れて行かなければいけない。
これまで散々断ってきたからね。
ポタリーさんは北半球で知り合った神としては三人目だ。
ゼノンは既にサウナ島に入り浸っている様だし・・・
いい加減、潮時だな。
連れて行きましょうかね。

「国家間で繋げるのは南半球では既に完成されている交通網です。それを参考にすべきかと思います」

「じゃあそろそろやな?」
ダイコクさんが意味ありげに視線を向けてきた。

「ですね」

「ほんまかいな!遂にか!」
ダイコクさんは両手を挙げて喜んでいた。

「はい、サウナ島にご招待しますよ」

「やったでー‼いよいよやでー‼」
ダイコクさんは興奮している。
一人興奮しているダイコクさんを無視して、ポタリーさんは疑問を投げかけてきた。

「なあ旦那、サウナ島ってなんのことだい?」
話は変わるが、明らかにダイコクさんはポタリーさんに好意を向けているのだが、ポタリーさんは一向に構っていない様子。

「俺達の住んでいる島ですよ」
ちょっとだけダイコクさんが哀れに見えてしまった。

「それだけとちゃうで!ポタリー!サウナ島はな、魅惑の島なんや!流行の最先端、娯楽の発信地!そして南半球の神々が集う楽園なんや‼」
ダイコクさんの熱弁が凄い。
そんなにサウナ島に行きたかったんだ・・・
ダイコクさんはガッツポーズを決めていた。

「ではサウナ島へは後日招待しますので、通信用の神具で連絡を入れますよ」

「楽しみやなー、約束やで!絶対やで‼」
しつこいっての。

「あたいもいいかい?」
ポタリーさんも興味があるみたいだ。

「勿論ですよ」
こうして話は一段落した。
どうやらこの二人をサウナ島にご招待することになったみたいだ。
その後ポタリーさんとダイコクさんをそれぞれの国に送っていった。
ふう、長い一日だったな。
ちょっと疲れたな。
こんな日は日本に帰って、行きつけのスーパー銭湯に行くしかないでしょう。



『イヤーズ』の混乱は深まるばかりだった。
神獣と聖獣の襲撃はあまりに大きなインパクトを残していた。
国民全員が自らの無力さに打ちひしがれていた。
半壊した神殿は痛々しく、復興を行う様な活気は全く無かった。
まだそこまで心が向いていないのが状況である。
もうこの国は拙いと国を離れることを決意する者が多数いた。
余りの惨劇に国民は大きく揺れていた。

それはそうだろう。
国の象徴である神殿は半壊し、宗教への信仰も揺らいでいた。
神獣と聖獣の襲撃が国民に与えたインパクトは絶大過ぎた。
正に守の狙い通りだったのである。

守の狙いは『イヤーズ』に混乱を与えることと、宗教への信仰心を揺るがせることにあったからだ。
出来ることならば、この国の根底を覆したいと考えてはいたが、大きくは望んではいなかった。
そこまで出来れば恩の字というぐらいだった。
でも狙いの大半は成就していた。

国民達はあの人を崇拝しているが、神獣は神であることを理解している。
それに聖獣も神に近しい存在との認識なのだ。
この世界の常識は当然根付いているのだ、いくら宗教とはいえど、それを覆すことなど出来はしない。
そんな存在が睨みを利かせて破壊行為に及んだのである。
それはお前達の国は認めないと言われていることと同義となる。
それぐらいは分かって当然ということだ。

新興宗教国家『イヤーズ』は、神から喧嘩を売られた国なのだと受け止めるしか無かった。
国民はもはやこの国を見捨てるしかないと考えだしていた。
洗脳に掛かっているとはいっても、本能は抑えられない。
生命の危機に瀕してしまっては、本能に従うのみだ。
それにあまりのインパクトに洗脳が解けてしまっている者も多くいたのだ。
それほどにラファエルの洗脳は希薄だ。
吹けば飛ぶほどの効果しか無いのだ。

イヤーズの国王からは何も発表は無かった。
というより出来ないでいたのが現状である。
それはそうだろう、国王はラファエルの傀儡でしかない。
そして国王含めて国の重鎮達も、今回の出来事に唖然としていたのだ。
誰も何も言えない状態に陥っていた。
何を言ってもそれは儚い言葉となったからだ。
ある者が言った。

「あのドラゴンは勘違いしているのでは?」

「あの人が成敗してくれるのでは?」

「次は退治出来るに違いない」
どの発言も希望にすらならない。
儚い夢でしかないのだ。

それに今回の襲撃で怪我人や死人は一人も出なかった現実があった。
あの人の起こした奇跡と言う者もいたが、概ねの意見は違っていた。
それは手加減をされたのだというものだった。
その解釈は正解である。
実際三人は悪ふざけして遊んでいたのではあるが、守の言いつけを忠実に守っていたからだ。
絶対に怪我人は出すなと。
その命令には忠実に従っていたのだった。
だからこその怪我人ゼロなのである。
転んで膝を擦りむいたぐらいの者はいたが、それは許してやって欲しい。

この意味は国民達を震え上がらせた。
本気を出されたらどうなるのかと・・・
国が亡ぶに違いない・・・
また襲撃はあるのか?・・・
これは神々からの警告だ・・・
国民の一部は、あの極大魔法がドラゴンに効かなかったのを目撃している。
国内最強と名高い親衛隊や魔法士の一団も全く歯が立たなかった。
彼らが茫然と神獣と聖獣を眺めているのも目撃されている。
無力感でいっぱいになっていたのだった。

そしてあの人は何もしなかった・・・
それどころか今も人々の前には出てこない。
その安否すらも伝え聞くことは出来なかった。
この窮地にあって、あの人は何もしなかったのだ。
この事に国民達は意見が割れた。
あの人は無力であるという意見と、そうでは無く何かしらの思惑があるのでは無いのかとの意見に。
だがその大半はあの人は無力であるとの意見であった。
実際はそれが正解であった。
攻められたラファエルは実に虚弱だったのだ。
国民の大半は既にラファエルを見放しだしていた。
窮地において何も出来ない者に信仰を捧げるなど、もはや出来る訳がない。



ラファエルは自分の部屋で一人震えていた。
自分の誇るべき神殿は半壊し、国民の心が離れだしていることも感じていた。
それだけでは無い。
これまでラファエルは、この世界を自分の物と錯覚していたのにも関わらず、その世界が急変したのだ。
突如現れた神獣と聖獣に世界が一変させられた。
最早ラファエルには現実を受け止めることすら出来なかった。

実は襲撃を受けた時にラファエルは神殿には居なかった。
衣服を整えて、居城から神殿へと向かおうとしていたタイミングであった。
いつも通りの拝謁の時間を迎える予定でいたのだ。
そしてラファエルはその自らの眼で、神獣と聖獣が暴れているところを目撃してしまっていた。
恐怖で身体が固まり、動くことは全く出来なかった。
ただただ茫然と崩れ行く神殿を眺めていたのだ。
脇をペガサスが通り抜けた時には恐怖で身体が凍り付いた。
フェンリルの放った雷が目前に落ちた時には腰を抜かして、その場にヘタレ込んでしまっていた。
そしてドラゴンのブレスに失禁していたのだ。
これが襲撃を受けた時のラファエルであった。

唯一の救いはそんなラファエルの姿を、国民に目撃されていなかったことだ。
国民達は自分が避難することに精一杯だったからである。
ラファエルは目の前に繰り広げられている惨状に思考が追いつかなかった。

(昨日まではいつも通りの毎日だったはずだ・・・俺は崇拝され、この世界は俺の物だったはずだ・・・ポタリーで実験を行い、神の能力や性質を知ろうとしていたのだが・・・これは一体どういうことだ?・・・このままでは俺の国は蹂躙されてしまう・・・俺はどうなってしまうのだ・・・)
考えられない出来事にラファエルは思考が止まろうとしていた。
もう今は何も考えられないと・・・
ラファエルは現実逃避しようとしていた。
目の前に繰り広げられていることは自分の知る世界ではないと・・・
結果、ラファエルは居城にとじ閉じこもって過ごすことになったのである。

王城からの使者が連日訪れていたが、ラファエルは取り合わない。
こうなってしまっては合わせる顔などなかった。
ラファエルは食事も真面に摂れなくなっていた。
ラファエルは現実逃避を続けていた。
そしてラファエルに一報が届けられる。
この一報にてラファエルは徐々に自分を取り戻すことになる。

「教祖様、よろしいでしょうか?」

「・・・」
ラファエルは返事もしない。
とてもそんな気にはなれなかった。

「教祖様・・・陶磁器の神ポタリーが消えました」
ピクリと眉毛を動かすラファエル。

「・・・なんだと?」
興味を覚えだしたラファエル。

「陶磁器の神ポタリーが消えました」

「消えただと?・・・」
ラファエルはやっと思考を始めた。
ここに来てラファエルは自分を取り戻しつつあった。

(どういうことだ・・・もしや・・・あの神獣と聖獣の襲撃は陽動だったのか?・・・本命はポタリーの救出だったのか?・・・そうとしか思えない・・・どうなっている?訳が分からない)

「牢屋の兵士達の話が聞きたい、連れて来てこい!」
ラファエルは息を取り戻しだした。

「は!畏まりました!」

ラファエルは主だった警備の者達から話を聞いた。
結果として分かったことは、牢屋の部屋に至るまでは、一切何も異常は無かったということ。
そして牢屋の部屋の前に突如として、男性と女性が現れたということだった。
まるで何もないところから急に現れたらしい。
警備兵達はその者達に眠られたということだった。

驚いた所に、
「眠れ!」
と命令されたということらしい。
それはラファエルの知る催眠の手口だった。
ラファエルは受け止めるのに時間が掛かった。
そんな事はあり得ないと。
偶然では無かろうかと。

(相手は催眠術師なのか?いや、そんなことは考えづらい・・・いったい誰なんだ・・・あの神獣と聖獣の一味なのか?そうに違いない・・・まさか神なのか?どうだろう・・・ここは情報がいる・・・考察するには情報が全く足りない)
ラファエルはお付きの者に五人の老師に集まる様に指示した。

(あいつらであれば何かしらの情報を持っていても可笑しくはない)
こうしてラファエルは自分を取り戻していった。
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