神様のサウナ ~神様修業がてらサウナ満喫生活始めました~

イタズ

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魔水晶

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翌日、俺は請求書を見て大いに反省した。
否、猛省した。
その金額は金貨百枚を超えていたからだ。
一日で百万円以上の散財をしてしまっていた。
あり得ない・・・
俺は何処かの大物芸能人ではないのだが・・・
そんな散財するキャラでは無いと思っているのだが・・・
まあいいか。
ここは切り替えるしかない。
外に方法が見当たらないからね。
でも二度とやらないと俺は心に誓ったのだった。

そりゃあそうでしょう・・・なんでこんなんことになったんだ?
こんな散財をしていたら、いくらたくさんお金を持っていても直ぐに底を付いてしまうだろう。
俺は質素倹約で評判だったはず・・・
どうやら俺も熱に当てられてしまっていた様だ。
ギルの頑張りに胸を打たれたのは確かだしな。
昨日のギルは凄かった。
賞賛に値する。

でも困ったものだ。
まだまだ俺も修行が足りないな。
何が半仙半神だよ。
俗物に塗れてますがな。
やれやれだ。

俺達は一旦ドラゴムに戻ることにした。
というのも村興しがどうなっているのかいい加減気になっていたからだ。
ドラゴムに着くと、ギルもこれまでの村興し以上に張り切っていた。
喜々として作業に励んでいた。
ゼノンに良い暮らしをして欲しいのだろう。
いつになく前のめりだ。
一方ゼノンは一切手を貸すことなく、その様子を見守っていた。
恐らくゼノンにとっては、村興しなどどうでもいい事なのかもしれない。

何故かというとゼノンは長命種であり、かつ今後もこの世界が滅ぶまで存在し続ける存在だからだ。
まだ地球での感覚が抜けきらない俺の一年が、ゼノンにとってはこの世界では一日に感じていてもおかしくは無いのだ。
ハウオールドアーユー?
と聞きたくはなるが、それは聞くだけ無駄ということだろう。
覚えていないと言われるに決まっている。
でも俺も今では長命種に成っている。
その感覚は未だ薄いのだが、いつかはその感覚になるかもしれない。
全く想像はできないのだが・・・

ある日いきなりあなたの寿命は無くなりました。
と掛かりつけのお医者さんから言われたらどう思うのだろうか?
あ、そうですか、じゃあもうここには通わなくていいんですね。
保険証も破棄しますね。
なんて言えるのだろうか?
俺には無理だと思う。
多分、その発言を飲み込むのに最低でも数年は掛かるだろう。
現にほぼ寿命が無くなった俺だが、自覚なんて無いに等しい。
けど明らかなのは、睡眠欲求と食事欲求は無くなりつつあるということだ。
生殖欲求は・・・言わないでおこう。
かといって俺は惰眠を貪るし、食事も一日三食しっかりと食べる。
これは欠かせない。
寝なくても、食わなくても生きていけることは、感覚的には理解している。
でもそうはしないし、そうするつもりもない。
それではあまりにつまらないからだ。

これは俺以外の神様達全員にいえることだろうし、共通の想いなはずだ。
だからこそ、サウナ島に上級神だって集まって来たし、神様ズもサウナ島に魅力を感じているのだろう、そして今後もサウナ島に通い詰めるに決まっている。
要は娯楽が必要だということだ。
神は遊びに飢えているのだ。
そんな気がしてならない。
世の人々を自らの権能を用いて導き、慈愛でもって見守る。
この世界での神はそんな存在なのだ。
俺はそれをありがたいと感じているし、こんな世界を面白いと思っている。

俺はゼノンに話し掛けた。
「ゼノン、この村をどうしたいとかってあるのか?」

「どうしたいかじゃと?」
ゼノンは一瞬逡巡した。

「無いのう、儂は見守るだけじゃしな」
やっぱりな、そう言うと思ったよ。

「じゃがのう、儂を慕うリザードマン達が今より少しでも笑顔になるなら、儂は何でもOKじゃよ」

「そうか」
その気持ちはよく分かる。
俺にも俺を慕ってくれる者達が沢山いる。
スーパー銭湯もノリで造り出した感が否めないが、実際は心の中には仲間を想う気持ちがあったのだから。
あいつらには今よりもっと幸せになって欲しいと。
こういうところは同じなんだな。
俺は思わず笑みが零れていたみたいだ。

「守よ、何を笑っておるのじゃ?」

「いや、ちょっとな」
言葉にしづらいからはぐらかしておいた。
だって少々恥ずかしからさ。

さて、俺はゼノンと違ってただ見守るだけなのは性に合わないから、最低限度の手は貸すことにした。
アリザとリザオ、ギルと打ち合わせを行うことにしたのだ。
打ち合わせの内容は基本的なことだ、どう村興しを行うのかということ。

「お前達、この村をどうしたいんだ?」
村興しといってもその方法は無数に存在する。
なんといっても、まずはコンセプトがいる。

「どうしたいってどういうこと?」
ギルからの質問だ。

「ただ単に村の施設を最新式にするだけではあまり意味が無いだろ?要はコンセプトをどうするのかってことだよ」

「ああ、そういうことね」
ギルにはすんなりと通じる。

「コンセプトとは何でしょうか?」
アリザには分からなかったみたいだ。
まあそうだろな、特にアリザはまだ他の街をあまり知らないからな。

「コンセプトとは、誰にどのような価値を、どのような形で提供するのか?ということだ」

「なるほど、そうなるとこの村の者達にとって、どの様な価値を見出すのかといことですね?」
リザオは理解できたみたいだが、少々理解が浅いな。

「それもあるが、それだけではないな。まずはこの村の住民はもちろんだが、この村に訪れる者達もそこには含まなければならない。リザオは南半球に行ったことがあるから分かると思うが、各村にはその村ならではの産業がある。フランであれば畜産だし、カナンであれば養蜂だ。分かるか?」

「はい、この村の何を特徴にするのかということですね」
リザオは理解できたみたいだ。

「そうだ、それ以外にも考えることはいくつもある」

「通貨や移動方法とかだね」
ギルは流石に分っている。
これまでに何度も経験してきているからな。
それにギルはこう言ってはなんだが頭が良い、親バカだと言われるかもしれないが、事実そうなのだ。

「まず俺が知るこの村の特徴は、リザードマン達は鱗が金になるし、ゼノンの鱗も大きな金になる、他にこの村の特徴になりうるものは何があるのか?どうだアリザ」
アリザは腕を組んで考えている。

「島野様、これまでドラゴムの村は外界との交流を控えていました」
それは分かっている。

「その理由はこの村が僻地であることと、我等リザードマンがあまりゼノン様を外界と触れさせたくはないと考えていたからです」

「それはどうしてだ?」

「それは、外界に良い印象を我等リザードマンは持っていないからです」
なるほどな。
だが、ゼノンはこの世界の現状を網羅している。
なんといっても千里眼と地獄耳の能力を持っているのだから。
アリザ達はこのことを知らないみたいだな。
せっかくだから教えてあげよう。

「アリザ、実はゼノンはこの世界の有り様を全て知っているんだよ、その権能においてな」

「なんと?本当で御座いますか?!」
アリザは仰天していた。

「ああ、ゼノンにはそれだけの能力があるんだよ」
エンシェントドラゴンを舐めてはいけない。
ゼノンの能力は外にも多数あると俺は睨んでいる。

「左様で御座いますか・・・流石はゼノン様です・・・」
アリザは項垂れていた。

「だから何もこの村を世界から孤立させる必要なんてないんだよ、それどころかこの村を世界の中心にすることも可能なんだ」
ちょっと言い過ぎかな?
でもやろうと思えばやれちゃうんじゃないかな?
ゼノンは柄でも無いと言いそうだが。

「そうですか・・・」
アリザはこれまでの苦労は何だったのか、とでも思っているのだろうな。
表情が暗い。

「それでこの村に訪れる人達のことも、この村のコンセプトを考える上で考慮しないといけないってことだね」
ギルは二人に噛み砕いて説明を加えていた。

「そうだ、これを機に外界と一気に触れ合うことも出来るということなんだ」

「私としては外界と交流を持つべきと考えます」
リザオは強く主張していた。

「特に『シマーノ』とは深く交流すべきかと」

「どうしてリザオはそう思うんだ?」

「それは、ゼノン様は『シマーノ』では絶大な人気を誇っておりますし、兄弟達は信用がおけます」
確かにゼノンは魔物達に人気だ。
ダイコクさんには悪いが、ゼノンは俺と同様の崇拝を魔物達から受けていた。
もしかしたら魔物の本能的なものなのかもしれない。
一方ダイコクさんに従順なのはソバルだけだ、魔物達も一定の尊敬の念を抱いているのは分かっているが、ゼノンに関しては根本的に違っている。
人気なんていう生易しいものではないのだ。

「それは私も賛成です。こちらからしても『シマーノ』には同族がおりますし、魔物達は信用がおけます。もはやリザオではないのですが、私も彼らを兄弟と呼んでもいいかと・・・」
そうなるな。

「じゃあ、これは確定事項ってことでいいね?」
ギルが纏めていく。

「パパ、そうなると『シマーノ』にない、何かが必要だね」
ギルは理解が早い。

「そうなるな、魔物達がドラゴムに来たがる理由がいるな」
ゼノンがいるだけでも充分とも考えられるのだがな。

「ねえパパ『シマーノ』にも南半球にも無い物って何かあるかな?」
おい!無茶ぶりするんじゃありませんよ。
・・・
何がある?
南半球には大体の娯楽や産業がある。
それ以外となると・・・思いつかないな。
どうしたものか?

「ちょっと思いつかないな」

「そうなんだ、パパでも無理か・・・」
ギルはしょんぼりとしていた。
あれ?
期待を裏切ってしまったのか?
でも無い物はない。
無い袖は振れないからな、すまんなギルよ。
ん?ちょっと待てよ・・・何かが引っかかる・・・
でもこれが何になるのだろうか?
一縷の望みだな。
俺は『収納』から魔水晶を取りだした。

「なあ、話は変わるがこれが何か分かる者はいるか?」
アリザが手を挙げた。

「それは魔水晶ですね、この村にもいつくか御座います」

「そうか、それでこれは何に使えるんだ?」

「・・・分かりません・・・ですがゼノン様ならご存じかもしれません」

「ゼノンを呼んで来てくれ」
アリザは頭を下げるとゼノンを呼びに行った。

ゼノンは飄々と現れた、だが口元は緩んでいた。
呼ばれたことに喜んでいる様にも見える。

「守よ、何か用か?」

「すまんなゼノン呼び出して、これが何だか教えて欲しくてな」
俺は魔水晶を手渡した。

「ほう、魔水晶じゃな。物事を記録し、再生が出来るのじゃ」
おお!
ビデオ来たー‼
否、DVDかな?年齢がバレるな。
あるじゃないか『シマーノ』にも南半球にもない娯楽が!
思わず俺はほくそ笑んでしまった。
その顔をギルが見逃さない。

「パパ、閃いたね」

「ああ、これは流行るぞ!ゼノン、使い方を教えてくれ」

「あい分かった」
ゼノンは懇切丁寧に使い方を教えてくれた。
ゼノンは頼られて嬉しいのだろう、ニコニコしている。
俺は魔力がないからギルが使用するしかない。
ゼノン曰く、魔力を流して物事を録画し、魔力を込めた魔石を引っ付ける、又は魔力を流すと再生されるということだった。
そして要らない録画はイメージしながら魔力を流すと消せるということだった。
細かな編集なども出来るということらしい、魔水晶の使い方をゼノンは熟知していた。
これまでも何度も使った事があるみたいだ。

一応試してみた。
ゼノンが魔力を込めてギルを録画する。

「やあ、僕はギルだよ。よろしくね」
ギルは面白くもない自己紹介を簡潔に行っていた。
緊張で顔が強張っている。

「はい、カット!」
何故かやる気になったゼノンが運動会にやってきた爺さんの如く、ギルをビデオカメラで録画する様にしていた。
お遊戯会や運動会じゃないんだよ・・・
何だかな・・・
今度は再生してみる。
すると魔水晶の上に先ほど録画したギルが、まるで立体映像の様に浮かび上がっていた。
おお!
これはいいぞ!
立体映像じゃないか。
これは使えるぞ。
しめしめだな。



ドラゴムの村興しは着々と進んでいる。
打ち合わせから実に三ヶ月が経とうとしていた。
今ではドラゴムの村は水道が完備され、トイレも水洗式になっていた。
村の区画整理も進んでおり、八割方が完成している。

畑も立派になっており、アイリスさんとアースラ様の技術指導も行われていた。
アースラ様は農業の技術指導に余念がない。
今ではアイリスさん以上に熱心だ。
流石に畑に入る時は花魁衣装は封印しており、最近は島野標入りのジャージに長靴姿をよく見かける。
それでも威厳を失っていないのは上級神だからだろうか?
リザードマン達も挺身低頭でアースラ様に接している。
食堂や宿屋等も完備させており、立派な村へと変貌していた。

そしてゼノン期待の温泉だったが、少し村から離れたところになってしまったが、泉源があった。
当然の如く温泉施設を造り、サウナも完備させている。
温泉施設の工事に関しては、興味があったのかゼノンも手伝っていた。
そして懸念事項の人財不足に関しては『シマーノ』のリザードマン達が移住を申し入れたことで解決した。
『シマーノ』に残るリザードマン達もいたが、大半のリザードマン達がドラゴムに移住することになったのだ。
ゼノンの人気は絶大だと改めて思い知らされた。
それに数名の魔物達もシマーノに移住していた。
その所為か、いまでは普通にドラゴムでオーガやゴブリン、オーク達を見かける。
もはやその様子は『シマーノ』と変わらない。

主に村興しを手伝ったのは『シマーノ』の魔物達だった。
対価となる工事等の費用は後払いでということになっている。
魔物達は当初無料で行うと言っていたが、それを俺は許さなかった。
だってそうだろう。

今では『シマーノ』は北半球の経済圏において欠かせない国になっている。
そんな国が無償で村興しを手伝うなんてあり得ない事だからだ。
直ぐに支払うだけの通貨をドラゴムは持ち合わせてはいないが、今後間違いなくこの村にはお金が集まることになる。
俺はそう確信している。
魔水晶のあるこの村には間違いのないことなのだ。
だから返済は間違いなくできると踏んでいる。

そしてひっそりと映画撮影が行われることになった。
なんと映画監督になったのはゼノンだった。
いろいろ試してみた結果、ゼノンが最も上手く録画や編集ができたのだ。
それにゼノンはやる気に満ちていた。
天職を得たとばかりに鼻息が荒かった。
今では、監督、編集者、ディレクター等、何でも熟している。

録画する映画は『島野一家のダンジョン冒険記』だ。
主演はギル。
ギルがスーパー銭湯の舞台で、千両役者と熱弁の能力全開に演じ切っていた、あの劇の再現だ。
あの劇の所為で、スーパー銭湯を無料開放する羽目になったのを俺は鮮明に覚えている。
ちょっと痛い経験でもある。
ノンやエル、ゴンもやる気満々で撮影に挑んでいた。
ゼノンは喜々として撮影を行っている。
今ではカチンコを手放さ無い徹底ぶりだった。
これまでの、のほほんとした人柄が変わったのかという程の入れ込み様で、演技指導にも熱が入っていた。

そしてオリビアさんとマリアさんがこれを見逃す訳がなかった。
終日映画の内容から音楽や演出まで、ゼノンと意見を戦わせていた。
そして彼女達の意見は多く取り入れられていた。
その貢献は高く評価されている。
ゼノンは彼女達の協力は大きかったと後日述べていたぐらいだ。

そして俺だが、まさかの降板となってしまった。
俺はそうとう大根だったらしい。

ゼノン曰く、
「守は魔水晶を意識しすぎて話にならん!ぎこちなさは天下一品じゃ、お主に演技はむいておらん!」
ということだった。

本人役を本人が演じられないという残念な結果となってしまった。
そして俺の変わりはオリビアさんが行うことになったのだった。
性別すら違うのに・・・何故だ?‼

後日遠慮の無いロンメルから、
「何で旦那の役がオリビア様なんだ?」
と聞かれ。

「俺は大根役者が過ぎるから降ろされたんだよ」
苦々しくも説明すると。
「旦那でも出来ない事があるんだな」
ロンメルに意外そうな顔をされてしまった。
俺にも出来ない事なんていくらでもあるわい!
俺をなんだと思っているんだ?
パーフェクト超人では無いっての!
久しぶりにイラっとしてしまった出来事だった。

オリビアさんは連日撮影にノリノリだった。
俺はオリビアさんのマネージャーに成り変わり、せっせと裏方作業に徹したのだった。
けっ!
俺は役者ではないんでね、ただの半仙半神ですよ!
・・・くそう‼・・・
俺に演技を求めるんじゃないよ‼
俺は裏方が性に合っているんだよ‼
まさか俺にこんな弱点があるとは・・・
まだまだ修業が足りないな・・・

そして遂にこの世界初の映画が完成した。
『島野一家のダンジョン冒険記』
俺の名を冠しているにも関わらず俺は一切の出演がない。
最後のエンドロールに協力者として名前が載っただけだった。
これでいいのだろうか?
いいんでしょうね・・・
やれやれだ。
俺は何とも言えない気持ちで映画の完成を迎えたのだった。

映画の皮切りはドラゴムの村の中心にある大きなスクリーンでとなった。
それは真っ白な幕がある広場だった。
幕は映像が見やすい様にと工夫を重ねて出来上がった物だ。
そして大きな天幕が張られて、全体が暗く映像が更に見やすくなる様に工夫がされている。
今後は新たに造られる映画館にて映画は放映されることになっている。
今日は初日の為、特別に村の中心での放映となっていたのだ。
今日の為に村の住民全員と『シマーノ』からの招待客と南半球からのゲストが集っていた。
興味本位にと神様ズも集まっている。
更にはマッチョの国王や、ルイ君やアリッサさんまでいる始末だ。
その警護の者達までと重要人物の宝庫となっていた。
だが村はお祭り騒ぎだ。
屋台にて飲み物や食べ物が販売され、お祭りムードが村全体に充満していた。
今正にこの世界初の映画鑑賞が始まろうとしていた。
その評価は如何に・・・

場内は興奮と期待に満ち溢れていた。
ある者はポップコーンを片手に、ある者はアルコールを手に、好きに観賞しようと急遽準備された椅子に腰かけている。
俺はその様子を遠巻きに眺めていた。
その俺に倣おうと島野一家が集まってきていた。
にやにやするノン。
自分が映ると緊張するゴン。
何を考えているのか分からないエル。
そして主演を張って今さらながらに緊張しているギル。
それぞれが、各自の映画鑑賞を楽しもうとしていた。



そして映画鑑賞会が始まった。
タイトルが表示されると大歓声が巻き上がった。
観客達は大いに盛り上がっている。
映画ののっけから大騒ぎだ。
声を挙げる者。
中には声援を送る者達もいた。
映画に魔物達は引き込まれていた。
まるで自分がその冒険を行っているかの如く興奮している。
作品の内容や、強弱のついた場面展開に、全員が息を飲んでいた。
そして全員が声を挙げ、驚き、感動していた。
最後には大半の者が涙を流していたのだった。
始めての映画鑑賞会は大成功を迎えていたのだった。



特別に造られた壇上にゼノン他出演者達が挨拶に集まっていた。
グランドフィナーレが行われようとしていた。
ゼノンが拡声魔法を受けて、挨拶を行うことになっている。

「皆、楽しんでくれた様じゃな」
この一言にリザードマン達が沸く。

「ゼノン様!」

「最高でした!」

「楽しかったです!」
ゼノンがウンウンと頷いている。
相当嬉しかったのだろう、これまでに見たこともない笑顔をしていた。

「これも出演してくれた者達や、協力を惜しみなくしてくれたオリビアやマリアのお陰じゃよ」
マリアさんは喜び、オリビアさんは当然と胸を張っている。
一家はというと、マイペースなノン以外は全員照れていた。
何だかな・・・

「これを機にこの世界でも映画が広まるとよいのう、のう守よ?」
いきなり俺にボールが投げられてしまった。
しょうがないな。

「ああ!流行るのは間違いないから、ゼノンは次回作を何にするのか考えてくれ!」
地響きがするほどの歓声が沸き上がっていた。

「島野様がお認めになったぞ!」

「次回作?早く観たい!」

「やった!これでドラゴムの村は安泰だ!」

「映画に出演したい!」
好きに騒いでいる。
ここでマリアさんが前に出てきた。

「守ちゃん!次回作は私の漫画の実写化にしてちょうだい!」
大声で叫んでいた。
なんで俺に許可を求めるんだ?
あっ!そうか、この映画の出資者は俺だったな。
はいはい。
お好きにどうぞ。

「ゼノンと相談してください、勿論出資はさせて貰いますよ」

「よっしゃあ‼」
マリアさんは地声で喜んでいた。
それをゼノンが驚いた顔で見つめていた。
ゼノンの驚いた顔なんて始めてみたよ、それだけでも出資した甲斐があるってものだな。
はあ、やれやれだ。

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