73 / 155
サウナビレッジその2
しおりを挟む
まずは身内で、サウナビレッジを堪能することにした。
営業を開始するのはまだまだ先だ。
施設自体は造ったが、備品などは持ち込んでいない。
ここからは時間が掛かる作業が多いし、従業員をどうするかもこれからである。
俺は新しいサウナを、まずはじっくりと堪能したい。
今日は三種類のサウナを二セットづつは行いたい。
俺は旧メンバーに声を掛けて、サウナビレッジのサウナに入ることにした。
神様ズはどうせ遠慮なく混ざってくるだろう。
あの人達は外っておけばいい。
気を使う必要は全くない。
好きにしてくれればいい。
メルルには適当に食べ物と、飲み物を準備してくれとお願いしてある。
エルと一緒に携帯用のなんちゃって冷蔵庫に、いろいろと詰めていた。
ギルとノンには既に、サウナの火入れは指示してあり、アロマ水も準備してある。
ポンチョとサンダルに関しては、既に手配してある為、メルラドの服屋にマークが取りに行っている。
まずは一通り巡回して、サウナビレッジを見て周る。
個人的な感想になるのだが、何といってもこの手作り感がいい。
村と形容するにはぴったりだ。
森の中に佇むロッジ風のサウナ達、心が踊る。
ギルからそろそろいいよと『念話』が入った為、まずは更衣室で水着に着替えた。
水着着用のサウナは久しぶりだ。
期待で胸が高まる。
ちょうどマークがポンチョとサンダルを持ってきた為、受け取ると、タオルを持ってサウナに向かった。
その道すがら、皆には好きにしていいからなと声をかけて行く。
最初にシャワーを浴びて、体を洗う。
これは当たり前のマナー。
まず俺は九十度のサウナから入ることにした。
サウナ室の入口にポンチョとサンダルを置いて、アロマ水の入ったバケツと柄杓を持って中に入る。
俺はこのサウナの最初の利用者だ。
今後ともよろしくお願いしますと、俺はサウナに一礼した。
サウナ室に入ると、まだ木の香りが充満していた。
これがアロマの匂いに包まれるサウナになるのだろう。
俺はサウナ一号機を思い出していた。
彼を今は五郎さんが使ってくれている。
はやり少人数で入れるサウナは良い。
スーパー銭湯が出来る前までは、少人数用のサウナを使っていたからか、懐かしさがある。
とてもいい雰囲気だ。
パフォーマンスも悪くない、まだ入って三分と経ってはいないが、汗をかきだしている。
とてもいい感じだ。
雑多な雰囲気が無く、自問自答を行うには打って付けだな。
スーパー銭湯のサウナではこうはいかない。
どうしても周りに目が行きがちだ。
するとギルがサウナ室に入ってきた。
「パパが一番乗り?」
「そうだ、役得だろ?」
「なんか昔のサウナを思い出すね」
「そうだな」
「スーパー銭湯のサウナもいいけど、これもやっぱりいいね」
ギルの奴、分かってるじゃないか。もはやこいつも一端の上級サウナーだな。
「じゃあそろそろやろうか?」
と俺は柄杓を握り、アロマ水をサウナストーンにかけた。
アロマ水が音を立てて蒸気に変わっていく。
これはレモンの香りだな、いいね。
湿度が上がって、一気に体感温度を上げていく。
ああ・・・気持ちいい・・・
「おお・・・いいねー・・・」
ギルが呟いていた。
だいぶ汗をかいてきたな、でももう少し粘ろう。
そこにノンが入ってきた。
「あれ?ロウリュウやっちゃった?」
「ああ、さっきな」
「アウフグースする?」
「いや、いい。そろそろ俺は出るから」
「そう」
とノンは腰かけた。
「じゃあお先に」
と俺はサウナ室から出た。
サンダルを履いて、ポンチョを持って水風呂へと向かう。
ちょっと煩わしいな。
インフィニティーチェアーにポンチョを置いて、水風呂へと向かう。
サンダルを脱いで、掛け水を行う。
おお!思った以上に冷たいな。
一気に水風呂に入る。
「ああ・・・」
思わず声が漏れる。
身体から熱が奪われていく。
いいねー、気持ちいい。
最高だ!
水風呂を出てサンダルを履き、インフィニティーチェアーに向かう。
ポンチョを着て腰かける。
体重を後ろにかけて、一気に横になる。
「ふううー、これはこれでいいねー」
おじさんの独り言が木霊する。
って見た目は若いのか・・・
今回は敢えて、俺とギルの整い部屋は造っていない。
それは純粋にサウナを楽しもうと考えたからだ。
でもこれは・・・自己催眠に入らなくても、神気を吸収できそうだ。
ああ・・・やっぱりいい。
俺は整いを堪能した。
余韻も素晴らしい。
どうやら意識すること無く。神気を吸収できたようだ。
よし、今度は八十度のサウナだな!
俺はサウナビレッジを存分に堪能した。
今はサウナを終え、外気浴場で焚火を囲んでいる。
夕方になり、少し肌寒くなってきたからだ。
これはこれで良いものだ。
「島野さんどうぞ」
とランドがビールを持ってきていた。
「おお、ありがとう」
と俺はジョッキを受け取った。
「「乾杯!」」
ランドと乾杯した。
じっくりサウナ六セット明けのビール、最高だな。
のど越したるやいなや・・・ああ、身体に染み渡る。
充実感が半端ないな。
至極の一杯だ。
「昔のサウナを思い出しましたよ」
こいつもか、まあ皆なそうなんだろうな。
「分かるぞ」
「ですよね、これはこれで俺は好きですね」
続々と皆なが集まり出した。
ちょっとしたキャンプだなこれは。
「島野さん、こうなったらバーベキューにします?バーべキューコンロを持ってくれば直ぐですし」
メルルからの提案だ。
「ああ、任せるよ」
「じゃあ準備しますね、エル、ギル手伝って?」
「分かった」
「ですの」
と三人はバーベキューの準備に向かった。
眼の前の焚火に俺は眼を奪われていた。
外の皆なも、ゆっくりとしている。
不意にロンメルが問いかけて来た。
「なあ旦那、この施設は誰が面倒みるんだ?」
「ああそれか、サウナビレッジはマークに任せるよ」
「俺ですか?」
「そうだ、迎賓館はロンメルが仕切ってくれ」
「そうか分かった。サウナビレッジは旦那の肝いりだ、リーダーがやるべきだろうな」
「そうなのか?」
「妥当な人選だと思うぜ」
「そうだ、とは言っても立ち上げは俺も手伝うから、安心してくれ。あとついでに言っておくと、マークとランドは副社長も兼任してくれ。お前らは昇進だ!」
「嘘でしょ?!」
「マジかよ!」
と二人は驚いている。
だがこれは前々から考えていたことだった。
今はのんびりとしているが、いつかは俺は、北半球に乗り込まなければいけない。
何も情報の無い今の状況としては、万が一を考えなければいけない。
それに聖獣勢は経営には向いていないし、北半球に向かうとなったら、付いてくるというに決まっている。
「そんな・・・本当によろしいのですか?」
「そうですよ、俺達じゃなくても、ゴンとかギルとか・・・」
「よく考えてくれよ、ゴンもギルも柄じゃないだろ?それにノンなんて絶対に向かないし、エルもレケもそうだろ?」
「まあ、そうだろうな」
とロンメルも同意見のようだ。
「お前達は神様ズからも顔が売れてるし、問題ないだろう?なんだ?断るつもりなのか?」
「ちょっと、それはないでしょう!受けるに決まってますよ!」
「そうですよ、やりますよ!」
「だったらこの不毛なやり取りはなんなんだよ?」
とロンメルがツッコんでいる。
まあ、多少は驚いたんだろうが、謙虚さが先だったということだろうな。
こいつららしいな。
「じゃあそういうことで、あとロンメルとメルルも昇進だ。お前らは専務だ。よろしく頼むぞ」
「ああ、分かったぜ」
ロンメルは謙虚さを見せないみたいだ。
まあこいつらしくて分かりやすいな。
「お前達は昇格に伴って給料も増えるから、今度俺に奢るようにな」
「やった!」
「もちろんです!」
「ちゃっかりしてんな、旦那は」
と嬉しさを隠すことは無かったようだ。
そうこうしていると、バーベキューが始まった。
案の定、神様ズが乱入してきた。
神様ズはサウナを後日じっくりと堪能したいと、ちゃっかりと予約していた。
ご自由にどうぞ。
サウナを楽しんでくださいな。
どうぞ骨抜きになってくれ。
やれやれだ。
俺はマークと打ち合わせを行っている。
サウナビレッジの運営についてだ。
まずは人材をどうするのか?というところだ。
話し合う順番としては人・物・金と言ったところか。
まぁ前後しても構わないが。
「マーク実はな、声を掛けたい人材がいるんだ」
「へえー、島野さんが目を付けるって、相当使える人材なんでしょうね?」
「ああ、あいつらは使えると思う。特にリーダーのドリルは空気が読めるし、逸材だな。他にもダノンとサルーも、仕事が出来るタイプだな」
「そうですか」
「あいつらは確か・・・餅・・・いやブルーエッグだったな」
「餅?」
どうしても餅ハンターとしての印象が強い。
餅ハンター改め、ブルーエッグだ。
そうだブルーエッグ・・・覚えれたかな?たぶん・・・
餅の印象が強すぎるよ。
「そこは忘れてくれ。あいつらは二日に一度はスーパー銭湯に来てるみたいだから、俺から声を掛けてみるよ。でもあいつらが、ここで働くことになるかは分からないけどな」
「そうですか・・・ではそこは島野さんに任せます」
俺は確信があった。
前にブルーエッグと話をしていた時に、あいつらはサウナにド嵌りしていて、ダンジョンで得た儲けを、全てサウナに費やしていると言っていた。
更にここで働きたいと漏らしていたからな。
まあ最終的にはどうなるかは、話してみないと分からないけどね。
「それで、外はどうしますか?」
「また客から募集するか?」
「そうですね、それがいいでしょう」
「出来ればサウナ好きな奴に拘りたいな」
「ですね、サウナビレッジですからね。サウナ好き以外は考えられんでしょう」
「後は厨房は、マット君に任せようと思うがどうだ?」
「マットなら問題ないでしょう、ただメルルが何というかは、聞いてみないと分からないですけど」
「メルルなら大丈夫だろう、料理班はめきめきと育っていると言っていたからな」
「そうですか、じゃあ大丈夫でしょう」
「何人雇うかだが、全員で三十名ぐらいでどうだ?」
「多くないですか?」
「いやサウナビレッジに雇うのは二十五名ぐらいで、あとは外の部署に補充したらどうかと思うがどうだ?」
「そうですね、何処に補充しますか?」
「それは今度の会議で聞いてみよう」
「分かりました」
「料金とかはどうしますか?」
「料金もそうだが、今回は時間制も導入しようと考えている」
「時間制ですか?」
「そうだ、朝から終日いられるのもどうかと思ってな」
「なるほど、スーパー銭湯とは、棲み分けを行うということですね」
「それもあるが、サウナビレッジは収容人数を敢えて絞っているだろ?でも出来る限り多くの人に、使って欲しいとも思うんだ」
「・・・」
「だから時間制を導入してみようということさ」
「そうですか、そうなるとどれぐらいの時間にしますか?」
「そうだな、三時間ぐらいでどうだろうか?」
「それは受付から退店するまでですか?」
「そうだ」
「個人的には食事と、少しゆっくりすることを考えると、もう一時間ぐらいは欲しいところですね」
「そうか、そうするか?じゃあ四時間制にして、泊りの客に関してはフリーにするってことでどうだ?」
「そうですね、そうなるとほとんどの客が、泊まりになりませんか?」
「そこは泊りの客は、最大でも四十名だから大丈夫じゃないか?」
「確かに」
「最大の収容人数を百名にすれば、じっくりとサウナを堪能してもらえると思うがどうだろうか?」
「その人数ならじっくりと出来そうですね、たまに渋滞はするかもしれませんけど」
「そこはどうにかなるだろう、あとサウナビレッジは完全予約制にするつもりだ」
「随分強気ですね?」
「そうか?」
「そうですよ、完全予約って、そこまでして客は集まりますかね?」
「どうかな?俺としては別にここで、収益を得ようとは考えていないからな」
「そうですか、そういう考えならば、いいかもしれませんが」
「というよりは、サウナをこの日は楽しみたいと、その日に向けて仕事を頑張ろう、という客が結構いるような気がするけどな」
「それは分からなくはないですね」
「あと、ちょっと心苦しいが、ここは従業員の福利厚生には含めたくないな」
「ですね、そうしないと夜は従業員で、いっぱいになりますからね」
「でも、休日に予約を取って利用する分には構わないけどな、ちゃんと料金は貰うけど」
「それはそうでしょう、社員割引もいらないでしょう」
「そうしないと、従業員の保養所になりかねないしな」
「全くです」
「あとは料金ですが、どうしますか?」
「そうだな・・・まずは四時間で銀貨三十枚、泊りは金貨一枚でどうだ?」
「うーん、悩ましいですね」
「この世界の水準としてはちょっと高めだが、それぐらいでいいと俺は思うんだ。それぐらいの価値が、サウナビレッジにはあると俺は思っている」
「そうですか・・・ではそうしましょうか」
「そう構えなくてもいいだろう、それにこの世界にも、サウナ文化が随分根付いている様だし、成るようになるさ」
「それでしたら、いいんですけどね」
マークは真面目だな。
まあ、それがこいつの良いところなんだけどね。
「後は設備だが、厨房は俺とマット君で造っていくよ、備品については任せるが、出来るだけ手作り感のある物に拘ってくれ」
「手作り感ですか?」
「そうだ、高級感は一切いらない。田舎の村をイメージしたいからな」
「なるほど、そういうことですね」
「落ち着く感じが欲しいんだ、だからテーブルとかは木とかの方が良いかもしれないな」
「そうなりますね」
「一先ずはそんなところだな、後は追々詰めていこう」
「分かりました」
その後スーパー銭湯に行くと、案の定ブルーエッグがいたので誘ってみた。
すると、無茶無茶喜ばれた。
サルーに至っては、
「サウナ島に永久就職します!」
と泣いていた。
サウナ島と結婚するつもりか?
そんなになのか?
こちらとしては嬉しいのだが・・・
メルルにマット君の異動について話すと。
「いいですよ、あの子は厨房を仕切れるレベルに達していますので」
と快く受け入れてくれた。
俺はその足でマット君の元に向かい、異動を告げた。
「ほんとですか?ありがとうございます!」
とマット君はガッツポーズを決めていた。
皆な前向きで助かります。
俺はマット君と厨房の作成を行っている。
今回の厨房では、魔道具を大いに使うことになった。
実験的な意味合いもある。
まずはコンロだ。
魔道具のコンロは、親父さんに手伝って貰って、造ることにした。
日本の簡易コンロを参考に、親父さんと開発を進めていく。
親父さんは魔道具の作成にも高い知識を持っており、大いに助かった。
そして換気扇も魔石を埋め込み、常時換気を行う事になっている。
今では魔石と神石は充分の数を確保できている。
魔石は魔獣の森で、ノンとギルが確保してきているし。
神石に関しては、ランドールさんが役立ててくれと、たくさん寄贈してくれていた。
大いに助かっている。
まあ今回に関しては、神石は必要無いのだが・・・
厨房の作りに関しては、極力マット君の意見を取り入れるようにした。
実際に働く者の意見を参考にした方が、良いに決まっている。
そしてマット君からは、意外な申し入れがあった。
それは婚約者がマット君にはおり、一緒に働かせて貰えないかというものだった。
リア充かよ・・・
将来を見越して、連れ合いにも料理を学ばせたいということだった。
まあ好きにしてくれ。
そう言われれば断れる訳がない。
マット君には独立という夢があるのだから、協力しない訳にはいかない。
そして厨房が出来上がると、今度は新メニューの開発に着手した。
というのも、ここではサ飯を提供しようと考えたからだ。
俺の趣味ではないのだが、日本でウケているということは、何かしらの理由があるのではないか?と思ったからだ。
どうしても俺には体を綺麗にした後に、また汗をかくことに抵抗があるのだが・・・
俺の趣味を押し付けるのは良くない。
ここは俺以外の者達の反応を見てみようと思う。
「マット君、新メニューだが、辛い物を中心に行おうと考えている」
「辛い料理ですか?」
「そうだ、俺のいた異世界ではサ飯というんだが、サウナ明けに辛い料理を食べるのが流行っているんだ」
「へえー、そうなんですね。でも何となく分かる気がします」
「そうなのか?」
「はい、サウナ明けには塩分が欲しくなるので、それならば汗をまたかける辛い物を、食べたくなるのは理解できます」
へえー、そうなんだ。
「それに実際、スーパー銭湯の一番人気のメニューは、不動のカツカレーですしね」
「それはそうだが・・・」
確かに実績を兼ね備えているな。
そう言われてみればそうだな。
それにサウナ明けは妙に腹が空くしな。
「そこで俺からいつくか新メニューを伝授する、心して掛かってくれ」
「了解です!」
とマット君は期待に満ちた眼差しをしていた。
俺はまず麻婆豆腐を伝授した。
それも山椒を効かせまくった一品だ。
鼻から抜ける山椒の香りが辛さを助長させる。
「こ、これは・・・山椒のピリッとした辛さが舌に残って癖になりますね」
「だろ?これを米にかけて、マーボー飯として提供しようと考えている」
「お米に合うのは間違いないですね、辛さをマイルドにしてくれるでしょうし」
流石はマット君だ、分かっているな。
マーボー飯は大いにウケるだろう。
そして俺は次に、台湾ラーメンを作った。
台湾ミンチが程よい辛さを引き出している、それにニンニクは増し増しだ。
「おお!これは後を引く辛さです!凄い!こんな料理があったとは」
マット君は一気に平らげていた。
その気持ちはよく分かる。
台湾ラーメンは癖になるよね。
台湾ミンチをちゃんと漏れなく食べれる様に、俺は穴あきスプーンを大量に作成した。
台湾ミンチを全部食べ切るにはこれは必須だ。
無くてはならないとも言える。
そして俺の拘りのスパイシーピザを作った。
これはチリソースをベースに、唐辛子を練り込んだソーセージとハラピーニョ、そしてアンチョビをトッピングしたピザだ。
俺はハラピーニョの辛さが好きだ。
某バーガー店のスパイシーチリドッグに、トッピングされている、ハラピーニョを始めて食した時の衝撃は、今でも忘れない。
こんな辛さがあるのかと、連日リピートしたことを覚えている。
これにマット君は大興奮していた。
「この辛さは異次元です!」
と少々分かりづらい食リポをしていた。
まあ気に入ってくれたということだろう。
そして更に、石焼きチーズカレーを伝授した。
表面をカリっと焼き上げる、このチーズカレーにマット君は唸りまくっていた。
「チーズをこんに感じる料理は始めてです」
とのことだった。
いやピザがあるだろう、とはツッコまなかった。
マット君のケアレスミスという事で・・・
最終的にこの四品を軸に、定番のカツカレーを加えたメニューを提供することにした。
ただ、辛い食事が苦手な人もいる為、通常の辛くないメニューも加えることにした。
だが塩分が過多の料理が多いのは、趣旨をちゃんと理解したマット君の考えだ。
特に塩おにぎりは、分かり易くてちょっと笑えた。
そして遂にある商品の作製に成功した。
それは『サ水』である。
とは言っても、分かり易いところのスポーツ飲料だ。
もっと分かり易く言えば、オロポのポの方である。
サウナ好きにしか通用しないかな?
ほんとはオロポを作りたかったが、オロの方が作れなかった。
小さな巨人は作るのが難しいということだ。
ネタが古くてすいません。
精神年齢が定年なもんで・・・
塩分と糖分のバランスに相当頭を悩ませた。
最終的には味の良しあしにまで拘り、これでどうだ!
という一品が完成した。
これは売れるだろう。
俺は『サ水』の満足感で整いそうだった。
かくして準備は進められていった。
再度マークと打ち合わせを行っている。
「人員に関しては、ほとんど完了しました」
「そうか、受け入れ態勢は問題ないか?」
「はい、ほとんどの者が既にサウナ島で住んでいます」
「なるほど、実際の業務についてはどうなんだ?」
「ほとんどの者がレクリエーションを終了し、後は配置を待つばかりです」
「そうか、じゃあ配置に着かせてくれ。いよいよプレで実施だな」
「ですね、プレはどうします?」
「そうだな、まず三日間は旧メンバーと神様ズで良いんじゃないか?神様ズに関しては勝手に使ってるんだろう?」
「はい、困ったことに、遠慮は全くありませんね」
「・・・」
あの人達は全く・・・
ちょっとは遠慮ってもんを覚えて欲しいものだ。
まあいいけど・・・
もう慣れたし。
「その後一週間は、休日の従業員達に客役をやって貰おう」
「そうしましょう、皆な喜びます」
「そうか、でも旧メンバーも、使いたい奴は使ってもいいぞ、人数的にもその方がいいだろうしな」
「そうですね、そうしましょう」
「神様ズはどうします?」
「好きにさせてやってくれ」
「ですね」
恐らくほぼ全員が入りにくるだろう。
既に何人かの神様ズが、そういった反応を示している。
それに本格稼働したら、神様ズでも予約をして、料金を払わないと使えないと宣告している。
そりゃあそうだろう、俺でも予約を取らなければ、入れないとしているのだ。
ここは役得は通じない。
特別配慮は俺であっても無しということだ。
その所為か、皆が皆こぞって、連日サウナビレッジに訪れている。
特にド嵌りしているのが、オズとガードナーで、本格稼働し出しても、週一はマストで通うと豪語していた。
後、余談として五郎さんが、従業員を数名連れて来ていいかと申し入れがあった。
外の神様ズには同行は許していない。
その理由は明らかで、何人連れてくるか分かったもんじゃないからだ。
スーパー銭湯のプレオープンで、俺は懲り懲りしている。
あの人達の遠慮の無さは、折紙付きだ。
だが五郎さんは別なのには理由がある。
それは温泉街『ゴロウ』でサウナを導入するという案が、浮上しているからだった。
俺は遠慮なくサウナ導入してくれと、五郎さんに話している。
そして、それをアドバイザーとして、サポートして欲しいと言われている。
遂に島野守プロデュースのサウナが、サウナ島以外の場所でもお披露目となるかもしれない。
俺は嬉しくて溜まらなかった。
今はどんなサウナにしようかと、思案中である。
いくつか案が既にあるのだが、サウナビレッジが一段落ついてから、話し合おうということになっている。
まだまだ楽しみがあるようだ。
嬉しいなー!
三日間のプレを終え、一度反省会を行うことになった。
「では皆さんお疲れ様」
場所はサウナビレッジの食堂だ。
「いつくかの意見を元に、これから反省会を行う」
「「「はい!」」」
と良い返事が木霊する。
今回の募集倍率は、なんと五十倍という異例の数字を叩きだした。
面接官が足りなくなり、急遽ランドとロンメルにも手伝って貰う事態となっていた。
それを潜り抜けた精鋭達である。
皆が皆、優秀で助かる。
それにサウナジャンキーが、ここまでいたのかと、俺は嬉しくもあった。
面接に訪れた者達の多くがサウナ愛を語り、俺はそれに耳を傾けた。
頷ける話がほとんどだった。
是非サウナフレンズになりたいものだ。
そして数名から、俺はサウナの神様であると、大衆に言われていることを知った。
悪い気はしなかった、というより本位である。
サウナの神様・・・照れるじゃないか。
でも厳密には全くもって違うのだが、気が大きくなった俺は、敢えて否定しないでいた。
だって嬉しいんだもん。
俺はアンケート用紙に目を通した。
「まずはサウナの温度が、思いの外低かったように感じたという意見だ、温度管理班どうだ?」
ブルーエッグのドリルが手を挙げる。
「どうしても、扉の開閉が多いと温度が落ちるようです」
「そうか・・・二重扉に変えるか?どう思うマーク?」
「スーパー銭湯の二重扉と同じにするということですよね?温度管理という点では良いと思いますが、手作り感からはちょっと離れる気がします」
「そうだよな・・・そこは譲れないな・・・ドリル、温度管理の見回りを倍に出来るか?」
「多分問題ないかと・・・」
「じゃあ、一先ずはそれで様子見だな」
「はい、分かりました」
「次に・・・これは要らんな」
その意見は台湾ラーメンが辛すぎるという意見だった。
この文字は・・・ノンだな。
無視でいいだろう。
あいつは何がしたいのだか・・・
よく分からん。
「今度は清掃に関してだ、外気浴場の地面の土がむき出しなのが気になる、という意見だ。お前達はどう思う?」
ダノンが手を挙げる。
「これは私の意見ですが、水風呂の後にはどうしても水が身体に着くので、ポンチョを着ても地面が濡れて、ビショビショになってしまいます。それはそれで気持ちは分かりますが、自然の中でサウナを楽しむ、というコンセプトを考えると、それすら楽しんでくれと思うのですが、いかがでしょうか?」
「うーん、その意見は妥当だが、実は俺もこれに関しては思った部分だから、石畳みを敷こうと思う、ダノン良い意見だ、ありがとう。マーク明日には対応を始めるぞ」
「了解です、この中でも手の空いた者は手伝うように」
「「「はい!」」」
このようにして反省会は行われていった。
五郎さんが従業員を連れてやってきた。
案の定大将も紛れていた。
俺は絶対に大将が来ると思っていた。
大将は当然のように厨房に入り、マット君と新メニューについて話をしていた。
大将はハラピーニョに目を付けたご様子で。
「島野さん、このハラピーニョは仕入れできますよね?!」
と大興奮していた。
まったくこの人はブレないな。
関心するよ、全く。
料理馬鹿一筋だ。
好きにしてください。
「それで、五郎さん。サウナ計画はその後どんな感じですか?」
「サウナを導入することは、概ね了承なんだがな。今のお前えから貰ったサウナや、ここのサウナと同じじゃ面白くねえだろ?どうしたもんかと思ってな」
「それなら俺が良いアイデアがありますので、任せてください」
「そうなのか?」
「こことも被らない、斬新なサウナをプロデュースしますよ」
「本当か?なら島野に任せるか?」
「ありがとうございます」
「お前え以上にサウナを知り尽くしている奴はいねえからな、それに島野が知恵を貸してくれたと言えば、宣伝効果にもなるってなもんよ」
「ハハハ、そうですね。どうやら巷では俺は、サウナの神様って言われてるみたいですからね」
「らしいな、笑ったぞ!」
ですよねー。
「まあ、本格稼働は落ち着いてからになりますが、任せてください」
「ああ、期待してるぞ!」
と五郎さんの温泉街にも、サウナ文化は広がりつつあるようで俺は嬉しかった。
その後、従業員達のプレを経て、サウナビレッジの最終調整が行われていった。
最後にサウナビレッジの従業員達が、自分達で使ってみるという過程を、今は行っている。
やはり自分達で使ってみると、感じるものがあるだろうということだ。
そしてその効果は絶大で、ほぼ全ての従業員達が、感じるものがあったようで。
顔つきが変わっていた。
そもそもサウナを好きな者達だから、尚更だろう。
ほとんどの従業員から、
「島野さん、サウナビレッジは最高です!」
「俺はここに就職が出来て光栄です!」
「サウナは宇宙です!」
と声を掛けられた。
まあ、頑張って欲しいものだ。
さて、いよいよ明日から予約受付となるが、どうなることだか・・・
俺は期待と不安が入り混じった想いを抱えていた。
営業を開始するのはまだまだ先だ。
施設自体は造ったが、備品などは持ち込んでいない。
ここからは時間が掛かる作業が多いし、従業員をどうするかもこれからである。
俺は新しいサウナを、まずはじっくりと堪能したい。
今日は三種類のサウナを二セットづつは行いたい。
俺は旧メンバーに声を掛けて、サウナビレッジのサウナに入ることにした。
神様ズはどうせ遠慮なく混ざってくるだろう。
あの人達は外っておけばいい。
気を使う必要は全くない。
好きにしてくれればいい。
メルルには適当に食べ物と、飲み物を準備してくれとお願いしてある。
エルと一緒に携帯用のなんちゃって冷蔵庫に、いろいろと詰めていた。
ギルとノンには既に、サウナの火入れは指示してあり、アロマ水も準備してある。
ポンチョとサンダルに関しては、既に手配してある為、メルラドの服屋にマークが取りに行っている。
まずは一通り巡回して、サウナビレッジを見て周る。
個人的な感想になるのだが、何といってもこの手作り感がいい。
村と形容するにはぴったりだ。
森の中に佇むロッジ風のサウナ達、心が踊る。
ギルからそろそろいいよと『念話』が入った為、まずは更衣室で水着に着替えた。
水着着用のサウナは久しぶりだ。
期待で胸が高まる。
ちょうどマークがポンチョとサンダルを持ってきた為、受け取ると、タオルを持ってサウナに向かった。
その道すがら、皆には好きにしていいからなと声をかけて行く。
最初にシャワーを浴びて、体を洗う。
これは当たり前のマナー。
まず俺は九十度のサウナから入ることにした。
サウナ室の入口にポンチョとサンダルを置いて、アロマ水の入ったバケツと柄杓を持って中に入る。
俺はこのサウナの最初の利用者だ。
今後ともよろしくお願いしますと、俺はサウナに一礼した。
サウナ室に入ると、まだ木の香りが充満していた。
これがアロマの匂いに包まれるサウナになるのだろう。
俺はサウナ一号機を思い出していた。
彼を今は五郎さんが使ってくれている。
はやり少人数で入れるサウナは良い。
スーパー銭湯が出来る前までは、少人数用のサウナを使っていたからか、懐かしさがある。
とてもいい雰囲気だ。
パフォーマンスも悪くない、まだ入って三分と経ってはいないが、汗をかきだしている。
とてもいい感じだ。
雑多な雰囲気が無く、自問自答を行うには打って付けだな。
スーパー銭湯のサウナではこうはいかない。
どうしても周りに目が行きがちだ。
するとギルがサウナ室に入ってきた。
「パパが一番乗り?」
「そうだ、役得だろ?」
「なんか昔のサウナを思い出すね」
「そうだな」
「スーパー銭湯のサウナもいいけど、これもやっぱりいいね」
ギルの奴、分かってるじゃないか。もはやこいつも一端の上級サウナーだな。
「じゃあそろそろやろうか?」
と俺は柄杓を握り、アロマ水をサウナストーンにかけた。
アロマ水が音を立てて蒸気に変わっていく。
これはレモンの香りだな、いいね。
湿度が上がって、一気に体感温度を上げていく。
ああ・・・気持ちいい・・・
「おお・・・いいねー・・・」
ギルが呟いていた。
だいぶ汗をかいてきたな、でももう少し粘ろう。
そこにノンが入ってきた。
「あれ?ロウリュウやっちゃった?」
「ああ、さっきな」
「アウフグースする?」
「いや、いい。そろそろ俺は出るから」
「そう」
とノンは腰かけた。
「じゃあお先に」
と俺はサウナ室から出た。
サンダルを履いて、ポンチョを持って水風呂へと向かう。
ちょっと煩わしいな。
インフィニティーチェアーにポンチョを置いて、水風呂へと向かう。
サンダルを脱いで、掛け水を行う。
おお!思った以上に冷たいな。
一気に水風呂に入る。
「ああ・・・」
思わず声が漏れる。
身体から熱が奪われていく。
いいねー、気持ちいい。
最高だ!
水風呂を出てサンダルを履き、インフィニティーチェアーに向かう。
ポンチョを着て腰かける。
体重を後ろにかけて、一気に横になる。
「ふううー、これはこれでいいねー」
おじさんの独り言が木霊する。
って見た目は若いのか・・・
今回は敢えて、俺とギルの整い部屋は造っていない。
それは純粋にサウナを楽しもうと考えたからだ。
でもこれは・・・自己催眠に入らなくても、神気を吸収できそうだ。
ああ・・・やっぱりいい。
俺は整いを堪能した。
余韻も素晴らしい。
どうやら意識すること無く。神気を吸収できたようだ。
よし、今度は八十度のサウナだな!
俺はサウナビレッジを存分に堪能した。
今はサウナを終え、外気浴場で焚火を囲んでいる。
夕方になり、少し肌寒くなってきたからだ。
これはこれで良いものだ。
「島野さんどうぞ」
とランドがビールを持ってきていた。
「おお、ありがとう」
と俺はジョッキを受け取った。
「「乾杯!」」
ランドと乾杯した。
じっくりサウナ六セット明けのビール、最高だな。
のど越したるやいなや・・・ああ、身体に染み渡る。
充実感が半端ないな。
至極の一杯だ。
「昔のサウナを思い出しましたよ」
こいつもか、まあ皆なそうなんだろうな。
「分かるぞ」
「ですよね、これはこれで俺は好きですね」
続々と皆なが集まり出した。
ちょっとしたキャンプだなこれは。
「島野さん、こうなったらバーベキューにします?バーべキューコンロを持ってくれば直ぐですし」
メルルからの提案だ。
「ああ、任せるよ」
「じゃあ準備しますね、エル、ギル手伝って?」
「分かった」
「ですの」
と三人はバーベキューの準備に向かった。
眼の前の焚火に俺は眼を奪われていた。
外の皆なも、ゆっくりとしている。
不意にロンメルが問いかけて来た。
「なあ旦那、この施設は誰が面倒みるんだ?」
「ああそれか、サウナビレッジはマークに任せるよ」
「俺ですか?」
「そうだ、迎賓館はロンメルが仕切ってくれ」
「そうか分かった。サウナビレッジは旦那の肝いりだ、リーダーがやるべきだろうな」
「そうなのか?」
「妥当な人選だと思うぜ」
「そうだ、とは言っても立ち上げは俺も手伝うから、安心してくれ。あとついでに言っておくと、マークとランドは副社長も兼任してくれ。お前らは昇進だ!」
「嘘でしょ?!」
「マジかよ!」
と二人は驚いている。
だがこれは前々から考えていたことだった。
今はのんびりとしているが、いつかは俺は、北半球に乗り込まなければいけない。
何も情報の無い今の状況としては、万が一を考えなければいけない。
それに聖獣勢は経営には向いていないし、北半球に向かうとなったら、付いてくるというに決まっている。
「そんな・・・本当によろしいのですか?」
「そうですよ、俺達じゃなくても、ゴンとかギルとか・・・」
「よく考えてくれよ、ゴンもギルも柄じゃないだろ?それにノンなんて絶対に向かないし、エルもレケもそうだろ?」
「まあ、そうだろうな」
とロンメルも同意見のようだ。
「お前達は神様ズからも顔が売れてるし、問題ないだろう?なんだ?断るつもりなのか?」
「ちょっと、それはないでしょう!受けるに決まってますよ!」
「そうですよ、やりますよ!」
「だったらこの不毛なやり取りはなんなんだよ?」
とロンメルがツッコんでいる。
まあ、多少は驚いたんだろうが、謙虚さが先だったということだろうな。
こいつららしいな。
「じゃあそういうことで、あとロンメルとメルルも昇進だ。お前らは専務だ。よろしく頼むぞ」
「ああ、分かったぜ」
ロンメルは謙虚さを見せないみたいだ。
まあこいつらしくて分かりやすいな。
「お前達は昇格に伴って給料も増えるから、今度俺に奢るようにな」
「やった!」
「もちろんです!」
「ちゃっかりしてんな、旦那は」
と嬉しさを隠すことは無かったようだ。
そうこうしていると、バーベキューが始まった。
案の定、神様ズが乱入してきた。
神様ズはサウナを後日じっくりと堪能したいと、ちゃっかりと予約していた。
ご自由にどうぞ。
サウナを楽しんでくださいな。
どうぞ骨抜きになってくれ。
やれやれだ。
俺はマークと打ち合わせを行っている。
サウナビレッジの運営についてだ。
まずは人材をどうするのか?というところだ。
話し合う順番としては人・物・金と言ったところか。
まぁ前後しても構わないが。
「マーク実はな、声を掛けたい人材がいるんだ」
「へえー、島野さんが目を付けるって、相当使える人材なんでしょうね?」
「ああ、あいつらは使えると思う。特にリーダーのドリルは空気が読めるし、逸材だな。他にもダノンとサルーも、仕事が出来るタイプだな」
「そうですか」
「あいつらは確か・・・餅・・・いやブルーエッグだったな」
「餅?」
どうしても餅ハンターとしての印象が強い。
餅ハンター改め、ブルーエッグだ。
そうだブルーエッグ・・・覚えれたかな?たぶん・・・
餅の印象が強すぎるよ。
「そこは忘れてくれ。あいつらは二日に一度はスーパー銭湯に来てるみたいだから、俺から声を掛けてみるよ。でもあいつらが、ここで働くことになるかは分からないけどな」
「そうですか・・・ではそこは島野さんに任せます」
俺は確信があった。
前にブルーエッグと話をしていた時に、あいつらはサウナにド嵌りしていて、ダンジョンで得た儲けを、全てサウナに費やしていると言っていた。
更にここで働きたいと漏らしていたからな。
まあ最終的にはどうなるかは、話してみないと分からないけどね。
「それで、外はどうしますか?」
「また客から募集するか?」
「そうですね、それがいいでしょう」
「出来ればサウナ好きな奴に拘りたいな」
「ですね、サウナビレッジですからね。サウナ好き以外は考えられんでしょう」
「後は厨房は、マット君に任せようと思うがどうだ?」
「マットなら問題ないでしょう、ただメルルが何というかは、聞いてみないと分からないですけど」
「メルルなら大丈夫だろう、料理班はめきめきと育っていると言っていたからな」
「そうですか、じゃあ大丈夫でしょう」
「何人雇うかだが、全員で三十名ぐらいでどうだ?」
「多くないですか?」
「いやサウナビレッジに雇うのは二十五名ぐらいで、あとは外の部署に補充したらどうかと思うがどうだ?」
「そうですね、何処に補充しますか?」
「それは今度の会議で聞いてみよう」
「分かりました」
「料金とかはどうしますか?」
「料金もそうだが、今回は時間制も導入しようと考えている」
「時間制ですか?」
「そうだ、朝から終日いられるのもどうかと思ってな」
「なるほど、スーパー銭湯とは、棲み分けを行うということですね」
「それもあるが、サウナビレッジは収容人数を敢えて絞っているだろ?でも出来る限り多くの人に、使って欲しいとも思うんだ」
「・・・」
「だから時間制を導入してみようということさ」
「そうですか、そうなるとどれぐらいの時間にしますか?」
「そうだな、三時間ぐらいでどうだろうか?」
「それは受付から退店するまでですか?」
「そうだ」
「個人的には食事と、少しゆっくりすることを考えると、もう一時間ぐらいは欲しいところですね」
「そうか、そうするか?じゃあ四時間制にして、泊りの客に関してはフリーにするってことでどうだ?」
「そうですね、そうなるとほとんどの客が、泊まりになりませんか?」
「そこは泊りの客は、最大でも四十名だから大丈夫じゃないか?」
「確かに」
「最大の収容人数を百名にすれば、じっくりとサウナを堪能してもらえると思うがどうだろうか?」
「その人数ならじっくりと出来そうですね、たまに渋滞はするかもしれませんけど」
「そこはどうにかなるだろう、あとサウナビレッジは完全予約制にするつもりだ」
「随分強気ですね?」
「そうか?」
「そうですよ、完全予約って、そこまでして客は集まりますかね?」
「どうかな?俺としては別にここで、収益を得ようとは考えていないからな」
「そうですか、そういう考えならば、いいかもしれませんが」
「というよりは、サウナをこの日は楽しみたいと、その日に向けて仕事を頑張ろう、という客が結構いるような気がするけどな」
「それは分からなくはないですね」
「あと、ちょっと心苦しいが、ここは従業員の福利厚生には含めたくないな」
「ですね、そうしないと夜は従業員で、いっぱいになりますからね」
「でも、休日に予約を取って利用する分には構わないけどな、ちゃんと料金は貰うけど」
「それはそうでしょう、社員割引もいらないでしょう」
「そうしないと、従業員の保養所になりかねないしな」
「全くです」
「あとは料金ですが、どうしますか?」
「そうだな・・・まずは四時間で銀貨三十枚、泊りは金貨一枚でどうだ?」
「うーん、悩ましいですね」
「この世界の水準としてはちょっと高めだが、それぐらいでいいと俺は思うんだ。それぐらいの価値が、サウナビレッジにはあると俺は思っている」
「そうですか・・・ではそうしましょうか」
「そう構えなくてもいいだろう、それにこの世界にも、サウナ文化が随分根付いている様だし、成るようになるさ」
「それでしたら、いいんですけどね」
マークは真面目だな。
まあ、それがこいつの良いところなんだけどね。
「後は設備だが、厨房は俺とマット君で造っていくよ、備品については任せるが、出来るだけ手作り感のある物に拘ってくれ」
「手作り感ですか?」
「そうだ、高級感は一切いらない。田舎の村をイメージしたいからな」
「なるほど、そういうことですね」
「落ち着く感じが欲しいんだ、だからテーブルとかは木とかの方が良いかもしれないな」
「そうなりますね」
「一先ずはそんなところだな、後は追々詰めていこう」
「分かりました」
その後スーパー銭湯に行くと、案の定ブルーエッグがいたので誘ってみた。
すると、無茶無茶喜ばれた。
サルーに至っては、
「サウナ島に永久就職します!」
と泣いていた。
サウナ島と結婚するつもりか?
そんなになのか?
こちらとしては嬉しいのだが・・・
メルルにマット君の異動について話すと。
「いいですよ、あの子は厨房を仕切れるレベルに達していますので」
と快く受け入れてくれた。
俺はその足でマット君の元に向かい、異動を告げた。
「ほんとですか?ありがとうございます!」
とマット君はガッツポーズを決めていた。
皆な前向きで助かります。
俺はマット君と厨房の作成を行っている。
今回の厨房では、魔道具を大いに使うことになった。
実験的な意味合いもある。
まずはコンロだ。
魔道具のコンロは、親父さんに手伝って貰って、造ることにした。
日本の簡易コンロを参考に、親父さんと開発を進めていく。
親父さんは魔道具の作成にも高い知識を持っており、大いに助かった。
そして換気扇も魔石を埋め込み、常時換気を行う事になっている。
今では魔石と神石は充分の数を確保できている。
魔石は魔獣の森で、ノンとギルが確保してきているし。
神石に関しては、ランドールさんが役立ててくれと、たくさん寄贈してくれていた。
大いに助かっている。
まあ今回に関しては、神石は必要無いのだが・・・
厨房の作りに関しては、極力マット君の意見を取り入れるようにした。
実際に働く者の意見を参考にした方が、良いに決まっている。
そしてマット君からは、意外な申し入れがあった。
それは婚約者がマット君にはおり、一緒に働かせて貰えないかというものだった。
リア充かよ・・・
将来を見越して、連れ合いにも料理を学ばせたいということだった。
まあ好きにしてくれ。
そう言われれば断れる訳がない。
マット君には独立という夢があるのだから、協力しない訳にはいかない。
そして厨房が出来上がると、今度は新メニューの開発に着手した。
というのも、ここではサ飯を提供しようと考えたからだ。
俺の趣味ではないのだが、日本でウケているということは、何かしらの理由があるのではないか?と思ったからだ。
どうしても俺には体を綺麗にした後に、また汗をかくことに抵抗があるのだが・・・
俺の趣味を押し付けるのは良くない。
ここは俺以外の者達の反応を見てみようと思う。
「マット君、新メニューだが、辛い物を中心に行おうと考えている」
「辛い料理ですか?」
「そうだ、俺のいた異世界ではサ飯というんだが、サウナ明けに辛い料理を食べるのが流行っているんだ」
「へえー、そうなんですね。でも何となく分かる気がします」
「そうなのか?」
「はい、サウナ明けには塩分が欲しくなるので、それならば汗をまたかける辛い物を、食べたくなるのは理解できます」
へえー、そうなんだ。
「それに実際、スーパー銭湯の一番人気のメニューは、不動のカツカレーですしね」
「それはそうだが・・・」
確かに実績を兼ね備えているな。
そう言われてみればそうだな。
それにサウナ明けは妙に腹が空くしな。
「そこで俺からいつくか新メニューを伝授する、心して掛かってくれ」
「了解です!」
とマット君は期待に満ちた眼差しをしていた。
俺はまず麻婆豆腐を伝授した。
それも山椒を効かせまくった一品だ。
鼻から抜ける山椒の香りが辛さを助長させる。
「こ、これは・・・山椒のピリッとした辛さが舌に残って癖になりますね」
「だろ?これを米にかけて、マーボー飯として提供しようと考えている」
「お米に合うのは間違いないですね、辛さをマイルドにしてくれるでしょうし」
流石はマット君だ、分かっているな。
マーボー飯は大いにウケるだろう。
そして俺は次に、台湾ラーメンを作った。
台湾ミンチが程よい辛さを引き出している、それにニンニクは増し増しだ。
「おお!これは後を引く辛さです!凄い!こんな料理があったとは」
マット君は一気に平らげていた。
その気持ちはよく分かる。
台湾ラーメンは癖になるよね。
台湾ミンチをちゃんと漏れなく食べれる様に、俺は穴あきスプーンを大量に作成した。
台湾ミンチを全部食べ切るにはこれは必須だ。
無くてはならないとも言える。
そして俺の拘りのスパイシーピザを作った。
これはチリソースをベースに、唐辛子を練り込んだソーセージとハラピーニョ、そしてアンチョビをトッピングしたピザだ。
俺はハラピーニョの辛さが好きだ。
某バーガー店のスパイシーチリドッグに、トッピングされている、ハラピーニョを始めて食した時の衝撃は、今でも忘れない。
こんな辛さがあるのかと、連日リピートしたことを覚えている。
これにマット君は大興奮していた。
「この辛さは異次元です!」
と少々分かりづらい食リポをしていた。
まあ気に入ってくれたということだろう。
そして更に、石焼きチーズカレーを伝授した。
表面をカリっと焼き上げる、このチーズカレーにマット君は唸りまくっていた。
「チーズをこんに感じる料理は始めてです」
とのことだった。
いやピザがあるだろう、とはツッコまなかった。
マット君のケアレスミスという事で・・・
最終的にこの四品を軸に、定番のカツカレーを加えたメニューを提供することにした。
ただ、辛い食事が苦手な人もいる為、通常の辛くないメニューも加えることにした。
だが塩分が過多の料理が多いのは、趣旨をちゃんと理解したマット君の考えだ。
特に塩おにぎりは、分かり易くてちょっと笑えた。
そして遂にある商品の作製に成功した。
それは『サ水』である。
とは言っても、分かり易いところのスポーツ飲料だ。
もっと分かり易く言えば、オロポのポの方である。
サウナ好きにしか通用しないかな?
ほんとはオロポを作りたかったが、オロの方が作れなかった。
小さな巨人は作るのが難しいということだ。
ネタが古くてすいません。
精神年齢が定年なもんで・・・
塩分と糖分のバランスに相当頭を悩ませた。
最終的には味の良しあしにまで拘り、これでどうだ!
という一品が完成した。
これは売れるだろう。
俺は『サ水』の満足感で整いそうだった。
かくして準備は進められていった。
再度マークと打ち合わせを行っている。
「人員に関しては、ほとんど完了しました」
「そうか、受け入れ態勢は問題ないか?」
「はい、ほとんどの者が既にサウナ島で住んでいます」
「なるほど、実際の業務についてはどうなんだ?」
「ほとんどの者がレクリエーションを終了し、後は配置を待つばかりです」
「そうか、じゃあ配置に着かせてくれ。いよいよプレで実施だな」
「ですね、プレはどうします?」
「そうだな、まず三日間は旧メンバーと神様ズで良いんじゃないか?神様ズに関しては勝手に使ってるんだろう?」
「はい、困ったことに、遠慮は全くありませんね」
「・・・」
あの人達は全く・・・
ちょっとは遠慮ってもんを覚えて欲しいものだ。
まあいいけど・・・
もう慣れたし。
「その後一週間は、休日の従業員達に客役をやって貰おう」
「そうしましょう、皆な喜びます」
「そうか、でも旧メンバーも、使いたい奴は使ってもいいぞ、人数的にもその方がいいだろうしな」
「そうですね、そうしましょう」
「神様ズはどうします?」
「好きにさせてやってくれ」
「ですね」
恐らくほぼ全員が入りにくるだろう。
既に何人かの神様ズが、そういった反応を示している。
それに本格稼働したら、神様ズでも予約をして、料金を払わないと使えないと宣告している。
そりゃあそうだろう、俺でも予約を取らなければ、入れないとしているのだ。
ここは役得は通じない。
特別配慮は俺であっても無しということだ。
その所為か、皆が皆こぞって、連日サウナビレッジに訪れている。
特にド嵌りしているのが、オズとガードナーで、本格稼働し出しても、週一はマストで通うと豪語していた。
後、余談として五郎さんが、従業員を数名連れて来ていいかと申し入れがあった。
外の神様ズには同行は許していない。
その理由は明らかで、何人連れてくるか分かったもんじゃないからだ。
スーパー銭湯のプレオープンで、俺は懲り懲りしている。
あの人達の遠慮の無さは、折紙付きだ。
だが五郎さんは別なのには理由がある。
それは温泉街『ゴロウ』でサウナを導入するという案が、浮上しているからだった。
俺は遠慮なくサウナ導入してくれと、五郎さんに話している。
そして、それをアドバイザーとして、サポートして欲しいと言われている。
遂に島野守プロデュースのサウナが、サウナ島以外の場所でもお披露目となるかもしれない。
俺は嬉しくて溜まらなかった。
今はどんなサウナにしようかと、思案中である。
いくつか案が既にあるのだが、サウナビレッジが一段落ついてから、話し合おうということになっている。
まだまだ楽しみがあるようだ。
嬉しいなー!
三日間のプレを終え、一度反省会を行うことになった。
「では皆さんお疲れ様」
場所はサウナビレッジの食堂だ。
「いつくかの意見を元に、これから反省会を行う」
「「「はい!」」」
と良い返事が木霊する。
今回の募集倍率は、なんと五十倍という異例の数字を叩きだした。
面接官が足りなくなり、急遽ランドとロンメルにも手伝って貰う事態となっていた。
それを潜り抜けた精鋭達である。
皆が皆、優秀で助かる。
それにサウナジャンキーが、ここまでいたのかと、俺は嬉しくもあった。
面接に訪れた者達の多くがサウナ愛を語り、俺はそれに耳を傾けた。
頷ける話がほとんどだった。
是非サウナフレンズになりたいものだ。
そして数名から、俺はサウナの神様であると、大衆に言われていることを知った。
悪い気はしなかった、というより本位である。
サウナの神様・・・照れるじゃないか。
でも厳密には全くもって違うのだが、気が大きくなった俺は、敢えて否定しないでいた。
だって嬉しいんだもん。
俺はアンケート用紙に目を通した。
「まずはサウナの温度が、思いの外低かったように感じたという意見だ、温度管理班どうだ?」
ブルーエッグのドリルが手を挙げる。
「どうしても、扉の開閉が多いと温度が落ちるようです」
「そうか・・・二重扉に変えるか?どう思うマーク?」
「スーパー銭湯の二重扉と同じにするということですよね?温度管理という点では良いと思いますが、手作り感からはちょっと離れる気がします」
「そうだよな・・・そこは譲れないな・・・ドリル、温度管理の見回りを倍に出来るか?」
「多分問題ないかと・・・」
「じゃあ、一先ずはそれで様子見だな」
「はい、分かりました」
「次に・・・これは要らんな」
その意見は台湾ラーメンが辛すぎるという意見だった。
この文字は・・・ノンだな。
無視でいいだろう。
あいつは何がしたいのだか・・・
よく分からん。
「今度は清掃に関してだ、外気浴場の地面の土がむき出しなのが気になる、という意見だ。お前達はどう思う?」
ダノンが手を挙げる。
「これは私の意見ですが、水風呂の後にはどうしても水が身体に着くので、ポンチョを着ても地面が濡れて、ビショビショになってしまいます。それはそれで気持ちは分かりますが、自然の中でサウナを楽しむ、というコンセプトを考えると、それすら楽しんでくれと思うのですが、いかがでしょうか?」
「うーん、その意見は妥当だが、実は俺もこれに関しては思った部分だから、石畳みを敷こうと思う、ダノン良い意見だ、ありがとう。マーク明日には対応を始めるぞ」
「了解です、この中でも手の空いた者は手伝うように」
「「「はい!」」」
このようにして反省会は行われていった。
五郎さんが従業員を連れてやってきた。
案の定大将も紛れていた。
俺は絶対に大将が来ると思っていた。
大将は当然のように厨房に入り、マット君と新メニューについて話をしていた。
大将はハラピーニョに目を付けたご様子で。
「島野さん、このハラピーニョは仕入れできますよね?!」
と大興奮していた。
まったくこの人はブレないな。
関心するよ、全く。
料理馬鹿一筋だ。
好きにしてください。
「それで、五郎さん。サウナ計画はその後どんな感じですか?」
「サウナを導入することは、概ね了承なんだがな。今のお前えから貰ったサウナや、ここのサウナと同じじゃ面白くねえだろ?どうしたもんかと思ってな」
「それなら俺が良いアイデアがありますので、任せてください」
「そうなのか?」
「こことも被らない、斬新なサウナをプロデュースしますよ」
「本当か?なら島野に任せるか?」
「ありがとうございます」
「お前え以上にサウナを知り尽くしている奴はいねえからな、それに島野が知恵を貸してくれたと言えば、宣伝効果にもなるってなもんよ」
「ハハハ、そうですね。どうやら巷では俺は、サウナの神様って言われてるみたいですからね」
「らしいな、笑ったぞ!」
ですよねー。
「まあ、本格稼働は落ち着いてからになりますが、任せてください」
「ああ、期待してるぞ!」
と五郎さんの温泉街にも、サウナ文化は広がりつつあるようで俺は嬉しかった。
その後、従業員達のプレを経て、サウナビレッジの最終調整が行われていった。
最後にサウナビレッジの従業員達が、自分達で使ってみるという過程を、今は行っている。
やはり自分達で使ってみると、感じるものがあるだろうということだ。
そしてその効果は絶大で、ほぼ全ての従業員達が、感じるものがあったようで。
顔つきが変わっていた。
そもそもサウナを好きな者達だから、尚更だろう。
ほとんどの従業員から、
「島野さん、サウナビレッジは最高です!」
「俺はここに就職が出来て光栄です!」
「サウナは宇宙です!」
と声を掛けられた。
まあ、頑張って欲しいものだ。
さて、いよいよ明日から予約受付となるが、どうなることだか・・・
俺は期待と不安が入り混じった想いを抱えていた。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。
石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません
俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。
本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。
幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。
そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。
彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。
それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』
今度もまた年上ヒロインです。
セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。
カクヨムにも投稿中です
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる