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ダンジョンアタックその3
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十二階層に辿り着いた。
先程の神殿とは風景が違う。
これはどう見ても迷路だ・・・
辺りは壁一面だった。
入口は一カ所しか無く、ここから入るしかなさそうだ。
ここでも魔物の気配は感じない。
『探索』を行うと簡単に迷路の様子が見て取れた。
知力が試されるとは聞いていたが・・・こんなものなんだろうか?
簡単過ぎる・・・ここまでがブラフってことは・・・考えずらいな・・・
どうにも解釈に困る。
俺達は『探索』が導くままに迷路を進んでいった。
少し厄介だったのは、正規ルートと思われる箇所にも罠があり、何度か落とし穴に落ちそうになった。
でもここは飛行能力を持っている者が俺を含め三人いる為、危なげなく罠を看破していた。
気が付くと早くも十三階層へと繋がる階段にたどり着いていた。
少々味気ない。
というか呆気なさ過ぎる。
階段を降りていく俺達。
十三階層は、これまた先ほど見た神殿だった。
「おいおい、またこれかよ・・・」
「またおじさんがいるのかな?」
「どうかな?」
「あの壁のおじさん、うざかったよね」
「ああ、まったくだ」
長い通路を歩いていく。
無駄に通路が長いんだよな。
これに意味はあるのか?
やっと最深部まで辿り着いた。
また先ほどと同様に、壁からおじさんの顔が現れた。
またあいつだ。
いい加減否になるな。
「勇敢なる者達よ、よくぞここまで辿り着いた」
「また会いましたね・・・」
「・・・」
ってなんか言えよ。
「聞こえてますか?」
「聞こえておる」
あれ?
ちょっと声質が違うようだ。
十一階層のおじさんとは違うのか?
でも同様に態度と顔はムカつくな。
「それで、何をすればいいんですか?」
「・・・ちょと余韻に浸らせてくれ・・・」
余韻?
またか・・・
いい加減にしろよ!
腹が立ってきた。
「はぁ・・・」
壁のおじさんが目を瞑り、余韻に浸っている。
だから何の余韻なんだよ!
いい加減にせい!
「あの・・・百年ぶりに人と話すことの余韻に浸ってるんですよね?」
壁のおじさんは目を開き、以外そうにこちらを見ていた。
「なんで知っておる?」
「十一階層でも同様のやり取りがありましたので・・・」
「そうか、あいつか・・・」
と気に入らない表情を浮かべている。
「どうやら別人みたいですね?」
「あんな奴と一緒にするな!」
と吐き捨てていた。
「はあ・・・」
「儂は、あいつほど間抜けではない!」
何なんだよいったい!
たいして変わらん気がするが?
ていうか十一階層の壁のおじさんを知ってるんだな。
「十一階層の壁のおじさんを知ってるんですか?」
「知ってるも何も、しょっちゅう会っておる」
それで人とは久しぶりってことか・・・
壁のおじさん同士ではお話してたってことね、これが業務上の秘密なのか?
「それで、今回はどんな質問なんですか?またなぞなぞですか?」
「いいや、違う。そんな簡単な物ではないぞ」
「へえー」
どうだかな・・・
どうにも信用ならん。
「ここでは計算を行って貰う、それも時間厳守でだ、どうだ?難しいだろ!」
と壁のおじさんはどや顔をしていた。
計算って・・・まさか足し算とか引き算ってことなのか?
であれば簡単過ぎるな。
まあいい、さっさとやっちゃいましょうか。
「では、お願いします」
「ちょっと待ってくれ、そう急かすな。儂も十一階層のあいつと同様、百年ぶりの人との会話なんだ、もう少し会話を楽しませてくれ。ところで最近の世情などはどうだ?」
何がところでだ、付き合い切れん。
というか話にならん。
「あのな、十一階層の壁のおじさんにも伝えたが、今は事情が変わって、カインさんも神力が充分に確保できる状況に変わったから、ちょいちょい覗きに来ると思うぞ?」
「そうなのか?」
「そうだ、だから先を急がせてくれ」
「・・・嘘じゃないよな・・・」
壁のおじさんは眉を潜めている。
「疑うのか?」
「・・・疑う・・・」
めんどくさい!
こうなったら。
「よし!帰ろうか。戻ってカインさんに言いつけてやろう」
「そうだね、そうしよう」
「そうするですの」
「やだやだ」
「おじさん、知らないよー」
と、全員俺の意を汲み取ったようだ。
「何!待った!待った!悪かった!ごめんこの通りだ!」
ただの不毛なやり取りじゃないか、まったく。
「それで、早く問題を出してくれないか?」
「分かった、そうする!ちょっと待ってくれ、心の準備をさせてくれ」
何が心の準備だ、早くしろよな。
壁のおじさんは深呼吸をしていた。
「よし、準備は整った。よいか、先ほど話した通り、ここでは計算をして貰う。それも決められた時間内に回答して貰う。時間切れや間違った回答をしたら、十階層のセーフティーポイントにまで一度帰ってもらうことになる」
「へえー、それは転移するってことか?」
「いや、違う。歩いていってもらう」
なんだそれ?
まあいいや、こんなことで時間を潰したくない。
突っ込まないことにしよう。
早く先に進みたい。
「まあいい、始めてくれ」
「そうか?質問があるなら受け付けるが?」
と、壁のおじさんは質問してくれと書いてある顔をしていた。
こいつ、結局は話しをしたいだけじゃないか。
ただのお喋りなおじさんじゃないか。
付き合いきれん。
「いや、いい、始めてくれ」
「・・・そうか・・・」
壁のおじさんはつまらなさそうな顔をした。
「では始めるが、回答時間は十秒以内だ、いいな?」
「ああ」
「では、第一問」
このおじさんも要らない間を設けている。
早くしろっての!まったく!
「二十三足す二十四は?」
「四十七!」
と暗算キングのノンが速攻で答える。
「・・・正解!・・・」
おいおい、ほんとうに簡単な足し算じゃないか。
ここもちょろいのか?
何かの罠か?
分かりかねる。
「お主、やるのう。速攻で答えられたのは始めてだぞ」
「まあねー」
とノンは気にも留めていない様子。
「では行くぞ、第二問!」
「チャンチャン!」
とノンがふざけている。
ノンの奴、実は正解したのが嬉しいのかもしれない。
よく見ると尻尾を振っていた。
分かり易い奴だ。
「九十一引く四十三は?」
「四十八!」
「正解!」
「イエーイ!」
圧倒的なノンの暗算の速さだ。
秒読みのカウントが全くされなかった。
一秒未満だ。
「ノン兄だけずるいぞ!」
とギルが悔しがっている。
そんな悔しがることじゃないでしょうが。
さっさと終わらせようよ、ここはさ。
「お主、凄いな!圧倒的な速さだ」
壁のおじさんが関心している。
「へへ!」
と余裕をかましているノン。
今にも踊り出しそうだ。
「さて、次からはそうはいかないぞ。一気に難しくなるからな、余裕なのもここまでだ!」
と壁のおじさんは自信満々だ。
「楽勝!」
とノンもやる気満々だ。
「では行くぞ。第三門!」
「チャンチャン!」
ノンは絶好調のようだ。
もはや楽しんでいる。
「十四掛ける二十四は?」
「三百三十六!」
「正解!」
「早っや!」
俺は思わず呟いてしまった。
「凄いでしょー」
「まったく凄いな、ノン!」
二桁の掛け算を解くスピードとしては最速だといえる。
これも一秒と掛かっていない。
「くっそう!何でノン兄は計算がそんなに早いんだよ!」
ノンはふざけて頭を指で示している。
それをギルが悔し気に睨んでいた。
もうここは張り合わなくても、ノンに任せたらいいんじゃないか?
間違えたらそれはそれでめんどくさい事になりそうだし。
「ムムム・・・お主・・・やるではないか」
壁のおじさんも唸っている。
ノンの計算の速さは圧倒的だ。
「では最後の問題だ、いいかな?」
「いいよー」
と余裕を崩さないノン。
これまた要らない間を取る壁のおじさん。
いい加減止めて欲しい。
「千五百三十六割る九十六は?」
「十六!」
「正解!」
「おお!」
「早い!」
「断トツ!」
とノンへの賞賛が止まらないが、ギルだけは悔しがっていた。
ギルは地団駄を踏んでいる。
「それにしてもお主凄いな。ここまで正確で速いのはこれまでにもいなかった。断トツだぞ!暗算キングだ!」
「イエーイ!」
と更に調子に乗るノン。
どうやらクリアしたようだ。
それにしてもノンの計算の速さは凄かった。
一問目と二問目は未だしも、三問目と四問目の速さは秀逸だった。
俺でも数秒は掛かったと思う。
それにしても、やれやれだ。
やっと終わったよ。
「勇敢なる者よ、先に進む名誉を与えよう、行くがよい」
と壁のおじさんが言うと、壁が開き十四街道への階段が現れた。
「ちょっと待った!セーフティーポイントは何処なんだ?」
「ああ、そうかそっちも必要か」
と言うと横の壁が開き、セフティーポイントが現れた。
ここのセーフティーポイントは、これまでの小屋の部屋とは違い、石造りの部屋となっていた。
台所とトイレは付いている。
中に入ると、入口の扉が閉まった。
テーブルがあったので、一先ずそこに腰かけた。
何だか妙に疲れた。
「それにしても疲れたな?」
「だね、ここのおじさんもうざかったね」
「全くだ」
ノンは活躍出来たのが嬉しいのか、まだ調子に乗っている。
一人で変てこなダンスを踊っている。
さてと、転移扉を設置しなければならない。
これまで通り転移扉を『加工』で床に設置する。
通信用の魔道具も設置済だ。
「ゴン通信を頼む」
「了解です、主」
ゴンは通信用の魔道具を掴むと交信を開始した。
「こちら十三階層のセーフティーポイントです。カイン様聞こえますか?」
少しして、返信があった。
「聞こえてるよ、ちょっと今までよりも声が小さいが、ちゃんと聞こえている」
「そうですか、距離が関係しているのかもしれないですね、どうですか?主?」
俺は横から話し掛けた。
「そうかもしれないな、カインさん一先ずおやつタイムにしますので、こっちに来てください」
「了解、行かせて貰うよ」
と通信を切ると。
ほどなくしてカインさんが現れた。
「島野君おつかれ様、おやつタイムとは何なんだい?」
「こういうことです」
と、俺は言うと『収納』から、最近新作として作った、シュークリームと、なんちゃって水筒を取り出した。
「これは最新作のスイーツです。シュークリームといいます。是非食べてみてください。あとは飲み物は何にしますか?」
「毎度毎度すまないね。飲み物は何があるんだい?」
「天然水と、お茶と、オレンジジュース、コーヒーですね」
「では、お茶を頂こう」
「お前達はどうする?」
「僕はオレンジジュース」
「僕も」
「私しはお茶ですの」
「私はコーヒーで」
俺は各自に飲み物の入ったなんちゃって水筒を渡し、シュークリームを配っていった。
シュークリームは一人二個づつだ。
カスタードクリームのシュークリームと、生クリームのシュークリームだ。
好みが分かれるところだが、俺はカスタード派だ。
シュークリームの皮の作成には、これまで何度もトライした。
最適な薄さを求めるのに苦労した。
苦労して作り上げた一品である。
「これは旨い!それに甘い!」
とカインさんは叫んでいた。
「そういえばカインさん、十一階層の壁のおじさんと、ここの壁のおじさんが寂しがってましたよ?」
「そうなのか・・・」
と、ちょっとカインさんが嫌そうな顔をした。
「人と話すのは百年ぶりだって、粘られましたよ」
「やっぱり・・・いや分かってはいるんだよ私も、だがあいつ等は・・・喋り出すと止まらないんだ。それにいつもあいつらは亜空間に住んでいるから、決して独りぼっちではないからね・・・そうか・・・あとで顔を出しておくよ」
やっぱりそうか。
ゴンとは違うということだ。
甘やかす必要は感じないな。
ただのかまってちゃんのようだ。
「話が長く続きそうなら、十七階層に設置する予定の、通信用の魔道具を持っていってくださいね」
「そうだな・・・」
気が進まないようだ。
確かにおじさん達はお喋りだったからな。
うざいことは間違い無い。
「まあ、気が向かないとは思いますが、一度は行ってやってくださいね」
「そうだな、そうするよ」
とカインさんは浮かない顔をしていた。
片付けをして、要を済ませてと準備をしていると、カインさんに話し掛けられた。
「島野君、ここからは大変な階層が続くけど、頑張ってくれよ」
「大変ですか?」
「ああ、島野君なら大丈夫とは思うが一応ね」
と警告された。
大変とはなんだろう?
まあ、行ってみれば分かるか。
とこの時の俺は安易に考えていた。
本当に大変だった。
正直ヘトヘトだ。
ここまで追い込まれるとは思わなかった。
作り手の悪意を感じる。
決して舐めてはいなかったが、ここまでとは思わなかった。
勘弁して欲しいよ、いい加減さ。
俺達は十四階層に降り立つと唖然としてしまった。
まさかの砂漠地帯だった。
異常に熱い。
サウナで暑さには慣れているが、これは違う熱さだった。
肌がヒリヒリする。
これは良くない。
間違いなく百度以上の温度がある体感だ。
俺は昔に味わった、百十度のサウナを思いだした。
あれは酷かった。
サウナは熱ければいいという物ではない。
やはり適温というものがある。
百十度のサウナの全身にビリビリする感覚は、危機感すら覚えたものだった。
真っ先に俺は結界を張り、そこに『限定』の能力を付与して、温度を通さないようにしたのだが。
地面の熱さは遮断できず、汗だくになっていた。
それに加えてジャイアントワームという、かなりデカいミミズからの襲撃を受けることになった。
めんどくさい事この上ない。
こいつらは牙が鋭くて気持ち悪い。
奴らが厄介なのは、地面から湧き出てくることで『探索』にもなかなか引っかかってくれない。
いきなり地面から口を開けて襲い掛かってくる。
苛々させられる。
これは良くないと、俺は瞬間移動の移動を問答無用で行った。
ものの数分の移動で済んだが、全員汗だくだ。
サウナに慣れ切った俺達でこれなんだから、他のハンター達がこれに耐えれるとは到底思えない。
これはカインさんが何かしら手を加えてるのか?
という疑問すら伺える。
どう考えても、これをS級のハンターが踏破出来るとは考えづらい。
先程会ったハンター達が、この階層を超えれるとは思えないからだ。
それぐらい辛い階層だった。
もう二度と挑みたくは無い。
あえてもう一度言う、二度とごめんだ。
そして、そんな火照った体を冷やしてくれる心使いなのか。
十五階層は氷の世界だった。
いい加減にして欲しい・・・
ものの数秒で身体は冷めていた。
何で外気浴場が無いんだ!
と言いたかったが、ここはダンジョンであることを思い出した。
思わず外気浴出来る場所を探してしまったのは、条件反射という事で・・・
いやはや、俺の脳みそはサウナに支配されているようだ。
それはさておき。
ここでも結界を張るしか無かった。
先程と同様に『限定』で温度を通さないようにしたが、やはり地面からの温度は抑えきれず。
異常に寒かった。
足に霜焼けが出来るかと思ったほどだ。
この階層では、アシカだか、オットセイだかの魔物が襲いかかってきたが、無視して先を急ぐことにした。
すまないと思うが構ってられない、というのが正直な感想だ。
魔物はスルーしたが許して欲しい。
ここまで寒いのは生命の危機を感じる。
十六階層は暴風雨のステージだった。
一見ただの草原なのだが、そうはいかないということだった。
とにかく雨風が強い。
身体を持っていかれそうになる。
気を抜くと身体が宙に浮かびそうになる。
そこに加えて、これまでの草原ステージの魔物達が襲いかかってくる。
だが魔物達も強風に身体を持ってかれて、おかしなことになっている。
魔物達が俺達にたどり着くことは無かった・・・
これって何なの・・
意味があるのか?
余りに間抜けだった。
全く意味が分からない。
ここでも瞬間移動を繰り返して先を進むしか無かった。
かつてのS級ハンターがよくもここまで辿り着いたものだと、俺は関心してしまった。
その精神力には天晴だ!
でも昔のダンジョンと今のダンジョンが同じものだとは限らない。
そう思うのは、あまりに過酷過ぎるからだ。
これはカインさんに聞いてみないといけない。
俺の予想ではカインさんが、何かしら弄っているのは間違いないと思っている。
あの人ならやりかねない。
やっと十七階層に辿り着いた。
ここの風景はまるで禿山のようだった。
そして気づいたことがある。
空気が薄い・・・
標高何メートルかは分からないが、三十台後半の頃に登った富士山の山頂よりも、空気は薄いと思う。
こんなに息苦しかった覚えは無い。
肉体的にはあの頃よりも若いのだから、間違い無いだろう。
標高三千八百メートル以上はあるということだ。
なんとも忍耐力を試される。
数メートル歩くと息が切れそうになる。
だが思いの外、楽な階層となってしまった。
ほとんど魔物を見かけなかったからだ。
それはそうだろう、魔物にとってもこの環境は辛いはずだ。
稀にデカいカモシカの様な魔物に遭遇したが、動きが遅く簡単に倒すことができた。
ドロップ品は角だった。
『鑑定』 ジャイアントカモシカの角 高価な薬の材料
となっていた。
高価な薬が何の薬なのかは分からないが、とりあえず回収しておいた。
そして、飛行はしんどいだろうと、瞬間移動を繰り返してセーフティーポイントにたどり着いた。
やっと着いた・・・はあ・・・
セーフティーポイントに入ると、息苦しさが無くなっていた。
どうなっているのだろうか?
仕組みがまったく分からない。
まあダンジョンだから考えるだけ無駄なことだ。
このダンジョンという処は、ファンタジーが過ぎる。
何でもありと言わざるを得ない。
常識で考えると頭がパンクする。
もはやルーティーン、の転移扉の設置と通信用の魔道具を設置する。
これが最後のルーティーンとなる。
全てのセーフティーポイントの、転移扉と通信用の魔道具の設置が完了した。
「ゴン、通信を頼む」
「主、了解です」
ゴンは通信用の魔道具を使った。
「こちら十七階層のセーフティーポイントです。カイン様聞こえますでしょうか?」
少しして返信があった。
「こっらカッン、かなりきっえ、づっらい」
あれ?
通信状況が悪いようだ。
「ゴン切っていいぞ、どうやら通信状況が良くないようだ」
「そのようですね」
「もう転移扉を使って帰ろう」
「了解です」
「お前ら、帰るぞ。今日はここまでだ」
「分かったよ」
「疲れた」
「やっと終わりましたですの」
と流石のこいつらも疲れたようだ。
俺は転移扉を開いて、ダンジョンの入口に戻った。
俺達が突然現れたことに、カインさんは少し驚いていたが。
「島野君、お疲れ様」
と声を掛けてくれた。
「いやー、ほんとに疲れましたよ。でもこれで転移扉と魔道具の設置は完了しましたね。コンプリートです」
「ありがとう、助かるよ」
「でも十七階層の通信用の魔道具だけは、通信状況が良くありませんね」
「そのようだね、でも通信があれば、こちらから伺うことができるから御の字だよ」
「そうですね、通信用の魔道具の意味合いは、迎えに来てくれとのメッセージを送ることですからね」
「ああ、そうだな」
「そういえば、一つ聞きたいことがあるんですが、いいでしょうか?」
「何だい?」
「今のダンジョンと昔のダンジョンって、同じ物なんでしょうか?」
カインさんの顔が引き攣っている。
「気づいちゃったかな?」
「・・・やっぱり・・・」
どうやら俺の予想通り、違う物のようだ。
今はかなり過酷になっているみたいだ。
「何でまた?」
「島野君達以外に、賞金をもってかれる訳にはいかないと思ってね・・・」
カインさんなりの気遣いのようだが、正直いらん世話を焼かれた気分だ。
まあ今となっては、どうでもいいことではあるのだが・・・
それにしても、賞金のことはすっかり忘れていたな。
これで賞金は払わなくても、いいということになったようだ。
「お気遣いありがとうございます、もう疲れたので帰りますね」
「お疲れ様」
と俺達は転移扉を使う事無く、俺の能力の転移でサウナ島に帰っていった。
今日は充分に汗をかいたから、サウナは止めておいた。
精神的に疲れたので、シャワーと風呂だけ浸かって直ぐに眠りについた。
翌日の朝
この先はどうしようかとの話になった。
朝食を済ませると社長室に島野一家が集まっていた。
「主、ここまで来たからには踏破しましょう!」
とゴンはやる気満々だ。
「そうだよ、やろうよ!」
とギルもその気だ。
「僕はどうでもいいよ」
とノンはあまり拘っていない様子。
エルは、
「ご主人様に任せますの」
と自分の意見は有って無いような雰囲気だった。
どうしたものか・・・正直めんどくさいのだが・・・
でもここまでやったのだから、ここで終わらせるのもなんだか気が引けるな。
せっかくだからやるか?
随分期待されてるみたいだしな。
「よし、やるか!」
「やった!」
「やりましょう!」
と気合の入った返事が返ってきた。
「でも今日は休もう、挑むのは明日にしよう」
「「了解!」」
少しは休憩したい。
特に肉体的に疲れが残っている訳ではないが、一拍置きたい気分だ。
翌日
朝食を済ませ、準備を整えてから、ダンジョンの街エアルに向かった。
一日置いたにも関わらず、熱狂的な歓声で迎えられた。
至る処で歓声が挙がっている。
早速調子に乗ったノンが、例の如く変てこダンスを披露している。
もはやツッコむ気にもなれない。
ゴンがノンを睨んでいるが、ノンは気にも留めていない。
よかったのは、囲まれたり、道を塞ぐ者がいなかったことだ。
ただの歓声だけなら、ダンジョンの入口にたどり着けば終わるだろう。
ダンジョンの入口に辿り着くと、カインさんに迎えられた。
予想道りとはならず、ここでも歓声が煩い。
カインさんは何が嬉しいのか、ニコニコしている。
「おはようございます」
「やあ、おはよう」
カインさんの声が聞こえづらい。
それを察したのかカインさんは手を挙げて、歓声を制した。
「とうとうこの日がやってきたようだ」
とカインさんは目を輝かせている。
「今日で終わらせますよ」
「頼んだよ」
とカインさんは右手を差し出してきた。
俺は握り返すと、何故だかまた歓声が挙がった。
いい加減に止めて欲しい。
「では行きますね」
と俺達は復活の指輪を受け取り、十七階層に繋がる転移扉へと向かった。
転移扉を開いて、扉を潜った。
十七階層のセーフティーポイントにたどり着いた。
「じゃあいこうか」
「「はい!」」
十八階層に繋がる階段を降っていく。
十八階層は薄暗かった。
月明り程度の明かりしかない。
ゴンに照明魔法を使わせようかと思ったが、止めておいた。
光が目印になり、魔物が寄ってくるかもしれないかと思ったからだ。
「まずは目を慣らそう、少し待機だ」
「「了解!」」
俺達は五分ほど十八階層の入口で佇んでいた。
そして目が慣れて来たころに分かったのは、ここは墓地だということだった。
所々に墓石のような物があり、空気が冷たいのを感じる。
一先ず『探索』を行ってみたが、これまでと様子が違った。
十九階層に繋がる階段が見当たらなかったのだ。
どうなっている?
これまでの傾向からここら辺にあるだろうという場所には、ぽっかりと空白があった。
この空白は何だろうか?
まあ行ってみれば分かるか、一先ずはこの空白を目指そうと思う。
それにしても、この空気感で出てくる魔物といえば、ゴーストのような魔物なのだろうか?
そうなると物理的な攻撃は当たるのだろうか?
と考えていると、さっそくその答えを導き出す魔物が現れた。
ゴーストである。
フワフワと浮いた、霊魂のようなものがこちらに迫ってきた。
それに向かって、ノンが動いた。
爪で抉るが、空を切っていた。
早くも答えが出てしまった。
物理攻撃は効かない。
それを見て俺はさっそく自然操作の火をぶつけてみた。
おお!これは効いたようだ。
ゴンは土塊をぶつけていたが空を切っていた。
こうなるとあとは何が有効なのか探るしかない。
結果として分かったのは物理も、魔法も聞かない。
どうやら俺の自然操作のみ効いたみたいだ。
ここから導き出される答えは、神力しか効かないということだ。
おい!それはないだろう!
神力を持たない者がほとんどのこの世界で、この様は無いんじゃないか?
待てよ、そういえばメルルの鎮魂歌があったな。
でもあれは怒らく固有魔法だと思うのだが・・・
まあいいか。
ズルいと感じるのは、ゴーストは魔法を使ってくる。
これは俺達には効くのだ。
通常のハンターでは太刀打ちできないぞ。
島野一家では俺とギルが神力を使える為、対応は可能だが、ここもカインさんが弄っているのか?
それとも俺が知らない対応可能な魔法があるのだろうか?
「ギル、ここは神力を持ってる俺とギルで対処するしかないようだ、神気銃を打ってみろ。有効なはずだ」
「分かった」
とギルは神気銃をゴーストに向かって撃っていた。
ゴーストが消滅していく。
そしてムカつくことにドロップ品は無かった。
倒し損でしかない。
ふざけるな!
その後、骸骨の襲撃を受けた。
こいつらは簡単だった。
物理攻撃が効いたのだ。
頭を砕くとあっけなく崩れていった。
その名は鑑定によるとスケルトンとなっていた。
まんまである。
外には武具や剣を装備したスケルトンに遭遇した。
こちらはスケルトンソルジャーとなっていた。
スケルトンシリーズはハッキリ言って弱い。
そしてこれもムカつくことにドロップ品は骨だった・・・
要らんわ!
誰が好き好んで骨を集めるというのか。
念のため鑑定してみたが、ただの骨となっていた。
その他にも、アンデットやらが襲ってきたが、漏れなく火魔法で焼いて処理した。
焼いてしまった所為か、ドロップ品は出なかった。
ここの階層は只々魔力や体力、そして神力を削られるだけのようだ。
見返りは全くない。
悪意を感じる。
腹が立って仕方が無い。
そして遂に空白ポイントに辿り着いた。
そこには神殿のような建造物が鎮座していた。
壁のおじさん達が居た神殿とは雰囲気が違う。
石造りであることは同じだが、あまりに空気感が違う。
禍々しさを感じる。
これはもしかしてボス部屋ということなんだろうか?
ここを進むしかないのは分かる。
神殿に足を踏み入れると、直ぐに両開きの大きな扉に辿り着いた。
やっぱりそうなんだろう、ここを空けるとこの階層のボスが居るということなんだろうと思う。
「皆な、多分この扉を開くとこの階層のボスが居ると思う、心して掛かって欲しい」
「そうなの?」
とギルの疑問だ。
「多分な」
「そうなんだね」
とギルは臨戦態勢に入っていた。
「じゃあ行くぞ」
「「おう!」」
「「了解!」」
と気合が入っている。
俺は勢いよく扉を開けた。
中に入っていくと、案の定ボスの様な魔物が待ち構えていた。
その魔物は高貴な僧侶のような衣服を纏った、スケルトンだった。
その手には杖が握られている。
『鑑定』 リッチスケルトン 死霊魔物の最高位に属する魔物 死霊魔法を得意とする
死霊魔法?
聞いたことがない・・・それに響きが怖い。
呪われるってことなのか?
これは一気にやっつけたほうがいいだろうな。
「死霊魔法という物を使ってくるらしい、一気に片付けるぞ!」
「おう!」
「了解です」
というと、俺とギルはリッチスケルトンに対して、神気銃を連発した。
するとあっさりとリッチスケルトンが消えて行った。
何だったんだ・・・
ちょっと可哀そうに思えてきた。
ドロップ品は杖だった。
『鑑定』 呪いの杖 呪うことが出来る杖
・・・要らないな。
放置するのも良くないと、自然操作の火で焼いて。
念のため踏みしだいて、粉々にしておいた。
誰が呪いなんてしたいんだよ。
ふざけるな!
ほんとにやれやれだ。
先程の神殿とは風景が違う。
これはどう見ても迷路だ・・・
辺りは壁一面だった。
入口は一カ所しか無く、ここから入るしかなさそうだ。
ここでも魔物の気配は感じない。
『探索』を行うと簡単に迷路の様子が見て取れた。
知力が試されるとは聞いていたが・・・こんなものなんだろうか?
簡単過ぎる・・・ここまでがブラフってことは・・・考えずらいな・・・
どうにも解釈に困る。
俺達は『探索』が導くままに迷路を進んでいった。
少し厄介だったのは、正規ルートと思われる箇所にも罠があり、何度か落とし穴に落ちそうになった。
でもここは飛行能力を持っている者が俺を含め三人いる為、危なげなく罠を看破していた。
気が付くと早くも十三階層へと繋がる階段にたどり着いていた。
少々味気ない。
というか呆気なさ過ぎる。
階段を降りていく俺達。
十三階層は、これまた先ほど見た神殿だった。
「おいおい、またこれかよ・・・」
「またおじさんがいるのかな?」
「どうかな?」
「あの壁のおじさん、うざかったよね」
「ああ、まったくだ」
長い通路を歩いていく。
無駄に通路が長いんだよな。
これに意味はあるのか?
やっと最深部まで辿り着いた。
また先ほどと同様に、壁からおじさんの顔が現れた。
またあいつだ。
いい加減否になるな。
「勇敢なる者達よ、よくぞここまで辿り着いた」
「また会いましたね・・・」
「・・・」
ってなんか言えよ。
「聞こえてますか?」
「聞こえておる」
あれ?
ちょっと声質が違うようだ。
十一階層のおじさんとは違うのか?
でも同様に態度と顔はムカつくな。
「それで、何をすればいいんですか?」
「・・・ちょと余韻に浸らせてくれ・・・」
余韻?
またか・・・
いい加減にしろよ!
腹が立ってきた。
「はぁ・・・」
壁のおじさんが目を瞑り、余韻に浸っている。
だから何の余韻なんだよ!
いい加減にせい!
「あの・・・百年ぶりに人と話すことの余韻に浸ってるんですよね?」
壁のおじさんは目を開き、以外そうにこちらを見ていた。
「なんで知っておる?」
「十一階層でも同様のやり取りがありましたので・・・」
「そうか、あいつか・・・」
と気に入らない表情を浮かべている。
「どうやら別人みたいですね?」
「あんな奴と一緒にするな!」
と吐き捨てていた。
「はあ・・・」
「儂は、あいつほど間抜けではない!」
何なんだよいったい!
たいして変わらん気がするが?
ていうか十一階層の壁のおじさんを知ってるんだな。
「十一階層の壁のおじさんを知ってるんですか?」
「知ってるも何も、しょっちゅう会っておる」
それで人とは久しぶりってことか・・・
壁のおじさん同士ではお話してたってことね、これが業務上の秘密なのか?
「それで、今回はどんな質問なんですか?またなぞなぞですか?」
「いいや、違う。そんな簡単な物ではないぞ」
「へえー」
どうだかな・・・
どうにも信用ならん。
「ここでは計算を行って貰う、それも時間厳守でだ、どうだ?難しいだろ!」
と壁のおじさんはどや顔をしていた。
計算って・・・まさか足し算とか引き算ってことなのか?
であれば簡単過ぎるな。
まあいい、さっさとやっちゃいましょうか。
「では、お願いします」
「ちょっと待ってくれ、そう急かすな。儂も十一階層のあいつと同様、百年ぶりの人との会話なんだ、もう少し会話を楽しませてくれ。ところで最近の世情などはどうだ?」
何がところでだ、付き合い切れん。
というか話にならん。
「あのな、十一階層の壁のおじさんにも伝えたが、今は事情が変わって、カインさんも神力が充分に確保できる状況に変わったから、ちょいちょい覗きに来ると思うぞ?」
「そうなのか?」
「そうだ、だから先を急がせてくれ」
「・・・嘘じゃないよな・・・」
壁のおじさんは眉を潜めている。
「疑うのか?」
「・・・疑う・・・」
めんどくさい!
こうなったら。
「よし!帰ろうか。戻ってカインさんに言いつけてやろう」
「そうだね、そうしよう」
「そうするですの」
「やだやだ」
「おじさん、知らないよー」
と、全員俺の意を汲み取ったようだ。
「何!待った!待った!悪かった!ごめんこの通りだ!」
ただの不毛なやり取りじゃないか、まったく。
「それで、早く問題を出してくれないか?」
「分かった、そうする!ちょっと待ってくれ、心の準備をさせてくれ」
何が心の準備だ、早くしろよな。
壁のおじさんは深呼吸をしていた。
「よし、準備は整った。よいか、先ほど話した通り、ここでは計算をして貰う。それも決められた時間内に回答して貰う。時間切れや間違った回答をしたら、十階層のセーフティーポイントにまで一度帰ってもらうことになる」
「へえー、それは転移するってことか?」
「いや、違う。歩いていってもらう」
なんだそれ?
まあいいや、こんなことで時間を潰したくない。
突っ込まないことにしよう。
早く先に進みたい。
「まあいい、始めてくれ」
「そうか?質問があるなら受け付けるが?」
と、壁のおじさんは質問してくれと書いてある顔をしていた。
こいつ、結局は話しをしたいだけじゃないか。
ただのお喋りなおじさんじゃないか。
付き合いきれん。
「いや、いい、始めてくれ」
「・・・そうか・・・」
壁のおじさんはつまらなさそうな顔をした。
「では始めるが、回答時間は十秒以内だ、いいな?」
「ああ」
「では、第一問」
このおじさんも要らない間を設けている。
早くしろっての!まったく!
「二十三足す二十四は?」
「四十七!」
と暗算キングのノンが速攻で答える。
「・・・正解!・・・」
おいおい、ほんとうに簡単な足し算じゃないか。
ここもちょろいのか?
何かの罠か?
分かりかねる。
「お主、やるのう。速攻で答えられたのは始めてだぞ」
「まあねー」
とノンは気にも留めていない様子。
「では行くぞ、第二問!」
「チャンチャン!」
とノンがふざけている。
ノンの奴、実は正解したのが嬉しいのかもしれない。
よく見ると尻尾を振っていた。
分かり易い奴だ。
「九十一引く四十三は?」
「四十八!」
「正解!」
「イエーイ!」
圧倒的なノンの暗算の速さだ。
秒読みのカウントが全くされなかった。
一秒未満だ。
「ノン兄だけずるいぞ!」
とギルが悔しがっている。
そんな悔しがることじゃないでしょうが。
さっさと終わらせようよ、ここはさ。
「お主、凄いな!圧倒的な速さだ」
壁のおじさんが関心している。
「へへ!」
と余裕をかましているノン。
今にも踊り出しそうだ。
「さて、次からはそうはいかないぞ。一気に難しくなるからな、余裕なのもここまでだ!」
と壁のおじさんは自信満々だ。
「楽勝!」
とノンもやる気満々だ。
「では行くぞ。第三門!」
「チャンチャン!」
ノンは絶好調のようだ。
もはや楽しんでいる。
「十四掛ける二十四は?」
「三百三十六!」
「正解!」
「早っや!」
俺は思わず呟いてしまった。
「凄いでしょー」
「まったく凄いな、ノン!」
二桁の掛け算を解くスピードとしては最速だといえる。
これも一秒と掛かっていない。
「くっそう!何でノン兄は計算がそんなに早いんだよ!」
ノンはふざけて頭を指で示している。
それをギルが悔し気に睨んでいた。
もうここは張り合わなくても、ノンに任せたらいいんじゃないか?
間違えたらそれはそれでめんどくさい事になりそうだし。
「ムムム・・・お主・・・やるではないか」
壁のおじさんも唸っている。
ノンの計算の速さは圧倒的だ。
「では最後の問題だ、いいかな?」
「いいよー」
と余裕を崩さないノン。
これまた要らない間を取る壁のおじさん。
いい加減止めて欲しい。
「千五百三十六割る九十六は?」
「十六!」
「正解!」
「おお!」
「早い!」
「断トツ!」
とノンへの賞賛が止まらないが、ギルだけは悔しがっていた。
ギルは地団駄を踏んでいる。
「それにしてもお主凄いな。ここまで正確で速いのはこれまでにもいなかった。断トツだぞ!暗算キングだ!」
「イエーイ!」
と更に調子に乗るノン。
どうやらクリアしたようだ。
それにしてもノンの計算の速さは凄かった。
一問目と二問目は未だしも、三問目と四問目の速さは秀逸だった。
俺でも数秒は掛かったと思う。
それにしても、やれやれだ。
やっと終わったよ。
「勇敢なる者よ、先に進む名誉を与えよう、行くがよい」
と壁のおじさんが言うと、壁が開き十四街道への階段が現れた。
「ちょっと待った!セーフティーポイントは何処なんだ?」
「ああ、そうかそっちも必要か」
と言うと横の壁が開き、セフティーポイントが現れた。
ここのセーフティーポイントは、これまでの小屋の部屋とは違い、石造りの部屋となっていた。
台所とトイレは付いている。
中に入ると、入口の扉が閉まった。
テーブルがあったので、一先ずそこに腰かけた。
何だか妙に疲れた。
「それにしても疲れたな?」
「だね、ここのおじさんもうざかったね」
「全くだ」
ノンは活躍出来たのが嬉しいのか、まだ調子に乗っている。
一人で変てこなダンスを踊っている。
さてと、転移扉を設置しなければならない。
これまで通り転移扉を『加工』で床に設置する。
通信用の魔道具も設置済だ。
「ゴン通信を頼む」
「了解です、主」
ゴンは通信用の魔道具を掴むと交信を開始した。
「こちら十三階層のセーフティーポイントです。カイン様聞こえますか?」
少しして、返信があった。
「聞こえてるよ、ちょっと今までよりも声が小さいが、ちゃんと聞こえている」
「そうですか、距離が関係しているのかもしれないですね、どうですか?主?」
俺は横から話し掛けた。
「そうかもしれないな、カインさん一先ずおやつタイムにしますので、こっちに来てください」
「了解、行かせて貰うよ」
と通信を切ると。
ほどなくしてカインさんが現れた。
「島野君おつかれ様、おやつタイムとは何なんだい?」
「こういうことです」
と、俺は言うと『収納』から、最近新作として作った、シュークリームと、なんちゃって水筒を取り出した。
「これは最新作のスイーツです。シュークリームといいます。是非食べてみてください。あとは飲み物は何にしますか?」
「毎度毎度すまないね。飲み物は何があるんだい?」
「天然水と、お茶と、オレンジジュース、コーヒーですね」
「では、お茶を頂こう」
「お前達はどうする?」
「僕はオレンジジュース」
「僕も」
「私しはお茶ですの」
「私はコーヒーで」
俺は各自に飲み物の入ったなんちゃって水筒を渡し、シュークリームを配っていった。
シュークリームは一人二個づつだ。
カスタードクリームのシュークリームと、生クリームのシュークリームだ。
好みが分かれるところだが、俺はカスタード派だ。
シュークリームの皮の作成には、これまで何度もトライした。
最適な薄さを求めるのに苦労した。
苦労して作り上げた一品である。
「これは旨い!それに甘い!」
とカインさんは叫んでいた。
「そういえばカインさん、十一階層の壁のおじさんと、ここの壁のおじさんが寂しがってましたよ?」
「そうなのか・・・」
と、ちょっとカインさんが嫌そうな顔をした。
「人と話すのは百年ぶりだって、粘られましたよ」
「やっぱり・・・いや分かってはいるんだよ私も、だがあいつ等は・・・喋り出すと止まらないんだ。それにいつもあいつらは亜空間に住んでいるから、決して独りぼっちではないからね・・・そうか・・・あとで顔を出しておくよ」
やっぱりそうか。
ゴンとは違うということだ。
甘やかす必要は感じないな。
ただのかまってちゃんのようだ。
「話が長く続きそうなら、十七階層に設置する予定の、通信用の魔道具を持っていってくださいね」
「そうだな・・・」
気が進まないようだ。
確かにおじさん達はお喋りだったからな。
うざいことは間違い無い。
「まあ、気が向かないとは思いますが、一度は行ってやってくださいね」
「そうだな、そうするよ」
とカインさんは浮かない顔をしていた。
片付けをして、要を済ませてと準備をしていると、カインさんに話し掛けられた。
「島野君、ここからは大変な階層が続くけど、頑張ってくれよ」
「大変ですか?」
「ああ、島野君なら大丈夫とは思うが一応ね」
と警告された。
大変とはなんだろう?
まあ、行ってみれば分かるか。
とこの時の俺は安易に考えていた。
本当に大変だった。
正直ヘトヘトだ。
ここまで追い込まれるとは思わなかった。
作り手の悪意を感じる。
決して舐めてはいなかったが、ここまでとは思わなかった。
勘弁して欲しいよ、いい加減さ。
俺達は十四階層に降り立つと唖然としてしまった。
まさかの砂漠地帯だった。
異常に熱い。
サウナで暑さには慣れているが、これは違う熱さだった。
肌がヒリヒリする。
これは良くない。
間違いなく百度以上の温度がある体感だ。
俺は昔に味わった、百十度のサウナを思いだした。
あれは酷かった。
サウナは熱ければいいという物ではない。
やはり適温というものがある。
百十度のサウナの全身にビリビリする感覚は、危機感すら覚えたものだった。
真っ先に俺は結界を張り、そこに『限定』の能力を付与して、温度を通さないようにしたのだが。
地面の熱さは遮断できず、汗だくになっていた。
それに加えてジャイアントワームという、かなりデカいミミズからの襲撃を受けることになった。
めんどくさい事この上ない。
こいつらは牙が鋭くて気持ち悪い。
奴らが厄介なのは、地面から湧き出てくることで『探索』にもなかなか引っかかってくれない。
いきなり地面から口を開けて襲い掛かってくる。
苛々させられる。
これは良くないと、俺は瞬間移動の移動を問答無用で行った。
ものの数分の移動で済んだが、全員汗だくだ。
サウナに慣れ切った俺達でこれなんだから、他のハンター達がこれに耐えれるとは到底思えない。
これはカインさんが何かしら手を加えてるのか?
という疑問すら伺える。
どう考えても、これをS級のハンターが踏破出来るとは考えづらい。
先程会ったハンター達が、この階層を超えれるとは思えないからだ。
それぐらい辛い階層だった。
もう二度と挑みたくは無い。
あえてもう一度言う、二度とごめんだ。
そして、そんな火照った体を冷やしてくれる心使いなのか。
十五階層は氷の世界だった。
いい加減にして欲しい・・・
ものの数秒で身体は冷めていた。
何で外気浴場が無いんだ!
と言いたかったが、ここはダンジョンであることを思い出した。
思わず外気浴出来る場所を探してしまったのは、条件反射という事で・・・
いやはや、俺の脳みそはサウナに支配されているようだ。
それはさておき。
ここでも結界を張るしか無かった。
先程と同様に『限定』で温度を通さないようにしたが、やはり地面からの温度は抑えきれず。
異常に寒かった。
足に霜焼けが出来るかと思ったほどだ。
この階層では、アシカだか、オットセイだかの魔物が襲いかかってきたが、無視して先を急ぐことにした。
すまないと思うが構ってられない、というのが正直な感想だ。
魔物はスルーしたが許して欲しい。
ここまで寒いのは生命の危機を感じる。
十六階層は暴風雨のステージだった。
一見ただの草原なのだが、そうはいかないということだった。
とにかく雨風が強い。
身体を持っていかれそうになる。
気を抜くと身体が宙に浮かびそうになる。
そこに加えて、これまでの草原ステージの魔物達が襲いかかってくる。
だが魔物達も強風に身体を持ってかれて、おかしなことになっている。
魔物達が俺達にたどり着くことは無かった・・・
これって何なの・・
意味があるのか?
余りに間抜けだった。
全く意味が分からない。
ここでも瞬間移動を繰り返して先を進むしか無かった。
かつてのS級ハンターがよくもここまで辿り着いたものだと、俺は関心してしまった。
その精神力には天晴だ!
でも昔のダンジョンと今のダンジョンが同じものだとは限らない。
そう思うのは、あまりに過酷過ぎるからだ。
これはカインさんに聞いてみないといけない。
俺の予想ではカインさんが、何かしら弄っているのは間違いないと思っている。
あの人ならやりかねない。
やっと十七階層に辿り着いた。
ここの風景はまるで禿山のようだった。
そして気づいたことがある。
空気が薄い・・・
標高何メートルかは分からないが、三十台後半の頃に登った富士山の山頂よりも、空気は薄いと思う。
こんなに息苦しかった覚えは無い。
肉体的にはあの頃よりも若いのだから、間違い無いだろう。
標高三千八百メートル以上はあるということだ。
なんとも忍耐力を試される。
数メートル歩くと息が切れそうになる。
だが思いの外、楽な階層となってしまった。
ほとんど魔物を見かけなかったからだ。
それはそうだろう、魔物にとってもこの環境は辛いはずだ。
稀にデカいカモシカの様な魔物に遭遇したが、動きが遅く簡単に倒すことができた。
ドロップ品は角だった。
『鑑定』 ジャイアントカモシカの角 高価な薬の材料
となっていた。
高価な薬が何の薬なのかは分からないが、とりあえず回収しておいた。
そして、飛行はしんどいだろうと、瞬間移動を繰り返してセーフティーポイントにたどり着いた。
やっと着いた・・・はあ・・・
セーフティーポイントに入ると、息苦しさが無くなっていた。
どうなっているのだろうか?
仕組みがまったく分からない。
まあダンジョンだから考えるだけ無駄なことだ。
このダンジョンという処は、ファンタジーが過ぎる。
何でもありと言わざるを得ない。
常識で考えると頭がパンクする。
もはやルーティーン、の転移扉の設置と通信用の魔道具を設置する。
これが最後のルーティーンとなる。
全てのセーフティーポイントの、転移扉と通信用の魔道具の設置が完了した。
「ゴン、通信を頼む」
「主、了解です」
ゴンは通信用の魔道具を使った。
「こちら十七階層のセーフティーポイントです。カイン様聞こえますでしょうか?」
少しして返信があった。
「こっらカッン、かなりきっえ、づっらい」
あれ?
通信状況が悪いようだ。
「ゴン切っていいぞ、どうやら通信状況が良くないようだ」
「そのようですね」
「もう転移扉を使って帰ろう」
「了解です」
「お前ら、帰るぞ。今日はここまでだ」
「分かったよ」
「疲れた」
「やっと終わりましたですの」
と流石のこいつらも疲れたようだ。
俺は転移扉を開いて、ダンジョンの入口に戻った。
俺達が突然現れたことに、カインさんは少し驚いていたが。
「島野君、お疲れ様」
と声を掛けてくれた。
「いやー、ほんとに疲れましたよ。でもこれで転移扉と魔道具の設置は完了しましたね。コンプリートです」
「ありがとう、助かるよ」
「でも十七階層の通信用の魔道具だけは、通信状況が良くありませんね」
「そのようだね、でも通信があれば、こちらから伺うことができるから御の字だよ」
「そうですね、通信用の魔道具の意味合いは、迎えに来てくれとのメッセージを送ることですからね」
「ああ、そうだな」
「そういえば、一つ聞きたいことがあるんですが、いいでしょうか?」
「何だい?」
「今のダンジョンと昔のダンジョンって、同じ物なんでしょうか?」
カインさんの顔が引き攣っている。
「気づいちゃったかな?」
「・・・やっぱり・・・」
どうやら俺の予想通り、違う物のようだ。
今はかなり過酷になっているみたいだ。
「何でまた?」
「島野君達以外に、賞金をもってかれる訳にはいかないと思ってね・・・」
カインさんなりの気遣いのようだが、正直いらん世話を焼かれた気分だ。
まあ今となっては、どうでもいいことではあるのだが・・・
それにしても、賞金のことはすっかり忘れていたな。
これで賞金は払わなくても、いいということになったようだ。
「お気遣いありがとうございます、もう疲れたので帰りますね」
「お疲れ様」
と俺達は転移扉を使う事無く、俺の能力の転移でサウナ島に帰っていった。
今日は充分に汗をかいたから、サウナは止めておいた。
精神的に疲れたので、シャワーと風呂だけ浸かって直ぐに眠りについた。
翌日の朝
この先はどうしようかとの話になった。
朝食を済ませると社長室に島野一家が集まっていた。
「主、ここまで来たからには踏破しましょう!」
とゴンはやる気満々だ。
「そうだよ、やろうよ!」
とギルもその気だ。
「僕はどうでもいいよ」
とノンはあまり拘っていない様子。
エルは、
「ご主人様に任せますの」
と自分の意見は有って無いような雰囲気だった。
どうしたものか・・・正直めんどくさいのだが・・・
でもここまでやったのだから、ここで終わらせるのもなんだか気が引けるな。
せっかくだからやるか?
随分期待されてるみたいだしな。
「よし、やるか!」
「やった!」
「やりましょう!」
と気合の入った返事が返ってきた。
「でも今日は休もう、挑むのは明日にしよう」
「「了解!」」
少しは休憩したい。
特に肉体的に疲れが残っている訳ではないが、一拍置きたい気分だ。
翌日
朝食を済ませ、準備を整えてから、ダンジョンの街エアルに向かった。
一日置いたにも関わらず、熱狂的な歓声で迎えられた。
至る処で歓声が挙がっている。
早速調子に乗ったノンが、例の如く変てこダンスを披露している。
もはやツッコむ気にもなれない。
ゴンがノンを睨んでいるが、ノンは気にも留めていない。
よかったのは、囲まれたり、道を塞ぐ者がいなかったことだ。
ただの歓声だけなら、ダンジョンの入口にたどり着けば終わるだろう。
ダンジョンの入口に辿り着くと、カインさんに迎えられた。
予想道りとはならず、ここでも歓声が煩い。
カインさんは何が嬉しいのか、ニコニコしている。
「おはようございます」
「やあ、おはよう」
カインさんの声が聞こえづらい。
それを察したのかカインさんは手を挙げて、歓声を制した。
「とうとうこの日がやってきたようだ」
とカインさんは目を輝かせている。
「今日で終わらせますよ」
「頼んだよ」
とカインさんは右手を差し出してきた。
俺は握り返すと、何故だかまた歓声が挙がった。
いい加減に止めて欲しい。
「では行きますね」
と俺達は復活の指輪を受け取り、十七階層に繋がる転移扉へと向かった。
転移扉を開いて、扉を潜った。
十七階層のセーフティーポイントにたどり着いた。
「じゃあいこうか」
「「はい!」」
十八階層に繋がる階段を降っていく。
十八階層は薄暗かった。
月明り程度の明かりしかない。
ゴンに照明魔法を使わせようかと思ったが、止めておいた。
光が目印になり、魔物が寄ってくるかもしれないかと思ったからだ。
「まずは目を慣らそう、少し待機だ」
「「了解!」」
俺達は五分ほど十八階層の入口で佇んでいた。
そして目が慣れて来たころに分かったのは、ここは墓地だということだった。
所々に墓石のような物があり、空気が冷たいのを感じる。
一先ず『探索』を行ってみたが、これまでと様子が違った。
十九階層に繋がる階段が見当たらなかったのだ。
どうなっている?
これまでの傾向からここら辺にあるだろうという場所には、ぽっかりと空白があった。
この空白は何だろうか?
まあ行ってみれば分かるか、一先ずはこの空白を目指そうと思う。
それにしても、この空気感で出てくる魔物といえば、ゴーストのような魔物なのだろうか?
そうなると物理的な攻撃は当たるのだろうか?
と考えていると、さっそくその答えを導き出す魔物が現れた。
ゴーストである。
フワフワと浮いた、霊魂のようなものがこちらに迫ってきた。
それに向かって、ノンが動いた。
爪で抉るが、空を切っていた。
早くも答えが出てしまった。
物理攻撃は効かない。
それを見て俺はさっそく自然操作の火をぶつけてみた。
おお!これは効いたようだ。
ゴンは土塊をぶつけていたが空を切っていた。
こうなるとあとは何が有効なのか探るしかない。
結果として分かったのは物理も、魔法も聞かない。
どうやら俺の自然操作のみ効いたみたいだ。
ここから導き出される答えは、神力しか効かないということだ。
おい!それはないだろう!
神力を持たない者がほとんどのこの世界で、この様は無いんじゃないか?
待てよ、そういえばメルルの鎮魂歌があったな。
でもあれは怒らく固有魔法だと思うのだが・・・
まあいいか。
ズルいと感じるのは、ゴーストは魔法を使ってくる。
これは俺達には効くのだ。
通常のハンターでは太刀打ちできないぞ。
島野一家では俺とギルが神力を使える為、対応は可能だが、ここもカインさんが弄っているのか?
それとも俺が知らない対応可能な魔法があるのだろうか?
「ギル、ここは神力を持ってる俺とギルで対処するしかないようだ、神気銃を打ってみろ。有効なはずだ」
「分かった」
とギルは神気銃をゴーストに向かって撃っていた。
ゴーストが消滅していく。
そしてムカつくことにドロップ品は無かった。
倒し損でしかない。
ふざけるな!
その後、骸骨の襲撃を受けた。
こいつらは簡単だった。
物理攻撃が効いたのだ。
頭を砕くとあっけなく崩れていった。
その名は鑑定によるとスケルトンとなっていた。
まんまである。
外には武具や剣を装備したスケルトンに遭遇した。
こちらはスケルトンソルジャーとなっていた。
スケルトンシリーズはハッキリ言って弱い。
そしてこれもムカつくことにドロップ品は骨だった・・・
要らんわ!
誰が好き好んで骨を集めるというのか。
念のため鑑定してみたが、ただの骨となっていた。
その他にも、アンデットやらが襲ってきたが、漏れなく火魔法で焼いて処理した。
焼いてしまった所為か、ドロップ品は出なかった。
ここの階層は只々魔力や体力、そして神力を削られるだけのようだ。
見返りは全くない。
悪意を感じる。
腹が立って仕方が無い。
そして遂に空白ポイントに辿り着いた。
そこには神殿のような建造物が鎮座していた。
壁のおじさん達が居た神殿とは雰囲気が違う。
石造りであることは同じだが、あまりに空気感が違う。
禍々しさを感じる。
これはもしかしてボス部屋ということなんだろうか?
ここを進むしかないのは分かる。
神殿に足を踏み入れると、直ぐに両開きの大きな扉に辿り着いた。
やっぱりそうなんだろう、ここを空けるとこの階層のボスが居るということなんだろうと思う。
「皆な、多分この扉を開くとこの階層のボスが居ると思う、心して掛かって欲しい」
「そうなの?」
とギルの疑問だ。
「多分な」
「そうなんだね」
とギルは臨戦態勢に入っていた。
「じゃあ行くぞ」
「「おう!」」
「「了解!」」
と気合が入っている。
俺は勢いよく扉を開けた。
中に入っていくと、案の定ボスの様な魔物が待ち構えていた。
その魔物は高貴な僧侶のような衣服を纏った、スケルトンだった。
その手には杖が握られている。
『鑑定』 リッチスケルトン 死霊魔物の最高位に属する魔物 死霊魔法を得意とする
死霊魔法?
聞いたことがない・・・それに響きが怖い。
呪われるってことなのか?
これは一気にやっつけたほうがいいだろうな。
「死霊魔法という物を使ってくるらしい、一気に片付けるぞ!」
「おう!」
「了解です」
というと、俺とギルはリッチスケルトンに対して、神気銃を連発した。
するとあっさりとリッチスケルトンが消えて行った。
何だったんだ・・・
ちょっと可哀そうに思えてきた。
ドロップ品は杖だった。
『鑑定』 呪いの杖 呪うことが出来る杖
・・・要らないな。
放置するのも良くないと、自然操作の火で焼いて。
念のため踏みしだいて、粉々にしておいた。
誰が呪いなんてしたいんだよ。
ふざけるな!
ほんとにやれやれだ。
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まるまる⭐️
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