10 / 182
下級神との出会い
しおりを挟む
崖の上に広がる牧草地帯、その先に見える小さな村。
すると遠くから声が聞こえた。
「おーい、おーい!守ー!」
どうやらアグネスが出迎えに来てくれたようだ。
「わざわざお出迎えか?」
「そうよ、神様が迎えに行ってくれって言うからさー。エルちゃんがいるから大丈夫だって言ったんだけど。それでも行ってくれっていうからさ」
「そうか、悪かったな」
そう答えると、横からノンが横やりを入れる。
「本当は主に早く会いたかったんじゃないの?」
冷やかして遊んでいるようだ。
「ふん、なによノン。そんなこと無いんだからね!」
アグネスが赤くなっている。
「そうか、アグネスは俺のことが好きなのかー」
「ふんだ!守のバーカ、バーカ!」
「冗談だよ、分かった、分かった」
コロンの街へと向かった。
空の旅はとても楽しかったし、心地良かった。
なんとも気持ちのいい時間を過ごした。
コロンの街に着いた。
牧草地は広く、雄大な景色に心が躍る。
そして同時に、牧歌的な雰囲気に心が和む。
草の匂いが鼻を衝くが、決して嫌な臭いではない。
牛の群れが草をむさぼり、その近くを犬が見守っている。
ヤギの群れも同様に草をむさぼっていた。そして、それを警護するように天使達が上空から見守っていた。
天使達に手を振ると、天使達が手を振り替えしてくれた。
「アグネス、あれが、天使達の仕事なのか?」
「あれも仕事の一つね、でも一番の仕事は街の警護なんだけどね」
警護ということは、それなりに天使達も強いってことなのかな?
「それにしても、聞いてはいたけど、牧歌的でいいな」
アグネスが胸を張って、自慢げにしてる。
「そりゃそうよ、前にも言ったかもしれないけど。コロンの街は畜産で有名な街なのよ。特に牛乳は有名でね、中には収納持ちの商人に、買いに来させる王族までいるぐらいなんだから」
王族?いるんだ。
「本当は、もっと販売を拡げたいんだけど、牛乳は足が速いからね」
消費期限が速いってことね、分かるよ。
俺も日本では牛乳を何度も駄目に仕掛けたからな。
その度に牛乳入りの料理に取り掛かったものだ。
「どれぐらい持つんだ?」
「そうね、保存状態にもよるけど、日光に当てなければ、だいたい十五日ぐらいかな?」
思いのほか長いな、というより、日本の衛生管理が厳しいってことなのかもしれない。
「なぁ、容器はどんな物なんだ」
「容器?瓶に詰めてるわよ?」
「それは、真空にしてるのか?」
首を傾げている。
「要は、腐食は空気に触れることで発生するから、出来る限り空気の入らないように工夫することで、消費できる期限が伸びたりするものなんだよ」
「それはどういうことなの?」
「簡単に言えば、容器に蓋をせずに放置するとしたら、空気が牛乳によく触れてしまうだろ?」
「うん」
「そうすると牛乳は腐りやすくなるんだ」
「そうなんだ」
「例えば、鉄は錆びるだろう?あれは、鉄が空気にふれることによって腐食する。鉄にとっての腐食が錆びるということなんだよ」
「なるほどね」
アグネスは深く頷いている。
「だから、牛乳の消費期限を延ばしたければ、瓶に蓋をする際に、少しでも空気を含まない工夫をすれば、期限が伸びると考えられる。そうすれば、ちょっとでも長く牛乳を食することができるんじゃないかな?ってことだよ」
「どんな工夫ができるかしら」
「いくつかあるけど、それはまず自分達で考えてみてくれ。何でも聞いてしまったら面白くないだろ?」
「えー、教えてよ。ケチー!」
むくれた顔でこちらを見ている。
「お前なぁ、この街の神様は畜産の神様じゃなかったのか?神様にも面子ってもんがあるだろうが、ここまでは良かれと思って俺は話しているだけであって、神様の領域に勝手に踏み込むのもどうかと思うんだがね」
しまったという顔でアグネスがこちらを見ている。
「あっ、そうでした。すいません・・・」
下を向いて反省している様子。
「お前また調子に乗ってんのか?」
ノンが凄みながら割り込んできた。
「そんなことはありません、ごめんなさい」
へこへこしているアグネス。
その様子を、他の皆が鼻で笑っていた。
やれやれこの子は、少しでも街の為にと考えてのことなんだろうけど、常々考えが浅いんだよな。
そういうところ嫌いじゃないけどさ。
「じゃあ念の為、あと一つだけ教えておく、さっき日光に当たらないようにって、話をしてたけど、常温で保存しているのか?」
アグネスは背筋を伸ばして緊張気味に話しだした。
「だいたいそうであります。日差しが良くないことは分かってますので」
おいおい、いきなり敬語になってるよ、分かりやす過ぎるだろ。
駄目天使全開だな、まぁ可愛らしいってことにしておきましょうか。
「冷やして保存した方がいいぞ、ただ凍らせちゃまずいけどな」
「凍らせちゃ不味いでありますか?」
軍隊かよ・・・ありますか?って、もはやアホだな。
敬礼でもしそうな雰囲気だ。
「牛乳は凍らせると、解凍した後に分離しちゃうからな」
「そうでありますか、理解いたしました」
本当に俺に向かって敬礼しているアグネス、これってもしかして馬鹿にしている?
いやあの子の最大級の尊敬の表現がこれなんだろう。
まさに残念天使。
しかし、地球でのごく当たり前の知識で、誰でも分かっていることを、話してみただけなんだけど、ここまで文化レベルが低いってことなのか?
そうとも考えづらいな、ただ単にアグネスの知識レベルが・・・ってこともある。
ただ純粋に、冷やして保存する技術が無い、という可能性の方が高そうだけど。
神様ならこれぐらい知っていて当然と思うが、技術が無いってことかな?
だからあえて、知らしめていないとか?
まぁ、いずれにしても俺が首を突っ込むのは憚られるな。
「とにかく一度、神様と相談してみてくれ」
「了解いたしました!」
まだ敬礼してるよ・・・
天使って皆アホなのか?
アズネスだけであることを祈ろう。
アグネスの手配で、早速、神様と会うことになった。
神様の見た目の印象としては、カールおじさん。
麦わら帽子に、口髭、農作業を行う服装に、朗らかな顔つき。
そしてふくよかな体形。
「始めまして。島野守と申します、転移者です。よろしくお願い致します」
頭を下げて挨拶した。
「おー、君がそうか、アグネス君から話は聞いてるよ。私はドラン、ここコロンの街で下級神をやっている。よろしく頼むよ、ハッハッハッ!しかし、面白いパーティーだね。転移者、フェンリル、九尾の狐、そしてうちのペガサスに、ドラゴンとは、ハッハッハッ!」
笑う度に、ドラン様のお腹が揺れている。
何とも豪快な笑い声だ、辺り一面に木霊しているよ。
俺はおもむろに『収納』からお土産を取り出した。
「こちらお近づきの標です、よかったらどうぞ」
野菜の詰め合わせと、ワインを三本差し出した。
「おー、ありがとう、遠慮なくいただくよ。おっ、これはアグネスの野菜かな?嬉しねー、これ美味しいよねー。ん?なんと!ワインじゃないか。ありがたいねー。いやー。ありがとう。ハッハッハッ!」
かなり喜んでいただけている様子。
出だしは順調っと。
本当はここでこっそり『鑑定』をしてみたいところだが、止めておいた。
というのも、前にアグネスに『鑑定』してみていいか?
と聞いたことがあったが、あの子にしては珍しく、本気で止めて欲しいと言われたことがあった。
何でも、勝手に『鑑定』をすることが、罪になる国があるとのことだった。
恐らくこれは俺の想像だが、個人の能力や体力や魔力は、秘匿すべき個人情報であり。『鑑定』の能力を持った者が、好き勝手にそれを除き見ることは、個人の尊厳を脅かす可能性があり、かつ許されざる行いであると、いうことではないかと思う。
それはそうだと思う、個人情報を覗き見ることは、日本でも犯罪だとの認識は間違っていないと思う。
俺としては、そういったことは遵守したいと思う。
「しかし、上から拝見させて頂きましたけど、大きな牧草地帯ですね。驚きましたよ」
「おー、そうか、そうか、まぁこう見えても私は、畜産の神だからね。ハッハッハッ!」
こう見えてって、まんまですけど・・・
「畜産の神様なんですね」
「そうだよ、畜産の実績が認められて、神様になったんだ、今は下級神だよ」
実績が認められて・・・
「そうなんですか?実績が認められてとうことは、その前は何を?」
馬の背を撫でながら、ドラン様が答えた。
「実は、私は元々人間でね、ただ、ちょっと特殊だったんだ」
「特殊とは?」
「私には、一部の動物とコミュニケーションがとれる、力があってね。ハッハッハッ!」
特殊能力持ちだったってことか。
「そうなんですね」
「元々、この町は畜産の街では無かったんだよ、私のこの能力で畜産を始めて、今の畜産の街コロンになったんだ。ハッハッハッ!それが評価されて、神になったんだよ」
前に創造神様が、実績が云々って言っていたような気がする。
「実績が評価されると、神様になれるんですか?」
「ああ、そこからか・・・この世界では、私の知る限り、神になるには、創造神様が造った神と、私の様に実績が評価されて神になる、この二通りだね。それ以外は聞いたことはないね。ハッハッハッ!」
良く笑う神様だ・・・嫌いじゃないけど、少々鬱陶しい。
「このコロンの街には、ドラン様が神様になる前には、神様はいらっしゃらなかったんですか?」
下級神というのは何なのか?俺がゴンから聞いた話では、氏神様のイメージなんだが。
「ああ、いたよ。私が神になった時に前の神様は中級神になって、街を出て行ったよ。ハッハッハッ!」
ゴンの知っている、中級神とは若干事情が違うようだな。こちらがオーソドックスなのかな?
「島野君はこれから街を見て周るんだってね」
「はい、その予定です」
じゃれてくる牛をあやしながら、ドラン様は言った。
「そのあとでいいから、もう一度私のところに寄ってくれないかな?ちょっと話したいことがあってね」
どうやら何かが含まれている様子。
「そうですか、分かりました。では後ほど」
ドラン様に手を振られながら、牧草地帯を後にした。
頭に鉢巻を巻き、気合満々のアグネスが、フンス!
と言わんぐらいの気合を漲らせていた。
簡単な屋台と言っていいのか、雨よけも無いテーブルに、ところ狭しと、野菜が積み上げてられていた。
すると、三白眼のアグネスが、力強く、机を叩いた。
ドンドン!ドンドン!
「さぁさぁ皆さんお立合い、私くし天使のアグネスにてございます!そして、ここにありますのが、今話題沸騰のアグネスの野菜にてございます。さぁさぁ見てっておくんなまし、よぉ、そこの兄ちゃんどうだい、どうだい、アグネスの野菜だよ。数量限定だよ!この野菜は本日限りの販売だよ。見てっておくんなまし!」
おいおい、叩き売りかよ・・・てか、なましって何だよ?
「さぁどうだい、さぁどうだい!」
道行く人々に声を掛けていくアグネス。
しかし、これが凄かった。
待ってましたと言わんばかりに集まる人々、まさに飛ぶようにアグネスの野菜は売れていった。
アグネスが意気揚々と野菜を販売していた。
正直びっくりした。
「ふう、今日も売り切ったわ、どうよ、守!」
勝ち誇った表情のアグネス。
「お疲れさん、毎回こんな感じなのか?」
「そうよ、どうよ!」
胸を叩いてふんぞり返っている。
「いや、これって、アグネスが凄いんじゃなくて、島の野菜が凄いんじゃないの?」
あらら、ギルが真っ当なこと言っちゃったよ。
「なによ、私だって頑張ってるんだからね」
「まぁ、まぁ」
エルが宥めている。
「まぁ、でもよく分かったよ、ありがとなアグネス」
お礼はちゃんとしないとね。
「ふん!もっと感謝してくれてもいいんだけどね!」
「お前、調子に乗ると、また締めるぞ!」
ノンが脅した。
「ウッ!」
急に態度が変わったアグネス。
可哀想にとエルが慰めていた。
「まぁまぁまぁ」
何はともあれ、島の野菜の価値は充分に分かった。となると、旅の資金の現地調達は、問題無さそうだ。
ただあまりに爆発的な売れ行きには、なにか理由があるようにも感じる。
この街の野菜は美味しくないとか?
とりあえず、今は気に掛けてもしょうがないのだが。
その後、街の散策に出かけた。
街の中心地では、食べ物中心の屋台が立ち並んでいて、ちょいちょい買い食いしながら、楽しく過ごした。
やはり俺の予想は正しかった。
屋台の料理は、肉系が中心ではあったが、いつくか野菜の食べ物もあった。
食べてみたのだが、美味しいとはお世辞にも言えなかった。
あと、何よりも野菜が小さくて色が薄い。
野菜の栄養が感じられなかった。
アグネスが、島の野菜をたらふく食べたがるのも、理解できるというもの。
畑の土壌が違うのかな?などと考えてはみたが、畑を見ない限り分からない。
まぁ人の畑のことを気に掛けても仕方がないのだが。
街の中心に差し掛かってくるにつれて、家の形も、木造から、石作りに変わっていく様も見ることができた。
街の中心ともなると、人の数が増え、賑わいを感じることができた。
見た感じとして、人間が四割、獣人が四割、残りニ割がそれ以外、といったところだろうか。
獣人は特にミノタウロスが多い様に感じた。おそらく牧場関係の従事者ではないかと思う。
とても平和でのどかな街だと思う。
これもあの牧歌的な神様の影響なのかもしれない。
そして、最後に教会に立ち寄った。
小さな教会だった、見たところ。老朽化が激しく雨漏りをしていても、おかしくないと思えるほどの痛みようだった。
中に入ると、思った通りの、狭くて小さい教会だった。
祭壇があり、その上には石像が置かれているが、劣化が激しいのか、石像の形が、はっきりとしていない。
何の神様なんだろうか?
周りを見渡してみたが、誰もいない。
「あのー、すいません!どなたかいますか?」
ゴンが声を掛けた。
すると、少し経ってから、
「はぁーい、ごめんなさいね。いま行きますねー」
と声が返ってきた。
俺の腰ぐらいの身長の、老齢のネズミの獣人が現れた。
法衣を纏っており、眼鏡をかけている。おそらくここのシスターなのだろう。
「お待たせしました。それで何か御用ですか?」
「突然伺ってすいません。私は島野守と申します。そして、こちらが、私の家族です」
「はぁ」
と言って、シスターが俺たちを見上げていた。
「私たちは旅の者でして、コロンの街を見学させて頂いております。今回は俺の要望で教会に寄りたいとお願いしまして、こちらに寄らせていただきました」
「私が連れて来たのよ」
アグネスが前に出てきた。
「あら天使様。お元気そうで」
どうやら知り合いのようだ。
「久しぶりね、リズ、元気してた?」
アグネスが話し掛ける。
「ええ、元気だけが取り柄ですから・・・それで・・・その・・・」
俺から話掛けた、
「リズさん、教えて欲しいんですが、こちらの石像はどの神様なのでしょうか?」
俺は石像を指さした。
「ああ、お恥ずかしい限りなんですが、こちらは、元々は創造神様の石像だったんです。今では劣化が激しくて・・・」
「島の石像の方が相当」
ゴンがギルの脇腹をつついたと同時に、俺が割って入った。
「そうなんですね。なるほど、教会では創造神様を崇拝するものなんでしょうか?」
「そうですね、教会では創造神様を祭ってるところがほとんどですが、中には上級神様を祭っている教会もありますよ」
なかなか顕現化しない神様を崇拝しているってことなのかな?
「ここでは創造神教ってことなんでしょうか?」
リズさんが何のこと?という具合に首を捻っている。
「創造神教?って何ですか?」
何ですかって?ん?
待てよ、そうか、宗教という概念が日本とは違うということか。
神様を崇拝することを、宗教という枠に捕らわれていないということなんだろう。
神様が顕現している世界なんだから、日本と違って当然ということか。
すると、リズさんの後ろから、ぞろぞろと子供たちが現れた。
「シスターどうしたの?」
「この人たち誰?」
「シスターお腹減った」
子供達が、次々に話しだす。
「あっ、ちょっと、出てきちゃ駄目でしょ。奥に行ってなさい」
リズさんが困惑していた。
「あれー!元気な子供がいっぱいだなー、お前達、お腹減ってるのかな?」
との問いかけに返事が殺到した。
「減ってるー!」
「ペコペコー!」
「何か食べたいー!」
俺はノンに合図をした。
「分かった、分かった!そこまで言うなら食べさせてあげるから。皆ついて来て」
と言って、ノンは教会の中庭に子供達を誘導した。
「お前達、飯が食いたいかー!」
「おおー!」
ギルが煽っている。
「上手い飯が、食いたいかー!」
「おおー!」
拳を上に突き出している子もいる。
「じゃあちょっと待っててね」
そういうと、ノンが俺に合図を送ってきた。
その様子をリズさんが尚も困惑しながら見ていた。
俺は『収納』からテーブルとイスを取り出した。
実はこんなこともあろうかと、昨日シチューを仕込んでおいたのだ。
俺達はシチューをとりわけ、パンをテーブルの中心に大量に置き。サラダも取り出した。
「さぁ皆、食べよう!」
「手を合わせてください」
ゴンが仕切っている。
「いただきます」
「「「「いただきます」」」」
大合唱であった。
子供達が我先にと食べ物に手を付けている。
リズさんはまだ困惑している様子。
「そんな、いただいても・・・」
「ご一緒にリズさんもどうですか?」
俺はリズさんに食事を勧めた。
「よろしいので」
「皆、遠慮なく食えよ!お代わりもあるぞ」
「「「やったー」」」
子供達が嬉しそうにしている。
すると、獣人の男の子三人組が現れた。
「お!旨そうなもん食ってんじゃんよ、俺にも食わせてくれよ」
「こら!テリーお行儀が悪い、すいません島野さん」
リズさんがテリーと呼ばれた子に近づいて、背中を叩いていた。
「痛てーな、シスター止めてくれよ!」
テリーが逃げ回っている。
見たところテリー少年はこの中では最年長なのか、顔つきは子供ではなく、少年の顔つきだった。
恐らく狼の獣人だと思う。
十二歳前後だろうか、一緒に来た二人を引き連れている印象があった。
他の二人はというと、猫耳があるところからこちらも獣人のようだ。
「テリー、あんたどこふらついてたのよ」
「どこだっていいだろってか、アグネスいるじゃん」
「なによ、いたっていいでしょ」
アグネスが返す。
「なぁ、とにかく食事にしないか?」
俺は助け舟を出してやった。
「お、話が分かる兄ちゃんだな。へへ」
俺は自分の席をテリー少年に譲ってあげた。
二人の獣人の少年にも手招きをして席に座らせた。
シチューを取り分けてやり、三人に差し出してやると、勢いよくがっつきだした。
良い食いっぷりです。
するとテリー少年が話し掛けて来た。
「で、兄ちゃんは何者?」
こらこらスプーンで人のことを指すんじゃない、本当にお行儀の悪い坊主だなぁ。
まぁ精神年齢定年の俺は、こんなことでは、腹が立つことはありませんがね。
「俺かい?俺は島野守だよ、よろしくなテリー」
「へ、そうかよ」
その態度にムッときたのか、ギルが食ってかかった。
「おいお前、僕のパパになんて態度取ってんだよ」
テリー少年はギルを一瞥するや、何だよと言わんばかりに立ち上がろうとした。
それを察知して、ゴンがテリー少年の肩を抑えて立ち上がらせなかった。
「今は食事中でしょ?止めなさい」
さすがにこれをやられると、座るしかないよね。
ナイス!ゴン。
テリー少年は観念した様子で食事を再開した。
「本当に申し訳ありません」
リズさんがまた謝っていた。
「いやいや、元気でいいじゃないですか」
その様子をアグネスはにっこりしながら、眺めていた。
「アグネス、手伝ってくれよ」
おっと、という様子で手伝いだしたアグネス。
「わかったわよ」
皆で食事を楽しんだ。
とても楽しい食事だった。
大人数の食事ってたまにはいいよね。
「それで、リズさんこの子達は・・・」
リズさんが答えた。
「この子達は、いろいろな事情で親と離れ離れになった、可哀想な子達なんです。ある子は親が魔獣に殺され。ある子は口減らしでという具合で、やむにやまれずここに預けられた子達です」
「そうですか、教会の運営状況はどうですか?」
俺はずばり聞いてみた。
「正直ぎりぎりなんとかやっていますよ、幸い援助してくれる方もちらほらいましてね」
リズさんは足元にいた、子供の頭を撫でながら話していた。
子供に良く懐かれている、信頼されているシスターだ。
「良かったらこちらをこの子達の為に使ってください。あと、雨漏りも直したほうがよいかと思います」
袋に入れた、金貨百枚を渡した。
「えっ!こんなに!良いんですか?」
リズさんがビックリしている。
「遠慮なく使ってください」
家族の皆とアグネスが、こちらを見て微笑んでいた。
「あと、もし良かったらなんですけど、教会の中にある石像なんですが、俺が手直しをしてもよろしいでしょうか?手先には自信がありまして」
周りに聞こえないようにリズさんに耳打ちした。
一瞬ためらったリズさんだったが。
「ええ、お願いします」
と快く答えてくれた。
皆が食事を取るなか、俺は一人教会の中へとやって来た。
石像の前に立ち、当たりを見渡して、誰もいないことを確認してから『加工』の能力で創造神様の石像を改修した。
改修した石像にお辞儀をしてから、俺はこの場を立ち去った。
石像は結構な自信作となった。
ドラン様のところにやってきた。
話しがあるということだったが、何だろうか?
「遅くなりました、お待たせしてすいません」
「ハッハッハッ、かまわん、かまわん。こちらこそ、呼び立ててすまなかったね」
ドラン様と一緒に三人の男性が控えていた。
「島野君、紹介させてくれ。こちらがこの町の農業組合の会長のモラン君だ」
一人の男性が、前に出た。
こちらもドラン様と同じく、カールおじさん風の体形と恰好をしていた。
髭は無かったが。
「モランと申します、よろしくお願いいたします」
続いて二人をモランさんから紹介された。
副会長らしく、二人とも獣人で、こちらも農業従事者とすぐわかる服装をしていた。
ドラン様が口を開いた。
「島野君、担当直入にお願いしたい。この町の農業にアドバイスを貰えないだろうか?」
やっぱりそう来たか。
「アドバイスですか?」
「ハッハッハッ、そうだよ。アグネスの野菜は、島野君が作ってるんだろ?その腕を見込んで、お願いできないだろうか?」
やっぱり、筒抜けだったか。
まぁ、今さらどうってこともないけどね。
「構いませんが、ひとまず今日は時間も遅いので、明日まずは一度畑を見せていただけないでしょうか?」
農業組合の三人が胸を撫で降ろしていた。
「そうか、すまないねー。ハッハッハッ」
俺たちはドラン様のもとを後にした。
コロンの街で一泊と考えていたが、手ごろな宿が見当たらなかった為、結局島に転移で戻ることにした。
「あらー、お帰りなさい。結局帰って来られたのですね」
アイリスさんが、出迎えてくれる。
皆口々に「ただいまー」と声を掛けている。
「宿が決まらなかったので、帰ってきちゃいました」
「まぁ、そうでしたの。食事は済んでますか?」
お気遣いありがとうございます。
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」
「皆、とりあえず風呂にして、もうだいぶ遅いけど、サウナはどうする?」
エルが片手を挙げた。
「私くしは、お風呂のみにしておきます。少々疲れましたですの」
「僕も今日はいいや」
ノンが答えた。
「じゃあ今日は風呂のみでいいな?」
「はーい」
と皆が口々に答えた。
俺は、ビールを『収納』から取り出し、一口飲んだ。
あー、旨!
風呂の準備は皆に任せて、何かつまみでもと考えていたところ、正面にアイリスさんが着席した。
「ご相伴に預かろうかと思いまして」
俺は『収納』からビールを出して、アイリスさんに渡した。
ついでに、燻製にしたベーコンも数切れ皿に盛った。
「どうぞ」
「ありがとうございます。それで、どうでしたか?」
アイリスさんが、興味深々といった具合で尋ねてくる。
そりゃあ、そうだろう。一人で留守番だからな。
気になら無い訳がない。まぁそれもあって帰って来たんだけどね。
「いろいろありましたよ、ドラン様という下級神にお会いして。街を散策したり、牧場を見学したりして、あと教会にも行きました」
教会では子供達と食事ができて楽しかったな。
あとこの世界の宗教感が把握できてよかった。
「まぁ、そうでしたか。何か守さんが興味を引くような物はありましたか?」
「たくさんあり過ぎて、困ってしまいましたよ。あっそうだ、アイリスさんにちょっと相談事があるんですが」
「相談事ですか?」
アイリスさんが喜んでいる。
頼られて嬉しいのだろう。
「ええ、実は、ドラン様から三人の農業組合員を紹介されまして、何でも農業に関するアドバイスが欲しい、ということらしいんです。明日畑を見させてもらう予定なんですが、アイリスさんの能力で、コロンの街の畑の様子って分かったりします?」
目を閉じて何やら考え込んでいる?探している?といった具合のアイリスさん。
「ええ、おそらくコロンの街でしたら、距離としては大丈夫かと思いますが、少々お時間を頂けますか?」
「もちろんです、あんまり無理はしないでくださいね」
ビールを飲み切った俺は、風呂に入ることにした。
アイリスさんは、目を閉じて集中していたので、声を掛けるのは、止めておいた。
翌日
約束通り、コロンの街の畑を見せて貰っている。
「収穫した作物を見させて貰えませんか?」
会長のモランさんにお願いすると、副会長の一人が取りに向かってくれた。
収穫物を手渡された。
これは、おそらくジャガイモだろうが、サイズがうちの作物より半分ぐらいしかなかった。
「他にはありますか?」
「こちらもどうぞ」
手渡してくれたのは、キュウリだろうか?こちらもサイズが小さく、更に色も薄く感じる。
「初めてアグネス様が野菜を販売してるところを見て、正直驚きました。何より野菜の大きさや色つや、そして実際に口にしてみたら、味がとても濃かった」
モランさんが興奮気味に話しだした。
「なるほど」
「アグネス様にどこで育てたんだ!どこで仕入れたんだって!何度も何度も聞いても、企業秘密だって、答えてくれなかったんですよ」
「それで」
「まぁ、アグネスの野菜は数量が少ないので、我々の市場や、生活を脅かすほどではありませんから、販売をやめて欲しい、ということではないのです。それに楽しみにしている街人も多いので・・・ただ我々農業従事者としては、いてもたってもいられず。ドラン様に相談したところ、この様な機会を頂けた、ということなんです」
「そういうことだったんですね」
アグネスなりには気遣ってくれてたんだと分かった。
下手に無人島産だって漏らして、注目されないようにしてくれてたみたいだ。
少し見直したよ。
言うなとは言ってないから、言ってくれてもよかったんだけどね。
でもさすがに神様には報告していたってことかな。
「ではさっそく教えて頂きたいことが一つ。普段農家の方々はどのように農作業をしておられるのでしょうか?」
モランさんが前に出てきた。
「それはまず種まき、水やり、雑草を見つけたら抜いて。後は虫が付いたら除去といったところですね、当然収穫もですが・・・」
「他には有りませんか?」
モランさんが、副会長達と話し合っている。
「特には無いかと思います」
「分かりました、では肥料を撒いたり、間引きを行うといったことはされない、ということですね?」
三人は首を傾げている。
「あの、それはなんでしょうか?肥料とは?・・・」
アイリスさんの言う通りのようだ。
「説明します。まず肥料とは土に栄養を与えるものです。豊富な栄養のある土からしか、栄養豊富な作物はできません」
三人の反応を見るといまいち理解できていない様子。
「土に栄養ですか・・・」
「はいそうです。同じ畑でも、土が肥えている土と、そうでない土とでは、作物のできが違います」
副会長の一人が、何か思い当る節があったのか、目を見開いている。
「うん分かる気がします。色の濃い土の方が、成長が良いのは何となく分かっていました」
「例えばこのコロンの街は畜産業が盛んです。牛糞が大量にあると思いますが、その牛糞が肥料になります」
三人が明らかに嫌そうな顔をした。
「それは、衛生的にどうなんでしょうか?」
「衛生的とはどういうお考えですか?」
何か固定観念があるようだ。
「いや、牛とはいっても糞ですよね」
「イメージだけが先行して。大事なことを分かってらっしゃらない、では牛は水を飲み、草を食べます、そして、糞をだす。そのどこに衛生的に悪い部分がありますか?」
三人は、考え込んでいる。
「確かに衛生意識が高いのは良いことですが、大事な面を見失っては本末転倒ですよ。あとアグネスの野菜ですが、肥料は何だと思いますか?当然牛糞を使用しておりますし、もっと言うと、人糞も一部混じっておりますよ」
三人はびっくりして目を見開いている。
「ではこれまでに、アグネスの野菜で健康トラブル等はありましたか?」
副会長の一人が、何かを思い出したようだ。
「あっ!そういえば、前に牧草から脱走した牛が、畑で糞をしてしまったことがありました。言われたように、その土から育った作物は大きくて、色も良かった。ただ・・・衛生的ではないと判断して、捨ててしまいました・・・」
ドラン様はちゃんと気づける機会は、与えていたってところかな。
なるほどね。
「もし疑う様でしたら、一部の小さな畑から試してみてください」
三人は腕を組んで、難しい顔をしていた。
「もう一つ間引きですが、これは元気のない枝や、小さい作物をあえて伐採するということです。そのほうが残った実に栄養が蓄えられて、大きく、色鮮やかになるんです」
「なるほど」
モランさんが答える。
「まぁ、あとは実際に試してみてから、考えてください」
「分かりました、貴重なアドバイスありがとうございました」
ついでに連作障害についても教えておいた。
実は、昨日の間にアイリスさんから、コロンの畑の現状とアドバイスは聞いていたから、これは受け売りでしかないんだけどね。
アイリスさんは畑のプロだから、お見通しということだ。
アイリスさん、あざっす!
ひとまずドラン様からの相談ごとは片付いたので、その報告にと、俺とギルの二人で、ドラン様の所にやってきた。
アドバイスの内容と、そのやり取りについて報告した。
「島野君ありがとう助かったよー、ハッハッハッ。何か私にできることがあったら言って欲しい、出来ることはしてみせよう」
ではお言葉に甘えさせて貰いましょうかね。
「ありがとうございます。ではさっそくですが、神様のことについて教えて貰えませんか?」
「ほう、神についてか、それはどういうことかな?」
ギルの肩に手を置いた。
「まず私にはギルがおります。親である以上知っておきたいのです。その存在や行いについて、例えば私が感じたのは今回の畑の件について、ドラン様は前から、農家の方々にヒントをお与えになっておりましたよね?」
ドラン様が一瞬ビックとして、その後考え込んでいた。
「なんだか君は勘が良いね、恐れ入ったよ。いいだろう、私が話せる範囲で話をしよう。まぁ座りたまえ」
椅子を勧められ、俺とギルは着席した。
「まず、神と言っても様々だから、全てが同じではないことを承知して欲しい。やはり例外という物が存在するのは、どこの世界でも一緒だろう?」
日本でも例外はあったような、なかったような。
まぁとりあえず合わせておこう。
「そうですね、分かります」
「私の場合は前にも話した通り、元は人間で、畜産の実績が評価されて神になった。私がやること、というかやれることは限られている。まずは私は畜産の神だから、畜産に関することは、その能力内において手出しすることは許されている」
「と言いますと?」
「そうだな、島野君、君は転移者だから『鑑定』を持っているだろう?私に使用してみてくれ」
ちょっとビックリした、ドラン様は随分オープンな性格だな。
「いいんですか?」
「ああいいとも、ただし他の神様には本人の了承が無い限り厳禁だぞ。やはりそこはプライベートなところだからな。ハッハッハッ」
「では遠慮なく」
『鑑定』
名前:ドラン
種族:下級神
職業:畜産の神
神力:640
体力:1432
魔力:0
能力:畜産動物思念伝達Lv3 畜産動物治癒Lv2 畜産食物加工Lv2 神気操作Lv3
ドラン様が話し出した。
「いいかい、私の能力として『畜産動物思念伝達』『畜産動物治癒』『畜産食物加工』『神気操作』とある、まず『畜産動物思念伝達』は前に話した通り、一部の動物とコミュニケーションが取れる力だ『畜産動物治癒』とは、畜産に関する動物であれば、どの子でもケガや病気を治癒してあげれる力、ただ畜産に関係の無い動物には及ばない力だ」
ここで一旦間を置いた。
理解できているかと俺とギルを見ている。
「次に『畜産食物加工』は牛乳やチーズやヨーグルト、ハム等、畜産からとれる食物を加工して造れる力のこと、そして最後に『神気操作』とはその名の通り神気を扱う力、ここまでいいかな?」
畜産に関係する能力内であれば行使できるということか。
「ええ、大丈夫です」
「この能力内においては、ある程度直接手出しが可能だが、それ以外においては、直接的な手出しは許されていない」
ドラン様が周りを見て、誰もいないことを確認した。
「従って今回のように農業に関して、直接的なアドバイスは許されていない、だが私も畜産の神として、牛糞が肥料になることぐらい知っている、でも・・・ということだよ」
概ね予想通りだな。
「牛に畑で糞をさせたりと、気づく切っ掛けを与えることは何とか許してもらえる、又は他の誰かに代わりを務めてもらう、ということですね」
ドラン様が頭を掻いている。
「まぁ今回の島野君の件は、ギリギリのところだけど、ハッハッハッ」
「分かりました。能力で直接手をだす時には、この神気が必要ということなのでしょうか?」
ドラン様が右手を差し出し神気を見せた。
「そう、この神気によって能力を使っている。ただね・・・最近ではちょっと都合が変わってきててね、どうにも神気が集まりづらいんだ。だから『畜産食物加工』は、今は極力控えるようにしている」
この世界の神気が薄くなってきていることと関係してそうだな。
「集まりづらいとは?」
「『鑑定』で見たとおり、私の今の神力は640、最大で877まで集めることができる」
集めるとは?
「どうやって集めるのですか?」
「うーん、自然と集まってくる感じかな」
それが集まりづらくなってきているということか。
「あと、例えばなんですけど、その能力を増やしたりすることは可能なのでしょうか?」
ドラン様が驚いている、そして急に頭を抱え込んだ。
と思ったら万遍の笑顔になった。
「なんて素晴らしい発想なんだ。島野君!君はすごいね、考えたことも無かったよ。ハッハッハッ」
「そうなんですね」
能力開発は創造神限定のことなのか?とは思えない。
いや、これまでのことを考える限り、創造神限定では無いと思われる。
ドラン様で考えるならば、能力はもっと獲得できるはずだ。
例えば『畜産動物治癒』は、畜産動物に限定しているが、治癒という能力に変わりはない。治癒の対象を広げることは可能なはず。
更に、俺の予想では、新たな能力の獲得によって、直接やれることの幅が広がる、これが下級神から中級神へと昇格するシステムだと予想している。
とりあえずこの予想は、ドラン様には話さないでおこうと思っているが。
「あと確認したいことが、ひとつあります。下級神様は土地に縛られると聞いたことがあるんですが、どうなんでしょうか?」
ドラン様は怪訝そうな顔をした。
「表現が良くないな、それでは誤解を生むね。決して土地に縛られるようなことはないよ。ただ先ほど話した通り、能力がある分その能力に見合う土地以外に行っても、出来ることがないんだよ。ほんとにただ見てるだけになる。例えば、隣街に養蜂の村のカナンがあるが、カナンは養蜂に特化した村だ。私に出来ることはカナンの街にはなんにも無いんだよ。下手すりゃ蜂に刺されて痛い思いをするだけだよ。畜産に関する能力を持っているからコロンにいるんだ。コロンは畜産の街だからね」
俺は、ギルの肩を抱いた。
ギルが、万遍の笑顔でこちらを向いた。
「よかった・・・」
ギルが小さく、呟いた。
「ちなみにギル君は、神獣だから、中級神以上だぞ」
「えっそうなの?」
思わずギルが反応した。
「ああ、私みたいに評価されて神になった訳では無いからね。ドラゴンは創造神様から生まれたと言ってもいい存在だから、創造神様が生み出した存在は、最低でも中級神以上だよ」
どうやら、ギルの不安要素は解決したようだ。嬉しそうにしている。
俺たちはドラン様のもとをあとにした。
まだまだ謎の多い神様システムだが、とりあえずは一端を掴めたと言ってもいいだろう。
ひとまず島に戻ってきた。
興奮冷めやらぬギルは、アイリスさんや兄弟達に、ことの顛末を興奮気味に話している。
しかし、これで神様システムの一部がはっきりした。この解明は大きな一歩になる。
こうなると、更なる能力の開発に力を入れる必要がある。
次は何にするか・・・
何て考えていたら、万歳三唱から、胴上げが始まっていた。
俺も混じろうかと、一歩踏み出したところで、ギルが地面に落ちた。
大人の皆さん、小さい子供にそれは辞めてあげてよー。
すると遠くから声が聞こえた。
「おーい、おーい!守ー!」
どうやらアグネスが出迎えに来てくれたようだ。
「わざわざお出迎えか?」
「そうよ、神様が迎えに行ってくれって言うからさー。エルちゃんがいるから大丈夫だって言ったんだけど。それでも行ってくれっていうからさ」
「そうか、悪かったな」
そう答えると、横からノンが横やりを入れる。
「本当は主に早く会いたかったんじゃないの?」
冷やかして遊んでいるようだ。
「ふん、なによノン。そんなこと無いんだからね!」
アグネスが赤くなっている。
「そうか、アグネスは俺のことが好きなのかー」
「ふんだ!守のバーカ、バーカ!」
「冗談だよ、分かった、分かった」
コロンの街へと向かった。
空の旅はとても楽しかったし、心地良かった。
なんとも気持ちのいい時間を過ごした。
コロンの街に着いた。
牧草地は広く、雄大な景色に心が躍る。
そして同時に、牧歌的な雰囲気に心が和む。
草の匂いが鼻を衝くが、決して嫌な臭いではない。
牛の群れが草をむさぼり、その近くを犬が見守っている。
ヤギの群れも同様に草をむさぼっていた。そして、それを警護するように天使達が上空から見守っていた。
天使達に手を振ると、天使達が手を振り替えしてくれた。
「アグネス、あれが、天使達の仕事なのか?」
「あれも仕事の一つね、でも一番の仕事は街の警護なんだけどね」
警護ということは、それなりに天使達も強いってことなのかな?
「それにしても、聞いてはいたけど、牧歌的でいいな」
アグネスが胸を張って、自慢げにしてる。
「そりゃそうよ、前にも言ったかもしれないけど。コロンの街は畜産で有名な街なのよ。特に牛乳は有名でね、中には収納持ちの商人に、買いに来させる王族までいるぐらいなんだから」
王族?いるんだ。
「本当は、もっと販売を拡げたいんだけど、牛乳は足が速いからね」
消費期限が速いってことね、分かるよ。
俺も日本では牛乳を何度も駄目に仕掛けたからな。
その度に牛乳入りの料理に取り掛かったものだ。
「どれぐらい持つんだ?」
「そうね、保存状態にもよるけど、日光に当てなければ、だいたい十五日ぐらいかな?」
思いのほか長いな、というより、日本の衛生管理が厳しいってことなのかもしれない。
「なぁ、容器はどんな物なんだ」
「容器?瓶に詰めてるわよ?」
「それは、真空にしてるのか?」
首を傾げている。
「要は、腐食は空気に触れることで発生するから、出来る限り空気の入らないように工夫することで、消費できる期限が伸びたりするものなんだよ」
「それはどういうことなの?」
「簡単に言えば、容器に蓋をせずに放置するとしたら、空気が牛乳によく触れてしまうだろ?」
「うん」
「そうすると牛乳は腐りやすくなるんだ」
「そうなんだ」
「例えば、鉄は錆びるだろう?あれは、鉄が空気にふれることによって腐食する。鉄にとっての腐食が錆びるということなんだよ」
「なるほどね」
アグネスは深く頷いている。
「だから、牛乳の消費期限を延ばしたければ、瓶に蓋をする際に、少しでも空気を含まない工夫をすれば、期限が伸びると考えられる。そうすれば、ちょっとでも長く牛乳を食することができるんじゃないかな?ってことだよ」
「どんな工夫ができるかしら」
「いくつかあるけど、それはまず自分達で考えてみてくれ。何でも聞いてしまったら面白くないだろ?」
「えー、教えてよ。ケチー!」
むくれた顔でこちらを見ている。
「お前なぁ、この街の神様は畜産の神様じゃなかったのか?神様にも面子ってもんがあるだろうが、ここまでは良かれと思って俺は話しているだけであって、神様の領域に勝手に踏み込むのもどうかと思うんだがね」
しまったという顔でアグネスがこちらを見ている。
「あっ、そうでした。すいません・・・」
下を向いて反省している様子。
「お前また調子に乗ってんのか?」
ノンが凄みながら割り込んできた。
「そんなことはありません、ごめんなさい」
へこへこしているアグネス。
その様子を、他の皆が鼻で笑っていた。
やれやれこの子は、少しでも街の為にと考えてのことなんだろうけど、常々考えが浅いんだよな。
そういうところ嫌いじゃないけどさ。
「じゃあ念の為、あと一つだけ教えておく、さっき日光に当たらないようにって、話をしてたけど、常温で保存しているのか?」
アグネスは背筋を伸ばして緊張気味に話しだした。
「だいたいそうであります。日差しが良くないことは分かってますので」
おいおい、いきなり敬語になってるよ、分かりやす過ぎるだろ。
駄目天使全開だな、まぁ可愛らしいってことにしておきましょうか。
「冷やして保存した方がいいぞ、ただ凍らせちゃまずいけどな」
「凍らせちゃ不味いでありますか?」
軍隊かよ・・・ありますか?って、もはやアホだな。
敬礼でもしそうな雰囲気だ。
「牛乳は凍らせると、解凍した後に分離しちゃうからな」
「そうでありますか、理解いたしました」
本当に俺に向かって敬礼しているアグネス、これってもしかして馬鹿にしている?
いやあの子の最大級の尊敬の表現がこれなんだろう。
まさに残念天使。
しかし、地球でのごく当たり前の知識で、誰でも分かっていることを、話してみただけなんだけど、ここまで文化レベルが低いってことなのか?
そうとも考えづらいな、ただ単にアグネスの知識レベルが・・・ってこともある。
ただ純粋に、冷やして保存する技術が無い、という可能性の方が高そうだけど。
神様ならこれぐらい知っていて当然と思うが、技術が無いってことかな?
だからあえて、知らしめていないとか?
まぁ、いずれにしても俺が首を突っ込むのは憚られるな。
「とにかく一度、神様と相談してみてくれ」
「了解いたしました!」
まだ敬礼してるよ・・・
天使って皆アホなのか?
アズネスだけであることを祈ろう。
アグネスの手配で、早速、神様と会うことになった。
神様の見た目の印象としては、カールおじさん。
麦わら帽子に、口髭、農作業を行う服装に、朗らかな顔つき。
そしてふくよかな体形。
「始めまして。島野守と申します、転移者です。よろしくお願い致します」
頭を下げて挨拶した。
「おー、君がそうか、アグネス君から話は聞いてるよ。私はドラン、ここコロンの街で下級神をやっている。よろしく頼むよ、ハッハッハッ!しかし、面白いパーティーだね。転移者、フェンリル、九尾の狐、そしてうちのペガサスに、ドラゴンとは、ハッハッハッ!」
笑う度に、ドラン様のお腹が揺れている。
何とも豪快な笑い声だ、辺り一面に木霊しているよ。
俺はおもむろに『収納』からお土産を取り出した。
「こちらお近づきの標です、よかったらどうぞ」
野菜の詰め合わせと、ワインを三本差し出した。
「おー、ありがとう、遠慮なくいただくよ。おっ、これはアグネスの野菜かな?嬉しねー、これ美味しいよねー。ん?なんと!ワインじゃないか。ありがたいねー。いやー。ありがとう。ハッハッハッ!」
かなり喜んでいただけている様子。
出だしは順調っと。
本当はここでこっそり『鑑定』をしてみたいところだが、止めておいた。
というのも、前にアグネスに『鑑定』してみていいか?
と聞いたことがあったが、あの子にしては珍しく、本気で止めて欲しいと言われたことがあった。
何でも、勝手に『鑑定』をすることが、罪になる国があるとのことだった。
恐らくこれは俺の想像だが、個人の能力や体力や魔力は、秘匿すべき個人情報であり。『鑑定』の能力を持った者が、好き勝手にそれを除き見ることは、個人の尊厳を脅かす可能性があり、かつ許されざる行いであると、いうことではないかと思う。
それはそうだと思う、個人情報を覗き見ることは、日本でも犯罪だとの認識は間違っていないと思う。
俺としては、そういったことは遵守したいと思う。
「しかし、上から拝見させて頂きましたけど、大きな牧草地帯ですね。驚きましたよ」
「おー、そうか、そうか、まぁこう見えても私は、畜産の神だからね。ハッハッハッ!」
こう見えてって、まんまですけど・・・
「畜産の神様なんですね」
「そうだよ、畜産の実績が認められて、神様になったんだ、今は下級神だよ」
実績が認められて・・・
「そうなんですか?実績が認められてとうことは、その前は何を?」
馬の背を撫でながら、ドラン様が答えた。
「実は、私は元々人間でね、ただ、ちょっと特殊だったんだ」
「特殊とは?」
「私には、一部の動物とコミュニケーションがとれる、力があってね。ハッハッハッ!」
特殊能力持ちだったってことか。
「そうなんですね」
「元々、この町は畜産の街では無かったんだよ、私のこの能力で畜産を始めて、今の畜産の街コロンになったんだ。ハッハッハッ!それが評価されて、神になったんだよ」
前に創造神様が、実績が云々って言っていたような気がする。
「実績が評価されると、神様になれるんですか?」
「ああ、そこからか・・・この世界では、私の知る限り、神になるには、創造神様が造った神と、私の様に実績が評価されて神になる、この二通りだね。それ以外は聞いたことはないね。ハッハッハッ!」
良く笑う神様だ・・・嫌いじゃないけど、少々鬱陶しい。
「このコロンの街には、ドラン様が神様になる前には、神様はいらっしゃらなかったんですか?」
下級神というのは何なのか?俺がゴンから聞いた話では、氏神様のイメージなんだが。
「ああ、いたよ。私が神になった時に前の神様は中級神になって、街を出て行ったよ。ハッハッハッ!」
ゴンの知っている、中級神とは若干事情が違うようだな。こちらがオーソドックスなのかな?
「島野君はこれから街を見て周るんだってね」
「はい、その予定です」
じゃれてくる牛をあやしながら、ドラン様は言った。
「そのあとでいいから、もう一度私のところに寄ってくれないかな?ちょっと話したいことがあってね」
どうやら何かが含まれている様子。
「そうですか、分かりました。では後ほど」
ドラン様に手を振られながら、牧草地帯を後にした。
頭に鉢巻を巻き、気合満々のアグネスが、フンス!
と言わんぐらいの気合を漲らせていた。
簡単な屋台と言っていいのか、雨よけも無いテーブルに、ところ狭しと、野菜が積み上げてられていた。
すると、三白眼のアグネスが、力強く、机を叩いた。
ドンドン!ドンドン!
「さぁさぁ皆さんお立合い、私くし天使のアグネスにてございます!そして、ここにありますのが、今話題沸騰のアグネスの野菜にてございます。さぁさぁ見てっておくんなまし、よぉ、そこの兄ちゃんどうだい、どうだい、アグネスの野菜だよ。数量限定だよ!この野菜は本日限りの販売だよ。見てっておくんなまし!」
おいおい、叩き売りかよ・・・てか、なましって何だよ?
「さぁどうだい、さぁどうだい!」
道行く人々に声を掛けていくアグネス。
しかし、これが凄かった。
待ってましたと言わんばかりに集まる人々、まさに飛ぶようにアグネスの野菜は売れていった。
アグネスが意気揚々と野菜を販売していた。
正直びっくりした。
「ふう、今日も売り切ったわ、どうよ、守!」
勝ち誇った表情のアグネス。
「お疲れさん、毎回こんな感じなのか?」
「そうよ、どうよ!」
胸を叩いてふんぞり返っている。
「いや、これって、アグネスが凄いんじゃなくて、島の野菜が凄いんじゃないの?」
あらら、ギルが真っ当なこと言っちゃったよ。
「なによ、私だって頑張ってるんだからね」
「まぁ、まぁ」
エルが宥めている。
「まぁ、でもよく分かったよ、ありがとなアグネス」
お礼はちゃんとしないとね。
「ふん!もっと感謝してくれてもいいんだけどね!」
「お前、調子に乗ると、また締めるぞ!」
ノンが脅した。
「ウッ!」
急に態度が変わったアグネス。
可哀想にとエルが慰めていた。
「まぁまぁまぁ」
何はともあれ、島の野菜の価値は充分に分かった。となると、旅の資金の現地調達は、問題無さそうだ。
ただあまりに爆発的な売れ行きには、なにか理由があるようにも感じる。
この街の野菜は美味しくないとか?
とりあえず、今は気に掛けてもしょうがないのだが。
その後、街の散策に出かけた。
街の中心地では、食べ物中心の屋台が立ち並んでいて、ちょいちょい買い食いしながら、楽しく過ごした。
やはり俺の予想は正しかった。
屋台の料理は、肉系が中心ではあったが、いつくか野菜の食べ物もあった。
食べてみたのだが、美味しいとはお世辞にも言えなかった。
あと、何よりも野菜が小さくて色が薄い。
野菜の栄養が感じられなかった。
アグネスが、島の野菜をたらふく食べたがるのも、理解できるというもの。
畑の土壌が違うのかな?などと考えてはみたが、畑を見ない限り分からない。
まぁ人の畑のことを気に掛けても仕方がないのだが。
街の中心に差し掛かってくるにつれて、家の形も、木造から、石作りに変わっていく様も見ることができた。
街の中心ともなると、人の数が増え、賑わいを感じることができた。
見た感じとして、人間が四割、獣人が四割、残りニ割がそれ以外、といったところだろうか。
獣人は特にミノタウロスが多い様に感じた。おそらく牧場関係の従事者ではないかと思う。
とても平和でのどかな街だと思う。
これもあの牧歌的な神様の影響なのかもしれない。
そして、最後に教会に立ち寄った。
小さな教会だった、見たところ。老朽化が激しく雨漏りをしていても、おかしくないと思えるほどの痛みようだった。
中に入ると、思った通りの、狭くて小さい教会だった。
祭壇があり、その上には石像が置かれているが、劣化が激しいのか、石像の形が、はっきりとしていない。
何の神様なんだろうか?
周りを見渡してみたが、誰もいない。
「あのー、すいません!どなたかいますか?」
ゴンが声を掛けた。
すると、少し経ってから、
「はぁーい、ごめんなさいね。いま行きますねー」
と声が返ってきた。
俺の腰ぐらいの身長の、老齢のネズミの獣人が現れた。
法衣を纏っており、眼鏡をかけている。おそらくここのシスターなのだろう。
「お待たせしました。それで何か御用ですか?」
「突然伺ってすいません。私は島野守と申します。そして、こちらが、私の家族です」
「はぁ」
と言って、シスターが俺たちを見上げていた。
「私たちは旅の者でして、コロンの街を見学させて頂いております。今回は俺の要望で教会に寄りたいとお願いしまして、こちらに寄らせていただきました」
「私が連れて来たのよ」
アグネスが前に出てきた。
「あら天使様。お元気そうで」
どうやら知り合いのようだ。
「久しぶりね、リズ、元気してた?」
アグネスが話し掛ける。
「ええ、元気だけが取り柄ですから・・・それで・・・その・・・」
俺から話掛けた、
「リズさん、教えて欲しいんですが、こちらの石像はどの神様なのでしょうか?」
俺は石像を指さした。
「ああ、お恥ずかしい限りなんですが、こちらは、元々は創造神様の石像だったんです。今では劣化が激しくて・・・」
「島の石像の方が相当」
ゴンがギルの脇腹をつついたと同時に、俺が割って入った。
「そうなんですね。なるほど、教会では創造神様を崇拝するものなんでしょうか?」
「そうですね、教会では創造神様を祭ってるところがほとんどですが、中には上級神様を祭っている教会もありますよ」
なかなか顕現化しない神様を崇拝しているってことなのかな?
「ここでは創造神教ってことなんでしょうか?」
リズさんが何のこと?という具合に首を捻っている。
「創造神教?って何ですか?」
何ですかって?ん?
待てよ、そうか、宗教という概念が日本とは違うということか。
神様を崇拝することを、宗教という枠に捕らわれていないということなんだろう。
神様が顕現している世界なんだから、日本と違って当然ということか。
すると、リズさんの後ろから、ぞろぞろと子供たちが現れた。
「シスターどうしたの?」
「この人たち誰?」
「シスターお腹減った」
子供達が、次々に話しだす。
「あっ、ちょっと、出てきちゃ駄目でしょ。奥に行ってなさい」
リズさんが困惑していた。
「あれー!元気な子供がいっぱいだなー、お前達、お腹減ってるのかな?」
との問いかけに返事が殺到した。
「減ってるー!」
「ペコペコー!」
「何か食べたいー!」
俺はノンに合図をした。
「分かった、分かった!そこまで言うなら食べさせてあげるから。皆ついて来て」
と言って、ノンは教会の中庭に子供達を誘導した。
「お前達、飯が食いたいかー!」
「おおー!」
ギルが煽っている。
「上手い飯が、食いたいかー!」
「おおー!」
拳を上に突き出している子もいる。
「じゃあちょっと待っててね」
そういうと、ノンが俺に合図を送ってきた。
その様子をリズさんが尚も困惑しながら見ていた。
俺は『収納』からテーブルとイスを取り出した。
実はこんなこともあろうかと、昨日シチューを仕込んでおいたのだ。
俺達はシチューをとりわけ、パンをテーブルの中心に大量に置き。サラダも取り出した。
「さぁ皆、食べよう!」
「手を合わせてください」
ゴンが仕切っている。
「いただきます」
「「「「いただきます」」」」
大合唱であった。
子供達が我先にと食べ物に手を付けている。
リズさんはまだ困惑している様子。
「そんな、いただいても・・・」
「ご一緒にリズさんもどうですか?」
俺はリズさんに食事を勧めた。
「よろしいので」
「皆、遠慮なく食えよ!お代わりもあるぞ」
「「「やったー」」」
子供達が嬉しそうにしている。
すると、獣人の男の子三人組が現れた。
「お!旨そうなもん食ってんじゃんよ、俺にも食わせてくれよ」
「こら!テリーお行儀が悪い、すいません島野さん」
リズさんがテリーと呼ばれた子に近づいて、背中を叩いていた。
「痛てーな、シスター止めてくれよ!」
テリーが逃げ回っている。
見たところテリー少年はこの中では最年長なのか、顔つきは子供ではなく、少年の顔つきだった。
恐らく狼の獣人だと思う。
十二歳前後だろうか、一緒に来た二人を引き連れている印象があった。
他の二人はというと、猫耳があるところからこちらも獣人のようだ。
「テリー、あんたどこふらついてたのよ」
「どこだっていいだろってか、アグネスいるじゃん」
「なによ、いたっていいでしょ」
アグネスが返す。
「なぁ、とにかく食事にしないか?」
俺は助け舟を出してやった。
「お、話が分かる兄ちゃんだな。へへ」
俺は自分の席をテリー少年に譲ってあげた。
二人の獣人の少年にも手招きをして席に座らせた。
シチューを取り分けてやり、三人に差し出してやると、勢いよくがっつきだした。
良い食いっぷりです。
するとテリー少年が話し掛けて来た。
「で、兄ちゃんは何者?」
こらこらスプーンで人のことを指すんじゃない、本当にお行儀の悪い坊主だなぁ。
まぁ精神年齢定年の俺は、こんなことでは、腹が立つことはありませんがね。
「俺かい?俺は島野守だよ、よろしくなテリー」
「へ、そうかよ」
その態度にムッときたのか、ギルが食ってかかった。
「おいお前、僕のパパになんて態度取ってんだよ」
テリー少年はギルを一瞥するや、何だよと言わんばかりに立ち上がろうとした。
それを察知して、ゴンがテリー少年の肩を抑えて立ち上がらせなかった。
「今は食事中でしょ?止めなさい」
さすがにこれをやられると、座るしかないよね。
ナイス!ゴン。
テリー少年は観念した様子で食事を再開した。
「本当に申し訳ありません」
リズさんがまた謝っていた。
「いやいや、元気でいいじゃないですか」
その様子をアグネスはにっこりしながら、眺めていた。
「アグネス、手伝ってくれよ」
おっと、という様子で手伝いだしたアグネス。
「わかったわよ」
皆で食事を楽しんだ。
とても楽しい食事だった。
大人数の食事ってたまにはいいよね。
「それで、リズさんこの子達は・・・」
リズさんが答えた。
「この子達は、いろいろな事情で親と離れ離れになった、可哀想な子達なんです。ある子は親が魔獣に殺され。ある子は口減らしでという具合で、やむにやまれずここに預けられた子達です」
「そうですか、教会の運営状況はどうですか?」
俺はずばり聞いてみた。
「正直ぎりぎりなんとかやっていますよ、幸い援助してくれる方もちらほらいましてね」
リズさんは足元にいた、子供の頭を撫でながら話していた。
子供に良く懐かれている、信頼されているシスターだ。
「良かったらこちらをこの子達の為に使ってください。あと、雨漏りも直したほうがよいかと思います」
袋に入れた、金貨百枚を渡した。
「えっ!こんなに!良いんですか?」
リズさんがビックリしている。
「遠慮なく使ってください」
家族の皆とアグネスが、こちらを見て微笑んでいた。
「あと、もし良かったらなんですけど、教会の中にある石像なんですが、俺が手直しをしてもよろしいでしょうか?手先には自信がありまして」
周りに聞こえないようにリズさんに耳打ちした。
一瞬ためらったリズさんだったが。
「ええ、お願いします」
と快く答えてくれた。
皆が食事を取るなか、俺は一人教会の中へとやって来た。
石像の前に立ち、当たりを見渡して、誰もいないことを確認してから『加工』の能力で創造神様の石像を改修した。
改修した石像にお辞儀をしてから、俺はこの場を立ち去った。
石像は結構な自信作となった。
ドラン様のところにやってきた。
話しがあるということだったが、何だろうか?
「遅くなりました、お待たせしてすいません」
「ハッハッハッ、かまわん、かまわん。こちらこそ、呼び立ててすまなかったね」
ドラン様と一緒に三人の男性が控えていた。
「島野君、紹介させてくれ。こちらがこの町の農業組合の会長のモラン君だ」
一人の男性が、前に出た。
こちらもドラン様と同じく、カールおじさん風の体形と恰好をしていた。
髭は無かったが。
「モランと申します、よろしくお願いいたします」
続いて二人をモランさんから紹介された。
副会長らしく、二人とも獣人で、こちらも農業従事者とすぐわかる服装をしていた。
ドラン様が口を開いた。
「島野君、担当直入にお願いしたい。この町の農業にアドバイスを貰えないだろうか?」
やっぱりそう来たか。
「アドバイスですか?」
「ハッハッハッ、そうだよ。アグネスの野菜は、島野君が作ってるんだろ?その腕を見込んで、お願いできないだろうか?」
やっぱり、筒抜けだったか。
まぁ、今さらどうってこともないけどね。
「構いませんが、ひとまず今日は時間も遅いので、明日まずは一度畑を見せていただけないでしょうか?」
農業組合の三人が胸を撫で降ろしていた。
「そうか、すまないねー。ハッハッハッ」
俺たちはドラン様のもとを後にした。
コロンの街で一泊と考えていたが、手ごろな宿が見当たらなかった為、結局島に転移で戻ることにした。
「あらー、お帰りなさい。結局帰って来られたのですね」
アイリスさんが、出迎えてくれる。
皆口々に「ただいまー」と声を掛けている。
「宿が決まらなかったので、帰ってきちゃいました」
「まぁ、そうでしたの。食事は済んでますか?」
お気遣いありがとうございます。
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」
「皆、とりあえず風呂にして、もうだいぶ遅いけど、サウナはどうする?」
エルが片手を挙げた。
「私くしは、お風呂のみにしておきます。少々疲れましたですの」
「僕も今日はいいや」
ノンが答えた。
「じゃあ今日は風呂のみでいいな?」
「はーい」
と皆が口々に答えた。
俺は、ビールを『収納』から取り出し、一口飲んだ。
あー、旨!
風呂の準備は皆に任せて、何かつまみでもと考えていたところ、正面にアイリスさんが着席した。
「ご相伴に預かろうかと思いまして」
俺は『収納』からビールを出して、アイリスさんに渡した。
ついでに、燻製にしたベーコンも数切れ皿に盛った。
「どうぞ」
「ありがとうございます。それで、どうでしたか?」
アイリスさんが、興味深々といった具合で尋ねてくる。
そりゃあ、そうだろう。一人で留守番だからな。
気になら無い訳がない。まぁそれもあって帰って来たんだけどね。
「いろいろありましたよ、ドラン様という下級神にお会いして。街を散策したり、牧場を見学したりして、あと教会にも行きました」
教会では子供達と食事ができて楽しかったな。
あとこの世界の宗教感が把握できてよかった。
「まぁ、そうでしたか。何か守さんが興味を引くような物はありましたか?」
「たくさんあり過ぎて、困ってしまいましたよ。あっそうだ、アイリスさんにちょっと相談事があるんですが」
「相談事ですか?」
アイリスさんが喜んでいる。
頼られて嬉しいのだろう。
「ええ、実は、ドラン様から三人の農業組合員を紹介されまして、何でも農業に関するアドバイスが欲しい、ということらしいんです。明日畑を見させてもらう予定なんですが、アイリスさんの能力で、コロンの街の畑の様子って分かったりします?」
目を閉じて何やら考え込んでいる?探している?といった具合のアイリスさん。
「ええ、おそらくコロンの街でしたら、距離としては大丈夫かと思いますが、少々お時間を頂けますか?」
「もちろんです、あんまり無理はしないでくださいね」
ビールを飲み切った俺は、風呂に入ることにした。
アイリスさんは、目を閉じて集中していたので、声を掛けるのは、止めておいた。
翌日
約束通り、コロンの街の畑を見せて貰っている。
「収穫した作物を見させて貰えませんか?」
会長のモランさんにお願いすると、副会長の一人が取りに向かってくれた。
収穫物を手渡された。
これは、おそらくジャガイモだろうが、サイズがうちの作物より半分ぐらいしかなかった。
「他にはありますか?」
「こちらもどうぞ」
手渡してくれたのは、キュウリだろうか?こちらもサイズが小さく、更に色も薄く感じる。
「初めてアグネス様が野菜を販売してるところを見て、正直驚きました。何より野菜の大きさや色つや、そして実際に口にしてみたら、味がとても濃かった」
モランさんが興奮気味に話しだした。
「なるほど」
「アグネス様にどこで育てたんだ!どこで仕入れたんだって!何度も何度も聞いても、企業秘密だって、答えてくれなかったんですよ」
「それで」
「まぁ、アグネスの野菜は数量が少ないので、我々の市場や、生活を脅かすほどではありませんから、販売をやめて欲しい、ということではないのです。それに楽しみにしている街人も多いので・・・ただ我々農業従事者としては、いてもたってもいられず。ドラン様に相談したところ、この様な機会を頂けた、ということなんです」
「そういうことだったんですね」
アグネスなりには気遣ってくれてたんだと分かった。
下手に無人島産だって漏らして、注目されないようにしてくれてたみたいだ。
少し見直したよ。
言うなとは言ってないから、言ってくれてもよかったんだけどね。
でもさすがに神様には報告していたってことかな。
「ではさっそく教えて頂きたいことが一つ。普段農家の方々はどのように農作業をしておられるのでしょうか?」
モランさんが前に出てきた。
「それはまず種まき、水やり、雑草を見つけたら抜いて。後は虫が付いたら除去といったところですね、当然収穫もですが・・・」
「他には有りませんか?」
モランさんが、副会長達と話し合っている。
「特には無いかと思います」
「分かりました、では肥料を撒いたり、間引きを行うといったことはされない、ということですね?」
三人は首を傾げている。
「あの、それはなんでしょうか?肥料とは?・・・」
アイリスさんの言う通りのようだ。
「説明します。まず肥料とは土に栄養を与えるものです。豊富な栄養のある土からしか、栄養豊富な作物はできません」
三人の反応を見るといまいち理解できていない様子。
「土に栄養ですか・・・」
「はいそうです。同じ畑でも、土が肥えている土と、そうでない土とでは、作物のできが違います」
副会長の一人が、何か思い当る節があったのか、目を見開いている。
「うん分かる気がします。色の濃い土の方が、成長が良いのは何となく分かっていました」
「例えばこのコロンの街は畜産業が盛んです。牛糞が大量にあると思いますが、その牛糞が肥料になります」
三人が明らかに嫌そうな顔をした。
「それは、衛生的にどうなんでしょうか?」
「衛生的とはどういうお考えですか?」
何か固定観念があるようだ。
「いや、牛とはいっても糞ですよね」
「イメージだけが先行して。大事なことを分かってらっしゃらない、では牛は水を飲み、草を食べます、そして、糞をだす。そのどこに衛生的に悪い部分がありますか?」
三人は、考え込んでいる。
「確かに衛生意識が高いのは良いことですが、大事な面を見失っては本末転倒ですよ。あとアグネスの野菜ですが、肥料は何だと思いますか?当然牛糞を使用しておりますし、もっと言うと、人糞も一部混じっておりますよ」
三人はびっくりして目を見開いている。
「ではこれまでに、アグネスの野菜で健康トラブル等はありましたか?」
副会長の一人が、何かを思い出したようだ。
「あっ!そういえば、前に牧草から脱走した牛が、畑で糞をしてしまったことがありました。言われたように、その土から育った作物は大きくて、色も良かった。ただ・・・衛生的ではないと判断して、捨ててしまいました・・・」
ドラン様はちゃんと気づける機会は、与えていたってところかな。
なるほどね。
「もし疑う様でしたら、一部の小さな畑から試してみてください」
三人は腕を組んで、難しい顔をしていた。
「もう一つ間引きですが、これは元気のない枝や、小さい作物をあえて伐採するということです。そのほうが残った実に栄養が蓄えられて、大きく、色鮮やかになるんです」
「なるほど」
モランさんが答える。
「まぁ、あとは実際に試してみてから、考えてください」
「分かりました、貴重なアドバイスありがとうございました」
ついでに連作障害についても教えておいた。
実は、昨日の間にアイリスさんから、コロンの畑の現状とアドバイスは聞いていたから、これは受け売りでしかないんだけどね。
アイリスさんは畑のプロだから、お見通しということだ。
アイリスさん、あざっす!
ひとまずドラン様からの相談ごとは片付いたので、その報告にと、俺とギルの二人で、ドラン様の所にやってきた。
アドバイスの内容と、そのやり取りについて報告した。
「島野君ありがとう助かったよー、ハッハッハッ。何か私にできることがあったら言って欲しい、出来ることはしてみせよう」
ではお言葉に甘えさせて貰いましょうかね。
「ありがとうございます。ではさっそくですが、神様のことについて教えて貰えませんか?」
「ほう、神についてか、それはどういうことかな?」
ギルの肩に手を置いた。
「まず私にはギルがおります。親である以上知っておきたいのです。その存在や行いについて、例えば私が感じたのは今回の畑の件について、ドラン様は前から、農家の方々にヒントをお与えになっておりましたよね?」
ドラン様が一瞬ビックとして、その後考え込んでいた。
「なんだか君は勘が良いね、恐れ入ったよ。いいだろう、私が話せる範囲で話をしよう。まぁ座りたまえ」
椅子を勧められ、俺とギルは着席した。
「まず、神と言っても様々だから、全てが同じではないことを承知して欲しい。やはり例外という物が存在するのは、どこの世界でも一緒だろう?」
日本でも例外はあったような、なかったような。
まぁとりあえず合わせておこう。
「そうですね、分かります」
「私の場合は前にも話した通り、元は人間で、畜産の実績が評価されて神になった。私がやること、というかやれることは限られている。まずは私は畜産の神だから、畜産に関することは、その能力内において手出しすることは許されている」
「と言いますと?」
「そうだな、島野君、君は転移者だから『鑑定』を持っているだろう?私に使用してみてくれ」
ちょっとビックリした、ドラン様は随分オープンな性格だな。
「いいんですか?」
「ああいいとも、ただし他の神様には本人の了承が無い限り厳禁だぞ。やはりそこはプライベートなところだからな。ハッハッハッ」
「では遠慮なく」
『鑑定』
名前:ドラン
種族:下級神
職業:畜産の神
神力:640
体力:1432
魔力:0
能力:畜産動物思念伝達Lv3 畜産動物治癒Lv2 畜産食物加工Lv2 神気操作Lv3
ドラン様が話し出した。
「いいかい、私の能力として『畜産動物思念伝達』『畜産動物治癒』『畜産食物加工』『神気操作』とある、まず『畜産動物思念伝達』は前に話した通り、一部の動物とコミュニケーションが取れる力だ『畜産動物治癒』とは、畜産に関する動物であれば、どの子でもケガや病気を治癒してあげれる力、ただ畜産に関係の無い動物には及ばない力だ」
ここで一旦間を置いた。
理解できているかと俺とギルを見ている。
「次に『畜産食物加工』は牛乳やチーズやヨーグルト、ハム等、畜産からとれる食物を加工して造れる力のこと、そして最後に『神気操作』とはその名の通り神気を扱う力、ここまでいいかな?」
畜産に関係する能力内であれば行使できるということか。
「ええ、大丈夫です」
「この能力内においては、ある程度直接手出しが可能だが、それ以外においては、直接的な手出しは許されていない」
ドラン様が周りを見て、誰もいないことを確認した。
「従って今回のように農業に関して、直接的なアドバイスは許されていない、だが私も畜産の神として、牛糞が肥料になることぐらい知っている、でも・・・ということだよ」
概ね予想通りだな。
「牛に畑で糞をさせたりと、気づく切っ掛けを与えることは何とか許してもらえる、又は他の誰かに代わりを務めてもらう、ということですね」
ドラン様が頭を掻いている。
「まぁ今回の島野君の件は、ギリギリのところだけど、ハッハッハッ」
「分かりました。能力で直接手をだす時には、この神気が必要ということなのでしょうか?」
ドラン様が右手を差し出し神気を見せた。
「そう、この神気によって能力を使っている。ただね・・・最近ではちょっと都合が変わってきててね、どうにも神気が集まりづらいんだ。だから『畜産食物加工』は、今は極力控えるようにしている」
この世界の神気が薄くなってきていることと関係してそうだな。
「集まりづらいとは?」
「『鑑定』で見たとおり、私の今の神力は640、最大で877まで集めることができる」
集めるとは?
「どうやって集めるのですか?」
「うーん、自然と集まってくる感じかな」
それが集まりづらくなってきているということか。
「あと、例えばなんですけど、その能力を増やしたりすることは可能なのでしょうか?」
ドラン様が驚いている、そして急に頭を抱え込んだ。
と思ったら万遍の笑顔になった。
「なんて素晴らしい発想なんだ。島野君!君はすごいね、考えたことも無かったよ。ハッハッハッ」
「そうなんですね」
能力開発は創造神限定のことなのか?とは思えない。
いや、これまでのことを考える限り、創造神限定では無いと思われる。
ドラン様で考えるならば、能力はもっと獲得できるはずだ。
例えば『畜産動物治癒』は、畜産動物に限定しているが、治癒という能力に変わりはない。治癒の対象を広げることは可能なはず。
更に、俺の予想では、新たな能力の獲得によって、直接やれることの幅が広がる、これが下級神から中級神へと昇格するシステムだと予想している。
とりあえずこの予想は、ドラン様には話さないでおこうと思っているが。
「あと確認したいことが、ひとつあります。下級神様は土地に縛られると聞いたことがあるんですが、どうなんでしょうか?」
ドラン様は怪訝そうな顔をした。
「表現が良くないな、それでは誤解を生むね。決して土地に縛られるようなことはないよ。ただ先ほど話した通り、能力がある分その能力に見合う土地以外に行っても、出来ることがないんだよ。ほんとにただ見てるだけになる。例えば、隣街に養蜂の村のカナンがあるが、カナンは養蜂に特化した村だ。私に出来ることはカナンの街にはなんにも無いんだよ。下手すりゃ蜂に刺されて痛い思いをするだけだよ。畜産に関する能力を持っているからコロンにいるんだ。コロンは畜産の街だからね」
俺は、ギルの肩を抱いた。
ギルが、万遍の笑顔でこちらを向いた。
「よかった・・・」
ギルが小さく、呟いた。
「ちなみにギル君は、神獣だから、中級神以上だぞ」
「えっそうなの?」
思わずギルが反応した。
「ああ、私みたいに評価されて神になった訳では無いからね。ドラゴンは創造神様から生まれたと言ってもいい存在だから、創造神様が生み出した存在は、最低でも中級神以上だよ」
どうやら、ギルの不安要素は解決したようだ。嬉しそうにしている。
俺たちはドラン様のもとをあとにした。
まだまだ謎の多い神様システムだが、とりあえずは一端を掴めたと言ってもいいだろう。
ひとまず島に戻ってきた。
興奮冷めやらぬギルは、アイリスさんや兄弟達に、ことの顛末を興奮気味に話している。
しかし、これで神様システムの一部がはっきりした。この解明は大きな一歩になる。
こうなると、更なる能力の開発に力を入れる必要がある。
次は何にするか・・・
何て考えていたら、万歳三唱から、胴上げが始まっていた。
俺も混じろうかと、一歩踏み出したところで、ギルが地面に落ちた。
大人の皆さん、小さい子供にそれは辞めてあげてよー。
12
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる