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31 ココロ探し
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「探し物を手伝っていただけないでしょうか?」
リーゼロッテさんは、胸の前で手を組みこちらをじっと見つめている。たぶんクエストかな?特に何と言った予定もないので了承すれば、パッとリーゼロッテさんの顔が綻ぶ。
「ありがとうございます!
私が落としたのは『ココロ』どうか、お願いします」
ークエスト《錆色の追憶》を開始しますー
リーゼロッテさんの言葉を合図に、ピコンとアナウンスが流れる。しかし、ココロ……ココロかぁ~!いったい何だそれは!
「……ココロですか?」
「ええ。大事な大事なあの子のココロ」
うーん、ますますわからん。首を傾げながらうんうん唸っていると、リーゼロッテさんは深く頭を下げた。
「落としたのはこの森の中で間違いないのです。私一人ではとてもじゃないけど見つけられなくて。どうかお願いします」
「顔をあげてください。もちろん、微力ながらお手伝いします!ところで、その落し物は質量を持った物体であってます??」
「ええ。私たちの輝く希望」
「なるほど……」
「それでは、私はあちらを探してきます」
こちらに背を向けてふわりと去っていったリーゼロッテさんを見つめる。うん、余計わからなくなってきたぞ。
「二人とも、ココロに心当たりは?」
「妾は好きじゃぞ!飲むとぐっすり眠れるのじゃ!」
「それはココアかな。可愛い、100点」
「落とそうとして落とせるものか?いや、そもそも形あるのか?」
「そうなんだよね。でも、リーゼロッテさんは質量を持った物体って言ってたからそうなんじゃない?」
なんだか霧が深くなってきた気がする。とりあえず、時間を決めてバラバラに探してみよう、とリーゼロッテさんが去っていった方向以外を3分割してそれぞれ担当することにした。
「ココロ…ココロ…」
見落としなどないように、地面を凝視しながら森を進む。範囲はこの広大な森全部。これでは、砂漠の中から落とした鍵を拾ってこいって言われているもんだ。
それにしても、ココロかぁ。心といえばなんだろう。心臓?え、心臓探すの?見つけたとして、拾い上げて渡すのにはちょっと抵抗あるかなー!ドクドク動いていたりしたらどうしよう。いや、冷たくなってでも嫌だけどさ。 一旦、内臓的なココロは考えないでおこう。
ゴンちゃんやかぐやが見つけた様子もない。もし見つけたら、ワタシのアイテムボックスに届くはずだ。
「ココロ…心…心臓…ハート?」
まだ、ハートのアクセサリーとかなら可能性はあるかも。輝くってとこに合致してなくもない。
リーゼロッテさんは、切羽詰まったような顔をしていた。余程大事なものなんだと思う。できれば見つけてあげたい。
「それにしても、霧がさっきよりも深くなっている気が……」
辺りはだいぶ白んでいる。少し先はもう見えない。足元も悪く、さっきから何度も蹴躓いた。こうなったら……
「【浮遊】あいたっ!」
タンッと地面を蹴るも、そのまま枝に頭をぶつける。うぅ、よく見えなかった。実際にダメージはないのだけど、つい口から声が出てしまう。そろそろと慎重に浮上していき、ついに霧の上まで出た。ぐるりと見渡しても、森一面が霧に覆われている。うーん、やっぱり上から探すのも無理か。降りようとした瞬間、後ろにぐいっと引っ張られる。あれ、どこかで似たようなことが……。バッと振り返ると、カラスが羽衣をぐいぐいと引っ張っていた。
「わっ!ちょっと、ちぎれちゃう!やめてやめて!」
声を出しても知らんぷり。カラスは無心に私から羽衣を奪おうとしている。手をパタパタと動かして威嚇してもダメ。困ったな、どうしよう。
「カァーッ!」
カラスが一瞬羽衣を離し、鳴いた瞬間わらわらと森中からカラスが現れる。そして、そのカラスたちは真っ直ぐに私の方に向かってきた。慌てて体勢を立て直そうにも、最初のカラスは離してくれない。
「んぎゃぁぁあああっ!!」
次の瞬間、景色が黒一色に染まる。飛び出てきたカラスが我先にと私の羽衣を咥え始めたのだ。私は、手を顔の前で交差して身を守るので精一杯。なんで!なんで私こんなに狙われてるの!?縄張りにでも踏み入れてしまったんなら謝るから!許して!
バッサバッサと羽の擦れる音は聞こえど、攻撃される気配はない。恐る恐る瞼を上げれば、私はどこかに運ばれていた。いや、正確に言うならば、カラスが運搬している羽衣のおまけとしてぶら下がっていた。
どうせいつか離してもらえるだろうから、その時逃げよう。私は半ば諦めの表情で空中散歩(この場合、私が散歩される側だ)を楽しんだ。
「カァーッ!」
1羽に倣うようにして、カァーの鳴き声が伝染する。何事かと進行方向を向けば、岩肌にぽっかりあいた穴が目前に迫っていた。先導していたカラスたちがするするとその中に吸い込まれていく。もしかして、私食料要員……?
「待って待って!何の手土産も持ってきてないので今日のところは帰らせてください!お願い!」
ジタバタと暴れてみてもカラスに思いは通じない。
「あああああああああっ!」
抵抗虚しく、私は暗闇に吸い込まれていった。
リーゼロッテさんは、胸の前で手を組みこちらをじっと見つめている。たぶんクエストかな?特に何と言った予定もないので了承すれば、パッとリーゼロッテさんの顔が綻ぶ。
「ありがとうございます!
私が落としたのは『ココロ』どうか、お願いします」
ークエスト《錆色の追憶》を開始しますー
リーゼロッテさんの言葉を合図に、ピコンとアナウンスが流れる。しかし、ココロ……ココロかぁ~!いったい何だそれは!
「……ココロですか?」
「ええ。大事な大事なあの子のココロ」
うーん、ますますわからん。首を傾げながらうんうん唸っていると、リーゼロッテさんは深く頭を下げた。
「落としたのはこの森の中で間違いないのです。私一人ではとてもじゃないけど見つけられなくて。どうかお願いします」
「顔をあげてください。もちろん、微力ながらお手伝いします!ところで、その落し物は質量を持った物体であってます??」
「ええ。私たちの輝く希望」
「なるほど……」
「それでは、私はあちらを探してきます」
こちらに背を向けてふわりと去っていったリーゼロッテさんを見つめる。うん、余計わからなくなってきたぞ。
「二人とも、ココロに心当たりは?」
「妾は好きじゃぞ!飲むとぐっすり眠れるのじゃ!」
「それはココアかな。可愛い、100点」
「落とそうとして落とせるものか?いや、そもそも形あるのか?」
「そうなんだよね。でも、リーゼロッテさんは質量を持った物体って言ってたからそうなんじゃない?」
なんだか霧が深くなってきた気がする。とりあえず、時間を決めてバラバラに探してみよう、とリーゼロッテさんが去っていった方向以外を3分割してそれぞれ担当することにした。
「ココロ…ココロ…」
見落としなどないように、地面を凝視しながら森を進む。範囲はこの広大な森全部。これでは、砂漠の中から落とした鍵を拾ってこいって言われているもんだ。
それにしても、ココロかぁ。心といえばなんだろう。心臓?え、心臓探すの?見つけたとして、拾い上げて渡すのにはちょっと抵抗あるかなー!ドクドク動いていたりしたらどうしよう。いや、冷たくなってでも嫌だけどさ。 一旦、内臓的なココロは考えないでおこう。
ゴンちゃんやかぐやが見つけた様子もない。もし見つけたら、ワタシのアイテムボックスに届くはずだ。
「ココロ…心…心臓…ハート?」
まだ、ハートのアクセサリーとかなら可能性はあるかも。輝くってとこに合致してなくもない。
リーゼロッテさんは、切羽詰まったような顔をしていた。余程大事なものなんだと思う。できれば見つけてあげたい。
「それにしても、霧がさっきよりも深くなっている気が……」
辺りはだいぶ白んでいる。少し先はもう見えない。足元も悪く、さっきから何度も蹴躓いた。こうなったら……
「【浮遊】あいたっ!」
タンッと地面を蹴るも、そのまま枝に頭をぶつける。うぅ、よく見えなかった。実際にダメージはないのだけど、つい口から声が出てしまう。そろそろと慎重に浮上していき、ついに霧の上まで出た。ぐるりと見渡しても、森一面が霧に覆われている。うーん、やっぱり上から探すのも無理か。降りようとした瞬間、後ろにぐいっと引っ張られる。あれ、どこかで似たようなことが……。バッと振り返ると、カラスが羽衣をぐいぐいと引っ張っていた。
「わっ!ちょっと、ちぎれちゃう!やめてやめて!」
声を出しても知らんぷり。カラスは無心に私から羽衣を奪おうとしている。手をパタパタと動かして威嚇してもダメ。困ったな、どうしよう。
「カァーッ!」
カラスが一瞬羽衣を離し、鳴いた瞬間わらわらと森中からカラスが現れる。そして、そのカラスたちは真っ直ぐに私の方に向かってきた。慌てて体勢を立て直そうにも、最初のカラスは離してくれない。
「んぎゃぁぁあああっ!!」
次の瞬間、景色が黒一色に染まる。飛び出てきたカラスが我先にと私の羽衣を咥え始めたのだ。私は、手を顔の前で交差して身を守るので精一杯。なんで!なんで私こんなに狙われてるの!?縄張りにでも踏み入れてしまったんなら謝るから!許して!
バッサバッサと羽の擦れる音は聞こえど、攻撃される気配はない。恐る恐る瞼を上げれば、私はどこかに運ばれていた。いや、正確に言うならば、カラスが運搬している羽衣のおまけとしてぶら下がっていた。
どうせいつか離してもらえるだろうから、その時逃げよう。私は半ば諦めの表情で空中散歩(この場合、私が散歩される側だ)を楽しんだ。
「カァーッ!」
1羽に倣うようにして、カァーの鳴き声が伝染する。何事かと進行方向を向けば、岩肌にぽっかりあいた穴が目前に迫っていた。先導していたカラスたちがするするとその中に吸い込まれていく。もしかして、私食料要員……?
「待って待って!何の手土産も持ってきてないので今日のところは帰らせてください!お願い!」
ジタバタと暴れてみてもカラスに思いは通じない。
「あああああああああっ!」
抵抗虚しく、私は暗闇に吸い込まれていった。
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