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20 どうぞ、お望みの品です
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レイちゃんに買って貰った焼きそばでぱぱっとスタミナを回復する。
かぐやもゴンちゃんと同様、食べる必要は無いけれど食べても問題ないそうで、初めて食べるご飯に感動していた。
ゴンちゃんが3パック、かぐやが2パックずつ焼きそばを食べたもんだから、アイテムボックス内の食料が心もとなくなってきた。
2人ともまだ入るらしい。
早く【料理】スキル上げて自分で作れるようにならないと、毎回買ってたら破産だ。
それはさておき、これからどうしよう。
コランさんに竹を届けるのは決定事項として、その間かぐやをどうするかが問題なんだよね。
ただでさえ活気ある街なのに、今は第二陣でより賑わっているところにかぐやを連れていくのはなぁ。
まだ人間に抵抗があるだろうし、宝霊とバレて誘拐なんてされたら今度こそ心を開いてくれなくなるだろう。
ソースで汚れたかぐやの口元をハンカチで拭いながら、悶々と考える。
着物にソースついてない?大丈夫?
不安になったので、【クリーン】を新しく取りました。レイちゃんが最初に私にかけてくれたあれです。
ついでにゴンちゃんにも【クリーン】。
うん、もふもふ感が上がったね。
『主はさっきから何を悩んでいるんだ?』
「コランさんに竹を届けようと思うんだけど、その間かぐやをどうしようかなって。
流石に人混みが多いところに連れていくのは不安だから。」
満腹になったせいか、私の膝の上で船を漕いでいるかぐやの頭を撫でながら答える。
『それなら、主が自分の世界に帰る時に私を送る空間に送ればいいのではないか?』
「そう言えば、ログアウトの時以外でも送れるんだっけ。
でもそれで寂しい思いをさせたら可愛そうだし…。」
『あの空間にいる間は睡眠状態に入るのか、いる間の体感時間は一瞬だ。』
「そうなの?」
『あぁ。いつも意識が覚醒すると同時に目の前に主がいるからな。
それと、人間の中で宝霊の知名度は低いぞ。』
「え!?
ゴンちゃん私の心の中が読めるの!?」
ゴンちゃんにかぐやが宝霊だとバレることを危惧してるなんて言ってないよ!
『全部顔に出ていた。』
「さいですか…。」
同じようなこと周りによく言われる気がする。おかしいなぁ。私のポーカーフェイスは完璧なはずなのに。
『歴史書に''精霊狩り''の記述はあってもそれが''宝霊狩り''のためだという事実は書かれてないはずだ。宝霊を知っているとしたらよっぽどマニアな精霊の研究者ぐらいだろうな。』
「そんなに知名度低いんだ。」
『精霊一丸となって存在自体を隠そうとした特別な個体だからな。
今の時代、精霊の数が減ったと言ってもとても珍しいと言うほどではない。こそこそする方がかえって目立つだろう。』
ゴンちゃんは物知りだね。
その知識量に何度も助けられたよ。
「なるほど。教えてくれてありがとう。
いつかかぐやにもあの海を見せてあげたいなあ。」
『そうだな。』
会話がひと段落したので、おやすみ、と一言声かけて、寝てしまったかぐやを別空間に送る。それと一緒にゴンちゃんにもそっちに移ってもらう。
ゴンちゃんは渋っていたけれど、コランさんに竹を届けたら私もログアウトするから、となんとか言いくるめた。
2人が目の前からいなくなったのを確認して立ち上がる。
服を初期のものに着替え、少し寂しく思いながらも一人で街へ向かう。
途中道がわからなくなって、思ったよりも時間がかかってしまった以外特に何も起こらなかったのでここら辺は割愛させてもらう。
少し先に見えるのは目印の竹槍を持った狸の信楽焼とその横の熊のような男性。
「コランさーん!!」
コランさんの元に近寄り、その隣に座る。左目の瞼が持ち上がり、黒い瞳に私の姿が映る。
「お前道具何も持たずに行っただろう。」
私の顔を見た瞬間コランさんは大きなため息をついた。
「薙刀あったんで大丈夫でした!
採った竹もアイテムボックスの中に入ってます。」
「全世界の薙刀使いに謝れ、バカ。」
「あいてっ。
殴ることないじゃないですか!」
胸を張って答えれば、頭に拳骨が降ってきた。別に痛くはないんだけどね。
「お前が道具を取りに帰ってくると思って待ってた俺の時間返せ。」
「そのことに関しては大変申し訳なく思っております。
それで採った竹どうしましょうか?」
「作業場で出してもらう。」
コランさんは小さく呻き声を上げながらゆっくりと立ち上がった。手伝おうとしたけれど、少しでも体重かけたら折れる、と断られた。そこまでヤワじゃないんですが…。
「こっちだ。」
コランさんについて行った先は、街を出て少し歩いたところにあるこじんまりとしたログハウスだった。
「とりあえず竹は家の前に置いてくれ。」
「了解です。」
ウエストポーチから採った竹を次々と取り出す。
出してー。出してー。出してー。
竹がどんどん積み重なって山ができてきた。
まだまだ行くよー。
出してー。出してー。出してー。
「おい。」
出してー。出してー。出してー。
「おい!!」
出してー。出し?
「どうかしました?」
「どうかしました?じゃねーよ!!
お前はここ一体を竹で埋める気か!!」
「え?まだ3分の2もいってませんよ?」
「はぁぁぁぁ。
とりあえず、それだけでいいから。」
そう言われましても、大量に竹があってもかさばるだけなんですよね。
あ、そうだ。
「コランさん、もし良ければ私に竹細工教えてくれませんか?」
「どうした、急に?」
「少々作りたいものがありまして。」
「別に構わねぇが、異国の冒険者には創造神の加護があるとはいえ、思い通りのものを作ろうとしたら相当時間かかると思うぞ。
何を作るつもりだ?」
「筏的なものです。」
「…嫌な予感がするから、何をする気かは聞かんが、それなら大して時間もかからないな。
今日は溜まった仕事するから、またお前の都合のいい時に来い。材料はこちらで準備しとく。」
「はい!
ありがとうございます!」
「いや、俺の方こそ助かった。ありがとうな。
少ないが、お礼だ。」
「ありがとうございます。
無理をして、腰悪化させないようにしてくださいね。」
「余計なお世話だ、バァカ。
お前が俺の心配なんざ100年早ぇ。」
ニィー、と口角をあげて笑ったコランさんは失礼ながらも悪巧みを思いついたような悪人のような顔だった。
「そんなこと言うんならもう心配してあげませんからね!
それじゃあ、また!」
「じゃあな。」
コランさんの仕事場から出て、私はログアウトした。
かぐやもゴンちゃんと同様、食べる必要は無いけれど食べても問題ないそうで、初めて食べるご飯に感動していた。
ゴンちゃんが3パック、かぐやが2パックずつ焼きそばを食べたもんだから、アイテムボックス内の食料が心もとなくなってきた。
2人ともまだ入るらしい。
早く【料理】スキル上げて自分で作れるようにならないと、毎回買ってたら破産だ。
それはさておき、これからどうしよう。
コランさんに竹を届けるのは決定事項として、その間かぐやをどうするかが問題なんだよね。
ただでさえ活気ある街なのに、今は第二陣でより賑わっているところにかぐやを連れていくのはなぁ。
まだ人間に抵抗があるだろうし、宝霊とバレて誘拐なんてされたら今度こそ心を開いてくれなくなるだろう。
ソースで汚れたかぐやの口元をハンカチで拭いながら、悶々と考える。
着物にソースついてない?大丈夫?
不安になったので、【クリーン】を新しく取りました。レイちゃんが最初に私にかけてくれたあれです。
ついでにゴンちゃんにも【クリーン】。
うん、もふもふ感が上がったね。
『主はさっきから何を悩んでいるんだ?』
「コランさんに竹を届けようと思うんだけど、その間かぐやをどうしようかなって。
流石に人混みが多いところに連れていくのは不安だから。」
満腹になったせいか、私の膝の上で船を漕いでいるかぐやの頭を撫でながら答える。
『それなら、主が自分の世界に帰る時に私を送る空間に送ればいいのではないか?』
「そう言えば、ログアウトの時以外でも送れるんだっけ。
でもそれで寂しい思いをさせたら可愛そうだし…。」
『あの空間にいる間は睡眠状態に入るのか、いる間の体感時間は一瞬だ。』
「そうなの?」
『あぁ。いつも意識が覚醒すると同時に目の前に主がいるからな。
それと、人間の中で宝霊の知名度は低いぞ。』
「え!?
ゴンちゃん私の心の中が読めるの!?」
ゴンちゃんにかぐやが宝霊だとバレることを危惧してるなんて言ってないよ!
『全部顔に出ていた。』
「さいですか…。」
同じようなこと周りによく言われる気がする。おかしいなぁ。私のポーカーフェイスは完璧なはずなのに。
『歴史書に''精霊狩り''の記述はあってもそれが''宝霊狩り''のためだという事実は書かれてないはずだ。宝霊を知っているとしたらよっぽどマニアな精霊の研究者ぐらいだろうな。』
「そんなに知名度低いんだ。」
『精霊一丸となって存在自体を隠そうとした特別な個体だからな。
今の時代、精霊の数が減ったと言ってもとても珍しいと言うほどではない。こそこそする方がかえって目立つだろう。』
ゴンちゃんは物知りだね。
その知識量に何度も助けられたよ。
「なるほど。教えてくれてありがとう。
いつかかぐやにもあの海を見せてあげたいなあ。」
『そうだな。』
会話がひと段落したので、おやすみ、と一言声かけて、寝てしまったかぐやを別空間に送る。それと一緒にゴンちゃんにもそっちに移ってもらう。
ゴンちゃんは渋っていたけれど、コランさんに竹を届けたら私もログアウトするから、となんとか言いくるめた。
2人が目の前からいなくなったのを確認して立ち上がる。
服を初期のものに着替え、少し寂しく思いながらも一人で街へ向かう。
途中道がわからなくなって、思ったよりも時間がかかってしまった以外特に何も起こらなかったのでここら辺は割愛させてもらう。
少し先に見えるのは目印の竹槍を持った狸の信楽焼とその横の熊のような男性。
「コランさーん!!」
コランさんの元に近寄り、その隣に座る。左目の瞼が持ち上がり、黒い瞳に私の姿が映る。
「お前道具何も持たずに行っただろう。」
私の顔を見た瞬間コランさんは大きなため息をついた。
「薙刀あったんで大丈夫でした!
採った竹もアイテムボックスの中に入ってます。」
「全世界の薙刀使いに謝れ、バカ。」
「あいてっ。
殴ることないじゃないですか!」
胸を張って答えれば、頭に拳骨が降ってきた。別に痛くはないんだけどね。
「お前が道具を取りに帰ってくると思って待ってた俺の時間返せ。」
「そのことに関しては大変申し訳なく思っております。
それで採った竹どうしましょうか?」
「作業場で出してもらう。」
コランさんは小さく呻き声を上げながらゆっくりと立ち上がった。手伝おうとしたけれど、少しでも体重かけたら折れる、と断られた。そこまでヤワじゃないんですが…。
「こっちだ。」
コランさんについて行った先は、街を出て少し歩いたところにあるこじんまりとしたログハウスだった。
「とりあえず竹は家の前に置いてくれ。」
「了解です。」
ウエストポーチから採った竹を次々と取り出す。
出してー。出してー。出してー。
竹がどんどん積み重なって山ができてきた。
まだまだ行くよー。
出してー。出してー。出してー。
「おい。」
出してー。出してー。出してー。
「おい!!」
出してー。出し?
「どうかしました?」
「どうかしました?じゃねーよ!!
お前はここ一体を竹で埋める気か!!」
「え?まだ3分の2もいってませんよ?」
「はぁぁぁぁ。
とりあえず、それだけでいいから。」
そう言われましても、大量に竹があってもかさばるだけなんですよね。
あ、そうだ。
「コランさん、もし良ければ私に竹細工教えてくれませんか?」
「どうした、急に?」
「少々作りたいものがありまして。」
「別に構わねぇが、異国の冒険者には創造神の加護があるとはいえ、思い通りのものを作ろうとしたら相当時間かかると思うぞ。
何を作るつもりだ?」
「筏的なものです。」
「…嫌な予感がするから、何をする気かは聞かんが、それなら大して時間もかからないな。
今日は溜まった仕事するから、またお前の都合のいい時に来い。材料はこちらで準備しとく。」
「はい!
ありがとうございます!」
「いや、俺の方こそ助かった。ありがとうな。
少ないが、お礼だ。」
「ありがとうございます。
無理をして、腰悪化させないようにしてくださいね。」
「余計なお世話だ、バァカ。
お前が俺の心配なんざ100年早ぇ。」
ニィー、と口角をあげて笑ったコランさんは失礼ながらも悪巧みを思いついたような悪人のような顔だった。
「そんなこと言うんならもう心配してあげませんからね!
それじゃあ、また!」
「じゃあな。」
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