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もう、ひとりぼっちじゃないのね
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***沙織***
「ちょっと、売店に行ってくる」
佐野さんがイスから立ちあがって、レントゲン操作室を出ていった。
「沙織……」
二人っきりになって、慎ちゃんが背後から私を抱きしめた。
「ダメよ。院内ではイチャイチャしたくないって、自分で言ってたじゃない」
「ここには誰も入って来ないだろう」
抱きしめる慎ちゃんの腕に力がこもる。
「佐野さんが戻ってくるわよ」
「気をきかせて出て行ったんだから、しばらくは戻って来ないよ」
「ダメだったら」
慎ちゃんの腕からのがれ、振りむいて軽くおでこにキスしてあげた。
「意外とお堅いんだな。もっと自由奔放なのかと思ってた」
「フフッ、でもちょっとスリルがあるわね。病院だと」
「だろう。ねぇ、ここに座って。変なことはしないからさ」
そう言って自分のひざを指さした。
少し迷ったけど、言われるがままに膝の上にちょんと座った。
「ここに先生は来たりしない?」
「昼休みはほとんど来ることないよ。僕のほうが検査室や薬局に行くことはあるけどね」
慎ちゃんはちゃんと約束を守って手を握っているだけだ。
「佐野さんそろそろ戻って来ないかな?」
膝の上になど座っていたら、なんだか落ち着かない。元カレにこんなところ見られたくないし。
「だから、気をきかせたんだって。僕だって沙織さんが佐野さんと付き合ってたときは、そうしてあげていただろう」
「あら、そうだったの? そんなことあったかしら? も、もういいわよ、そんな話」
……過去の話なんてしないで。
「佐野さんと松田さんって上手くいってるのかな?」
「どうしてよ? 松田さんは離婚したんだもの、二人はいずれ結婚するんでしょ」
慎ちゃんが私の膝小僧をなでるのでくすぐったい。
「なんか元気ないんだよな、佐野さん。もしかして沙織さんのことがまだ好きなのかな?」
「そんなわけないでしょう。やめてよ、そんな話。もう終わったことだわ。お願いだから、佐野さんの話はしないで……」
慎ちゃんに思い出してもらいたくない。
佐野さんの部屋で自殺未遂したことなど……。
慎ちゃんの膝から降りて佐野さんのイスに移り、しばらくの間、ネットや動画を見たりして過ごした。
慎ちゃんとの平和な休み時間は、あっという間に終わる。
時計を見て重い腰をあげた。
「ねぇ、今夜はなにが食べたい? たまには外食にする?」
「僕は沙織さんの作る料理、けっこう好きだけどね。面倒ならどこかで食べて帰ってもいいよ。それとも僕が作ろうか?」
「なにが作れるの?」
「うーん、レンチンのパスタか、炒飯だな」
「そんなの料理じゃないでしょ。炭水化物じゃないのがいいわ。毎日アパートもマンネリだし、どこかで気分転換がしたいわね」
「マンネリって、、沙織さんはもう僕に飽きてしまったってこと?」
慎ちゃんが寂しげな顔をしたので、ちょっとからかいたくなった。
「マンネリっていうわけじゃないけどね。クスッ」
「わかってるよ、僕が下手だって言いたいんだろ」
むくれたように言う慎ちゃんが可愛くて、思わず吹きだす。
「ぷっ、そんなこと言ってないでしょ。慎ちゃんはとってもステキ~~」
人差し指で慎ちゃんの鼻先をポンとはじいた。
「バカにしてるだろう。帰ったら仕返ししてやる」
そう言って慎ちゃんは私の身体を壁に押しつけた。
「バカになんかしてないったら。最近は70点よ。才能あり!」
「バカにしてるじゃないか。じゃあ、100点ってどんなのだよ? もっと変態的なのが好きなのかい?」
悪戯っぽく慎ちゃんが笑った。
「そんなんじゃないわよ、失礼ね。女はムードに弱いのよ」
「ムードかぁ、ベッドにバラの花びらを散らすとかかい?」
「ウハハハッ!! ちょっと違うけど、いいかもね。花びらのお掃除も慎ちゃんがするのよ。じゃあ、もう行くね」
ドアをあけると佐野さんが立っていたので、心臓が止まるかと思った。
もしかして聞かれてた?
やだぁーー、もう!!
ナースステーションに戻ると、窓際の手洗い場の横で、松田彩矢が経管栄養の前に投与する錠剤をペンチで潰していた。
なんとなく憂いを感じるその横顔は、どう見ても幸せそうではなかった。
慎ちゃんが言っていたように、佐野さんとうまくいってないのか?
なにか障害になることでもあるのだろうか。
仕事と子育ての両立で、疲れているだけかもしれない。
休憩室から四、五名のスタッフがぞろぞろと出てきた。
「北村! 317号室の西村さん、痛み止めをくれって何度もナースコールを鳴らしたのよ。ロキソプロフェンを渡しておいたけど、昼休みどこに行ってるのよ。休憩室で休みなさいよ!」
二歳年上の口喧しい大沢の説教には、いつもウンザリさせられる。
「ロッカー室の簡易ベッドで寝てる人だっているじゃないの。どうして私にばかり厳しく言うのよ」
「ちゃんと休みたいなら、こういう患者がいるからお願いしますぐらい言ってから行きなさいよ。常識がないのよ、あなたは」
「私だってあなたの受け持ち患者の世話をしたことがあるのよ。お互い様じゃない!」
ふん、大っ嫌い!
初七日を終えて出勤したばかりだっていうのに、優しさのかけらもない。
帰りは外食って言ってたのに、慎ちゃんから急用が出来たから、先に帰るとLINEが入っていた。
なんだろう、急用って?
晩ご飯はどうするのかな?
厚揚げのミートグラタンでも作ろうかな? スーパーに寄って野菜と果物も買って帰らないと。
職員通用口を出ると飲料自販機の前に、佐野さんがうつむいて立っていた。
目が合ってしまって、ちょっと戸惑う。
「お疲れ様でした~~!」
明るく挨拶したつもりだったけれど、笑顔は少し引きつっていたかもしれない。
「沙織、橋本はどうした? 」
「あ、なんか急用があるって先に帰ったの」
「そうか、……送ってやるよ。あ、やっぱりマズイかな。橋本に怒られるかな?」
「スーパーで買い物をしてから帰りたいの。だから、大丈夫よ。じゃあ、さよなら」
笑顔で手をふり、足早に立ち去る。
佐野さん。あんなに好きだったけれど……。
今は不思議なくらい慎ちゃんが好き。
人の心ってこんなにコロコロ変われるものなのね。
慎ちゃんと私はいつまで続くのだろう。
慎ちゃんもいつかは、年下の可愛い女の子に惹かれるんだろうな。
私はこの先、慎ちゃんよりも愛せる人に出会えるだろうか。
そもそも私を愛してくれる人など現れてくれるの?
そんなことを考え始めると、また不安と恐怖でパニックを起こしそうになる。
スーパーでグラタンの材料を買おうと思っていたけれど、こんにゃく麺の冷やし中華が目についた。
夏にグラタンはやっぱり暑いよね。少し太ってきたから、冷やし中華がいいかも。
カニ蒲鉾や茄子、きゅうりなどのトッピングをカゴに入れる。
メロンは重いので、桃だけ買って慎ちゃんのアパートへ帰った。
八時を過ぎても慎ちゃんは帰ってこないし、連絡もない。
晩ご飯は誰かと食べてるのかな?
まさか、浮気じゃないよね……。
冷やし中華にしてよかった。こんにゃく麺だから伸びなくていい。
先に食事を済ませ、お風呂からあがると、玄関ドアの鍵がまわる音が聞こえた。
なんの連絡もなく遅れて帰ったことに、少し腹立たしさを感じた。
いつもなら、リビングから目と鼻の先のような狭い玄関でも、お迎えをしていたけれど、今日は無視してテレビを見ていた。
「ただいま~ 遅くなってごめん」
慎ちゃんは、おどけたようにリビングのドアを開けた。
「どうして連絡くれなかったの!? 」
不機嫌に咎めると、後ろ手に花束を隠し持っているのが見えた。
「ハイ、これ!」
慎ちゃんは照れたようにおずおずと真っ赤なバラの花束を差しだした。
甘く清らかな薔薇の香りが広がる。
これって、、一体何本あるの?
軽く50本以上もありそうな大きな花束。真紅よりも明るい赤い薔薇。
慎ちゃんったら、またこんな散財なんかして……。
「すごく綺麗! どうしたの? 私、誕生日じゃないわよ」
「これね、希望って言う品種の薔薇なんだって。沙織さんがマンネリだって言うから。外食より花のほうがいいかなって思ってさ」
「そんなこと気にしてたの。じゃあ、この薔薇ってベッドに撒くつもりで買って来たってわけ?」
「沙織さんがそうして欲しいならするけど」
悪戯っぽく慎ちゃんが笑った。
「こんな素敵なの、もったいないわ。でもコレどうするの? 花瓶なんてないでしょう?」
「あ、そうか、忘れてた。困ったな」
「明日、花瓶を買ってくるわ。とりあえずバケツに入れときましょう。萎れたら大変だもの」
洗面所に置いてあったバケツに水をはり、花束を入れて寝室へ飾った。
「お花なんて貰ったの久しぶりよ。ありがとう。晩ご飯食べる? こんにゃく麺の冷やし中華だけど」
「やった! 冷やし中華食べたいって思ってたんだ。だけど先にシャワー浴びる。汗かいちゃったから」
バスルームから出て来た慎ちゃんに、冷蔵庫から冷やし中華を出してあげた。
「ごめんね、私のダイエット食に付き合わせて。普通のより不味いでしょ。ビールも飲む?」
「ビールは後でいい。美味しいよ、これ。僕だって太りたくないし、沙織さんのご飯はいつも健康的で好きだな」
「ありがとう。じゃあ、よかった、外食じゃなくて。素敵な花束がもらえたもの。遅いから、今日は誰かとお食事して来るのかと思ったわ」
「い、いや、ちょっと、他にも用事があったんだ」
なんとなく言葉を濁したので、それ以上は追求しなかったけれど、なにか怪しい……。
隠し事なんて、しない人だと思っていたけれど。
面白そうなテレビもないので、ベッドに寝転んで読みかけの文庫本を読んでいた。
直木賞作品だというけれど、面白く感じられなくてちっとも進まない。
この作家とは相性が悪いのだろうと思いながらも、我慢して読みつづけた。
そのうち眠くなって、いつの間にかうたた寝をしていた。
ふと目がさめると、ジッと見つめている慎ちゃんの顔があった。
「嫌ね、寝顔なんか見てないでよ」
不機嫌に起きあがり、手ぐしで髪を整えた。
「どうして? すごく可愛いのに」
「可愛くなんてないわよ。枕によだれを垂らしたりしてることもあるんだから」
「ふははっ、僕、沙織さんのそういうところが見たいな。いつも隙がなくてステキすぎるから、ちょっと疲れちゃう」
「えっ、そ、そうなの? 慎ちゃん、疲れてたの?」
結構、ショックな発言。
私はまわりの人たちをいつも疲れさせるトラブルメーカーだから。
「沙織さん、もう寝ちゃう? 僕ちょっと話したいことがあって……」
な、なによ? かしこまっちゃって。
も、もしかして、もう別れ話?!
いくらなんでも早すぎよ。
私と長続きできる人は、この世に一人もいないの?
「し、慎ちゃん、、もしかして昼休みに言ったこと怒ってる? あのね、あれは冗談よ。私って素直じゃないの。うまく言えないんだけど、慎ちゃんが一番なの、本当よ!」
「沙織さん……。どうしたの?」
不安げに慎ちゃんが私を見つめる。
「ずっとじゃなくていいの。慎ちゃんはまだ若いんだもん、束縛なんてしたくないわ。だけど、もう少しだけ一緒にいてくれないかな。もう少しでいいから!」
ひどく動揺して焦ってしまい、早口でまくし立てた。
「沙織さん、落ち着いて。どうしたの? そんなに興奮しないで」
すっかり取り乱してしまっている私を、慎ちゃんが優しく抱きしめた。
「ごめんなさい。私まだ病気なのね。気持ちが不安定になると、発作を起こしそうになっちゃう……」
「焦ることないよ。あ、あのさ、これ、これなんだけど、受け取ってもらえるかな……」
緊張した面持ちでリボンで結ばれた小さな箱を差しだした。
これって、ティファニーじゃない。
「またプレゼント? あんなにステキなお花をもらったのに」
白いリボンを解いて、水色の小箱をあけた。
多分、シルバーのリングかネックレスと思っていたけれど。
それはありえないほど豪華なエンゲージリングだった。
「えっ、慎ちゃん、これって?」
「あ、あの、結婚してくれないかな。……な、なんか、めっちゃ照れるな」
慎ちゃんはうつむき、無垢な乙女のように恥じらいながら言った。
本当に?
慎ちゃんは誠実な人だけれど、すぐには信じられなかった。
言葉を失っている私を、慎ちゃんが不安げに見つめた。
「ダメかな? やっぱりダメ?」
「私でいいの? 本当に私で……」
「当たり前じゃない。ずっと憧れてたんだから。このアパート狭すぎるだろ。早く引っ越したくて。沙織さんのマンションの家賃だってもったいないし」
「でも私バツイチよ。四歳も年上だし。ご両親はなんて言うかな?」
「僕は次男だし、うちの両親はたぶん大丈夫。そんなこと心配しないで」
「慎ちゃん、、」
リングをケースから外して、慎ちゃんは私の薬指にはめてくれた。
「やった、ピッタリじゃん!」
「すごく綺麗……」
この時はあまりに突然のプロポーズで、この指輪の豪華さに関心が行かなかった。
慎ちゃんが肩を抱き寄せて、そっとキスをした。
私ひとりぼっちじゃないのね。ずっと一緒に居てくれるのね。
もう不安に怯えたりしなくてもいいのね。
思いも寄らないプロポーズに胸が熱くなり、涙があふれた。
「ごめん。お父さんが亡くなったばかりなのに」
「ううん、パパは一番喜んでくれてるはずよ」
うつむいて泣いている私の涙を、慎ちゃんが優しくぬぐってくれた。
「沙織、……愛してるよ」
「私も慎ちゃんが好き。ずっと、、ずっとそばにいて」
キスされたまま、ベッドへ倒れこむ。
慎ちゃんの熱い息が首筋にかかった。
少し余裕が出てきた慎ちゃんの愛撫は、優しくて、くすぐったくて、思わず甘い吐息がもれた。
「ねぇ、今日は上手だった?」
腕まくらでウトウトしかけていたら、耳元で慎ちゃんが囁いた。
「う~ん、上手よ、とっても上手~」
まどろみながらムニャムニャと答えた。
「まじめに答えてよ。どこがよかったんだよ?」
「なによ、いやね。そういうのがムードぶち壊しって言うのよ。せっかく良かったのに」
「なにがどう良かったんだよ。ちゃんと言ってくれないとわからないじゃないか」
「そんなことを説明させようっていうのが野暮なのよ。今日はきれいなお花があって、プロポーズもされたのよ。いいに決まってるでしょ」
「そういうんじゃなくてさ、、上手だったかって聞いてるんだよ」
「そういうのが大事なの。テクニックじゃないの、気持ちの問題なの」
もう、慎ちゃんったら。
「わからないなぁ。じゃあ、今日は何点だったんだい?」
「100点満点に決まってるわ! 私、最高に幸せよ」
慎ちゃんに抱きついて、ほっぺにキスをした。
「まぁ、いいや。早く結婚して、引越ししようよ。結婚式なんかはどうするんだい?」
「私はバツイチだから式は無くてもいいけど、慎ちゃんは初婚だから、しないといけないんじゃない?」
「沙織さんがしなくていいなら、僕もしなくてもいいかな。面倒だし、そういうことにお金かけたくないんだよな」
「そういえば慎ちゃん、もしかして宝くじにでも当たった? この指輪高かったでしょう?」
さっき薬指にはめてもらったリングを見つめた。
1カラットはありそうなダイヤモンドリング。
このブランドでこのクラリティ。
「う、うん、まあね。あまり小さいのだと沙織さんに断られそうな気がしたから」
「そんなことないけど、ごめんね。貯金がなくなっちゃったでしょう?」
本当は指輪などなくてもよかった。プロポーズだけで十分に嬉しかったから。
エンゲージリングは一度目の結婚のときにもらったけれど、ほとんどケースに入れたままで、はめる機会はあまりなかった。
引っかかるような石のついたリングなど、看護の仕事には邪魔だったから。
「じ、実を言うと貯金じゃなくて、ローンで買ったんだ、ごめん……」
「えっ、先月ローンで車を買い替えたばかりなのに?」
以前の車を80万で下取ってもらい、今の車のローンは毎月5万円と言っていた。
「まずは婚約できるかどうかが大事だったんだよ。あとは結婚してからなんとかなるだろう。二人で頑張れば」
「………」
慎ちゃんの浪費ぐせはなんとなく気にはなっていた。
見栄っ張りなところがあって、金銭感覚がかなりヤバい。
「ゆ、指輪はいくらだったの?」
「あ、月に6万円の36回払いだったかな?」
「えーーーっ、36回!!どうしてそんな高い買い物なんてしたのよっ」
「しょぼいやつだと断られると思ったんだよ。沙織さんは僕にとって高嶺の花だったから」
………買ってしまったものは仕方がない。
父が貯めてくれた遺産が一千万円ある。
慎ちゃんと結婚できるんだもの、そのくらいは許してあげよう。
私のためを想って買ってくれたのだから。
***
長い間、『六華 snow crystal 4』にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
長くなりすぎたので、『六華 snow crystal 5 』に移ります。
どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。
なごみ
「ちょっと、売店に行ってくる」
佐野さんがイスから立ちあがって、レントゲン操作室を出ていった。
「沙織……」
二人っきりになって、慎ちゃんが背後から私を抱きしめた。
「ダメよ。院内ではイチャイチャしたくないって、自分で言ってたじゃない」
「ここには誰も入って来ないだろう」
抱きしめる慎ちゃんの腕に力がこもる。
「佐野さんが戻ってくるわよ」
「気をきかせて出て行ったんだから、しばらくは戻って来ないよ」
「ダメだったら」
慎ちゃんの腕からのがれ、振りむいて軽くおでこにキスしてあげた。
「意外とお堅いんだな。もっと自由奔放なのかと思ってた」
「フフッ、でもちょっとスリルがあるわね。病院だと」
「だろう。ねぇ、ここに座って。変なことはしないからさ」
そう言って自分のひざを指さした。
少し迷ったけど、言われるがままに膝の上にちょんと座った。
「ここに先生は来たりしない?」
「昼休みはほとんど来ることないよ。僕のほうが検査室や薬局に行くことはあるけどね」
慎ちゃんはちゃんと約束を守って手を握っているだけだ。
「佐野さんそろそろ戻って来ないかな?」
膝の上になど座っていたら、なんだか落ち着かない。元カレにこんなところ見られたくないし。
「だから、気をきかせたんだって。僕だって沙織さんが佐野さんと付き合ってたときは、そうしてあげていただろう」
「あら、そうだったの? そんなことあったかしら? も、もういいわよ、そんな話」
……過去の話なんてしないで。
「佐野さんと松田さんって上手くいってるのかな?」
「どうしてよ? 松田さんは離婚したんだもの、二人はいずれ結婚するんでしょ」
慎ちゃんが私の膝小僧をなでるのでくすぐったい。
「なんか元気ないんだよな、佐野さん。もしかして沙織さんのことがまだ好きなのかな?」
「そんなわけないでしょう。やめてよ、そんな話。もう終わったことだわ。お願いだから、佐野さんの話はしないで……」
慎ちゃんに思い出してもらいたくない。
佐野さんの部屋で自殺未遂したことなど……。
慎ちゃんの膝から降りて佐野さんのイスに移り、しばらくの間、ネットや動画を見たりして過ごした。
慎ちゃんとの平和な休み時間は、あっという間に終わる。
時計を見て重い腰をあげた。
「ねぇ、今夜はなにが食べたい? たまには外食にする?」
「僕は沙織さんの作る料理、けっこう好きだけどね。面倒ならどこかで食べて帰ってもいいよ。それとも僕が作ろうか?」
「なにが作れるの?」
「うーん、レンチンのパスタか、炒飯だな」
「そんなの料理じゃないでしょ。炭水化物じゃないのがいいわ。毎日アパートもマンネリだし、どこかで気分転換がしたいわね」
「マンネリって、、沙織さんはもう僕に飽きてしまったってこと?」
慎ちゃんが寂しげな顔をしたので、ちょっとからかいたくなった。
「マンネリっていうわけじゃないけどね。クスッ」
「わかってるよ、僕が下手だって言いたいんだろ」
むくれたように言う慎ちゃんが可愛くて、思わず吹きだす。
「ぷっ、そんなこと言ってないでしょ。慎ちゃんはとってもステキ~~」
人差し指で慎ちゃんの鼻先をポンとはじいた。
「バカにしてるだろう。帰ったら仕返ししてやる」
そう言って慎ちゃんは私の身体を壁に押しつけた。
「バカになんかしてないったら。最近は70点よ。才能あり!」
「バカにしてるじゃないか。じゃあ、100点ってどんなのだよ? もっと変態的なのが好きなのかい?」
悪戯っぽく慎ちゃんが笑った。
「そんなんじゃないわよ、失礼ね。女はムードに弱いのよ」
「ムードかぁ、ベッドにバラの花びらを散らすとかかい?」
「ウハハハッ!! ちょっと違うけど、いいかもね。花びらのお掃除も慎ちゃんがするのよ。じゃあ、もう行くね」
ドアをあけると佐野さんが立っていたので、心臓が止まるかと思った。
もしかして聞かれてた?
やだぁーー、もう!!
ナースステーションに戻ると、窓際の手洗い場の横で、松田彩矢が経管栄養の前に投与する錠剤をペンチで潰していた。
なんとなく憂いを感じるその横顔は、どう見ても幸せそうではなかった。
慎ちゃんが言っていたように、佐野さんとうまくいってないのか?
なにか障害になることでもあるのだろうか。
仕事と子育ての両立で、疲れているだけかもしれない。
休憩室から四、五名のスタッフがぞろぞろと出てきた。
「北村! 317号室の西村さん、痛み止めをくれって何度もナースコールを鳴らしたのよ。ロキソプロフェンを渡しておいたけど、昼休みどこに行ってるのよ。休憩室で休みなさいよ!」
二歳年上の口喧しい大沢の説教には、いつもウンザリさせられる。
「ロッカー室の簡易ベッドで寝てる人だっているじゃないの。どうして私にばかり厳しく言うのよ」
「ちゃんと休みたいなら、こういう患者がいるからお願いしますぐらい言ってから行きなさいよ。常識がないのよ、あなたは」
「私だってあなたの受け持ち患者の世話をしたことがあるのよ。お互い様じゃない!」
ふん、大っ嫌い!
初七日を終えて出勤したばかりだっていうのに、優しさのかけらもない。
帰りは外食って言ってたのに、慎ちゃんから急用が出来たから、先に帰るとLINEが入っていた。
なんだろう、急用って?
晩ご飯はどうするのかな?
厚揚げのミートグラタンでも作ろうかな? スーパーに寄って野菜と果物も買って帰らないと。
職員通用口を出ると飲料自販機の前に、佐野さんがうつむいて立っていた。
目が合ってしまって、ちょっと戸惑う。
「お疲れ様でした~~!」
明るく挨拶したつもりだったけれど、笑顔は少し引きつっていたかもしれない。
「沙織、橋本はどうした? 」
「あ、なんか急用があるって先に帰ったの」
「そうか、……送ってやるよ。あ、やっぱりマズイかな。橋本に怒られるかな?」
「スーパーで買い物をしてから帰りたいの。だから、大丈夫よ。じゃあ、さよなら」
笑顔で手をふり、足早に立ち去る。
佐野さん。あんなに好きだったけれど……。
今は不思議なくらい慎ちゃんが好き。
人の心ってこんなにコロコロ変われるものなのね。
慎ちゃんと私はいつまで続くのだろう。
慎ちゃんもいつかは、年下の可愛い女の子に惹かれるんだろうな。
私はこの先、慎ちゃんよりも愛せる人に出会えるだろうか。
そもそも私を愛してくれる人など現れてくれるの?
そんなことを考え始めると、また不安と恐怖でパニックを起こしそうになる。
スーパーでグラタンの材料を買おうと思っていたけれど、こんにゃく麺の冷やし中華が目についた。
夏にグラタンはやっぱり暑いよね。少し太ってきたから、冷やし中華がいいかも。
カニ蒲鉾や茄子、きゅうりなどのトッピングをカゴに入れる。
メロンは重いので、桃だけ買って慎ちゃんのアパートへ帰った。
八時を過ぎても慎ちゃんは帰ってこないし、連絡もない。
晩ご飯は誰かと食べてるのかな?
まさか、浮気じゃないよね……。
冷やし中華にしてよかった。こんにゃく麺だから伸びなくていい。
先に食事を済ませ、お風呂からあがると、玄関ドアの鍵がまわる音が聞こえた。
なんの連絡もなく遅れて帰ったことに、少し腹立たしさを感じた。
いつもなら、リビングから目と鼻の先のような狭い玄関でも、お迎えをしていたけれど、今日は無視してテレビを見ていた。
「ただいま~ 遅くなってごめん」
慎ちゃんは、おどけたようにリビングのドアを開けた。
「どうして連絡くれなかったの!? 」
不機嫌に咎めると、後ろ手に花束を隠し持っているのが見えた。
「ハイ、これ!」
慎ちゃんは照れたようにおずおずと真っ赤なバラの花束を差しだした。
甘く清らかな薔薇の香りが広がる。
これって、、一体何本あるの?
軽く50本以上もありそうな大きな花束。真紅よりも明るい赤い薔薇。
慎ちゃんったら、またこんな散財なんかして……。
「すごく綺麗! どうしたの? 私、誕生日じゃないわよ」
「これね、希望って言う品種の薔薇なんだって。沙織さんがマンネリだって言うから。外食より花のほうがいいかなって思ってさ」
「そんなこと気にしてたの。じゃあ、この薔薇ってベッドに撒くつもりで買って来たってわけ?」
「沙織さんがそうして欲しいならするけど」
悪戯っぽく慎ちゃんが笑った。
「こんな素敵なの、もったいないわ。でもコレどうするの? 花瓶なんてないでしょう?」
「あ、そうか、忘れてた。困ったな」
「明日、花瓶を買ってくるわ。とりあえずバケツに入れときましょう。萎れたら大変だもの」
洗面所に置いてあったバケツに水をはり、花束を入れて寝室へ飾った。
「お花なんて貰ったの久しぶりよ。ありがとう。晩ご飯食べる? こんにゃく麺の冷やし中華だけど」
「やった! 冷やし中華食べたいって思ってたんだ。だけど先にシャワー浴びる。汗かいちゃったから」
バスルームから出て来た慎ちゃんに、冷蔵庫から冷やし中華を出してあげた。
「ごめんね、私のダイエット食に付き合わせて。普通のより不味いでしょ。ビールも飲む?」
「ビールは後でいい。美味しいよ、これ。僕だって太りたくないし、沙織さんのご飯はいつも健康的で好きだな」
「ありがとう。じゃあ、よかった、外食じゃなくて。素敵な花束がもらえたもの。遅いから、今日は誰かとお食事して来るのかと思ったわ」
「い、いや、ちょっと、他にも用事があったんだ」
なんとなく言葉を濁したので、それ以上は追求しなかったけれど、なにか怪しい……。
隠し事なんて、しない人だと思っていたけれど。
面白そうなテレビもないので、ベッドに寝転んで読みかけの文庫本を読んでいた。
直木賞作品だというけれど、面白く感じられなくてちっとも進まない。
この作家とは相性が悪いのだろうと思いながらも、我慢して読みつづけた。
そのうち眠くなって、いつの間にかうたた寝をしていた。
ふと目がさめると、ジッと見つめている慎ちゃんの顔があった。
「嫌ね、寝顔なんか見てないでよ」
不機嫌に起きあがり、手ぐしで髪を整えた。
「どうして? すごく可愛いのに」
「可愛くなんてないわよ。枕によだれを垂らしたりしてることもあるんだから」
「ふははっ、僕、沙織さんのそういうところが見たいな。いつも隙がなくてステキすぎるから、ちょっと疲れちゃう」
「えっ、そ、そうなの? 慎ちゃん、疲れてたの?」
結構、ショックな発言。
私はまわりの人たちをいつも疲れさせるトラブルメーカーだから。
「沙織さん、もう寝ちゃう? 僕ちょっと話したいことがあって……」
な、なによ? かしこまっちゃって。
も、もしかして、もう別れ話?!
いくらなんでも早すぎよ。
私と長続きできる人は、この世に一人もいないの?
「し、慎ちゃん、、もしかして昼休みに言ったこと怒ってる? あのね、あれは冗談よ。私って素直じゃないの。うまく言えないんだけど、慎ちゃんが一番なの、本当よ!」
「沙織さん……。どうしたの?」
不安げに慎ちゃんが私を見つめる。
「ずっとじゃなくていいの。慎ちゃんはまだ若いんだもん、束縛なんてしたくないわ。だけど、もう少しだけ一緒にいてくれないかな。もう少しでいいから!」
ひどく動揺して焦ってしまい、早口でまくし立てた。
「沙織さん、落ち着いて。どうしたの? そんなに興奮しないで」
すっかり取り乱してしまっている私を、慎ちゃんが優しく抱きしめた。
「ごめんなさい。私まだ病気なのね。気持ちが不安定になると、発作を起こしそうになっちゃう……」
「焦ることないよ。あ、あのさ、これ、これなんだけど、受け取ってもらえるかな……」
緊張した面持ちでリボンで結ばれた小さな箱を差しだした。
これって、ティファニーじゃない。
「またプレゼント? あんなにステキなお花をもらったのに」
白いリボンを解いて、水色の小箱をあけた。
多分、シルバーのリングかネックレスと思っていたけれど。
それはありえないほど豪華なエンゲージリングだった。
「えっ、慎ちゃん、これって?」
「あ、あの、結婚してくれないかな。……な、なんか、めっちゃ照れるな」
慎ちゃんはうつむき、無垢な乙女のように恥じらいながら言った。
本当に?
慎ちゃんは誠実な人だけれど、すぐには信じられなかった。
言葉を失っている私を、慎ちゃんが不安げに見つめた。
「ダメかな? やっぱりダメ?」
「私でいいの? 本当に私で……」
「当たり前じゃない。ずっと憧れてたんだから。このアパート狭すぎるだろ。早く引っ越したくて。沙織さんのマンションの家賃だってもったいないし」
「でも私バツイチよ。四歳も年上だし。ご両親はなんて言うかな?」
「僕は次男だし、うちの両親はたぶん大丈夫。そんなこと心配しないで」
「慎ちゃん、、」
リングをケースから外して、慎ちゃんは私の薬指にはめてくれた。
「やった、ピッタリじゃん!」
「すごく綺麗……」
この時はあまりに突然のプロポーズで、この指輪の豪華さに関心が行かなかった。
慎ちゃんが肩を抱き寄せて、そっとキスをした。
私ひとりぼっちじゃないのね。ずっと一緒に居てくれるのね。
もう不安に怯えたりしなくてもいいのね。
思いも寄らないプロポーズに胸が熱くなり、涙があふれた。
「ごめん。お父さんが亡くなったばかりなのに」
「ううん、パパは一番喜んでくれてるはずよ」
うつむいて泣いている私の涙を、慎ちゃんが優しくぬぐってくれた。
「沙織、……愛してるよ」
「私も慎ちゃんが好き。ずっと、、ずっとそばにいて」
キスされたまま、ベッドへ倒れこむ。
慎ちゃんの熱い息が首筋にかかった。
少し余裕が出てきた慎ちゃんの愛撫は、優しくて、くすぐったくて、思わず甘い吐息がもれた。
「ねぇ、今日は上手だった?」
腕まくらでウトウトしかけていたら、耳元で慎ちゃんが囁いた。
「う~ん、上手よ、とっても上手~」
まどろみながらムニャムニャと答えた。
「まじめに答えてよ。どこがよかったんだよ?」
「なによ、いやね。そういうのがムードぶち壊しって言うのよ。せっかく良かったのに」
「なにがどう良かったんだよ。ちゃんと言ってくれないとわからないじゃないか」
「そんなことを説明させようっていうのが野暮なのよ。今日はきれいなお花があって、プロポーズもされたのよ。いいに決まってるでしょ」
「そういうんじゃなくてさ、、上手だったかって聞いてるんだよ」
「そういうのが大事なの。テクニックじゃないの、気持ちの問題なの」
もう、慎ちゃんったら。
「わからないなぁ。じゃあ、今日は何点だったんだい?」
「100点満点に決まってるわ! 私、最高に幸せよ」
慎ちゃんに抱きついて、ほっぺにキスをした。
「まぁ、いいや。早く結婚して、引越ししようよ。結婚式なんかはどうするんだい?」
「私はバツイチだから式は無くてもいいけど、慎ちゃんは初婚だから、しないといけないんじゃない?」
「沙織さんがしなくていいなら、僕もしなくてもいいかな。面倒だし、そういうことにお金かけたくないんだよな」
「そういえば慎ちゃん、もしかして宝くじにでも当たった? この指輪高かったでしょう?」
さっき薬指にはめてもらったリングを見つめた。
1カラットはありそうなダイヤモンドリング。
このブランドでこのクラリティ。
「う、うん、まあね。あまり小さいのだと沙織さんに断られそうな気がしたから」
「そんなことないけど、ごめんね。貯金がなくなっちゃったでしょう?」
本当は指輪などなくてもよかった。プロポーズだけで十分に嬉しかったから。
エンゲージリングは一度目の結婚のときにもらったけれど、ほとんどケースに入れたままで、はめる機会はあまりなかった。
引っかかるような石のついたリングなど、看護の仕事には邪魔だったから。
「じ、実を言うと貯金じゃなくて、ローンで買ったんだ、ごめん……」
「えっ、先月ローンで車を買い替えたばかりなのに?」
以前の車を80万で下取ってもらい、今の車のローンは毎月5万円と言っていた。
「まずは婚約できるかどうかが大事だったんだよ。あとは結婚してからなんとかなるだろう。二人で頑張れば」
「………」
慎ちゃんの浪費ぐせはなんとなく気にはなっていた。
見栄っ張りなところがあって、金銭感覚がかなりヤバい。
「ゆ、指輪はいくらだったの?」
「あ、月に6万円の36回払いだったかな?」
「えーーーっ、36回!!どうしてそんな高い買い物なんてしたのよっ」
「しょぼいやつだと断られると思ったんだよ。沙織さんは僕にとって高嶺の花だったから」
………買ってしまったものは仕方がない。
父が貯めてくれた遺産が一千万円ある。
慎ちゃんと結婚できるんだもの、そのくらいは許してあげよう。
私のためを想って買ってくれたのだから。
***
長い間、『六華 snow crystal 4』にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
長くなりすぎたので、『六華 snow crystal 5 』に移ります。
どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。
なごみ
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